第12話 人魚の浜-3


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我々はシャハルの貨物船へと乗り込んだ。
見張りたちはヒビキが音も無く峰打ちで昏倒させ、船尾から甲板を目指す。
先頭を走っていたヒビキが片手を上げて我々を止める。
物陰から甲板を伺う。
!! 帆柱にマルティナが縛り付けられている。
その前にいる髭面の小男がシャハルか・・・・。
とりまきも数名いるようだ。
「だから知らないって言ってるだろ!!」
縛られて尚威勢良くマルティナが叫んだ。
「知らんはずはあるまい!お前がコッソリ岩場で誰かとコンタクトを取っている所は何度も目撃されているんだ」
シャハルが手にした鞭を振るった。マルティナが頬を打たれる。
「それは人魚じゃない!私は友達と・・・・」
「ではそのお友達とやらを紹介してもらおうか」
マルティナがシャハルをキッと睨み付けた。
「断る!」
「・・・・この小娘が!」
またも鞭が鳴った。それでもマルティナは気丈にシャハルを睨み続ける。
「人魚を探して、どうしようっていうんだよ・・・・」
マルティナの問いにシャハルは薄ら笑いを浮かべた。
「決まっているだろう。ワシは商人だ。売りさばくのだよ。それを欲しがっている人間にな」
シャハルがゆっくりとマルティナの周りを回る。
「西方大陸や中央大陸では人魚は希少幻生種に指定されていてな。その生息区域は厳重に保護されている。だから簡単には狩る事ができないのだよ。だがそんな法の無いここならば話は別だ」
「そんな人間に・・・・私の友達を会わせるわけにはいかない」
シャハルがギリッと奥歯を鳴らす。
「よかろう。ならば言いたくなるまで痛めつけるだけの事だ。どこまで耐えられるか楽しみだよ、クックック・・・・」
もうよかろう。私は物陰から姿を現した。
「・・・・誰だキサマ!」
「先生!!」
彼女の友人だ。彼女を返してもらいに来た。
「シャハル・マドル。屯所で色々と話を聞かせてもらおう」
ヒビキ達も出てくる。
「フン、田舎兵士がこのワシを捕らえられるとでも?ノコノコ乗り込んで来た事を後悔してもらおうか・・・・ギガンテス!!」
シャハルが叫ぶと、ガシャンガシャンと重い金属音をさせて何かが現れる。
あれは・・・魔導機械兵か!魔力を動力に動く機械仕掛けの人型兵器だ。その数は3体。こんなものまで持ち出してくるとは・・・・。
魔導機械兵は1機100人の兵力になると言われている。
「フハハハ! いかにお前たちが手錬の戦士であろうと魔導機械兵の前では赤子も同然だ! さあやれギガンテス!!」
先頭の機械兵が拳を大きく振り上げ、殴りかかってきた。
「・・・・・・ヌン!!!!」
ドガッッ!!!と重たい炸裂音が響き渡る。しかし私たちをかばうように前に出たテッセイがその一撃を身体で止めていた。
「何だと!? 城壁を粉砕するギガンテスの一撃を止めただと!?」
「ふーぅ・・・・」
テッセイが口元の血をぐいっとぬぐった。
「確かに見事な一撃。しかしその程度では鍛え上げた某の筋肉には通じぬ!!!」
テッセイが手にした鉄根をガランと投げ捨てた。
「作り物とは言え拳一つでかかってきたその男気に免じて某も拳でお相手仕ろう!!」
ドガンと機械兵をテッセイが殴りつける。鋼鉄のボディを凹ませて機械兵がグラグラと揺れた。
しかし倒れない。再度テッセイが殴られる。今度はテッセイがぐらぐらと揺れている。
壮絶な殴り合いが始まった。
「お、おのれバケモノめ・・・・・2号!3号!! 何をしている!!かからんか!!!」
しかし背後の残り2体は動かない。
「な、何だ!! どうした!!?」
