第15話 風の聖殿-1


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料理対決だの何だのと色々とドタバタはあったものの、結局マチルダはエリスと打ち解けて仲良くなれたようだ。
それは良かったのだが、私は一向に大人の姿に戻る気配が無い。
今日はバルカンの案内で風の神獣、霊鳥ガルーダがいるという遺跡へ出発する日だというのに・・・。

とはいえ先延ばしにしてもしょうがない。
ベルナデットへ出発の挨拶をしておこうと私は皇宮へやってきた。
彼女の執務室へと向かって回廊を歩いていると、ふと中庭に意外な取り合わせを見る。
それはカイリとアレイオンだった。
見た所アレイオンがカイリに稽古をつけてやっているらしい。
木刀を二本構えたカイリが必死にアレイオンに斬りかかっているものの、アレイオンはその全てを手にした稽古用の盾で受け流してしまう。
アレイオンは左手に盾を持って、右手には何も武器を持っていなかった。
むう・・・と内心で舌を巻く。
カイリは決して弱くない。弱くない所か七星や銃士レベルとまではいかないまでもそれに次ぐ強さを持っている。
そのカイリをこうまで軽くあしらうのか。やはり皇国の四将軍、その強さはかなりのものだ。
「はっはっは、まあこんなところかな」
カイリの怒涛の連撃を捌ききってアレイオンが笑った。
カイリは、ちきしょー、と叫んで座り込む。
「君はちょっと攻撃が素直過ぎるね、カイリ。フェイクを入れたり変化を持たせないと。それでは自分と同程度以上の力量を持つ相手には通用しない」
「・・・できるようになるかな」
座り込んだままアレイオンを見上げて問うカイリ。
「できるさ」
返答は力強かった。
「君にその気があればね、カイリ」
「僕・・・強くなりたい・・・!」
まっすぐアレイオンを見て言うカイリ。
「姉さんよりもウィリアムよりも強くなりたい・・・。2人が危ない時に、僕が護ってあげられるように!!!」
そのカイリにアレイオンがすっと右手を差し出す。
「ならば、なろう。強くなるんだ。私が手を貸すよ」
そしてカイリは強く肯いてその手を取り、立ち上がった。

「・・・ふーん、まああの2人どっか似てるしね。波長の合う者同士上手く行くんじゃない?」
ベルナデットの執務室。
今見てきたばかりの光景を話すと、ベルはそう言って肯いた。
似てるのかあの2人・・・・って事はいずれカイリも胸見て喋る様になるのか。
シトリンが大変な事になりそうだ。
さておき、私はベルナデットに自分達がこれからバルカンの案内で遺跡に出発するが、例の正体のわからない黒幕の件もあるし誰かを護衛に残そうか?という話をした。
「ちょっと待ちなさい。まるで私が留守番するような言い方だけど、私も一緒に行くわ」
む、そうなのか。忙しそうにしてるから残るのかと思った。
「ええ忙しいわ。まったく目が回りそうなくらいね!」
バン!と分厚い書類の束を執務机に叩き付けるベル。
「職を辞すって言った途端に『いなくなるならこれだけはやっていけ』みたいに次から次へと仕事押し付けてくれちゃってもう!」
苛立たしげに頭を左右に振るベル。
『ククククク・・・・・それも全てこの私の陰謀によるものなのだ、ベルナデットよ』
!!!
突如執務室に響き渡った不気味な声に私は慌てて周囲を見回した。
そしてふとベルを見るとちょいちょいと天井を指さしている。グッタリした表情を浮かべて。
なんだろうと上を見上げてみると・・・。
うあああああああああ!!??!!?
そこには黒マントの怪人が蝙蝠の様に天井から逆さまにぶら下がっていた。
怪人・・・? よく見ればそれは宰相のキャムデンだ。まあ怪人と言えば怪人だが。
キャムデンは両手でバサッとマントを広げると我々を見下ろして高笑いする。
そして唐突に頭からズガーン!!と床に落下した。
「・・・・頭に血が昇ったみたいね」
首を変な角度に曲げて白目をむいてヒクヒクしているキャムデンを見て、ベルが嘆息しつつそう言った。

