第17話 砂漠の女王と熱砂の迷宮-5


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サイカワに案内されて、その地下空洞にある遺跡へと私はやってきた。
地上部分は屋根があり下へと続く階段があるだけのシンプルな造りになっている。
入り口の所には誰もいないな・・・・。
「いませんね。先ほどこの辺りでお二人を見たのですが」
サイカワが言う。
この構造では中にいるとは考え辛いな。いくら私が探検好きと言ってもこの状況で二人を待たずに単独で遺跡に突入するとは2人も思わないだろう。・・・・・思われてたらどうしよう。
『来たか、ウィリアムよ』
その時周囲に荘厳な声が響き渡った。
誰だ!!
『我は地の神獣、スフィンクス。お前が来るのを待っていた』
またか、最近よく待たれてるなぁ・・・・。
しかし地の神獣とは・・・・あのフェニックスの言っていた事が思い出される。
フェニックスは残りの神獣に会えと言っていたな。
『ウィリアムよ。お前が我が助力を得るに値する存在なのか試させてもらおう。お前の仲間二人は私が預かっている。我が試練の迷宮を越え、見事我が元へと辿り付いて見せるがよい』
む、エリスとDDはお前の所にいるのか。
『心配はいらぬ。傷付けてはいない。お前が我が元に至れば二人は返してやろ・・・・・』
その時入り口からちょうどDDとエリスが出てきた。
「あ、ウィルいたよーやっほー」
DDが手を振っている。
『えええええええ!!?? ちょっと、閉じ込められてたハズでしょ君ら!!どうして出てくるの!!?』
スフィンクスが叫んだ。威厳がぶっ飛んだ。
「この人が壁を突き破って脱出してきたのよ・・・・」
エリスが砂埃を払いながらうんざりした様子で言う。
「なんか殴ったら穴開いたから出てきたよ」
いひひ、と笑ってDDがVサインを出した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
さてどうしたものか、私的にも困った展開になった。いや2人と再会できたのはいいんだが。
『じゃ、じゃあ・・・・・代わりに何かいいものをあげますから来て下さい』
何かで釣らなくても行くよ!黙ってたって行くよ!!
『これなんかどうだろう、喋るヤカンだよ』
その声に重なって「あぢいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!死ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」という絶叫が聞こえてきた。
力一杯いらん・・・・・。
まあいい、私に話があるのだろう。今からお前の所へ行こう、スフィンクスよ。
『そうか、ならば我が試練を越えて見事我が元へ至ってみせよ、ウィリアムよ。我はこの迷宮の真ん中へんくらいで待っている』
真ん中へんくらいで待ってるのか・・・・1番奥じゃなくて・・・・・。
『だけどそっちの二人はもう来ちゃダメだからね! 壁壊すからダメだからね!!』
また威厳がぶっ飛んだ。
「えー」とDDが不満そうに口を尖らせる。
「それなら私は構いませんね。スフィンクスよ」
そうサイカワが言った。
サイカワ? 何故君が・・・・。
「あの様子では何がしかの仕掛けで迎撃してくるつもりだと思いますよ。先生はあのスフィンクスとやらに会わなくてはいけない用事があるのでしょう? それなら誰かサポートがついて行った方がいい」
しかし、これはキュウリ関係無いのに・・・・。
「友人の危難にキュウリは関係ありませんよ、さあ行きましょう」
そう言ってサイカワは笑った。

私はサイカワを伴い、迷宮へと入った。
それはまさしく迷宮であり、複雑な構造で私たちを迷わせた。
『壁の強度は先程までの10倍にしておいた。もう殴って壊せるとは思わぬ事だ』
スフィンクスの声がする。迷宮内部の事をスフィンクスは自由にできるのか・・・・。
なんか失敗から学んだらしい。
そこへズン、ズンと低い足音が響いてくる。
何かが、曲がり角から出てくる。
それは大きな斧を持った牛頭の巨人だった。
でもなんか・・・・色黒で、お昼にオバちゃん連中に受けてそうな・・・・そんな顔付きの・・・・・。
「・・・・奥さァん、もういい加減にしなさいよォ」
ミノモンタウロスか!!!