すると、2体の胸部にそれぞれ斜めにラインが走ったと思うとそのままそのラインに沿ってズレてボディが2つに分かれる。
ズズン、と重たい音を立てて2体の斜めに断たれた上半身が甲板に落ちた。
カチンと、ヒビキが鞘に刀を収める。
「これで終りか。次があるなら出してくるがいい。押収するのも面倒だ。この場で全て鉄屑に変えてやる!」
うめき声を上げながらシャハルが後ずさる。とりまきのゴロツキはその時既に全員エリスに叩き伏せられていた。
「お、おのれ!! 動くなお前たち!!!」
シャハルがマルティナに短剣を突きつけた。万策尽きたのだろうが悪手だな。
ヒビキの居合いならあの距離でも届く。
マルティナに毛ほどの傷でもつければその瞬間にシャハルの手首から先は無くなるだろう。
しかしその時、突然海が激しく波打った。
『美しい海を醜い意思で汚す者は誰だ』
周囲に声が響き渡る。何だか野太い声だ。
海面から盛大に水柱が上がる。
そしてその水柱の上に・・・・何か・・・・・何か下半身が魚の・・・・・・。
ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
出たああああああ!!!!!人魚(?)だ!!下半身はどう見てもあれクロマグロだ!!!
見ただけでここまで何の活躍もしてなかった高クラーケンが気絶してぱったりと倒れた。
神経細いな高クラーケン!!!
しかし確かに人魚(?)の迫力は相当のもので、あのヒビキですら表情こそ変えなかったものの半歩ほどその場から後ずさった。
「大海原の裁きを受けるがよい!! ビューティフルオーシャンパニッシュ!!!!」
人魚(?)がムキッとポージングした。・・・・見事な筋肉です・・・・。
すると海中より何本もワカメが伸びてきてシャハルに巻きついていく。
「う、うわぁあああ!! わ、ワカメ!!? いやぁぁぁヌルヌルしてる!!!!」
そのままワカメにずるずると引きずられていくシャハル。そしてそのまま海中に引きずり込まれた。
「たっ、たすけ・・・ゴボッ!! たすけて!・・・・ガボッ! ヒィィィィィィィィィ!!!!!」
断末魔の絶叫を残してシャハルは海中に消えていった。
後日談となるが、シャハルはその数日後に浜辺に打ち上げられている所を発見された。
何故か全裸で全身にキスマークがあり、その後は海を見るどころか波の音を聞いただけで半狂乱になって泣き叫ぶのでうぐいす隊では取り調べに随分難儀したそうである。
「これにて一件落着!!!」
人魚(?)がポージングする。
我々は呆然としている。
だからおとぎ話はおとぎ話のままにしておくのがいいとあれ程・・・・。
ただ、テッセイだけが
「・・・・美しい・・・・」
とつぶやいた。

嵐のような(色々な意味で)一夜が明けて、我々は再び陸の住人となっていた。
我々はマルティナの案内で浜辺から少し離れた岩場へと来ていた。
「先生たちには紹介しておくよ。私の友達!」
マルティナが力いっぱい口笛を吹くと、イルカが大きく跳ねた。
? ・・・・イルカ? 違う、全体のシルエットはイルカのものだが白と黒の独特のカラーリングとクチバシはペンギンに酷似していた。
ペンギンイルカか! 人魚程ではないにせよ他の大陸では希少保護生物である。
なるほど、この子も人目に晒せば騒ぎになってしまうだろうな・・・・。
彼女がかばって隠そうとしたのも理解できる。それが人魚だと誤解されたのだろう。
「よーし! 私も!」
エリスも負けじと大きく口笛を吹いた。
・・・・・・?・・・・・・何か呼べるのかね?
ザバッと波を立てて何かが岩場に這い上がってきた。
「・・・・・不器用ですいません・・・・」
呼ばなくていいからね!!!高クラーケンは!!!!

~探検家ウィリアム・バーンハルトの手記より~