第11話 炎の山-3


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巨大な炎を纏った拳が私を狙う。
あれはかわせない。ダメージ無くやり過ごすのは無理だろう。
そう思った瞬間、私は拳に向かっていった。ギリギリで拳を回避しつつその腕を掴む。
炎に焼かれる。熱さと痛みに気が遠くなる。だが怯まない。
「何!? 掴んだだと!!?」
そのまま背負い投げにする。受身を取れずにグライマーが岩肌に叩き付けられる。
「ぐはああっ!! まさか投げてくるとは! ・・・・しかぁし!!!」
瞬間、グライマーが爆ぜた。否、爆発的に炎を全身から噴き出した。
直撃する。吹き飛ばされ今度は私が岩肌に叩き付けられる。
何箇所か骨が折れたのがわかった。口の中に血の味が広がる。
「流石に終わりか! よくやったほうだが・・・・ヌ・・・・」
立ち上がる。立ち上がろうとする。既に自分が上を向いているのかどうかもよくわからない。
だが・・・・死ねない。私は帰らなくてはならない。
エリスの顔が思い浮かぶ。大事な預かりものの娘。彼女にはまだ教えてあげたい事が山ほどある。
町の皆の顔が思い浮かぶ。個性的で気のいい面々、彼らともまだまだ交流がしてみたい。
サイカワの顔が思い浮かぶ。キュウリ嫌いの優れた若き魔術師。彼の話からも学べる事は多いだろう。
カルタスの顔が思い浮かぶ。いや鼻しか思い浮かばなかった。あいつ鼻以外になんかあったっけ・・・・。
「いい戦士だなバーンハルト。心・技・体全て兼ね備え熱い魂を持っている!想像していた以上だったぞ。老いだけがただ残念だ!」
立ち上がろうとする私に、グライマーは攻撃してこなかった。
「センセー!」
ジンパチが駆けつけてきて私を支える。
「センセー・・・・・くそう・・・・」
ギリッ!とジンパチの奥歯が鳴った。
かつてない怒気をまとってジンパチがゆらりと立ち上がる。
「てめぇ・・・・・どうしてくれんだセンセーこんなにしちまいやがって・・・・俺がガキんちょに合わせる顔が無くなっちまったろうが!!!!」
裂帛の気合と共にジンパチがグライマーに突進した。
「・・・・そして、本物の仲間がいるようだな」
グライマーがふっと笑った。
その攻撃は今までで一番鋭く、そして速かった。・・・・しかし、真っ直ぐ過ぎた。
「向かってくる奴には手加減せんぞ!! それが礼儀だ!!!!」
紙一重で攻撃を回避されたジンパチを待ち受けていたのは、炎を纏った拳だった。
吹き飛ばされたジンパチが私の斜め後方に叩きつけられた。

「お前たちがシードラゴン島と呼んでいるこの島にはいくつもの『顔』がある。その内、俺様達にとってのこの島とは何なのかを聞かせてやろう」
満身創痍の我々を前にグライマーが語り始める。
「この島は『流刑地』だ、監獄なんだよ。俺様のように強すぎる力を持つあまり人を外れた魔人達を隔離して閉じ込めておくためのな」
過ぎ去った日々を思うかのようにグライマーの視線は遠くを見ていた。
「封印を受け、この島に飛ばされてきた時点で俺様達は呪いを受けている。ここ数百年でこの島に飛ばされてきた魔人は8人。いずれも産まれた場所も時代もバラバラの8人だ。その8人はそれぞれ島の中に陣地を与えられ、その中でしか本来の力を発揮できない。陣地から外へ出れば大幅に力を減じられる。・・・・そして、島から一定距離離れればその時点で塵になって消滅する」
グライマーがぎゅっと拳を握り締めた。その瞳には炎が揺らめいている。
「俺様は元々、南方ハルシャール王国の炎の神殿に仕える僧兵長だった。ある戦争があった時につい本気出しすぎちまってな。相手の国をそん時一緒にいた味方ごと完全に焼き払っちまったのよ。そんで聖地の連中に目つけられてここへ飛ばされちまった。大体300年くらい前の話だ。ローヴェラン・・・・キュウリの奴は元々ただのキュウリ農家だった。キュウリが世界一栄養の無い野菜だって言われて(※事実です)ブチキレやがってよ。それから半世紀かけて闇の魔術を極めて、ついには自らキュウリになって、魔物化させたキュウリを率いて世界を征服しようとした。そんでここへ送られてきた。今から150年くらい前にな」
何でキュウリに関わった魔術師は極端な生き方する奴が多いんだろう。
「間もなく祭りが始まる。・・・・・千年に一度の祭りだ。そこで俺様達の中で『ただ1人だけが』このクソッタレな呪われた島から開放されるんだ。ま、それは蛇足だったな。何も知らずに死んでいくのも心残りだろうし最後に語ってやったぜ。・・・・お前ら最高だったぞ。あばよ」
グライマーが頭上に浮かべた火球は今までで一番巨大な物だった。・・・・もう私にあれをかわすだけの体力はない。せめてジンパチの盾にならなくては。
そう思った時、周囲がグライマーの赤い炎ではない金色の炎に包まれた。
「何だと!! この炎は!!!」
グライマーが叫ぶ。金色に輝く炎に包まれたが熱さは感じない。
「フェニックス!! ・・・てめえ目覚めてたのか!!!」
『この者達はまだこの島にとって必要な者達だ。殺させはしない。・・・・・・フェニックスキック!!!』
バキッ!! 炎が眩しくて何が起こっているのか見えない。
「ぐはっ! てめえそれは頭突きだろうが!!!」『フェニックスパンチ!!!!』
ドガッ!!
「ぐあっ! それがキックだっつの!!!」『フェニックス賠償請求!!!』
ひょい。
「ああ!てめえ俺様のパンダさんストラップ!!! 返しやがれ!!!」
『・・・さらばだ!!』
金色の炎に包まれたまま、私とジンパチはふわりと宙に浮き上がった。と、そのまま高速で飛翔する。
眼下で何かグライマーが叫んでいたが、たちどころにその声は遠ざかりすぐに聞こえなくなった。

・・・・・・・・・・・・・。
目を覚ます。ここはどこだ・・・・どこかの洞窟の様だ。
「目を覚ましたか。ウィリアムよ」
ギャアアアアアアアアアアアアアア!!!!
突然眼前に奇怪な顔面が突き出されてきた。反射的にパンチしてしまう。
「ぐあ!何をする命の恩人もとい恩鳥に!!!」
うわあ目や鼻が取れて落ちてしまった! 無意識とはいえ何と酷い事を・・・・・。
「しかし私はフェニックス!! 何度でも炎の中より再生する生命力の象徴!!!」
言いながら自分で目鼻を拾ってぺたぺたと顔面に貼り付けている。
もう悪い夢のような光景です・・・・。
「さあ、すっかり元通りだ!!」
さっきと配置が微妙に違うぞ!!!
その時、近くに寝かされていたジンパチが目を覚ました。
「おお、あっちの男も目を覚ましたようだな。ここならもう安心だ」
だから何故アップで迫るんだ。寝起きの人に。
「ぐああああああああああ妖怪!!!!!!」
バキ!!!!
「ああっ! 何をする!!」
またフェニックスの顔面はバラバラになった。