最終話 Fairy tale of courage-5


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

サムトーの放った神速のハイキックを、ギランは手にした青龍刀の峰で受ける。
青龍刀の刃はその威力に耐えられずに粉々に砕け散った。
「チッ!! このナマクラがぁ!!」
刃の無くなった武器を脇へと投げ捨てると、ギランは胸の前で右の拳をバシンと左手で受けた。
「ならここからはオレの爪で相手させてもらうぜぇ・・・!!」
対するサムトーは構えを解いてすっと直立した。
「何だぁ?」
「残念だけどね・・・あんた時間切れっぽいわよ」
長髪をふわっとかき上げるとサムトーがギランを斜めに見る。
その言葉にギランが訝しげな表情を浮かべたその時、ギランの身体が淡い白い輝きに包まれた。
「なっ、何だ!!? ・・・総帥!!?」
ギランがギャラガーを振り返る。
ギャラガーは右目の矢を引き抜き、取り出したハンカチで目から流れる血を拭っている所だった。
左肩と胸部の傷は既に完全に癒えており、衣服の破れや汚れすら全て元通りになっている。
「『魔王石』を2つ失った事で第6階梯の魔術は維持できなくなった。お前たちは消滅する」
まるで何でもない事の様にあっさりとそう告げるギャラガー。
「そ・・・そんな!! 待ってくだせぇ!! オレはまだ暴れ足りね・・・」
その言葉を言い終えるより早く、ギランの身体は無数の光の塊に分解し空に散って消えていった。
一瞬だけ、その姿を見ていたサムトーは哀れむ様に瞳を細めた。

同時にリゼルグ・アーウィンの姿も光に包まれていた。
自らの左手を見てリゼルグは自身の消滅を悟る。
「・・・かっ・・・クソッ!! 消えるのか・・・私は!!もう一度死ぬのか!!!」
恐怖に引きつった表情でリゼルグがヨロヨロと後ずさる。
「キ・・・キリエッタ・・・」
そして震える左手をキリエッタへ向けて伸ばす。
キリエッタはそんなリゼルグを無表情に見つめていた。
「キリエッタ・・・助け・・・」
そしてリゼルグも消えていく。
キリエッタが舌打ちをして俯く。
「・・・アンタには・・・似合いの最後だよ・・・」
その口から苦々しい呟きが漏れた。

カルタス(?)カイリ(?)のコンビと交戦していたアイザックにも最期の時が訪れようとしていた。
ぼうっと淡い輝きに包まれる自分の身体を見て、アイザックが守護神獣融合を解く。
「・・・おっと・・・はは、やはりこうなりますか」
苦笑して彼は肩を竦めた。
そしてどこか穏やかな表情で2人を見る。
「君らも後学の為に見ておくといいですよ・・・『ワルモノ』の最期なんてね、所詮はこんなものです」
そう状況を皮肉ると、アイザックはウィリアム達の方を見た。
「さて、小さな皆さんの起こす大きな奇跡を、僕は地獄の底から拝見している事にしますよ・・・」
ウィリアムへ向けて、帝國軍式に敬礼するとアイザックは無数の光に分裂して消滅していった。

ギャラガーの魔術により蘇った『ハイドラ』の面々は全員が消え去った。
ウィリアム達は全員各々の武器を構え、擂鉢状に抉れた大地の中央に立つギャラガーを取り囲んで見下ろす。
「・・・ふふふ・・・」
ふいにそのギャラガーが声を出して笑った。
笑いつつ視線を足元へ下ろす。
「久しく感じなかった感覚だ・・・何十年ぶりだ、誰かを『目障りだ』などと思うのはな」
そして再び視線を上げてウィリアム達を見た時、ギャラガーは今まで表す事の無かった2つの感情を周囲に爆発的に放出した。
・・・それは、「怒り」と「憎悪」の感情だった。
「どこまでも邪魔をしてくれるわ! この痴れ者どもが!!!! 粉微塵にしてくれる・・・覚悟するがいい!!!!!!」
雷喝しただけで周囲の空気がビリビリと震えるようだった。
思わずその怒号を受けた数名が1歩下がる。
同時にギャラガーの全身から迸った魔力が無数の大蛇のようにのたうち荒れ狂い、周囲の建物を打ち破壊した。
「・・・行くぞ!!!!!!!」
ウィリアムの号令に全員がギャラガーに襲い掛かった。

無数の輝き、爆発音。
奥義に奥義が重なり、それをさらに極大呪文が追い打つ。
常人ならば何度身体が粉々に砕け散る事だろう。
だがその超破壊の只中にあってギャラガー・C・ロードリアスは持ちこたえる。
その身に無数の傷を受けながらも、凌ぎ耐え切る。
「・・・小賢しいわ!!!!!」
ぶん!とギャラガーが大きく腕を横に振るうと周囲に無数の爆発が巻き起こった。
真紅の爆炎が皆を吹き飛ばす。
「脆弱!!貧弱!!!惰弱!!!! ・・・『力』の無い意思など野良犬の餌にも劣る!!!!!!」
叫ぶギャラガーが周囲に無差別に光の矢を放った。
攻撃しながらも、先程の猛攻で受けた傷が再生を開始している。
(・・・あの超再生力を超える破壊をぶつけなくては・・・!!!!)
剣を構えるウィリアムが歯噛みした。
ギャラガーはマナを消費して負傷を再生している。
マナが尽きれば傷を癒す事はできなくなるのであろうが・・・ギャラガー・C・ロードリアスは『永劫存在』(エターナル)である。膨大な魔力を持つエターナルである上にいまだその未に2つの『魔王石』を宿して魔力を補強しているのだ。
その身が秘めるマナの総量はいまだ持ってまったく底が見えない。

