最終話 Fairy tale of courage-2


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水晶洞窟の上空での死闘は今だ続いていた。
「アマテラス」を破壊されたシュヴァイツァーであったが、続いて搭乗した「スサノオ」での高速飛翔による攻撃も凄まじく、ルクシオン達は攻略の糸口を掴めないままだ。
「・・・強い・・・!」
傷だらけのマチルダがペガサス上で呻く様に呟く。
そのマチルダの隣にルクが飛んでくる。
「リヒャルト・シュヴァイツァーは元々戦闘機乗りだったのを腕を買われて総帥に取り立てられたのだと聞いています。・・・本領発揮という所ですね」
ルクの言葉にマチルダが、むーと唸った。
「・・・・・・・・」
その2人のやり取りをマチルダの後ろに座ったパルテリースは無言で眺めていたが、
「どうやら私はこのあたりで退場した方がよさそうですね」
やがてそうポツリと呟いた。
「パルテ?」
「こういう状況になると私が乗っていれば団長の足手まといにしかなりませんので、一足先に失礼致します」
そう言うとやおらパルテリースはマチルダのペガサスからひょいと身を投げた。
「!!! ・・・パルテリース!!!!」
叫ぶマチルダに落下しながらパルテリースが敬礼する。
「団長、ご武運を」
『・・・余所見をしている余裕があるのか貴様らッッ!!!』
ブン!!と大剣を大降りにスサノオが突っ込んでくる。
慌てて空中の2人がそれを回避する。
「そうですね・・・」
マチルダがスサノオを見つめて手にしたロンギヌスの槍をぎゅっと握り直した。
「そろそろ決着をつけましょう。リヒャルト・シュヴァイツァー」
呟くマチルダの全身がバチッ!と電撃を帯びた。



・・・死者を蘇らせる事までできるのか・・・。
ギャラガーの起こした超常現象の前に、私や仲間達はまだ顔色を失ったままだった。
しかし茫然自失している余裕はない。
今や敵はギャラガー1人ではなく、我々に殺意をむき出しに蘇ってきた4人の『ハイドラ』が加わっているのだから。
その1人、復活したリゼルグ・アーウィンはキリエッタと交戦を開始した。
リゼルグと言えばかつて1人で我々全員を圧倒した恐るべき力の持ち主である。
金属を自在に形を変えて操る「金属使い」の男。
そのリゼルグはやはり無数の金属を周囲に浮かべてキリエッタを威圧している。
「あなた程度の力で私に挑みかかってこようとは・・・舐められたものです。あなたの腕の程はよくわかっています。万に一つも勝ち目はありませんよ」
嘲笑して言うリゼルグに、キリエッタは表情を変えずに無言のままだった。
「欺かれていた事への意趣返しですか? ・・・そんなにムキにならずともよいでしょう。貴方は鮫の欺瞞には最初から気が付いていたのでしょうからね」
「まあね・・・」
キリエッタが肩を竦める。
「別に今更その事をどうのって言う気はないね。アタシも死んだトーガもビャクエン爺さんも・・・所詮は暴れる場所を探してただけの悪党だ。・・・だから、今アタシがあんたと戦うのは『これまで』の話じゃなく『これから』の話だよ」
「『これから』?」
リゼルグがキリエッタの言葉に眉を顰める。
「そ。この島があんたやアタシみたいなバカのせいで滅茶苦茶にならないようにってさ」
「そんな『これから』はありませんよ。あなたはここで私に殺され、この島と『神の門』は総帥のものとなるのですからね!!!」
リゼルグの周囲で金属球が姿を変える。
無数の鋸の様にギザギザの刃を持つ円盤に姿を変えた金属球は高速で回転しながらキリエッタに襲い掛かった。
「さあバラバラになるがいい!! サソリのキリエッタ!!!」
しかしキリエッタは動じることなく、飛来する円盤を全てわずかな身体の動きだけで回避した。
そして円盤をやり過ごしつつ、手にした鞭を鋭く一閃させる。
鞭はバシッ!!と小気味良い炸裂音を響かせてリゼルグの眉間を打ち据えた。
「・・・があッッ!!!」
叫んで仰け反るリゼルグ。
その足元に壊れた眼鏡が落ちる。
「何だ・・・その動きは・・・!!」
血を噴く眉間を押えてリゼルグが叫ぶ。
「あのさ・・・あんたがのん気に死んでた半年間もアタシは必死に生きてきたんだよ。やっぱりあんた緑の旦那に比べたら体捌きは全然だねぇ」
「馬鹿な・・・たった半年でこんな・・・!」
ワナワナと慄くリゼルグに、キリエッタは鞭を構え直す。
「・・・ま、あんたも機会があったらやってみれば? ワカメ取り。あの世にそんな場所があればだけどね」
そう言ってキリエッタは不敵に笑った。

