第6話 緑の魔術師と人喰いキュウリ-1


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その日の私は上機嫌だった。
西の森の探索に出掛けたのだが、いくつかの遺跡を見つける事が出来、カバン一杯の遺物を持ち帰ることができた。
これから町へと戻り、復元作業をする事にしよう。
疲労はあったが足取りは軽い。
私は町への獣道を急いだ。
そんな時だ。私はある大木の根元に座り込む男を見つけた。
見ればまだ若い男だ。魔術師と思われる緑色の装束に身を包んでいる。
青年は右の二の腕を抑えてうずくまっている。二の腕の部分の服は裂け血が滴っているのがわかった。
大丈夫か、と声をかけて私は荷物から包帯と薬と消毒用の水筒を取り出した。
これでもサバイバルの知識と技術は専門だ。応急治療はお手の物である。
「すみません。ありがとうございます。戦闘中にカバンを崖下に落としてしまって、ポーションも包帯も無く困っていました」
頭を下げて礼儀正しく感謝の言葉を口にする。
第6話1-1.jpg
青年は斉川芳裕と名乗った。見た目の通りの魔術師であるようだ。
それにしても、自分は遭遇しなかったが恐ろしい魔獣でもこの周辺に生息しているのであろうか。
「いえ・・・・キュウリです。先ほどまでキュウリと死闘を演じていましてね・・・」
ソウデスカ、じゃあ治療も終りましたし私はこれで。
「お待ち下さい」
ガシッと後ろから襟首を掴まれた。
離脱失敗である。何と言う事だ、まともな見かけに騙されてまたアレな人に関わってしまった!
「キュウリと聞いて退治に逸る気持ちを抑え切れないのはわかります。しかしここはまず自分の話を聞いて下さい」
しかも何だかえらく自分に都合のいい解釈をしていた。
ここのところ、アレな人とばかり交友関係が広がっていく。
やはりキテレツな島にはキテレツな人材が集まるのであろうか。
自分もその1人にならないように気をつけようと私は強く思ったのだった。
「思えば、物心ついてから自分の人生はキュウリを殲滅する為だけにあったと言っても過言ではありません」
人の生き方をどうこう言いたくはないのだが、ツッコミ所の多い人生である。
「その為に自分は高名な魔術師2人に師事し、辛い修行を乗り越えて数々の強力な魔法を会得するに至りました」
彼の師匠は弟子の動機がわかってて修行を施したのであろうか。
甚だ疑問である。
「そして今から半年前に、この島にキュウリの気配を察知してここまで旅してきました」
サイカワがどこから来たのか尋ねてみる。
彼が口にした国名はさる西の果ての魔術で有名な大国の名であった。
ほとんど世界を半周してきとるな・・・・・そんな遠くからキュウリを察知って・・・・まず近所の青果市場とかに反応せんのだろうか。
それとも彼の母国のキュウリは既に彼が滅ぼしてしまっているのであろうか・・・・。
私はその国について知っている知識をフル稼働してみたが、名物料理にキュウリが含まれていたかどうかまではわからなかった。
「そうしてこの島に到着し、いざ奴らに戦いを挑んだのですが、先ほどは奴らの数の多さと地の利の無さから撤退を余儀なくされました」
サイカワがそこで私の両肩をがっしりと掴んだ。
「しかし私は運がいい!こんなところで同士に巡り会えるとは!! 2人ならば最早奴らなど恐るるに足りません!!」
痛い!つめ!!肩につめ食い込んでるから!!!
どんだけヒートアップしとるんだこの若者は。
とりあえず弁当に作ってもらったサンドイッチに芋とキュウリのサラダが挟んである事は黙っていよう。
バレたらブッ殺されそうだ。
「さあ行きましょう! キュウリを滅ぼしてこの地に平和を取り戻すんです!!」
サイカワが私の手を引いてずんずん歩き出した。
・・・・・やれやれ参った。
まあ、どこぞの農家を強襲でもするつもりなら諭して止める事にしよう。
そう思って私は諦めて彼に付いていく事にした。
この時の私には想像もできなかったのだ。

この先にまさか、あんな激しい戦いが待ち受けている事など・・・・。