第17話 砂漠の女王と熱砂の迷宮-4


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砂漠の地下のミスリル採掘場を占拠していたのはあの悪徳商人シャハルであった。
ヤツは人魚の一件で捕らえられて西方の大陸の官憲に引き渡されたはずなのだが・・・・。
注意深く物陰から奴らを伺う。
魔導機械兵は10体程か・・・・。
そしてとりまきが5人・・・・・?
シャハルの隣にあからさまに他の連中と雰囲気の違う銀髪に黒衣の大男がいる。
大剣を背負った男だ。強いなあいつ、雰囲気でわかる。
魔導機械兵と他のとりまきだけならどうにかできると思うが、あの男がどう出るかで大分状況が変わりそうだ。
さて、どうしたものか・・・・・等と思っていたら
ドガーン!!!!と奴らの中央で突然大爆発が起こった。
何だ!採掘に発破でも仕掛けたのか!!!
・・・・と、どうやらそういうわけでもないらしい、とりまきが大慌てで走り回り、魔導機械兵は数体吹き飛んで倒れている。
「くそっ!誰だ!!あの国の奴らか!!!」
シャハルが叫んでいる。いや、あの女王との話の感じからすればそれはないと思うのだが・・・・。
「探しましたよ、シャハル・マドル」
そして煙の向こうから姿を現したのは・・・・。
!! サイカワだ!! 何故彼がここに?
「何者だキサマぁ!!」
シャハルが叫んだ。ヤツはサイカワに面識がないらしい。
「私は斉川芳裕。シャハル、あなたが護送船を手下に襲撃させて逃げたと聞いてから行方を追っていました。あなたの悪事は私が裁く、覚悟してください」
そう言って握り締めたサイカワの拳がバチッと雷を帯びた。
「何だと!魔導師風情がふざけおって・・・・キサマがワシの何の罪を裁くというのだ!!」
シャハルがサイカワを指差して怒鳴った。
「シャハル、あなたはキュウリを商材として扱っていますね?」
「え? ・・・・ああ、うん・・・・キュウリ売ってるけど・・・・」
思わず毒気を抜かれたシャハルは素になった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そのまま両者の間に沈黙が舞い降りる。
「・・・・・・・それでだよ」
「えええええええええええええええええええええええええええええええ!!??」
いつものベジタブルテロだった。
シャハルはビックリしている。まあ普通はそうだろうなぁ。耐性が出来てしまっていて何とも思わなくなっている自分に複雑な気分になる。
まあ今回は相手も同情はできん。悪事を働くからこういう一般常識からは逸脱した存在に目をつけられてからまれるのだ。
「おのれ!しかし耐魔コーティングを施してある魔導機械兵に魔術は効かんぞ!!返り討ちにしてくれるわ!!」
シャハルの合図で魔導機械兵達がサイカワを取り囲む。
確かに先ほど吹き飛んだ数機もダメージはなさそうだ。
む、これは援護した方がいいか・・・・。
物陰から出て行こうとすると、唐突にサイカワが魔導機械兵を殴りつけた。
ドガッ!!と激しい炸裂音がしてボディを凹ませた魔導機械兵が吹き飛ぶ。
「魔術が効かないのなら、直接叩きのめすだけのことです」
また地獄の筋肉痛モードか・・・・。後が大変だというのにあっさりあのモードに入るなぁ。思い切りがいいというかなんというか・・・。
サイカワが素手で機械兵達を打ちのめしていく。
改めて思うが、実際彼は強い。被弾すれば大ダメージを受けるというのに数体の魔導機械兵相手に一方的に攻撃を続けている。
「・・・く、くそ・・・バケモノめ・・・・おい手を貸してくれ!!」
シャハルが隣の黒衣の男に声をかけた。
男が「ん?」と腕を組んだままシャハルの方を見る。
「フン、何か勘違いしているようだが、俺は視察に来ただけだ。貴様の用心棒じゃない」
「ぐ・・・それは、そうなのだが・・・」
シャハルが詰まる。その間にもまた一機、機械兵がサイカワにバラバラにされる。
「止むを得んこの場は撤退だ」
いかん、シャハルが逃げる。サイカワは戦闘に夢中で気付いていない。
逃がせば面倒な事になるだろう。
私はシャハルの前に立ち塞がった。
「今度は誰だ!!」
シャハルが私を見て叫んだ。まあ面識はあるのだがあの時はこっちは老人だったしな・・・・。
名乗ろうとしたその時、
「ウィリアム・バーンハルトだ」
そう、黒衣の男が言った。
私を知っているのか・・・・というか近くで見てわかったが、この男鮫のマークの腕章をしている。シャークか。
「あの時のジジイか!若返ったという話は本当だったのか!!」
シャークと手を組んだのか、シャハル。
「それを判断する為に視察に来たのだがな。この程度のトラブルでこうまで追い込まれるようでは到底俺たちのビジネスパートナーは務まらんな」
男がそう言って冷たく笑った。シャハルは青ざめている。
「同じ町で暮らしていながらこうして顔を合わせるのは初めてだなバーンハルト。俺の名はトーガ。シャークの第一戦闘部隊長だ」
噂の3幹部の1人か・・・・。
「つまらん仕事だと思って来てみたが、存外捨てたものでもない。まさかここでお前と会えるとはな」
トーガと名乗った男が背の大剣を抜いた。その刀身は男の衣装と同じ漆黒だった。
「町で騒ぎを起こすことは固く禁じられていてな。だがここならばよかろう。剣帝の誉れ高きお前と俺の剣技と我が剣シュバルツシルト、どちらが優れているのか勝負といこう」
トーガが構える。殺意で空気が震える。戦いは避けられそうにない。私も長剣を抜いて対峙する。
「フフ、流石だな、静かだが練られた気を放つ・・・・・行くぞ!!!!」
まるで暴風の様に地を蹴ってトーガが襲い掛かってきた。
乱撃を受け流しつつ、反撃の機会を伺う。しかし・・・・。
何度目かの奴の攻撃を受け流した時、耐え切れずに私の長剣が折れた。
む・・・極力剣にダメージが残らないように戦っていたつもりだったが、あの黒剣、思ったより強力な魔剣らしい。
戦場において武器が無くなる事は決してありえない事ではない。剣が無くなった時の戦術へと頭を切り替える。
だが、トーガはそれ以上攻撃してくる事無く、舌打ちを一つすると剣を収めた。
「興が削がれたわ。武器は戦場で己の命を預けるもの。どれだけの物を用意できるかもそいつの実力の内だぞバーンハルト。次に会う時までにもう少しマシな剣を準備しておけ」
また会おう、とそう言い残してトーガは背を向けて去っていった。
ごろつき共のまとめ役にしては武人然とした男だな。
シャハルは・・・・逃がしたか。
流石にあの男の相手をしながら逃亡を防ぐのは無理だった。
人魚!!とか叫んだら発狂して足止めになったかもしれないな。試せばよかった。
そうこうしている内に向こうも終ったらしい。
サイカワが私を見つけて駆け寄ってくる。
「先生! やはり先生もキュウリへの怒りでこの場へいらっしゃったのですね!」
や、違うんだけど・・・・もういいや説明するの面倒だし・・・・。
「お連れのお嬢さん達が地下遺跡の方へ行かれたようなので先生もそちらだと思っていましたよ」
!? エリス達に会ったのか!
「ええ、ここへ来る途中に遺跡がありまして、そのすぐ近くで会いました」
遺跡か・・・・2人は中へ入ってしまったのだろうか?どうやら行ってみるしかなさそうだ。
私はサイカワに案内を頼んだのだった。