第4話 Northern Tiger-3


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カミュは上着を脱ぎ捨てると無造作にその場に投げ捨てた。
そしてカタナを肩に担ぐように、もう片方の手で拳を作って構えを取っている。
なんかデタラメなバトルスタイルだね・・・・。
イブキとアヤメさんと対峙しているエリックの構えは拳闘、ルノーは居合いの構えだ。
そちらの2人の構えは様になってて隙がない。
オババと向かい合っているシグナルはポケットに両手を入れたまま、無造作に立っているだけだ。
・・・・ってゆか、オババどうしてこんなとこに??
尋ねる私にオババは飛び出さんばかりに目をクワッと見開いて
「タタリじゃあぁあああああああ」
と魂が凍えそうな声で言った。
怖いなぁ。そして答えになってない。

「オラオラオラ!! 余所見してんじゃねーよ!!!」
ぐわっとカミュが無造作に突っ込んできて殴りかかってくる。
かわす私の目前をゴウと風をまいて拳が通り過ぎる。
構え同様デタラメなパンチだった。
だけど食らえば痛いじゃ済まない威力なのがわかる。
・・・・シロートみたいなパンチだなぁ・・・・。
思わず私は素直に呟いていた。
「おおよ。俺は一切剣術も格闘術も習ったり学んだりした事はねえからな。全部我流!ケンカ殺法ってやつよ」
カミュがニヤリと笑う。
「だがよ、その辺キッチリ学んで来てるあいつらより、俺の方がつえーぞ」
そしてエリックとルノーの方を顎でしゃくった。
「・・・・チッ、馬鹿のくせにやたら強いとかムカツク」
ルノーが舌打ちして言う。
エリックは黙って苦笑した。
「・・・・ンじゃちっと俺の本気でヤベェとこ見とくか?」
カミュの口元から笑いが消えた。
握り締めた拳を顔の前に持ってくると、ふーっと大きく呼気を吐く。
・・・・・空気が震える。
私は咄嗟に両手を交差してガードした。
「秘技・『鉄拳』」
ブン!!!!と上段から振り降ろし気味にカミュが拳を叩き付けてきた。
・・・!!!!!
まずい!!!
これは受けちゃダメだ。反射的にそう思って後方へ飛ぶ。
カミュの拳はガードの体勢のままの私の手をわずかにかすめて足元に炸裂した。
グワッ!!!!と物凄い衝撃波が発生する。地面が震え、周囲の建物の窓ガラスが割れる。
足元は抉られてクレーターの様になってる。かすられただけの両手は痺れて感覚が無くなってる。
でも怯んでられない。
私は攻撃直後の無防備なカミュの胸部にハイキックを叩き込んだ。
「・・・・・『鉄壁』」
ガキン!!!と丸で鋼鉄の塊を蹴ったみたいな衝撃が足に伝わった。
「俺はつえーぞ。ついでに硬てーぞ」
渾身の力を込めた私の蹴りを真正面から受けて、口元のタバコを落とす事すらなく、カミュは不敵に笑った。

「・・・・ハァッ!!!」
アヤメがルノーに斬りかかった。
「『空蝉』」
フッとルノーの姿が消え、アヤメの斬撃は空を切る。
「!!??」
驚愕に目を見開くアヤメ。
「・・・・こっちだお嬢さん」
声はアヤメの斜め後ろから。
同時に鋭い斬撃。
キィン!!!と背後からのルノーの一撃を辛うじてアヤメが構えたカタナで受ける。
「・・・・ほー、良く受けた」
いつもの抑揚の無い声でルノーがそう言った。
その後方ではエリックとイブキが交戦していた。
エリックの戦い方は構えの通りの拳闘スタイルで、刻み打ちされる右のジャブがじりじりとイブキを追い詰めていた。
イブキは先程からまったく攻撃してない。
何故ただ一方的に攻撃を受けているのか・・・・イブキの顔に汗が伝っている。
「・・・何もさせてもらえないだろ?」
その様子を見てルノーが言った。
「勇吹さん!!」
アヤメが叫ぶ。
「・・・くっ・・・コイツ・・・・攻撃の出を全部潰してくる!!!」
イブキの返答には焦りが滲んでいた。
『まるで次の動作がわかっているかのように』・・・攻撃を出す前にそこを撃たれる。
「エリックには見えてるんだよ。次に相手がどう動くのか。・・・・エリックの持つ異能は『2秒先の未来を視る力』、ホークアイだ」
!!!!!
イブキとアヤメが驚愕に声を失った。
「・・・そして、私の特技はさっきの『空蝉』と・・・・」
ルノーが腰を落として、納刀されたままの刀の柄に手をやる。
「・・・・・・!!!」
殺気を感じたアヤメが大きく後方へ跳んで距離を取った。
「・・・この、『かまいたち』だ」
開かれた距離を気にせずに、ルノーは神速で刀を鞘走らせた。