ミノモンタウロスは斧を振りかざして襲い掛かってきた。
ちっ!長剣が折れてしまっているので、私は短剣を取り出して奴に切りつけた。
ガキン!と岩を穿つような感触を感じて短剣の歯が欠ける。
「はっ!!」
サイカワが電撃の矢を放った。矢はミノモンタウロスの表皮を裂いてわずかに傷をつけたがダメージとしては微々たるものだと言わざるを得ない。
『魔物の強度も10倍だ』
またスフィンクスの声がした。
「おもいッきり生パンチ!!!!」
叫んでミノモンタウロスが殴ってきた。その一撃をかわす。
ミノモンタウロスの拳が地面を穿ち、石片を飛ばした。
これはいかんな。
私とサイカワは頷き合うと揃って逃げ出した。
あれを迂回しつつゴールを目指さなくては・・・・。
そう思ったその時、向かっていた先の通路に2匹のミノモンタウロスが出てきた。
くそっ!こっちからも!!
「左はダメです!」
サイカワが叫ぶ。
左側の通路からも数匹のミノモンタウロスがこちらへ向かってきていた。
我々は右の通路へと逃げ込み走り続ける。
隣を走るサイカワの気配がやや遠くなった・・・と、そう思った時、私は背後でズズン!!という重たい大きな音を聞いた。
!? 振り返る。石扉が降りて通路を遮断していた。
サイカワ!! 石扉を叩いて呼ぶ。
「先生!! 行って下さい!!!」
扉の向こうからサイカワが叫んだのが聞こえた。
くそっ! スイッチを探す。
だが無駄なのはわかっていた。
先程から二人で何度も確認していたのだ。この迷宮の石扉のスイッチは常に片側にしかない。こちらにスイッチが無いと言う事はサイカワが向こう側から扉を閉めたのだ。
バカな事はやめろ!!開けるんだ!!
私は何度も石扉を殴りつけて叫んだ。
ダメだ!!君を置いていく事などできん!!ここを開けるんだ!!!
叫んで石扉を叩き続ける。
手の皮が破れ、扉に血が付く。
「・・・・先生。先生が何か大きな使命を帯びている事は知っていました・・・。行って下さい先生。ここはこうするしかないんです」
・・・・・・しかし・・・・・・!!
「ウィリアム・バーンハルト!!!」
!!
サイカワの叫びに弾かれたように顔を上げる。
「・・・・外で、後ほど会いましょう・・・・必ず・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
血の滴る拳をギュッっと握り締めて、私は走り出した。通路の奥へと。
『何かを・・・グスッ・・・得ると言う事は・・・・ヒック・・・・引き換えに何かを失うと言う・・・ウッ・・・事でもあるのだ・・・エグッ・・・バーンハルトよ・・・・ブズッ』
何でお前が感動して泣いてるんだよ!!!!
『これからお前が向かう道は多くの危難が待ち構えている。時にはお前に近しく親しい者たちが傷つき倒れる事があるかもしれぬ。その覚悟があるか、バーンハルトよ』
例えそうだとしても私は諦めたりはしない!最後まで皆と無事にいられるように最善を尽くす!!
サイカワの事だって諦めん!! 強度を自由にできるくらいだ、お前はミノモンタウロスを止めることができるだろうスフィンクスよ!!
私がお前の元に辿り付いたらサイカワの所にいるミノモンタウロスを止めてもらうぞ!!
『それができるのならな、バーンハルトよ』
・・・・確かに聞いたぞ。
もはや躊躇っている時間は無い。私は刃の欠けた短剣を取り出した。
そして闘気を高める。短剣で放てる技では無いがそんな事は言っていられない。
「神牙」・・・私の持つ最強の技だ。文字通り神を討つ為の牙。
高まる私の闘気に呼応して迷宮全体がぐらぐらと揺れ始める。精度も後の事も全てもう関係ない。ただ威力だけを限界まで高めて撃つ!!!
『・・・あ、ちょっと・・・あんまり激しいのは・・・・危ないしご近所の迷惑とかにもなるから・・・・』
スフィンクスが何か言っているのが聞こえたが、もう集中している私の頭にはその意味までは入ってこなかった。
『ねえそれ! 我には当たらんよね!? そのへん考えてくれてるよね!!? ミノモンタウロスはちゃんと適当な所で攻撃やめるように言ってあるからね!? そのへん加味してちょっと手加減してね!!??』
極限まで高めた闘気が巨大な槍の穂先の様な、牙のようなシルエットを形作る。
・・・・今、直接そこへ行く!!!!
真下に向けて私は神牙を放った。