最終話 ぼくらの故郷-3


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迫り来る巨大な腕をかわす。
ズズン!!とタイタンが一瞬前まで私が立っていた場所の地面を砕いて抉った。
チャンスか! その腕を神剣で斬りつけた。
ギィン!!と金属音を響かせて私の攻撃が弾かれる。
装甲の表面に薄く傷を付けただけだ。
『無駄だ無駄だ!! 厚さ20cmのバイメタル製の装甲だぞ!! キサマの剣など通るものか!!』
く、威力の大きい技をぶつけないとダメだ・・・しかし溜めに必要な時間をどう稼ぐ・・・・・。

アンカー地下遺跡第三層、シャーク本部。
腿を毒矢で射抜かれたカイリを見てヴァーミリオンが冷笑を浮かべる。
「終わりですね。あなた達、死体を片付けておきなさい」
周囲の男達にそう命じるヴァーミリオン。
「フン、そんな必要ないよ。この毒を飛ばせ!シルバーッ!!」
矢を腿から引き抜いたカイリがリンク状態になった。同時に傷口からジュッと音を立てて黒い煙が上がる。
「何だと!!? バカな!!!」
ヴァーミリオンが驚愕に目を見開く。
「竜騎士に毒が効くとか思ってるなんてね。バカにしてら!」
おのれ!と叫んでヴァーミリオンが立て続けに矢を放った。この男の手にしているボウガンは左手のみで扱えるように、一矢射るごとに巻上げと次矢の装填が自動で行われるタイプのものだ。
しかしリンク状態のカイリに、もうその矢が当たる事は無かった。
全ての矢を空中で掴み取るカイリ。
「ネタバレしてるのに同じ事すんなよ!」
「く、くそっ! 何をしているお前ら! やってしまえ!! 相手はガキ1人だぞ!!」
周囲のシャークの男達が襲いかかってくる。しかし全員すぐに叩き伏せられる。
「このバケモノが!!!」
遂にヴァーミリオンも自ら剣を振りかざしてカイリに襲い掛かった。
その一撃をかわし、鳩尾に重い拳の一撃を叩き込むカイリ。
「・・・・ぐ・・・・ぇ・・・・・」
血反吐を吐いて白目を剥いてヴァーミリオンがその場に崩れ落ちた。
「・・・・ちぇ、つまんないの。これなら上でルクと一緒に戦ってた方がまだマシだったかな」
倒れて動かないヴァーミリオンを見下ろして、つまらなそうにカイリは口を尖らせた。

ビュン!!と風を裂いて鞭が襲い掛かる。
打ち据えられたイブキが大きく後方に弾かれた。
「・・・・くっ!!」
空中で体勢を立て直して着地する。
イブキは既に全身傷だらけだ。衣服はボロボロにされあちこちが血と泥で汚れている。対するキリエッタはまったくの無傷だ。
「近付けないねぇ? お嬢ちゃん」
キリエッタがニヤリと笑う。
「はあッッ!!!」
イブキが地を蹴ってキリエッタへと迫る。
「はぁ・・・無駄だってのにさ。『スコーピオンテイル』!!!」
ブオッ!!!と突風を生み出して鞭の乱打がイブキに襲い掛かった。
再び全身を打たれてイブキが地面に叩き付けられた。
「アタシはね・・・・ミドルからロングレンジを維持して戦う事にかけてはプロ中のプロなのさ。お嬢ちゃんみたいな超ショートレンジのファイターは格好のカモってワケ。運が無かったねイブキちゃん。このままあんたはアタシに指一本触れる事無く削り殺されるんだよ」
よろめきながらもイブキが立ち上がる。
「それにしても一撃で大熊の首を跳ねる私の一撃をあれだけ受けてまだ動けるとはね、ホント頑丈なお嬢ちゃんだよ。ま、苦しむ時間が延びるだけだけどさ」
ぐぐっと握り締めた拳に、イブキが気を込める。
そしてその気弾を拳を突き出してキリエッタへ向けて撃ち出した。百歩神拳と呼ばれる気弾による遠距離攻撃だった。
「へぇ? 一応はロングレンジでも攻撃できるんだ」
気弾を鞭で払って弾くキリエッタ。
怯まずに気弾を連発するイブキ。
「でも不得意科目です、ってのが丸わかりだねぇお嬢ちゃん。威力はいまいち、狙いはお粗末」
キリエッタの言う通り、気弾の内の半分はキリエッタではなく周囲の建物の壁の一部を壊したり、街灯を削ったり、地面を抉ったりしていた。
辛うじて彼女へ向かった気弾も全て弾かれて防がれる。
「オマケに消耗は激しい、と。自分の首絞めただけだったねぇ?イブキちゃん」
キリエッタの言葉通りに、イブキは大きく肩で息をしていた。
「・・・・後、二発」
イブキの呟きにキリエッタが眉を上げた。
「後二発撃てればいいわ。その二発でキリエッタ・・・・お前を倒す!!!」
「はっ! 追い詰められて錯乱したかい!! やってご覧よお嬢ちゃん!!」

