第10話 多層都市パシュティリカ-1


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新しく同行者にエストニア森林王国から来たペガサスナイトのマチルダを加えた我々は砂海の旅を終えて船を降りた。
ここからは徒歩で神都を目指す事になる。
とはいえ、ベルナデットに言わせればここからならもう神都はすぐらしい。
「1時間も歩かないうちに見えてくるわよ」
との事だ。
彼女のその言葉の通りに、30分程度歩いた頃であろうか、『神都』が見えてき・・・た・・・・・・。
「なななななんんじゃあああああ!!!!!」
ジュウベイが頭のデカさに見合った大声で驚きを表現した。
「おお~・・・・・」
マチルダも目を丸くしてぽん、と手を合わせた。
「ここが神都パシュティリカ・・・別名『多層都市』よ」
ベルナデットが言う。
彼女の言う通り、それは地上部とその上に3層に渡って市街部の重なった4層構造の都市だった。
上層に行くほど市街部は狭くなっており、上へ向けて円錐の形状を成している。
中央部を巨大な一本の白い柱が通って各層を支えていた。
「こんな街の上に街を重ねたら日当たりが悪くならんのか・・・・」
ジュウベイの問いに人差し指を立ててベルナデットが解説する。
「各層の裏側には日光を吸収して光り輝く輝水晶が配置されているの。日の出と共に外周から日光を吸収して輝いてそれが内側へと連鎖していく仕組みね」
なるほどなぁ・・・・。
かく言う私も目の前に広がる光景に圧倒されて半ば惚けてしまっていた。
一番小さい4層ですらアンカーの半分くらいある。
全部の市街部を足した広さを考えるとちょっと途方も無い広さだ。
「私の家は4層にあるわ。行きましょう」
「どうやって上まで登るのですか?」
ルクが問う。
「柱にエレベーターがあるわ。それを使うの」
そう答えてベルナデットはウィンクして見せた。

エレベーター・・・そう聞いて私は自分のオフィスにあるような物を想像していたが、実際はそれより遥かに大規模なものだった。
昇降場は駅になっており、時刻表があるようだ。
エレベーターは巨大で中に座席が配置してあり、一度に何十人も収容できる造りになっていた。
どれどれ・・・? なるほど、1層登り切るのには20分少々かかるのか。
「カティーナちゃんは乗っていいんですかねぇ?」
マチルダが自分のペガサスを見て言う。
「申請が必要になるわね。それは私がやってくるわ」
そう言ってベルナデットが係の所へ行った。
間も無く職員と思しき男性を連れて戻ってくる。
「こちらの幻獣ですね。一時的に封印ケイジに入って貰う事になりますが大丈夫ですよ。こちらの謎の顔面生命体はどうしますか?」
「ぬおわあああああ!!!! 拙者は普通の人間だ!!!!!!」
ジュウベイが絶叫した。

