第18話 竜の国から来た刺客-4


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

思った通り、ワイルド・ギースでは私の呼びかけに応じる者はいなかった。
それなりの報酬額を掲示したのだが、やはりそういう問題では無いのだろう。
予想通りの結果とはいえ少々落胆する。
その帰り道に入った蕎麦屋で、私はうぐいす隊の南雲響と葛城陣八と会った。
彼らの耳にも当然今回の話は入っていた。陣八に促されて私は細かく状況を説明したのだった。

「くっそぉキタネー真似しやがって帝国軍の奴ら! 副長俺らもセンセーに手ぇ貸しましょうぜ!」
ジンパチが息巻いている。
無言で私の話に聞き入っていたヒビキは静かにお茶を口にすると湯飲みを机に戻した。
「・・・・残念ですが、今回は私たちは先生のお手伝いをする事はできません」
そしてはっきりとそう言ったのだった。
え・・・・とジンパチの動きが止まってしまう。私はその返事は予想ができていた。
「な、何でです副長、こんなデタラメ黙って見過ごすんですか」
「私たちはこの町の決まりの上に存在しています。その役目は町の中でその決まりがきちんと守られているか確認して守られていないようであれば捕え、必要であれば罰する事」
ジンパチが浮かしかけた腰を再び席に戻した。
「話を聞く限りでは今回の件は町の外での他国同士の諍い。奪われた剣は先生の物だという話は信じていますが、彼らはそれを先生の所から持ち出したわけではありません。まして先生のお国の方から被害届けの類が出されているわけでもありません。先生のお話だけを公人として動く理由にはできません」
まったくその通りだった。アンカーの町の警察機関であるうぐいす隊の人間が町の外での他国のいざこざに顔を出したとあれば大問題だ。
細かく言えば先の公園の一件があるのだが、あれは話せば仕掛けたひぢりにも累が及ぶ、なので私はその事は口にしなかった。
気持ちだけありがたく貰っておこう、と私はジンパチの肩を叩いて言った。
「・・・・センセー、すまねぇ・・・」
ジンパチがうな垂れる。
さて、私もいつまでものんびりしているわけにはいかん。会計を済ませてヒビキ達と店を出る。
互いに挨拶をして別れる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
去り際に、ヒビキがそっと私に寄り添って耳元で小さく囁いた。
・・・・・!!・・・・・・・・・・・・
驚いて彼女を見る。一瞬だけ優しく微笑んだ彼女はすぐにいつもの無表情に戻った。
「それでは先生、失礼します」
そう言って頭を下げると2人は立ち去っていった。

オフィスに戻ると、ひぢりがDDとアイスクリームを食べていた。
「・・・・・アイス、おいしい」
「おいしいねー」
DDはひぢりが気に入ったらしく、しきりにおやつをすすめたり撫で回したりしていた。
「・・・・お気楽ね、あなた達・・・・」
エリスは緊張した面持ちで武具の手入れをしていた。
カルタスは何をしているかと思えば、やはりこちらも真剣な面持ちでメモを見ている。
・・・・何のメモだろう? 後ろからそっと覗いて見る。
パラパラの振り付けが絵入りで説明してあった・・・・。私は見なかった事にした。
そしてこの場にはもう一人、なんだか顔色がもう青いを通り越して土気色になっちゃってる男がいた。
ハイパーココナッツ伊東である。
「わらわの代わりにスーパーパイナップル佐竹を行かせるのじゃ、せいぜいコキ使うがよいぞ」
そう女王が言って置いていったのだ。
私は気持ちだけでいいと伊東を帰そうとしたのだが、戻れば戻ったで酷い目にあうらしく伊東は同行を志願した。
もう半泣きだった。可哀想に。
私はエリスとカルタスとハイパーココナッツ伊東を呼ぶと、彼らに作戦を指示した。
3人に与えた任務は重要なものだった。
・・・・恐らくはそれが今回の勝敗を分ける事になるはずだ。

