第7話 砂海を越えて-4


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アミダの結果で私はマチルダと相部屋になってしまった。
ルクがしきりに反対していたが、マチルダは「え~大丈夫ですよ~。ウィリアム君まだ子供ですし~」と笑っていた。
面倒なので私は本当は自分がどうだとかそういう話はしていない。
そもそも改めて考えてみれば、私はどういった存在だ。
現在の見た目は10歳そこそこですが、本当は外見30歳前後の70台です?
なんだそれ!! 我ながらチョーめんどくせえ!!!!
まったくこのシードラゴン島へ来てからの自分の変わり様と言えばほとんど悪い冗談の域だ。
今回のこれで終わってくれと祈る他ないな・・・・。

夕食を終え、風呂にも入って我々は各自の部屋で休む事になった。
なんかここもえらく和風の部屋だった。畳敷きでちゃぶ台が置いてある。
ま、誰と一緒だろうと寝てしまえば関係ない。
さっさと布団に入ろう。
等と思ったら、マチルダが何かを持ってきた。
・・・・水を張った洗面器だ。
「ちょっと仲間に連絡を入れますね~。心配してると思うから~」
水面に手を翳し、マチルダが何か唱える。
精霊語だ・・・意味まではわからないが・・・。
すると水面にチャポンと音を立てて、小さな人型の水精が姿を現した。
『やぁ、よかった連絡が取れて。今どこですか?』
水精から響くのは男性の声だ。
「ええっとですねぇ・・・今私砂の海にいて~・・・ってあら? 王様? どうして? 私魂樹ちゃんに連絡入れたのに」
『魂樹は今ちょっと手が込んでいるのでね。代わりに私が出ました』
・・・・おい、王ってまさか。
「そうじゃなくて。どうしてエストニアにいるはずの王様が?」
『それは私がこっそりとくっついて来たからですよ』
はっはっは、と明るい笑い声を上げている王。
うお、やっぱり妖精王ジュピターだ・・・・。
「また長老様たちに怒られますよ~」
『はっはっは、国にいても色々怒られていますからね。変わりませんよ。それで、砂の海とは?』
マチルダが浮遊大陸の説明をする。
『なるほど・・・飛んでいったっきり戻ってこないと思えば、そんな所まで行っていたとは・・・・』
「それでたまたまウィリアム君と一緒になって~。今は彼のPTと行動を共にしているんです」
自分の名前が出たので何となく畏まってしまう。
『!! ウィリアム・バーンハルト氏?』
そうです、とマチルダが返事をする。
すると水精はしばし黙り込んでしまった。
「王様?」
とマチルダが首をかしげる。
『これも運命なのでしょうね・・・。マチルダ、君はしばらく彼と一緒にいて、力になってあげなさい』
「え? あ、はい、わかりました~」
何だ何だ何だ。
『我々と合流できたら私が君と交代します。私は当分彼の所で面倒見てもらう気で来ましたから』
何言ってんですか四王。帰って国の仕事して下さい。
「皆はもうアンカーの町に着いているんですよね?」
『いいえ、残念ながらまだ我々は船上です。この船は現在航路を外れ、むしろ島から遠ざかりつつあります』
え~、とマチルダが緊迫感のない驚き方をする。
『魂樹とジュデッカの2人が手が離せないのもその為です。現在彼女達は交戦中です。船が強襲を受けましてね』
ずいぶん穏やかで無い話になってきた。
『銃士隊の2人でした。「地獄のイカサマ師」JOKERと「奈落のギャンブラー」アビス能収。・・・まずは彼らを退けないと、我々は島に上陸する事はできなそうです』
「あら~大変ですね~。頑張って下さいね~」
大変そうに聞こえん。
『ではちょっと私も加勢してきますよ。船ごとJOKER氏の作った「怪奇空間」にスッポリ取り込まれてしまってね・・・』
そう言うと水精はチャポンと水中に消え、精霊による通信は終了した。

「じゃあ寝ましょうか」
うわあっさりしてるな。お仲間が大変なのでは?
「まあ、大丈夫ですよ。魂樹ちゃん強いから」
そう笑顔で言う。
仲間を信頼しているのか、単に危機感が欠如しまくってるだけなのか・・・。
まあ彼女がそう言っている以上、私にそれ以上言うことは無い。
明日も砂海越えだし、寝て体力を蓄えておくとしよう。
そして二人それぞれ布団に入って明かりを落とすと・・・スパーン!と勢い良く部屋の戸が開け放たれた。
「何ともう布団をかぶっておるのか! 夜はこれからだぞ!!」
マスク・ザ・バーバリアンだ・・・・。
バーバリアンは手にロウソクを持っている。
そのロウソクをちゃぶ台に立てる。
暗い部屋でロウソクの明かりだけがゆらゆらと揺れて、なんとも不気味な雰囲気だ。
「旅館の夜と言えば怪談話と相場が決まっておる」
どかっと胡坐をかくバーバリアン。
え、今から語る気なの。
「えー! ちょっと私そういうのダメなんです~」
いきなりマチルダがガバッと私に抱き付いてきた。
ちょ・・・息できん! 胸大きいなこの娘!!!
「まあまあ聞きなさい。いいかね。その昔、この砂海を臨むある小さな村があった・・・・」
おどろおどろしい声色を作って語り出すバーバリアン。
そして私は窒息寸前だ。
「村には仲睦まじい若夫婦がおってのう。夫は砂海で漁師をして生計を立てておった。ところがある時、流行り病で妻が命を落としてしまったのじゃ・・・」
ぐ、ぐるじい・・・・。
「夫は大層嘆き悲しんで砂海に船を漕ぎ出すと、そのまま戻って来ることはなかった・・・・。それからというもの、月の綺麗な夜には村の家々の戸に夫を探す女の影が映り、嘆き悲しむ声が聞こえたという・・・。そう、ちょうどこんな月の綺麗な夜にはのう・・・」
そう言ってバーバリアンはフーッとロウソクを吹き消した。
部屋は暗闇となり、月明かりが障子に髪の長い女の影を映し出した。
「・・・・っっきゃああああああああああっっ!!!!!!!!!」
絶叫を上げたマチルダが拳を力一杯突き出した。
ドゴッッ!!!!!!!
「・・・・・バンゲリングベイ!!!!!!」
拳の直撃を顔面で受けたバーバリアンが吹き飛んで障子を突き破り女の影に激突する。
「・・・・不器用ですいません!!!!」
そして障子の外にいたサンド高クラーケンを巻き込んで二人で夜空に消えていった。
吹き飛んだ後の廊下にはサンド高クラーケンがかぶっていたと思われる長髪のウィッグが落ちていた。

「まったくもうもうもう。本当に怖かったんですよー」
翌朝、まだマチルダはぷりぷり怒っていた。
結局バーバリアン達は戻ってこなかった。
しょうがないので黙って出発する事にする。
「あら、旅館の夜に怪談話なんて気が効いてるじゃない。雰囲気を楽しめばよかったのに」
船上でパリパリとポテトチップをかじりながらベルナデットが言う。
「何事かと思いました。・・・・私は、その・・・ウィリアムがまさかとか・・・いえ信じていたんですけど・・・・」
ルクが何事かぶつぶつと呟いている。
砂船が静かに走り出す。
さあ、神都を目指して再び出発だ。
「・・・・・カティーナちゃん・・・・すっごおおおおく寝相悪かったんですけど・・・・・・」
心地よい風を受けながら、顔面を青痣と蹄の跡だらけにしたジュウベイがそうボヤいたのだった。

~探検家ウィリアム・バーンハルトの手記より~