風切り音と共にビャクエンが飛び込んでくる。
一撃をいれてまた高速で飛び退く。
追おうにもあらゆるものを蹴ってデタラメに飛ぶ。
アヤメの手傷が増えていく。
「どうしたどうした!! ちょっとは攻撃してみい!!」
上空から落下しながら爪を振り下ろすビャクエン。
その一撃を頭上に掲げた刀で防ぐアヤメ。
ギイイイン!!と金属音が鳴り響いて火花が散った。
「・・・・軽業がご趣味のようですので」
「ンン?」
シャッと刀を横薙ぎにする。ビャクエンがその一撃を飛び退いてかわす。
「私も身の軽い所をお見せします」
「ヒャッヒャッ!! 面白いわい!! やって見せてみい!!!」
ビャクエンが鉄の爪を振りかざしてアヤメに飛び掛る。
アヤメが地を蹴り、2人の影が交差した。
そして互いに先程までと立ち位置を取り替えて静止する。
「・・・・・・・・・・・・」
ビャクエンが振り返った。その頬を冷や汗が伝った。
アヤメは静かにビャクエンを見ている。
今、アヤメは突き出されたビャクエンの鉄の爪を蹴ってその頭上を飛び越えたのだった。
「・・・・・小娘ぇ」
ビャクエンが奥歯をギリッと鳴らした。何より老人にとって屈辱だったのは頭上を飛び越えた時にアヤメが「何もしなかった事」であった。
その気なら頭を割る事もできたかもしれないのに。
「私は軽業師ではありません。決着はあくまでも剣で」
すっと切っ先を上げて正眼に構えを取るアヤメ。
「そろそろ行きます。もうあなたの動きは『大体見えるようになりましたから』」
剣気を吹き上げる。
そのプレッシャーは老人が予測していたよりも遥かに大きく、遥かに鋭かった。
「うっ・・・うおっっ!! うおおおおおおおっっっっ!!!!」
慄いたビャクエンがその場から後ずさった。