準備を終えたベルを伴って執務室を出る。
するとちょうどそこを大勢の侍従を従えた神皇ユーミルが通りかかった。
「ユーミル、ちょっと出てくるわね」
片手を上げて神皇にそう言うベル。
そのベルに神皇は、ああ、と短く返事を返した。しかし彼の視線は前方を向けられたままベルの方を向く事は無く、彼が今のベルの言葉の内容をわかって返事を返したようには見えなかった。
わかっていたのかその事に別にベルも反応は無い。
神皇とすれ違ってちょっと歩くと、カイリがこっちに気付いて走ってきた。
今日の訓練は終わったらしい。
「ウィリアムー!」
手を振っている。
それはいいんだが、廊下を走るんじゃ・・・。
そう言いかけたその時、脇の廊下から出てきた誰かがカイリと接触した。
「きゃっ!」
「うわ!」
本格的にぶつかり合うのは回避したものの、お互いに廊下に尻餅をつく。
やれやれ言わない事じゃない。
「・・・何やってるのよ、もう」
ベルがそう言って倒れた女性を助け起こした。
む、皇姫様か。
それはメリルリアーナ皇姫だった。
「ちぇ、ちゃんと前見て歩けよなー」
立ち上がりながらカイリがぶつぶつ言っている。
というかお前が走ってたのが原因だと思うが・・・。
しかし姫は素直にカイリに頭を下げる。
「ごめんなさい。お怪我はありませんでしたか?」
「え・・・・・・・・・・」
姫を見たカイリがいきなり硬直してしまった。
何だ?
おい?とカイリに声をかける。
カイリは動かない。
タタタタタタタ、と駆け寄ってきたキャムデンが突然カイリの尻を力一杯バットで殴打した。
しかしカイリは動かない。
ドスドスと駆け寄ってきたバルカンが突然カイリを抱え上げると逆さまにした。
そしてパイルドライバーで廊下にその頭部を突き刺す。
しかしカイリは動かな・・・・・死んだんじゃないのかこれ?
とりあえず用事がありそうな皇姫を行かせる。
皇姫は心配そうに何度か振り返りながらその場を立ち去った。
すると突然ガバッ!!とカイリが跳ね起きた。
「・・・・い、今の・・・今の子・・・・・・」
何だかカタカタと震えながらメリル皇姫が立ち去った方角を指差している。
ああ、彼女はこの国の姫、メリルリアーナ様だ。
カイリに説明する。
「お、お姫様・・・姫様かぁ・・・・・」
そう言って尚、カイリは姫の去った方角を見続けていたが、突然顔を真っ赤にするとこちらを向いた。
「ち、違うぞ!! そうじゃないからな・・・・!!!!」
私は何も言ってない。
「・・・・違うんだからな!!!」
そう叫んでカイリは走っていってしまった。
・・・・なんだろう一体。
「頭強く打ちすぎたんじゃないの・・・?」
ベルも珍しく心配そうにそう言った。

紆余曲折はあったものの、バルカンの屋敷に集合した我々は出発の準備を整えた。
私とエリス、DDにルクにベルにマチルダにカルタスにカイリにジュウベイ。そして案内のバルカンの総勢9人の大所帯である。
「よし、ではこれよりワシはお主らを風の神獣、霊鳥ガルーダの聖殿へと案内しよう」
バルカンが一同を見渡して言う。
いよいよフェニックス、スフィンクスに続く3体目の神獣と対面か・・・。
一行がバルカンの屋敷の門をくぐろうとしたその時、バサッ!!!と突然大きな羽音が鳴り響いたかと思うと周囲がふっと暗くなった。
・・・・・・・・・・・何だ!!!
暗くなったのは何かが陽の光を遮ったからだ。
巨大な何者かが翼を羽ばたかせて上空を通過する。
・・・鳥だ。青白い巨大な鳥。
「ば、馬鹿なーッ!! ガルーダ!! 自ら聖域を出てきたというのか!!!!」
バルカンが驚愕して叫ぶ。
ガルーダ!? ではあの巨鳥が風の神獣か!!!
『お前達が我が試練に挑むというのか・・・この霊鳥ガルーダの試練に』
上空を旋回しながらガルーダが呼びかけてきた。
『命知らずな事だ。我の課す試練・・・乗り越えられねばお前達は命を落とす事になる。その覚悟ができたのなら・・・・』
あ。
ボゴォォォン!!!!!!
ガルーダ、前方の塔に激突した。
前を見て飛んでなかったらしい。
ガラガラと白石造りの塔が崩れていく。
そしてやがてその瓦礫の下から
『痛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!』
という絶叫が響き渡ったのだった。