第7話 砂海を越えて-3


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謎の覆面筋肉老人マスク・ザ・バーバリアンの案内で我々はホテル・ド・宿命へ足を踏み入れた。
「はっはっは。砂海は暑かっただろう! 今冷たい飲み物を出そう。ドクターペッパーでいいかな!」
何故ドクターペッパー。
てゆか日落ちてるからむしろ冷えるんだけどな。
畳の座敷へ案内された我々は座布団に胡坐をかいて座卓を囲んだ。
程なくしてバーバリアンが本当にドクターペッパーのグラスを人数分持ってやってくる。
自らを砂海の賢者と呼んだマスク・ザ・バーバリアン・・・不思議な老人だ。
見た目はただの老いたレスラーなんだけど・・・。
「それにしても『永劫存在』なんて呼ばれ方をできる人がこんな場所にいるとは思わなかったわ」
ベルナデットが言う。そう言えばバーバリアンは先程ベルナデットの事をそう呼んでいたな。
それは何なのか、と尋ねてみる。
「魔人の事よ。・・・そもそも『魔人』なんていう呼称は聖地の連中が勝手に付けて呼んでるだけ。いい響きよね魔人って、いかにも悪役って感じがしてそれを閉じ込める自分たちは正義の味方ですって感じがするでしょ? 私たちみたいな存在の事は正しくは『永劫存在』・・・エターナルって言うのよ」
永劫存在・・・・エターナル・・・・。
「そう。人である事を超えて永遠に至った者。おかしいと思わなかった? 元々は人間であるはずの数百年も閉じ込められてる魔人達が誰も年老いていないって事に。私たちはもう年老いる事は無いの。そういう身体に作り変わってしまっているのよ」
いかにも、とバーバリアンが頷く。
「永劫存在とは生命活動に必要な新陳代謝を魔力により細胞の劣化無く行う様になった者を指す。全身は高純度の魔力を帯びており、その為あらゆる身体能力や魔術的能力も常人に比べれば大幅に高まっている。望んでなれるものではない。生き物としての『壁』を破ってしまった者が到達する究極にして永遠の生命だ」
知らなかった・・・私自身『魔人』という呼び名に踊らされて彼らを禍々しき存在なのだと漠然と思ってしまっていた。
「実際それだけの事やらかして封印受けた者も多いけどね」
肩をすくめてベルナデットが言う。
という事は、世界にはまだエターナルが存在しているのだろうか?
私はオルヴィエやコトハを思い浮かべた。・・・彼女らも強大な力を持つが、あるいは・・・?
「確かに、世界にはまだ魔人として封印を受けたわけではない永劫存在がおる」
バーバリアンが言う。
やはり・・・では七星などに?
「いいや、ツェンレン王国には永劫存在はおらぬ。確かに『月神』の血を引くオルヴィエや『仙狐』の血を引くコトハ等は常人に比べれば驚くほど長い年月を生きるだろう。しかしそれとても永遠ではない。緩やかにではあるが、彼女らも老いていく」
そうか、違ったか・・・。
「エストニアにもいませんよ~」
ふいにマチルダが声を出して、我々は全員彼女の方を見た。
「前に王様・・・ジュピター様が言ってました。エストニアにはエターナルはいないんだって。そしてそれはとても喜ばしい事なんだよ、って。『永遠』は人の手に余るものだからって言ってました」
永遠は人の手に余る、か。
ベルナデットを見る。
その時彼女が何を思ったのかはわからない。ただ、彼女は静かに微笑むのみだった。
「共和国には一人、永劫存在がいる」
!! いるのか・・・ファーレンクーンツにはエターナルが。
「ルーナ帝國にもかつて一人永劫存在がおった。しかし、今はおらぬ。・・・・その男は今、世界を覆いつくさんとする巨大な組織に身を置いておる」
言葉を失う。
まるで時間が凍ってしまったかのように、私の呼吸は止まっていた。
先日、シルファナから聞かされたばかりだ。
かつて帝國にいて、今は世界を動かすような巨大な組織にいる者・・・一人しかいない。
かつての我が友・・・・エルンスト・ラゴール・・・・・。
その名は私に、過ぎ去った遠い日の記憶を、痛みと血の思い出を呼び覚ます。

それは土砂降りの雨の日だった。
私たちは傘も無く、互いに降りしきる雨にその身を晒していた。
「・・・・どけ・・・ウィリアム」
ラゴールが剣を私へと向ける。
雨に打たれる親友の顔に鋭い瞳が光を放っていた。
私は背中に彼女を庇って、ラゴールと対峙した。
・・・・ダメだ。それはできない。
「どけ!!!」
ラゴールが叫んだ。
「わかっているだろうウィリアム・・・その女は・・・・・・だ・・・・」
ラゴールの言葉は鋭い刃となり、私の胸を抉った。
「お前にはできないだろう。だから俺が殺る。・・・・どけ、ウィリアム」
大きくかぶりを振る。
「・・・いいのよ、ウィル」
肩越しに彼女が言う。
「彼が正しいわ」

「・・・・・ウィリアム?」
ルクの声にはっと我に返る。
彼女が心配そうに私を覗き込んでいる。
ああ、何でもない。大丈夫だ。
私は微笑んでルクにそう言った。
そして、バーバリアンの方を向く。
・・・・エルンスト・ラゴールは『エターナル』なのか。
バーバリアンが頷いた。
「その通りだ。ウィリアムよ。エルンスト・ラゴールは永劫存在。かの組織の有する3名の永劫存在の1人だ」
3人!
では柳生霧呼と総帥ギャラガーも・・・・・。
再びバーバリアンが頷く。
「その二者も永劫存在である」
・・・・何という事だ。
「だが、ウィリアムよ。ワシには見えるのだ。彼らに立ち向かうお前に寄り添う多くの仲間たちの姿が。『神の門』を奴らに渡してはならぬ。戦うのだ!ウィリアムよ!!ドロップキックとかバックドロップで!!」
いや、そういった技は使わんけど・・・・。

なんとも言えない雰囲気のまま夕食になった。
夕食はトンカツと味噌汁とサラダだった。
サラダにはキュウリが入っていた。サイカワがこの場にいなくてよかった。
夕食後にバーバリアンが何やら紙とペンを持ってきた。
「ではこれより部屋割りを決める」
そう言って紙をがさがさと机に広げた。
何・・・・アミダくじだ。
「このアミダの結果こそが宿命! お前たちの運命だ!!」
って、部屋割りアミダで決めるのかよ!!!
「ええ~そんな~マズいだろうそんな拙者とマチルダさんが一緒になっちゃったりしたらさ~」
ジュウベイがどうしても喜んでるとしか思えない声で形ばかりの抗議をしている。
我々には3部屋が用意されているらしい。
2名ずつか・・・・要は私とジュウベイが一緒になってしまえばその時点で残りがどうであろうと問題はないな。
この宿のルールだと言われてはどうしようもない。
我々はそれぞれ1箇所ずつ選んで名前を書いた。
まず3の部屋がベルナデットとルクという組み合わせになった。
よし、いい組み合わせだ。
続いて1の部屋がジュウベイと・・・・。
「あ、私・・・」
マチルダが声を上げてジュウベイがガッツポーズをする。
「の、カティーナちゃんですね~」
「ペガサス屋内なのかよ!!!!!!!!!」
ジュウベイが絶叫を上げる。
・・・・・って。
待てよそれじゃあ・・・・・。
「じゃあ2番目のお部屋が私とウィリアムさんですね~」
そう、笑顔で無邪気にマチルダは言ったのだった。