第4話 Northern Tiger-8


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前を行く後姿になんとなく既視感を感じた。
あれは・・・えーと・・・。

ピンと来る。
ローレライ?
と、思わず私は声をかけていた。
「こんにちは、DD」
彼女が振り返って挨拶する。
良く晴れた昼下がり。
あの工房前の死闘からは3日が過ぎていた。

鎧姿じゃないからすぐわからなかったよ。
ローレライは今日は武装じゃない普段着だった。
「はい。鎧は街中では無用に人目を引きますので」
淀みなく彼女が返事をする。
シグナルはいないんだ?
周りを見回す。彼女は1人だ。
「マスターは別行動です」
ローレライは単独の行動が可能なんだね。
「はい。私は完全に実体化していますので、単独での活動が可能です」
彼女は花束を手にしていた。
お見舞いね。カミュのかな。
ローレライが肯く。
カミュはあの戦いの後、すぐに病院に担ぎ込まれて治療を受けた。
回復力も桁外れみたいで、当日は全治半年以上とか診察されたみたいだけど、現在は数日中にも退院できるとかいう有様らしい。
シグナルの指示なの?
花束を見て私が言う。
「いいえ。私の判断です。マスターが心身ともに良好な状態である為に、職場での円滑な人間関係が必要であると判断しました」
そっか・・・・色々考えてるんだね。
「はい。マスターのお役に立つ事が私の全てです」
きっぱりと言い切る彼女の瞳はとても澄んでいた。
私はそれを素直に綺麗だと思った。
彼女の有り様を美しいと思った。

工房に着いて、作業を見学する。
船はフレームが完成し、そのシルエットを現しつつあった。
「流石の手際ね。ここに話を持ちかけて正解だったわ」
同じ様に作業を見つめるキリコも満足そうだ。
「・・・・フン、気に食わんね!!」
しかし同じく見学中のアレス大統領は不機嫌だった。
彼は拳を握って力説する。
「確かに! 技術や作業スピードには目を見張るものがある。・・・・だが!!! 何故!!! 今このご時世に最新機を魔道式エンジンで組むのだ!!!!」
うんうんと後ろのバニーガールの皆が相槌を打つ。
「魔道機関は何を消費して稼動している!? 言ってみたまえ!!」
ビシッ!!と指をさされる。
・・・・え、えーと・・・マナクリスタル・・・・・。
「イエス!! その通りだ!! ではマナクリスタルの原料とは何だね!!?」
・・・・魔力石。
「では魔力石の世界における現状を述べてみたまえ!!」
確か世界中で枯渇しかかってるんだよね。採掘され過ぎちゃって・・・・。
「ザッツライッ!!! つまりだ!! 極近い将来魔道式動力の時代は終わりを告げる! その後世界中で愛用されるようになるのが我らが蒸気式動力だよ!!」
きゃーっと歓声を上げたバニーさん達が拍手したりクラッカーを鳴らしたりしてる。
「私はこの事を20年も前から世界に訴え続け、大統領就任からは国を挙げて蒸気機関の研究開発に力を注いできた。大勢の愚かな連中は私の訴えに耳を貸そうとしなかったがね。ルーナ帝國などがその良い例さ!! 見たまえかの国を。国家のほとんどの動力が今だに魔道機関であり、愚かしい事この上無いのが今をもってまだ民よりの税を使ってその研究開発を続けている事だ!」
すぱーっと葉巻の煙を吹く大統領。
「いずれ世界は蒸気の時代を迎えるだろう!! その時世界のリーダーシップを取るのが我が共和国なのだよ!! ハーッ!ハッハッハッハッハッハ!!!」
と、大統領は胸を張って哄笑したのだった。
そっかー・・・。
まあ、でも正直私に動力に対してのそこまでの考えはない。
その時で一番手に入りやすい楽なものを使うんだろうなー。
なんて言ったら怒られそうだから黙ってたけど。