ドン!と大地を蹴ってギャラガーが跳ぶ。
その両手に巨大な火球が生まれる。
「・・・消し炭になれ!!!!!」
上空からウィリアム達目掛けて大きくギャラガーが両手を突き出したその時。
・・・そのギャラガーの頭上に、それよりも高く跳んでいた人影があった。
「まーそー熱くなりなさんな社長サンよ」
「!!!!!!!」
ギャラガーが頭上を見た。
真上のレイガルドと視線がぶつかり合う。
レイガルドはまるで鉄塊の様な肉厚で長大な刃を持つ大剣を構えている。
刃渡りは2m近くあり、幅は30cmを超えているだろう。
厚みも10cm以上はある・・・黒い鉄の塊。
「・・・唸れ『呑龍』」
愛剣の銘を呼んだレイガルドが、その刃をギャラガーへ向け斜めに打ち下ろした。
攻撃の為に火球を作っていたギャラガーはシールドを展開するのが遅れた。
そしてレイガルドの一撃をまともに受けた。
ボッ!!!!と破裂音に似た音を響かせてギャラガーの右腕が千切れ飛ぶ。
その肩にあった『魔王石』を砕かれながら・・・。
そしてギャラガーは初めて両足ではない部分から地面へ帰還する事となった。

上空で右腕を失ったギャラガーは地面に横倒しになるように落下した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
悲鳴も怒号もない。
地に倒れ血溜まりを作りつつあるギャラガーは呆然としているようにも見える。
「・・・お前」
レイガルドにウィリアムが声をかける。
「んー? あー悪かったな見せ場とっちまってよ」
「そうじゃない・・・今までどこいた」
突然ビクンとレイガルドが肩を振るわせた。
「・・・ちっ、違うね!!!! 迷子とかになってたわけじゃないもんね!!!!!!」
「迷子になっていたのか・・・」
ウィリアムに向けてぐわーっとレイガルドが拳を振り上げる。
「違うっつってんだろうが!!! 泣かすぞ!!!!!」
むしろレイガルドが涙目になっている。
そのレイガルドに対し、ウィリアムは何かを返答しかけて、そして硬直した。
いきりたつレイガルドの肩越しに・・・左手を突いて立ち上がりかけているギャラガーと目が合ったのだ。
「私は・・・・」
決して大きな声では無かった。
「この世の・・・指導者・・・」
しかしその声は、はっきりと一同の耳に届いた。
まるで魂が凍えるような暗い迫力の篭った声だった。
「『帝王八耀滅光覇』」
そして、ギャラガーの魔術が発動し
その瞬間、ウィリアムの視界を輝く黄金色が埋め尽くした。

「・・・う・・・」
ウィリアムが呻く。
意識がゆっくりと覚醒していく。
(・・・私は・・・どうなった・・・。皆は・・・)
ギャラガーを中心に大爆発が起こり、黄金の炎が周囲に迸った所までは記憶している。
その残り火はいまだ周囲のあちこちで輝き、黒煙を上げている。
すぐ近くにレイガルドが倒れていた。
ぴくりとも動かない。その倒れる身体の下にはゆっくりと流れ出す血が広がっていっている。
必死に首を動かし、周囲を見る。
仲間達は誰一人として立っていなかった。
皆吹き飛んで倒れ、動かない。
「・・・う・・・お・・・」
恐怖でウィリアムの心臓が凍った。
自分が「失ってしまったのかもしれない」という恐怖だ。
ギャラガーは吹き飛んだ自らの右腕を拾い上げて肩口に押し付けていた。
傷口から白い煙が上がり、その腕は徐々に身体に元通りにくっつき始めているようだ。
(殺される・・・)
何とかしなければ。
必死にウィリアムは四肢に力を込めたが、まるで鉛の塊が詰まっているかのように手足はまったく言う事を聞いてはくれなかった。
(立ち上がらなければ・・・!!!)
歯を食いしばる。
その口の端から赤い血が滴る。
『・・・出番のようね』
ふいに、ウィリアムの耳に女性の声が聞こえた。
周りにその様な声を出すような人影は無い。
『無理やりってイヤだったけど、今だけはそうも言ってられないわ。・・・さあ、行くわよ『私のご主人様』(マイマスター)」
ざわっ、とウィリアムの髪の毛が波打った。
グレイの髪の毛が根元から漆黒に染まっていく。
群青の瞳は真紅に染まる。
ふ、とその口元に笑みが浮かんだ。
爽快感から来る笑いだった。
・・・この、全身から溢れる力はどうだ。
今なら何でもできそうな気がする。
ウィリアムはひょいと立ち上がると、そのまま無造作にギャラガーに向けて歩き始めた。
「・・・こうして見ると」
ふいに声をかけられてギャラガーが弾かれた様にウィリアムを見た。
「貴様・・・」
立ち上がってくる者がいる事は予想外だったのか、ギャラガーの表情は自身の驚愕を完全に隠せてはいなかった。
「お前も大して強そうには見えないな・・・総帥ギャラガー」
そう言ってウィリアムは嘲笑を浮かべてやや顎を上げてギャラガーを見下ろした。