第18話 竜の国から来た刺客-7


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甲板上を炎が走る。
シトリンが手にした炎の魔剣レーヴァテインから放たれた炎だった。
標的を焼き斬る灼熱の刃は容赦無くヒビキに襲い掛かる。
「私のクリムゾンウィングは最も魔力に長けた飛竜。リンクによって得た膨大な魔力で制御するこのレーヴァテインの炎に死角はない!」
幾筋もの赤い光が降り注ぐ中をヒビキが走り抜ける。
「・・・・凄まじい力だな。リンクというのは」
ヒビキが足を止めて浮遊するシトリンを見上げた。
「だが、私にもリンクがあってな」
「・・・?」
シトリンが訝しげにヒビキを見た。
ヒビキがトントンと親指で自分の胸を指した。
「ここにいるのだ。サボってばかりのどうしようもない上司が、不出来だが大事な部下たちが・・・・・そして最近ではお人好しの学者先生とその周りに集った者たちがな」
「おもしろい! ならその繋がりごとあなたを私の炎が断つ!!!」
シトリンが剣に大きな炎を纏わせた。
そして赤と銀の輝きは船上で激しくぶつかり合った。

おおおおおおおおおお、と筋肉同士の力比べが続く。
その力は拮抗していた。
「ぬうううう!! お主らには竜より力を引き出す秘術があると聞いたぁ!! 何故にそれを使わん!!」
「フヌヌヌヌ!! 知れた事を!! 筋肉の勝負に竜の力を持ち出すは邪道!!!」
言いながらゴルドーが背を弓なりに大きく身体を仰け反らせた。
テッセイもまったく同じ姿勢を取る。
「ハアッ!!!」
「でやあ!!!」
ゴーン!!!!!と凄まじい轟音を響かせて互いの額が真正面からぶつかりあった。
そのままの姿勢でしばし2人が静止する。
「・・・・見事だ。ガモウテッセイ・・・・だがワシも更に筋肉に磨きをかけるぞ・・・・その時にはまた勝負だ・・・・」
「見事な筋肉、そして見事な魂であった。誇り高き帝国の戦士ゴルドーよ」
がくっと昏倒したゴルドーが両膝をついてうなだれたまま動かなくなった。
テッセイは割れた眉間から流れる血を拳で拭うとふーっと大きく息を吐いた。

自身の駆る飛竜シルバーウィンドとリンクしたカイリはその超人的な脚力でひぢりを翻弄していた。
縦横無尽に走り跳びながら繰り出される攻撃は徐々にひぢりに刻まれる傷の数を増やしていた。
「僕のシルバーはワイバーンの中でも1番バネが凄いんだ!!僕の動きも見えないでしょ!!」
そして遂に、追い詰められたひぢりが片膝をついた。
「終わりだね・・・・楽しかったよ!!!」
突き出された二本の剣がひぢりを串刺しにする。
「!?」
目を見開いたカイリの目に映ったのは、自身の剣の先でバサバサと風にたなびいているよさいさんだった。
「マージで痛いんですけどー・・・・・」
中身は・・・・ハッとカイリが上を向く。
!!!???
そこには大きく上空へ跳んだ大人の姿になったひぢりがいた。
「キミはまだ若い、これからも技と心を磨きなさい。きっといい戦士になれるわ」
おしおきピクニックが赤く輝く。
「でも今はさようなら。・・・・・メテオハンマー」
真上からハンマーを構えて赤い流星と化したひぢりがカイリを直撃する。
鋼鉄製の甲板の床板をぶち抜いて2人が下層に落下した。
その穴からひゅっとひぢりが飛び出してくる。
続いて震える手が穴の縁を掴み、カイリが這い出してきた。
「・・・・まだ、僕は・・・負けて・・・ない・・・」
瞳の色が本来の色に戻っている。ダメージが大きくてリンク状態を維持できなくなったのだ。
「続きを・・・勝負・・・・?・・・・」
ひぢりはカイリを見ていなかった。彼女は私とルクシオンの戦いを見ていた。
そしてそれは彼女だけではなかった。
いつの間にか周囲の戦いは全て止まっており、皆同様に無言で私たちの戦いを見守っていた。

剣を振るう。
ほぼラグ無しに発生した14の剣閃が同時にルクシオンに襲い掛かる。
8撃目までを彼女は槍で受け、そして捌いた。
9撃目からを食らった。
巧みに身体をひねって装甲のある個所に被弾し、ダメージを最小限に抑える。
やるな、やはり彼女の強さは本物だ。
長い戦いの人生だが、ここまでやれる戦士にはほとんど出会ったことがない。
大振りの突きを繰り出す、彼女がそれを槍で捌く。
でもそれは誘いだ。本命はこの次の攻撃。
次いで出した左の拳をかわす事ができずに、彼女は身体の真正面でそれを受ける事になった。
胸部装甲にヒビを入れながら彼女が後方に吹き飛ぶ。
私はそれを追わなかった。左の拳は本気だった。おそらくショックで一時的に呼吸困難になり決着がつくはず・・・・だが。
「・・・・・・はぁっ・・・はぁっ・・・・!」
荒い息を吐きながらも彼女が体勢を立て直す。
「まだです・・・行きます、バーンハルト!!」
・・・・来い!!ルクシオン!!
真正面からの彼女の全力の突きを私は構えた神剣で受け止めた。

「おっちゃん・・・ルクが・・・ルクが負けちゃうよ・・・・」
ヨロヨロとカイリがスレイダーに歩み寄る。
「そーだなぁ、ちょっとムリだなありゃな」
「・・・・・でも、ルク楽しそう・・・・」
シトリンが言う。ボロボロで傷だらけの彼女を見て。
そうだな、とスレイダーがうなずいた。
「うちの国じゃルクとあそこまでやれる奴いないもんなぁ。陛下と組み手する時ぁルクが遠慮して絶対本気でやらないしな」
「・・・・いつか僕が、あのくらい強くなってやる!」
そんなカイリの頭を鷲掴みにしたスレイダーががしゃがしゃと乱暴に撫でた。
「おーおーがんばれよルーキー期待してるんだからよ。早くデタラメに強くなってオジさん楽さしてくれよ。・・・・だけどま、とりあえず今は・・・・」
「あの人で決まりね」
まるで眩しい物を見るかのように目を細めてシトリンが言った。
ガサガサとスレイダーが懐から4つ折りにしてある紙を出す。
「まさか、ホントにこれを、しかも来てこんなすぐに使う事になるたーねぇ・・・・」
苦笑する。その瞳には優しさと寂しさが一瞬微かに浮かんで、そしてすぐに消えた。

・・・・そろそろ終わりにしよう。
傷だらけの彼女を見て私はそう思った。
私は繰り出されたルクシオンの突きを横に弾いてかわすと、縦一文字に剣を振るった。
剣閃は彼女のヘッドギアを2つに割り、甲板に落とした。
本気だったら頭を断ち割られていた事は悟っただろう。
彼女ががっくりと両膝をついた。
「・・・・私の・・・負けです・・・」
私は剣を鞘に納めた。
そこへスレイダーがゆっくり近づいてくる。
「・・・・将軍・・・・・」
ルクシオンが顔を上げてスレイダーを見る。
「ドラグーン、ルクシオン・・・・・お前はクビだ。解雇な」
その一言は衝撃となって船上を駆け巡ったのだった。