それにしても・・・・。
工房からの帰り道、私は頭を悩ませていた。
定員は5名。
私とえりりんとキリコと・・・・・さて後2人誰を連れて行く?
シンラは留守のオフィスを頼んであるから連れて行けない。
後飛んだ後のノルコちゃんの事を誰かにお願いしておかなきゃ。
それはヒビキとスレイダーのおっさんがいいかな?
なんて思ってたらどっからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「尋ね人です!! もう10日も行方不明なんです!! どんな些細な情報でも構いません!!!お願いします!!!!」
あ、鼻っちだ・・・・。
街角でカルタスがビラを撒いてる。
足元に落ちていたそれを1枚拾い上げる。
思ったとおりそこにはウィル達の写真が載ってた。
・・・・って・・・・ジュウベイだけ下顎の半分しか写ってないじゃん・・・・。なんで同じ尺で載せるのこれじゃ誰かわかんないよ。
・・・・・いや逆に誰かわかる? まあ彼を知ってる人が見ればね・・・・。
でも知ってたら写真はいらないワケで、どっちみち役に立たないね。
「お願いします!! 探してるんです!! 心配なんです・・・・ウヒヒヒヒヒヒヒ・・・・」
何で笑ってんの・・・・・とか思ったらむせび泣いてる。
・・・・・しゃーないな、1人は決まりだね。
連れてってやるか・・・てゆか居場所わかったの伝えそびれてたよゴメンよ。
ホラ、と泣いてる鼻っちにティッシュを渡す。
「・・・あ、DDざん・・・・ありがどうございばず・・・・」
ビーッ!!とカルタスが鼻をかむ。
ついでにブアックシュ!!!と盛大にクシャミする。
突風は通りの向かいの「皆で知ろうシードラゴン島の遺物展」会場に搬入途中だった業者を直撃した。
リフトを使って搬入中だった何か大きな塊を覆っていたカバーがボワッっと飛んでいってしまう。
・・・・何だありゃ・・・・アゴ長い石像だなぁ・・・・。
「どうしたんだい? 何か大きな音が聞こえたが・・・」
そこへ建物からエンリケが出てきた。
業者が、代表危ない!!と叫ぶ。
「・・・・・・しゃーんなろ!!!!!!!!!」
バゴス!!!!!!!!!! と石像にぶん殴られたエンリケは石畳を盛大に砕いて地面にめり込んだ。

「DD!! 勝負だ!!! 今日こそは僕が勝つ!!!!」
鼻っちを連れてオフィスへ戻る帰り道。
また、やかましいのが私に絡んできた。
例によってカイリだ。
忙しいんだってば、もう。しょうがないなぁ・・・・。
えーい、ただのキーック・・・・。
ドボッ!!!と私のつま先がカイリの鳩尾に突き刺さる。
ぎゃーっとお腹を押さえて悶絶したカイリが転げ回る。
・・・・・・・・・・ん。
カイリ、立て。
「・・・・・・え? だって・・・・痛い・・・苦しい・・・・」
いいから立て。
しぶしぶカイリが立ち上がる。
まだ額に脂汗を浮かべて前傾姿勢だけど。
キミのその無駄な元気、私が買ってやる。
空の上に行ってもらうよ。
「・・・・え? ・・・・え??」
目を白黒させるカイリ。
私の後ろにいる鼻っちに「どういうこと?」と視線で問いかける。
その視線を受けて、カルタスがゼスチャーで「スルメイカ タベスギ ヨクナイ」とカイリに伝えた。
コミュニケーションが成立してない。
「え、どっか行けって、僕店の手伝いとかあって・・・・」
すっと目を細めた。
カイリの前髪が一房ビキッと凍りついた。
よく聞こえなかった。もう一度どうぞ。
「どこへでも行きます!!!!!!! ご一緒させてください!!!!!!!」
夕暮れのアンカーの町に、そうカイリが叫ぶ声が響き渡った。