第13話 四王国時代の終焉-6


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ゆっくりと降下していた機動戦艦エイブラハムが帝城の屋根へ接触して停止する。
崩れた屋根の瓦礫が周囲へ降り注ぐ。
「目的の物を回収しろ」
ギャラガーがエトワールに告げる。
はいよん、と返事をしたエトワールが部下達にシリンダーを回収してくるように指示した。
しかしエトワールの部下が動き出すよりも早く、エイブラハムから黒スーツの男たちが飛び出してきた。
全員それぞれの武器を手にギャラガーとエトワールを包囲する。
「・・・んあー鬱陶しいなぁ。雑っ魚いのがゾロゾロとさぁ」
エトワールが顔をしかめて頭を掻いた。
「今の見てなかったん? おめー様方にやれる事なんかこのシーンじゃ背景の一部になる事しかないっつーの」
しかし銃士達は怯まない。
大統領の静止の言葉にも耳を貸さずに尚包囲を狭める。
「フム・・・ならば問おう。お前達にいかなる気概、考えがあってこのギャラガーに刃を向けるのかをな」
周囲を睥睨し、王者の威厳を持ってギャラガーが銃士達に問う。
そのプレッシャーに一瞬銃士達が気圧される。
「決まっている! 我が共和国の為!!」
しかしすぐに1人がそう答えた。
「敬愛する大統領閣下の為だ!!」
別の1人も叫んだ。
残る者たちは無言だ。しかしその瞳の光が今の2者の言葉への同意を現していた。
「・・・愛国心、それにジェイムズへの忠誠だと? ・・・『それだけなのか?』 他には?」
ギャラガーの言葉に微かに苦いものが混じった。
その背後でエトワールが、あーあ、と肩をすくめた。
「・・・・小さい」
呟いてギャラガーが1歩前に出た。
銃士達を見るその目には侮蔑の光があった。ギャラガーがこの場で初めて他者への嫌悪感を表に出す。
「小さい。視野が狭い。高みに至る可能性を自ら放棄してしまっている。・・・・『お前達は必要ない』」
無造作に銃士へ向けて両手を伸ばすギャラガー。
数名の銃士達がギャラガーへ武器を手に襲い掛かった。
しかし、鎧らしきものをまったく身に着けていないギャラガーの身体に武器が触れた瞬間、長剣は朽ちた木の枝のようにへし折れ、ナイフの刃は薄氷のように砕け散り、弾丸は硬質の音を立てて弾かれる。
「騒ぐな。・・・・心静かに受け入れろ。お前達の運命をな。取るに足らんものどもよ、塵に還れ」
両手で1人ずつ銃士の襟首を掴む。
襟首を掴まれた銃士は呻き声を上げると急速にミイラ化していき、さらに風化して風に溶けて崩れ去った。
中身の無くなった衣類だけがその場にバサッと音を立てて落ちる。
「ぬおおおああああっ!!!! ギャラガーッッ!!!!!」
大統領が猛然とギャラガーに殴りかかった。
その拳がギャラガーの頬に炸裂する。
骨の砕ける嫌な音が響き渡った。
うぐっ、と大統領が呻く。その右手は指が全て間接で無い場所で滅茶苦茶に折れ曲がってしまっている。
「無駄な事をする。大望のある身ならば少し自重というものを覚えるがいい、ジェイムズ」
ギャラガーが手をかざすと大統領は弾き飛ばされ、遥か後方の壁に激しく叩き付けられ地面に崩れ落ちた。
そしてギャラガーが銃士達へ向き直る。
「お前達には過ぎた冥土の土産だが・・・見せてやろう我が世界を」
その言葉と同時に、ギャラガーを中心に「別の風景」が広がり現実世界を侵食する。
そこは半ば朽ちて砂に埋もれつつある古代の都だった。
「『忘却の都』・・・ここでは我が意に沿わぬものは全て風化する」
そのギャラガーの前で銃士達は次々と倒れ、崩れ去っていく。
やがて世界が元の景色を取り戻した時、そこには点々と地面に銃士達の衣服だけが残されていた。

「下らん時を過ごした」
吐き捨てるようにギャラガーが言う。
そして気が付く。
立ち上がっていたELHが自分の前に立ちはだかっている。
「・・・外道め! 貴様の悪鬼が所業、断じて許すわけにはいかん!!」
怒りに燃える瞳でギャラガーを睨み付けるELH。
「・・・・誤りを指摘しよう、ELHよ」
身体ごとELHへと向き直りギャラガーがやや胸を反らせた。
「我は力、力こそが道を切り拓く。故に私の在り様こそが正道」
「・・・ほざくなぁッ!!!!」
ドラゴンブレイドを構えてギャラガーへと突進するELH。
「おっとー、頭上注意だパンツ男」
エトワールの声に反射的にELHが頭上を見上げる。
・・・そこに、異形がいた。
それは人のような、鳥のような、鎧のような白い姿だった。
キシャアッ!!と甲高い雄叫びの様な声を出して白い異形が鋭い爪の並んだ足でELHを蹴り飛ばした。
そして後退させたELHとギャラガーの間に割り込むように着地する。
「・・・いやぁすいませんね。僕も少しは見せ場作っておかないと今後の人間関係に差し障りがあるんですよねぇ」
声はアイザックのものだ。
「変わってるだろ。ソイツ、契約武器を介して守護神獣と融合できるんだよ。滅多にいない変り種だ」
解説するエトワール。
その間にエトワールの部下達がエイブラハムからシリンダーを回収した。
「・・・お、あっち終わったみたいだ」
「引き上げるぞ」
最早その場に見るべきものはなし、とでも言うようにギャラガーが一同に背を向けて自らが乗ってきた車に向かって歩き出す。
「だってさ。邪魔ができねーようにお引取り頂いてくれ」
「・・・承知致しました。では」
アイザックが翼と化している両腕をELHへ向けて振るった。
「退場して貰いましょうか!!!」
竜巻が発生してELHを飲み込む。
ELHがその暴風の中央で必死に踏み止まる。
「・・・・うおぉぉぉぉっっ!!!!」
「しぶといですね!! ではこれでどうです!!!!」
アイザックが叫び、風は更に勢いを増して吹き荒れる。
必死に耐えるELH。・・・しかし、本人より先に着衣に限界が来た。
褌が解けて飛んでいく。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア放送事故だ!!!!!! カメラさん映像止めてぇ!!!!!!」
両手で顔を覆ったエトワールが絶叫した。
「・・・・・・ぬぁぁぁああああ!!! 恥ずかしいぃぃぃっ!!!!!!」
雄叫びを上げたELHが暴風の中、1歩前へ出る。
「何で脱げたらより力強くなるんだよ!!!!!」
その時風にのって何かがその場へ飛来した。
それはケソタッキーの店頭に置いてあるクーネルおじさんの像だった。
吹き飛んできたクーネルおじさんの頭部がELHの下腹部を直撃する。
「・・・・・ビッグバン!!!!!!」
瞬間、物凄く劇画調の顔になったELHがそのまま吹き飛んで消えていった。
「・・・あ、ありがとうクーネルおじさん・・・うち明日のお昼はケソタッキーにするよ・・・」
ぜいぜいと喘いで流れる汗を拭いつつエトワールがそう呟いた。

「恐ろしい相手でしたねぇ」
融合を解いてアイザックが言う。
「・・・・色々な意味でな!!!」
エトワールが叫ぶ。
「まぁ無事に終わって何よりですよ」
「終わり?」
倒れた大統領とELHの飛んでいった方角を見るエトワール。
「・・・そんなタマかよコイツら。始まりの間違いだろ?」