第11話 炎の山-2


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不安はあったが、まずはなすべき事をキッチリやろう。
私はスケッチブックを取り出し周囲の探索やスケッチにかかる。
珍しい生き物や遺物がいくつか見つかり気分が高揚する。
最近変な用事ばっかで本業が疎かになりつつあるからなぁ。
やはりこれやってる時間が私は一番和むよ。
「お。センセー珍しい石像があるぜ」
石像、と聞いて嫌な予感が脳裏を掠める。
案の定ジンパチが目の前にしているのはいつもの危険な石像であった。
・・・・・? いや、同型ではあるが若干造形が異なるな・・・・。
別にアゴは長くない。全体的にあの石像よりはシルエットが丸っこくて、髪の毛は長髪?を模っているように見える。
「キレてないっすよ。俺をキレさせたら大したもんだ」
何か言ってるぞやっぱし。でもあのアゴの像と違って手は出してこないようだ。
石像は指(?)らしきものを立ててちっちっと左右に振っていた。
さらにそこからちょっと離れた場所には、やはり同型の石像が3体並んで立っていた。
3体それぞれ顔が違う。
「聞いてないよー」
やはり何か言っていた。
その時、離れた場所からばさばさと鳥の羽音がした。
む、何かいる。ひょっとして件の鶏だろうか。
早速音のした方へ行ってみることにする。
そこにいたのは鶏ではなかった。ペリカン・・・・?に似た鳥だ。しかし無駄に威厳があるなぁ・・・・。
「私はペリンカーン(※いい声)」
うお喋ったー! 名乗ったー!! しかもなんかいい声だ!!
「ガバメント・オブ・ザ・ピーポー、バイ・ザ・ピーポー、フォア・ザ・ピーポー(※いい声)」
なんか言ってる。だからなんだその魅惑のバリトンボイス!
火山地帯には珍しい生き物が一杯であった。
しかし件の鶏は見つからない。
まあ簡単に見つからないから伝説の食材なのか?

探索を続けて歩いている内に我々はこの一帯では最大と思われる火山の麓まで来ていた。
あちこちに溶岩溜まりがあり、熱気が凄まじい。
暑さでじりじりと体力を奪われる。
しかしまあ、ここも探さねばなるまい。
ジンパチを促して火山を登ろうとしたその時、突然あたりに大音量で声が響き渡った。
『がーっはっはっはっはっはっは!!! 待っていたぜウィリアム・バーンハルト!!! この俺様の支配する炎の楽園へようこそ!!!』
声がデカい! 思わずジンパチと顔を渋面を見合わせる。
『楽しみにしていたぞ!!! 嘆きの森を支配してたローヴェランの奴を殺ったって噂のお前がこの俺のエリアに足を踏み入れたって聞いてなぁ!!! がーっはっはっ(ゴェ)・・・・ゲホッ!! ゴホッ!!!』
むせとる。大声でがなりすぎてノドに引っかかったらしい。
しかし・・・・嘆きの森?ローヴェラン?知らんぞ人違いじゃないのか。
『知らんはずはないだろう!! お前らのいる町から西に行ったとこの森でキュウリぶっ殺したろうがお前は!!!』
西の森のキュウリ!カイザーキューカンバーか。
『ああ、最近はそう名乗ってたんだっけなぁアイツ。元々の名前はローヴェランだ』
元の名前とかあったんだな・・・・まあいずれにしても人違いだ。彼を倒したのは私ではない。
というかあの巻き添えまだ続いてたのか。本当に自分の運の悪さには呆れを通り越して笑いが出る。
『あん? そうなのか!! まあだがそんな事はどうでもいい!!!! 違おうが合ってようがキサマが強い事には変わりがないだろう!!!その隣の連れもかなりできるとみた!!!! 俺様にとって大事なのはその1点のみ!!!!』
どうでもいいのか! まったくラーメンの食材取りに来て面倒なのにからまれてしまった。
「おい、てめーさっきから黙って聞いてりゃあ見えねーとこからぎゃんぎゃん吠えやがって。ツラ見せて名乗りやがれ」
うんざりしたようにジンパチが言う。
『おおっとそうだな!!! これは失礼したな!!!』
眼前のマグマ溜まりが突然巨大な火柱を吹き上げた。
そしてその業火が収まった時、空中に1人の男が浮遊していた。
「俺様の名はグライマー!!『焼き尽くすもの』だ!!!!この炎神山とその一帯を支配している!!!」
姿を見せても声のデカい男だった。
何者なのだお前たちは。何が目的だ。魔女ナイアールもお前の仲間か。
「ほほぉあの女にもう会っていたか!! 仲間か・・・・その表現はある意味で合っていてある意味では真逆だ。我々8人は絶望と痛みを共有した世界でただ8人の同胞でもあり、同時に決して相容れない不倶戴天の敵同士でもある」
どういう意味だ!
「今言えるのはここまでだなバーンハルト!! これ以上聞き出したければ力ずくで俺様の口を割らせてみるがいい!!」
ぐぐっとグライマーが拳を握った。その拳に赤い炎が灯る。
「我らがこうなるのは運命だ!宿命なのだ!! ・・・・んーいい言葉だ宿命!!!燃えてきたわ!!!」
外見だけでなく内面も暑苦しい男だ。しかし、感じる威圧感はカイザーキューカンバーの時より確実に大きい。
「センセーあいつやる気だ。応戦するしかねーっスよ」
ジンパチが言う。もっともだ、みすみすやられるわけにはいかない。
長剣を抜き放つ。使い慣れたはずのその剣は今日は酷く重く感じられた。
既にここまでに暑さでかなり消耗してしまっている。
まったく歳はとりたくないものだ。
戦いが始まった。
先手必勝か。ジンパチが一気に踏み込んで槍を突き出す。その神速の一撃は正確にグライマーの心臓を狙っていた。
決まった。・・・と、そう思った。
しかし
「いい一撃だ!! 熱いぞ!! 褒めてやろう!!!」
グライマーは槍の穂先を掴んで攻撃を止めた。
「ふはははは!! たぎるぞ!! もっと魂を燃やしてかかってくるがいい!!!」
掴んだ槍を振るってジンパチを放り投げる。続いてグライマーの周囲に巨大な火球がいくつも浮かび上がった。
「まずは小手調べだ。この程度で死んでくれるなよ!!!」
声と共に一斉に火球が飛来する。
爆発音がいくつも響いて、周囲は炎に包まれた。
爆風と高熱に耐え、巻き上げられた土埃を目くらましに奴の背後へと回る。
奴は全身を炎で覆っている。その炎が攻撃を鈍らせる。私やジンパチのような近接型戦士には相性の悪い相手だった。
背面から襲い掛かった私の一撃も炎の為切っ先が鈍った。狙いがそれグライマーの肩口をかすめる。
「!!・・・・炎を恐れずによく来た! だが・・・」
視界がかすむ。私はぐらりとよろめいた。
「歳には勝てんか、バーンハルト。惜しいぞもっと若い頃のお前と戦ってみたかった」
グライマーが迫る。その右の拳が巨大な炎に包まれる。
「この一撃で燃え尽きるがいい!!!!」
その拳が炎の鉄槌と化して私に襲い掛かった。