ガコン、とエレベーターが大きく揺れたかと思うと緩やかに上昇を開始した。
「おお!すげー!! 街がどんどん小さくなっていくわい!!」
ジュウベイは窓に張り付いて大喜びしている。
それで、我々はこれからどうするんだ?
ベルナデットに尋ねる。
「4層目・・・王宮区にはこのパーラドゥア皇国を守護する4人の将軍『神護天将』がいるの。それぞれ白、黒、紅、蒼の4色を冠した将軍なんだけど、その内の白の将軍フェルテナージュは防衛や治療を主とする『護法』のエキスパートよ。彼女ならきっとウィルにかけられた妖術を解く術を知っているはず」
おお、それは頼もしい。
もう一人称「僕」を強要される生活は沢山だ!!
『・・・・なるほどね!! 話は聞かせて貰ったよ!!!』
ふいにその場に男の声が響き渡ると一陣の風が吹いた。
な、何だ何だ。
風が収まるとその場には青い鎧を身に纏った若い男が立っていた。
「フッ・・・皆さん。ようこそ・・・・」
男はポーズをつけながら喋るとすっと右手を前髪に添えた。
「神都パシュティリカへ!」
そして優雅に前髪をフワッとかきあげた。
思わず全員でポカーンとしてしまう。
「あー・・・彼はこういう人間だからもうそれは諦めて頂戴。紹介するわ。さっき話に出た神護天将の1人、蒼のアレイオンよ」
半眼でベルナデットが紹介してくれる。
「フッ、つれない対応だねベル。・・・・おかえり、君がまた無事にこの街へ戻って来たことを心の底から嬉しく思うよ」
そう言ってアレイオンはベルナデットに右手を差し出した。
ベルがその手を取って握手する。
「しかし・・・」
アレイオンがベルナデットの胸元に目をやる。
「流石に『永劫存在』・・・4年経っても相変らずささやかというか慎ましいというか・・・まぁそこが君のいい所なのだけどね!」
はっはっはと明るい笑い声を上げるアレイオン。
ベルナデットは、あーハイハイ、と乾いた反応だ。
「・・・・なぁ、あやつ・・・胸見て喋っとらんか・・・・」
ジュウベイが小声で言ってきた。
いや、初対面の相手をそんな風に決め付けたら失礼だろう。
そして彼は私にも爽やかな笑顔を浮かべて右手を差し出してきた。
「アレイオン・クォールです。皆さんの事はベルからの手紙で伺っていますよ。宜しく、ウィリアム先生。この度は災難でしたね・・・・私を始めとする神都の者達が力になります。きっと元の身体に戻れますよ」
こ、これはどうも・・・恐縮です・・・。
そして彼は私の次にジュウベイにも同様に爽やかに挨拶をして握手を交わした。
次いでルクとも握手を交わす。
「ようこそ神都へ、ルクシオンさん。貴方のような素晴らしい女性と知り合えた事は至上の幸福です」
その視線はやっぱりルクの胸元にあった。
「・・・・・・・なぁ、あやつ・・・・胸・・・・・」
・・・・や、だからそういう決め付けは・・・・。
最後にマチルダに気付いたアレイオンがおや?と動きを止めた。
「ベル、こちらの女性は?」
「その子は砂海で同行者に加わったのよ。マチルダ・レン・アリューゼよ」
なるほど、砂海に入る前に出した手紙だからマチルダの事は伝わってなかったか。
アレイオンがマチルダとも握手を交わす。
と、やっぱり胸元に目をやったかと思うと突然大粒の涙をボロボロとこぼした。
「・・・・一生、付いていきます・・・・」
そう言ってマチルダの手を握ったまま深々と頭を下げるアレイオン。
「・・・・・・・・・・・・・・・なぁ・・・・・・・・・」
・・・・・・・・ああ、胸見て喋ってるな・・・・・・・・。

そして間も無く、我々を乗せたエレベーターは最上層の昇降場へ到着した。
プシューッと音を立てて扉が開く。
「さ、着いたわ。4層『皇宮区』」
降りるベルナデットに続いて我々もエレベーターを出る。
そこは絶景だった。
見渡す限り白亜の大豪邸ばかりが連なっており、市街の中央部には巨柱の先端・・・王宮がある。
「その後、神都に変わりは無いの?」
ベルナデットが問うとアレイオンが表情を曇らせた。
「・・・いや、残念ながら平穏無事というわけではないよ。ここ数年、『教団』の動きが活発でね。市街部に『ガ・シア』の出現が2度程あった。対応に苦慮しているよ。街の人々は『狂皇』復活が近いのではないかと怯えているね」
狂皇・・・?
「狂皇ラシュオーンはこのパーラドゥア皇国の第二代神皇だった男よ。闇に堕ちて悪鬼に成り果てたけどね。教団って言うのは『黒の教団』と言ってラシュオーンを神と崇める狂信者達の集団よ」
ベルナデットが説明してくれる。
「最も彼は別の名前でも呼ばれているけどね・・・・闇色の魔人ゼロ・・・・最強の『刺し貫くもの』」