その夜、私はまた昔の夢を見た。
そこは戦場だった。しかしもう戦いは終わっていた。
私は青い空を見上げて仰向けに大地に横たわっていた。
疲労と負傷でもう指先一つ満足に動かせない有様だった。
ほんの数分前まである男と死闘を演じていたのだ。
「・・・・よォ、バカ」
なんだ、アホ。
近くで同じように転がって空を見ていた男が私に声をかけてくる。
「世の中は広いな。まさか俺とこうまでガチのバトルでタメはれる奴がいるとはよぉ」
こっちの台詞だ。
最強だのと担ぎ上げられて少しいい気になってたな。まさか世界にはこんな怪物がいたとは・・・・。
その男と戦ったのはこれが3度目だった。1度目と2度目は決着がつかないままお互い撤退する事になった。
3度目の今回は双方が立ち上がれなくなるまで戦った。
それでも、決着はつかなかった。
「・・・・国ってのも、面倒くせーな」
ん?
「お前とはダチになれた気がする」
だったら皇帝なんかやめちまえアホ。したらダチでも何でもなってやるぜ。
「できるわけねーだろ、バカ!お前こそうちの国来いこのやろー!」
くっ・・・できるはずねーなそりゃ。
ぷっ、と男が吹き出した。そして明るく笑い声を上げた。つられて私も笑っていた。
そんな私たちの頭上をトンビが飛んでいた。
「・・・・鳥はいいよな。自由でよ」
男が震える腕を空へと伸ばした。そしてぎゅっと握り締める。まるで見えない何かを掴み取るかのように。
しかし当然その手には何も掴めてはいなかった。
「生まれ変わるなら俺は鳥がいいな。あんな風に自由に空を飛んでやるよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
私は何も言わなかった。そんな2人の上を爽やかな風が吹き抜けていった。
もうすぐ夏が来る、そんな日の事だった。
そんな日の、夢だった。

そして翌朝、我々は港から帝国軍の待つ戦艦へと小船で出発した。
メンバーは私とエリスとDD、ひぢりにトーガにカルタスにハイパーココナッツ伊東の7人だった。
この7人で待ち受けるルクシオンと雨月海里率いる6人の竜騎士と帝国の一般兵達を相手にしなくてはならない。
というより私はエリスとカルタスと伊東は戦闘メンバーに数えていなかった。エリスは強い、しかしまだ竜騎士の相手ができるレベルではないのは明白だ。
ひぢりはカイリと戦うつもりだ。彼はひぢりを信じて任せよう。
残るルクシオンと6人の竜騎士達を私とDDとトーガの3人で相手しなくては・・・・。
そうトーガに告げた時、彼は短くわかった、とだけ返事をした。
相当厳しい戦いになるが・・・・。
「関係ない。相手を見てしり込みするくらいなら初めからしゃしゃり出てきはしない。キサマらがモタモタしているようなら俺が全員殺る。それだけだ」
そう言ってトーガは凄みのある笑みを見せた。
「ヘッヘッヘ・・・・殺せよ・・・殺せばいいだろぉ・・・・・神様はきっと俺が嫌いなんだ・・・そうに決まってる・・・」
伊東はもう壊れ始めていた。
カルタスは両方の鼻の穴にヤドカリが住み着いてしまったとオロオロしており、しばらくすると呼吸困難で倒れた。
「おじさま! 見えたわ!!」
その時エリスが叫んだ。
前方に黒い威容が現れる。奴らの艦だ。
「おじさま・・・私がんばるから」
エリスが言う。
「久しぶりの本気ー。しかも海の上とか私のホームグラウンドだし、燃えるよね」
DDが明るく言う。しかしその目は鋭い輝きを放っていた。
「・・・・戻ったら、ケーキ」
「『イチゴの所は私に切り分けてね!!』だってさ!!」
ひぢりがおしおきピクニックを構える。
「フン、噂の帝国のドラゴンナイトの力、見せてもらおうか」
腕を組んだままのトーガが鼻を鳴らす。
「・・・・ひぃぃぃ・・・ろ、労災・・・労災は降りるんだろうか・・・・」
伊東はがくがくと震えている。カルタスは倒れて白目をむいたままだ。
「・・・・不器用ですいません・・・・」
あああああああああああああああああああああなんかいる!!!!いつのまにかいる!!!!!
「・・・・あ、あいのり海の上編」
うるさいよ高クラーケン。