第13話 四王国時代の終焉-4


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衣服を脱ぎ捨て、褌姿になった編み笠の男は背中に背負った鞘から、竜を象った大剣を抜き放った。
「我がドラゴンブレイドが悪を断つ。覚悟はいいか、エトワール・D・ロードリアスよ」
「サムライのカッコしといて得物がチョー洋モノなんですけど・・・」
褌の男が前へ出る。
「・・・さあ、かかってくるがいい!」
反対にエトワールはじりじりと後退する。
耳まで真っ赤になって、視線を左右へと逸らしながら。
「うう・・・直視できねー! 正視に耐えねー!! ・・・自分が何でこんな罰ゲームじみた目に遭ってんだか、うちには理解ができねー!!」
「戦いの中で相手から目を逸らすとは言語道断!!!」
褌の男が雷喝する。
「・・・・強盗に戸締りの無用心さを注意された気分だっつの!!」
「・・・もしや、彼はあの伝説の・・・」
フラフラとアイザックが立ち上がる。
「え、何? 知り合い? だったらお前との付き合いも考え直すけど・・・うち」
「いいえ面識はありませんよ。ただ僕の記憶に引っかかる話はありますね・・・」
アイザックが褌の男を見る。
「褌大名の異名を持つ男・・・大和最後の猛将と謳われた武人。曰く、齢10を数える頃には既に褌姿で巨大な熊を退治し、元服の折には褌姿で竜神を屈服させ剣を賜り・・・維新の折には幕軍最後の将として首都華京の主城鳳城の城門前にて迫り来る官軍2千を相手に褌姿で最後まで城門を護り通したと言われている男」
「なんかもー、ツッコむのもイヤだけど一応言っておくぞ。今のエピソード中に褌姿である必要性感じた箇所が一箇所もねえー!!!!」
エトワールの叫びは半ば悲鳴のようであった。
チャキ、と褌の男が構えたドラゴンブレイドの刃先をやや上げる。
「既にこの身に過去は意味が無く、我が剣は只未来を切り開くのみ。・・・その未来とは争いの無い穏やかな世界。子供らが望まぬ戦に親を奪われる事の無い世界」
「立派な理想なんだから服着て目指せよ・・・・」
げっそり呟きながら、エトワールが腰から太刀を抜き放った。

大剣を構えた男と太刀を構えたエトワールが互いにじりじりと距離を詰める。
エトワールも若干辛そうに眉間にしわを寄せてはいるものの、もう男から目を逸らすことはなかった。
男がちらりと脇を見る。
・・・倒れたセシルを見る。
今はまだ息がある。しかしこのまま放置する時間が続けばそれもどうなるかわからない。
「・・・行くぞ」
「きやがれ!!!!」
ダン!!と男が床を蹴って宙に舞った。
そのまま海老反りにエトワールへと襲いかかる。
「・・・・フライングボディプレス!!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア何でだよ!!! ドラブレ使えよ!!!!!」
慌ててエトワールが回避する。
かわされた事で男が床にしたたかに腹を打ち付けた。
「Oh! No!!!」
悶絶して男が転げ回る。
「・・・・くっ、臆したか!!」
「えーそりゃもう臆しました思いっ切りな!!! ・・・いたよスクール時代の水泳の授業ん時に飛び込みに失敗してお前みたいになる奴!!!」
ぜーぜーと荒い息を吐きつつ、胸に手を当てて必死に動悸を鎮めるエトワール。
「すばしっこく逃げ回る腹積もりであるなら、此方にも考えがある」
起き上がった男が両手を拝むように合わせた。
コォォォォォォ・・・とその口から鋭い呼気がもれるのと同時に、両手に「気」が集中する。
そして男は気合と共にその両手をエトワールに向けて突き出すと、両手の掌からエネルギー砲を放った。
「・・・・ドラブレキャノン!!!!!!!」
「ドラブレ関係ねえええ!!!!!!」
エトワールの絶叫は爆音と閃光の向こうに消えた。