ぶつぶつと呪文を唱えながらオババが杖の先をビッっとシグナルに向けた。
どろろん、と音がしたシグナルを黒い煙の様な物が覆う。
煙は一瞬髑髏を空中に描くと溶けて消えていった。
・・・ちょっとオババ! 何したの!!?
あんまり派手な事しちゃうと後々面倒なんだけど!!!
「・・・何、気にするでないわ。ほんの牽制の一撃じゃ!」
オババが私を見て不気味に笑う。
「全身が紫色に変色してドス黒い泡を吹いて狂死する呪いじゃて・・・ヒッヒッヒッヒ」
・・・・牽制の殺傷力が高すぎるってば!!!!!
む・・・・。
「老人をいたぶる趣味はないんだが」
しかしシグナルはまったく気にした様子も無く、ぱっぱっと塵を払うように肩を手で叩くと1歩こちらへ向けて踏み出してくる。
「・・・・・・何じゃと、何故効かん!!」
オババがバッと懐から藁人形を取り出す。
「喰らえィ!!!闇狂呪怨殺!!!」
そして手にしたその藁人形に木槌で五寸釘を打ち込んだ。
しかしやはりシグナルに変化はない。
やれやれ、と言う様にため息をついただけだった。
「・・・・・馬鹿な・・・・このババの呪いが・・・・」
バッと後ろを振り向くとゲン爺のお弟子さん達に向けて藁人形にコーン!と釘を打った。
途端にお弟子さんの1人が倒れてぐあああああああああと悲鳴を上げながら胸をかきむしっている。
「・・・・・・ちゃんと効いておるわ」
試すなよ!!!!!!
シグナルがまた1歩前に出る。
「聞こえないのか・・・・お前たちには、この歌声が」
・・・・・・!?
言われて耳を澄ませる。
・・・・・・・・・・・・・。
確かに戦闘の音や喧騒に混じって、微かな歌声が聞こえる。
シグナルの腰に下げられた魔剣から歌声は聞こえていた。
「ソングオブローレライ・・・・この歌声の中では全ての魔術効果は霧散する。僕にはどんな魔術も呪術も効かない」
そしてゆっくりその魔剣ローレライを抜き放つ。
「もう一度言う。老人をいたぶる趣味はない。大人しくしていろ」
「・・・・・おのれェェェ! チャージが足りんわ!!! キサマら!!誰ぞ寿命をよこせい!!!!!」
オババが叫ぶと悲鳴を上げてお弟子さん達が逃げ惑う。
ああああもうどっちが襲撃者かわかんない!!!
ダッ、と走り出したシグナルがオババに剣の切っ先を向ける。
瞬間、剣先から白い光の矢が放たれてオババを貫いた。
「・・・・・か・・・ヒッ・・・・」
オババがどさっとその場に倒れる。
「痺れさせただけだ。そのうち回復する」
静かにそう言うと、シグナルは再び剣を鞘へ納めた。

ルノーが再びかまいたちの構えを取った。
咄嗟にアヤメが街灯を盾にする。
「・・・・まだ、私のかまいたちの正体がわかっていないようだな」
そして放たれる斬撃。
その一撃は何故か街灯をまったく傷つける事なくその背後のアヤメを切り裂いた。
「・・・・・うあッ!!!」
鮮血を飛ばしてアヤメがその場に倒れた。
そして私もイブキも対峙した相手にまったく有効なダメージを与えられないままに満身創痍に近い状態にされていた。
「思ったより歯応えがねぇな。そろそろ終わりにするぜ」
そしてカミュが再び鉄拳の構えを取った。

「・・・・そのへんにしてあげてくれる?」

!!!!
女性の声がして、銃士達は一斉にそちらを見た。
キリコが工房から出てくる。
「・・・・・柳生霧呼!!」
エリックが息を飲んだ。
「・・・・ちっ、めんどくせー奴が・・・・」
カミュが眉をひそめる。
そして渋面のままキリコに詰め寄る。
「オイどういう事だ。どうしててめーがここにいる。んで口挟んできやがる」
顎に刀の切っ先を突き付けられてもまったく動じる無くキリコが口元に笑みを形作った。
「彼女たちは今の私のビジネスパートナーなの。だからこれ以上やるなら私が相手をするけど?」
ほぉ、とカミュの目がギラリと危険な輝きを放った。
「そいつぁ面白ぇな。俺らを脅してるつもりか?」
凄むカミュに嘆息するキリコ。
「・・・・威勢が良いのは結構だけど、私と戦うつもりならそんな棒切れじゃなくてもっとちゃんとした武器を準備しなさいな」
「何ぃ? ・・・・・げっ!!」
カミュが目を見開いた。
彼が握っていた刀はいつの間にかごつごつとしたただの石の棒に変わっていた。
慌てて手を離すカミュ。
石の棒は地面にゴトリと音を立てて落ちると2つに折れた。
そしてキリコは横目でちらちとシグナルを見る。
「・・・耳障りよ、その歌をやめなさい」
そうキリコが言うと魔剣の歌声が止まった。
「!!!!!!」
シグナルが驚愕する。
そしてビキッ!と音を立ててシグナルのネクタイが石化した。
シグナルは咄嗟にそれを殴って砕くと、ばっとはたいて散らした。
「・・・・流石は『メデューサ』の異名を持つ女性ですね・・・・」
エリックの頬を冷や汗が伝った。
そしてカミュの方を向く。
「・・・リーダー、自重して下さい。彼女と交戦するつもりなら本国の許可がいりますよ」
「・・・わかってる。今日は引き上げだ」
忌々しそうに舌打ちすると、カミュが投げ捨てていた上着を拾って肩に担いだ。
「これで済むと思うなよ」
最後にそう言って鋭くキリコを睨みつける。
キリコは笑ってそれを見送った。

・・・・助けられちゃったね。
キリコに助け起こされながら私が言う。
「今だけね」
そう言うとキリコは銃士たちが去っていった通りを見た。
「恐らく、2,3日中に彼らまた仕掛けてくるわよ。今度は私と戦う覚悟と準備をきちんとした上でね」
彼ならそうするはず、と言う。
・・・彼? ・・・カミュ?
キリコが首を横に振る。
「プレジデントよ」