第22話 鬼人の谷-3


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谷にある洞窟をラハンの案内で抜ける。
するとそこは開けた窪地になっており、結構な規模の集落があった。
「こっちですぜ、旦那に姐さん」
集落へと入っていく。
我々がそんな無防備入って行っていいものかと思ったが、特に騒ぎになるような事はなかった。
時折オーガの子供達が駆け寄ってきて物珍しそうに私たちを眺めていく。
やがて我々は一軒の民家の前についた。
ラハンがその戸をノックする。
「オババ。客だ」
「開いておるわい!」
老婆の叫び声がする。
ラハンがガチャっと扉を開いた。
「よく来たのうお客人!!!!!!!!!!!!!!!!!」
途端に視界一杯にグロテスクな(失礼)顔面がドアップで飛び込んできた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・はぅ」
コトハが気絶してしまった!!!!
無理も無い私も一瞬意識が危なかった。

「このババに話が聞きたいとはまた奇特な者もおるものじゃのぅ」
ヒーッヒッヒッヒッヒッヒと不気味に笑うオババ。
いや奇特ってか連れが危篤になりかかったんですけどね?
コトハは向こうに寝かされており、ラハンが団扇でぱたぱたと扇いでいる。
「この島の話かえ・・・・」
ずいっとまたどアップになるオババ。
すいません本当に心臓に悪いんでカンベンして下さい。
「遥か昔の事じゃ・・・・・」
うおいきなり語りモードに入った。
「空の彼方より船が降ってきたのじゃ。わしらは『始まりの船』と呼んでおる。始まりの船はこの島のどこかに落ちた。船の中には神の門があった」
!!!! 
神の門・・・・・始まりの船の中にあっただと!?
「門は様々な物をこの島に呼び寄せた。良きものも悪しきものもな」
しゃーこしゃーこと包丁を研いでいるオババ。
何で話しながら包丁研ぐんですか怖いんですけど・・・・。
「・・・・そうして時が過ぎ、島の外から来た人間たちは神の門の影響で特殊な磁場に覆われたこの島を封印に使う事を思いついたのじゃ」
魔人達の事だ。
「1千年に一度、神の門を自由にできる鍵が島に現れる」
テトラプテラ女王の言っていたマスターキーの事か。
「じゃがの・・・・神の門自体にも封印がかけられておるのじゃ、この島に封じられた者達の命を使った封印がな」
神の門に魔人の命を使った封印・・・・。
「封じられし者達の死によって封印は解かれる。封印の数は封じられしもの達の数よりも1つ少ない数じゃ。即ち神の門を動かしたければ島にいる封じられし者たちは1人を残して全員死なねばならぬ・・・・そして封じられし者たちが島の外に生きたまま出たければ神の門をくぐる他無し・・・・」
いつの間にか私は冷たい汗をかいていた。
グライマーの言葉を思い出す。1千年に一度・・・1人だけが外に・・・・。
魔人の封印とは、単にこの島に彼らを閉じ込めておく為のものだけではなかった。

・・・・彼らは、自由を得る為にこの島で互いに殺しあう事を運命付けられていたのだ・・・・。

なんと狡猾で残忍な仕組みなのだろう・・・・。
世界に害を成すと判断した存在を一箇所に集めて互いに潰し合わせるとは・・・・。
そしてその壮絶な殺し合いが始まる時こそが、マスターキーの現れる現代なのだ。
「まあ言い伝えじゃよ。本当の話かどうかはわからぬわ」
オババはそう話をしめたが、私はその話の大部分が事実であろう事を知っている。
「むうっ!!!・・・・・・じぇぁあああああっっ!!!!!」
突然オババ手にした出刃包丁を鋭く投げた!
その出刃包丁はコトハを団扇で扇いでいたラハンの左肩に後ろからドスッと突き刺さった。
「お”あ”ーーーーーっっっ!!!!!!!!!」
ラハンの絶叫が響き渡る。
「何しやがるババーーーー!!!!!」
「蚊がおった」
ええええええええ包丁刺さるより蚊に刺された方がいいよ!!!!

その後、私はオババによって村の祠に案内された。
そこには古い壁画や遺物が数多く残されていた。
私はオババに説明を受けながら、それらをメモに書き留めたりスケッチしたりする。
そう言えば、何故人間を遠ざけようとしていた?
思いついて聞いてみる事にする。
「その事か・・・・最近わしらの狩場に魔物が現れてのう。狩りが思うようにできず食料の確保が難しくなっておるのじゃ。それ故この上さらに谷を人間たちに荒らされん様にラハン達を見張りに立たせておった」
なるほどな。
ふうむ・・・・食料か。
流石に無償で援助とまでは行かないだろうが、アンカーの町には大陸から多くの物資が船で入ってくる。
きちんと支払うものさえ支払えば食料くらいなんとかなるだろう。
私はそうオババに話し、よければ仲介役になろうと申し出た。
「本当か!! それは願ってもないわい」
オババも乗り気のようだ。戻ったらエンリケに相談してみよう。
等と思っているところに慌しい複数の足音が近付いてきた。
ババンと祠の扉が開け放たれてラハンに比べれば随分小柄なオーガの男2人が飛び込んでくる。
「オババー大変だぁ!」
「グエンにタカハシか・・・・何事じゃ騒々しい」
オババが顔をしかめる。
「姫様が!姫様がっ!!」
「俺らの止めるのも聞かないで魔物退治にいっちまったよー!!」
ガガーン!とオババが驚愕の表情を浮かべた。
てか怖い。
「なんじゃともう一度言うてみい!!!」
男たちが顔を見合わせて先ほどの台詞を反復する。
「姫様が!姫様がっ!!」
「俺らの止めるのも聞かれ・・・あえ・・・・」
「噛むでないわあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
噛んだ方がブン殴られて奥歯を撒き散らしながら吹き飛んだ。
酷い。何で反復させるのかもわからんし噛んで殴られるのかもわからんし・・・・。
「大変じゃ姫に何かあっては一大事じゃ!! すぐラハンを行かせい!!!」
「ら、ラハンの兄貴にはもう行ってもらったよお!でも兄貴なんか肩を怪我してるって・・・・」
包丁刺さったからな。
「この大事な時に!! ほんに使えんクズじゃ!!!!」
酷い。刺した人がそこまで言う。
やれやれ・・・・しかし今のやり取りだけで大まかな話はわかった。
どうやら見てみぬフリはできなそうだ・・・・。