第9話 陣八捕物帖-2


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・・・・共和国銃士隊だぁ?
思わず俺はシグナルと名乗った男の顔をマジマジと見つめてしまった。
んでその銃士サマがあんなとこに何の用事があったんだよ。
「・・・人を探していた。情報が得られないかと思っただけだ。ターゲットは日の当たらない場所の住人だからな」
誰を探してた?
「それは君達には関係のないことだ。あの事件とも無関係だ」
あのなぁ、それを判断すんのはこっちなんだよ。
かわいくねーヤローだな。
まあ国家機密って奴なのか?
だがここじゃそういう外交特権みてーのは通らねえぞ。俺ぁてめーが納得するまでは銃士だろうが大統領だろうがトコトン追い込むぜ。
机に片手を付いて真上から野郎をジロリと睨み付けてやる。
「・・・失礼な男ですね。マスターは無関係だと言っているでしょう」
突然その場に女の声が響いた。
長い髪の女が突然その場に浮かび上がる。
なんだぁ!?
「・・・ローレライ」
シグナルが嗜める様に口を開く。
「しかし、マスター。先程からの、この妙な頭の男の失礼さには我慢ができかねます」
!!? てめぇこの漢のヘアスタイルを妙な頭だと!?
机を挟んでローレライと呼ばれた女と睨み合う。
・・・何なんだこの女は。どっから出しやがった。
「ローレライは僕と契約している守護神獣だ。この剣に宿っている」
腰に下げた長剣を指して言うシグナル。
話には聞いた事はあるが、本当にこの世にはそんなもんがいたのか・・・。
あーしかし何だ。そんなもんが連れてるんじゃ返り血がどうこうで殺し自体には無関係かもしれんと思ったのも早計か?
「・・・とにかく」
俺とローレライの睨み合いを見ていたシグナルがうんざりした様に言う。
「僕の人探しについては個人的な事だし話したくない。だがそれ以外の事なら答えるから何でも聞け」

実際の所、シグナルの話からはさしたる収穫は無かった。
争う音を聞いてシグナルが現場へ顔を出した時には、もうあの有様だったらしい。
話の合間に酒場にシンクレアの姐さんが顔を出した。
「・・・やあ、今回の担当は君か」
姐さんはたまにこうして検死の仕事を手伝ってくれてる。アンカー病院の先生方と持ち回りだ。
「・・・・お」
姐さんがシグナルに気付いて足を止めた。
「意外な所で会うものだね」
「・・・・ご無沙汰、してます」
ばつが悪そうにシグナルが頭を下げる。
何だ知り合いなのか。
まあ二人とも半獣人だしな。姐さんと同じツェンレンの出なのかやっぱ。
ただそれ以上二人は言葉を交わす事は無く、姐さんはポンポンとシグナルの肩を叩いただけだった。
んで、姐さん。ガイシャはどうでした?
「複数の傷があるね。刃物によるものと、凄い力で引き千切られている傷、鋭い爪の痕だ」
爪や引き千切られてる? 魔獣かなんかか?
そんで刃物か・・・。ホシは複数かね・・・。
「さてね・・・それを調べるのは君達にお任せするよ。ただ、『刃物のみ』でやられた奴はいないね。被害者4人には刃物の傷もその他の傷も全員両方ある」
ふむ・・・。
後はガイシャの身元か。まあそっちはそう苦労せずわかるだろ。
ありゃ間違いなくこの辺にいくつかある「ファミリー」に属する構成員・・・俗に言うヤクザもんだ。
ファミリーだって構成員が4人もいなくなってりゃすぐわかるだろ。

・・・俺のその読みは当たっていた。間も無く部下の一人が被害者の身元を割り出してきた。
渡された資料にざっと目を通す。
アッシュ・ファミリーの連中か・・・。
アッシュのファミリーはこのアンカーを根城にしてる組ん中じゃ中堅だ。構成員は20人そこそこ。
・・・アッシュんとこは最近どっかとモメてたのか?
俺の問いに部下は首を横に振ると、最近そういう話は特になかったようです、と答えた。
まあ行きずりって可能性もあらぁな。
虱潰しにしてくしかねえか。
俺は立ち上がってシグナルを見た。
お疲れさん。後日また話聞くかもしれんが今日んとこは帰ってもらっていいぜ。そこに俺の部下がいるから今使ってる宿言ってってくれ。
そうシグナルに告げると酒場を出る。
さーてどうすっかな・・・。まずはガイシャ4人の内の誰かが個人的に恨みかってたとかそういう話がねーかも当たってみねーとな・・・・。
それにホシはちょっとタダモンじゃなさそうだ。
捕物で殺り合う可能性もある。ま、そん時はこの『蜻蛉切』が物言うだけだけどな・・・。
布袋に覆われた槍を見て思う。
・・・・・って。
振り返る。シグナルがいる。
帰っていいぞつったろうが?
シグナルは俺の顔を見てしばらく何事か考えていたようだが、やがて思い切ったように口を開いた。
「・・・あの人は、仲間なのか?お前たちの」
あの人? ああ、シンクレア姐か。彼女は俺らの同僚ってわけじゃないが、この町で薬局を開いててな。医術にも明るい人だからこうしてたまに手伝いを頼んでる。
それがどうかしたのか?
「僕はまだ容疑者なんだろう?」
まあそうなるな。
・・・正直なとこ、俺個人としちゃこいつが事件に関わってる可能性はほぼ無いだろうと思ってるが、まあそれは今は余計な事だ。口には出さん。
「あの人は僕のアカデミー時代の先輩だ。お世話になった人だ。あの人に・・・そんな風に見られるのは辛い。僕が捜査に手を貸してやる。だからさっさと解決しろ」
一方的にそう宣言すると、シグナルは俺と並んで歩き出した。
・・・・オイ、何を勝手おっしゃってやがんだこのボーヤは。遊びじゃねーんだ・・・・いででででで!!!!!
突然後ろから髪をすげー力で引っ張られて俺はのけぞった。
「マスターがこうおっしゃっているんです。謹んでお受けしなさい」
俺の髪の毛を掴んだままローレライが言った。
くそしょうがねえ・・・追い払って銃士なんぞに勝手やられても面倒だ・・・。
目ぇ届くとこにいるんなら好きにさせておくか・・・・。
あー勝手にしやがれ。そんかし邪魔するようならそっちの罪でブチ込むからそのつもりでいやがれよ!
これも屋根の上でサボって昼寝してた報いなのかよ。
嘆息して俺はシグナルを連れて11番通りを歩き出した。