「ぬん!!!」
トーガが魔剣を振り下ろす。
受けてはダメだ。シトリンはその一撃を横っ飛びにかわした。
しかし切っ先を避ける事はできても、その剣から噴き出す黒い陽炎を全て避けきる事は難しい。
また陽炎の一部がシトリンの身体に触れた。
「・・・・うっ」
それだけで体力が奪われていく。
シトリンがよろめいた。
瞳の色が元に戻る。消耗が激しく、リンク状態を維持できなくなったのだ。
「竜の力が尽きたか。勝負あったな」
勝ち誇るでも無く冷静にトーガが言う。
ふーっと大きく息を吐いてシトリンが流れる汗を手の甲で拭った。
その口元が苦笑の形に歪んだ。
「・・・・ほんと、あの人の言った通りだわ・・・ヒビキさん」
シトリンの呟きにトーガがわずかに眉をひそめる。
「ドラゴンリンクは途切れちゃったけど、まだ私にはここにリンクが残ってるって言ってんの」
自分の胸に手を当ててシトリンがそう言う。
「いつのまにかね、私のこの町と、この町の人が好きになってたみたい。・・・・だからあんたたちみたいにそれをメチャクチャにしてやろうってやつらは絶対に許さない!!!」
レーヴァテインを構える。剣は炎を噴き上げる。
その炎は先程までよりも大きく、そして眩く。夜のアンカーを輝きで照らし出す。
「・・・・・キサマ、どこにそんな力が!!」
「あんたの相手なんてこの私の怒りの炎で十分よ!! 覚悟しなさい!! 魔剣士トーガ!!!!」
巨大な炎の刃を振るうシトリン。自らの魔剣でそれを迎え撃つトーガ。
「おおおおおおおお!!!」
「ぬううううううううう!!!!」
ベギン!!と音を立ててトーガのシュバルツシルトは叩き折られ、炎の刃はその胸部を斜めに切り裂いた。
血を噴き出す傷口を抑えてトーガがその場に片膝をついた。
「・・・・見事だ。あの状態から俺の剣を折るとはな・・・・。キサマの勝ちだ。シトリン・メディナ・クフィール」
「これ以上傷付ける気はないわ。大人しく投降しなさい、トーガ」
シトリンのその言葉に、初めてトーガは微かに自嘲気味の笑みを見せた。
「・・・・残念だが、俺にはまだやらなければならない事がある。ここで死ぬわけにも捕らえられるわけにもいかんな」
立ち上がり、よろめきながら後ろに下がるトーガ。急に背を向けると怪我人とは思えない俊敏さで路地の暗がりへと消える。
「待ちなさい!! ・・・・くっ」
今度はシトリンがよろめいて片膝をつく。
限界を超えて戦った反動だ。もうトーガを追えるだけの体力は残っていない。
トーガの消えた路地を見て、シトリンは悔しそうに歯噛みした。

分厚い装甲で私の攻撃を尽く弾く巨兵タイタンの前に、私はじりじりと追い詰められていた。
『フハハハハハ!!! どうしたぁバーンハルト!!! これまでかぁ!??』
スピーカー越しにシャハルの哄笑が夜の港に響き渡る。
そこへ、援軍が駆けつけてきた。
「うおーっ! よくもセシルさんを!! 私だってセシルさんのファンなんだー!!!」
・・・・ハイパーココナッツ伊東だった。
「伊東パーンチ!!!!」
ベギッ!!
タイタンに殴りかかった伊東の腕が間接ではない所で折れ曲がった。
「・・・・!!!・・・・・・!!!!」
折れた腕を抱えて転げ回る伊東。
しかし健気にも立ち上がって再びタイタンへ向かっていく。
「うおおおお!! 伊東キーック!!!!」
ボギッ!!
伊東のすねがくの字に折れ曲がった。
「・・・・!!!!!・・・・!!!!!!!!」
再び転げ回る伊東。
『オイ!!! 止めてやれバーンハルト!!! 見てるだけで痛々しいわ!!!』
そして相手に気遣われていた。
しかしその伊東の特攻は無駄ではなかった。
シャハルがそちらに気を取られている隙に、私は神牙の溜めを終えていた。
『!!!!?? ・・・・き、キサマぁ!!!!』
轟音を響かせ、私の放った光の槍はタイタンの腹に大穴を開けた。
バチバチとタイタンが放電に包まれる。
『く・・・こんな・・・こんなバカな・・・タイタンは最強最大の魔導機械兵だぞ!!! それをこんな・・・こんな事はありえん!! ありえんぞぉ!!! あってはならんのだぁぁぁ!!!!!』
タイタンのボディが赤く熱を持って輝き始める。
私は伊東を抱えるとその場を走って離脱する。
『・・・・・・あじゃパーッッッ!!!!!!!』
そして次の瞬間、タイタンは周囲の大気を震わせ大爆発したのだった。