煙が立ち込める。
エトワールの立っていた辺りの鋼鉄の床は抉り取られて地面が覗いている。
(・・・・直撃した筈、やったか・・・・?)
しかしすぐにその認識が甘い事を思い知る。
煙の向こうにエトワールの確かな気配がある。
(流石は覇王の血族・・・一筋縄ではいかんな)
「・・・!!!!!」
男が飛び退いた。
一瞬前まで自分の居た位置の景色が歪んで弾かれるように衝撃波が発生する。
「次元震・・・やはりお前は空間を歪ませて目標を粉砕する力を使うようだな」
「・・・そーゆー事。だからうちの攻撃は絶対に防げない」
煙の向こうからゆっくりとエトワールが姿を見せる。
「チラシみたいにグシャグシャにしてやるよ・・・『その場所ごと』な」
ニヤリとエトワールが笑う。
「・・・・生憎だが遠慮しておこう。どうやら時間のようだ」
「・・・何?」
エトワールが訝しげな表情をしたその時、周囲に轟音が響いて帝城全体が大きく揺れた。

グラグラと周囲が激しく揺れ、瓦礫が降り注いでくる。
「チッ!! 今度は何だよ!!!」
その瓦礫をかわしながらエトワールが叫ぶ。
吹き抜けの最上部、天井が破られてそこから何本もの太さが大人の腕程もあるワイヤーが降りて来た。
どのワイヤーにも先端には鋭いフックが付いている。
そしてそのワイヤーに掴まって降下してきたのは、黒いスーツ姿の男たちだった。
「共和国銃士隊だと!!!??」
エトワールが驚愕する。
「てめー蒸気オヤジ(大統領)の手下か!!!」
「そういうわけではない。今は目的が重なったので共闘しているがな」
褌の男が頭を横に振る。
その間に銃士隊隊士らが、セシルを回収して水槽にフックをかけた。
「・・・シリンダー確保しました!!!」
銃士隊の男の言葉に褌の男が頷いてワイヤーの内の1本に手をかけた。
「撤収だ!」
ワイヤーが巻き上げられていく。
「待ちやがれッッ!!!」
次元振動を放つべく、その手を頭上へとかざしたエトワールの瞳にシリンダー型の水槽が映った。
力の放出を躊躇う。
その間にワイヤーは射程の外へと巻き上げられていった。
「・・・くそ逃がしてたまるかよ!!!!」
叫んだエトワールは非常階段へと走った。

地上へと飛び出したエトワールとアイザックが頭上を見上げた。
そして、帝城の真上を覆っている威容に絶句する。
「機動戦艦エイブラハム!? 馬鹿な何故共和国最大の機動戦艦が!! 国境線を素通りしてきたというのか!!?」
「・・・・いや・・・・・」
エトワールが苦々しげな顔をして頭上の巨大戦艦を睨んだ。
『あの男』が・・・共和国大統領があの艦にいるのなら有り得る。
「通過してきたんじゃねーよ。・・・奴らあの船を『国境線を越えてから組み上げた』んだ」
蒸気エンジンさえあれば、周囲の物体を材料として吸い寄せて蒸気機械を組み上げてしまう異能『蒸気王』・・・それが共和国大統領ジェイムズ・アレスの能力。
恐らく数基の蒸気式エンジンを持って秘密裏に国境を越え、そこで戦艦を組んで一気に帝都まで飛んできたのであろう。
皮肉なことにエトワールらが麻痺させた帝都の防空設備がその接近を感知させなかったのだ。
『ハーッ! ハッハッハッハッハ!! すまないねレディ・エトワール!! 今日の所は我々の勝利とさせてもらおうか!! 女神様を一人回収する予定が二人になるとは計算外だが、それもまた良しさ!! ハーッハッハッハッハ!!!!』
そして上空の戦艦の外部スピーカーから、底抜けに明るいアレス大統領の哄笑が周囲に響き渡ったのだった。