アルテナ・ムーンライトは我々と言葉を交わすことなく、精霊魔術の詠唱に入った。
身構える我々に対し彼女の魔術は完成し、周囲を突風が吹き荒れ、その風に乗って舞う無数の紫色の花弁が視界を封じる。
しかしどうやらその術にそれ以上の効果はなかったらしく、ダメージを負う者はいない。
そして風が収まったときにはアルテナの姿はその場から忽然と消え失せていた。
・・・目くらましで逃走した・・・?
現場は混然としており、その時私は気付けなかった。
アルテナと一緒にセシルの姿が消えていた事に・・・。

ギャラガーが蘇らせた4人の『ハイドラ』の最後の1人が私の前に立ち塞がる。
私と故郷を同じくする男。
私と同じ帝國の軍人だった男。
・・・アイザック・ラインドルフ。
「・・・『またか』とお思いでしょうがね。ウィリアム様」
そう言ってアイザックが苦笑する。
「性質の悪いのに捕まったものだと諦めてもう一度僕にお付き合い頂けますかねぇ」
・・・そうだな。
私は腰の鞘から「ルドラ」を抜き放って構える。
一度殺めているのだ。・・・やはりこの男の相手は私がするのが筋だと思う。
アイザックも手にした巨大な円形の刃を構える。
ここに数日振りに我らは命を掛けて対峙する事となった。
一度見えている分、互いに相手の動きを知っている。
その為初手が両者共に繰り出せずに、我々は硬直した。
まずいな・・・。
頬を伝う汗を感じながら、私は早くなりつつある動悸を抑えきれずにいた。
奴の背後にいるギャラガーの為だ。
・・・今は静観しているがいつまた動き出すか。
その事が焦りとなって私の内側をじりじりと灼いていた。
不利を承知で仕掛けるしかないか・・・!
私が魔剣の柄を握る手にぐっと力を込めたその時
『・・・おおっとぉ!! この場は私に任せて頂きましょうか!!!』
突如、我々の足元からそう大声が響き渡った。

ぼあっ!!と地面を突き破って土を巻き上げ、突如私とアイザックの丁度中間地点の土中から何かが回転しながら飛び出してきた。
その何者かは空中で身体を一回転させるとアイザックへ鋭い蹴りを放つ。
「っ! 何者ですかね・・・!!」
ガン!とその蹴りを円刃の峰で受けるとアイザックは人影を弾き返した。
蹴りを受けられた人影は身軽に跳んで着地する。
・・・誰・・・だ?
見たことのない痩躯の男だ。
鼻が・・・デカいな・・・。
「フフフ・・・先生の敵はこのカルタスの敵。容赦はしませんぞ!!」
・・・・・え?
今・・・何て名乗った・・・?
「お待たせして申し訳ありませんでした先生! カルタス・ボーマン・・・皇国での修行を終えただ今帰ってまいりました!」
嘘つけええええええええええええええええ!!!!!
思わず私は絶叫してしまっていた。
どう見ても別人だろうが!!!
「まあ、修行でちょっと痩せましたかね!」
そう言う問題じゃねえええええええ!!!!
もう骨格から違う人間だろう!!!!
「フフフ、戻ってきたのは私だけではありませんぞ! 彼も一緒です!!」
そう言ってカルタス(?)は腕を組んで胸を反らした。
・・・まさか・・・。
一緒に帰ってくると言えば・・・。
ドォン!!!!!!と先程同様に足元の地面から土砂が吹き上げた。
しかしその量は先程の比ではない。
そしてその中より、むくりと巨大な影がゆっくり立ち上がった。
「・・・ポぅ!!!」
低い声と共に、巨大な人影がアイザックへ向け手刀を振り下ろした。
「くっ!!! 何だ!!!!」
アイザックはその一撃を先程同様に受け止めようとはせず、横っ飛びにかわした。
ドウッ!!!!!と重たい炸裂音を響かせて一瞬前までアイザックが立っていた地点の地面が抉られる。
土煙が晴れていく。
威容が徐々に明らかになっていく。
・・・って・・・。
DEKEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!1111111
何だあの巨体は!!! 身長209cmくらいありそうだぞ!!!!!
「・・・カイリです!!!」
カルタス(?)が大巨人を紹介してくれる。
そうか・・・カイリなのか・・・。
・・・・・・・・・・・。
・・・知り合いと同じ名前だよ・・・。
「はっはっは、ノワールのカイリですよ。私と一緒に帰ってきたんです」
カルタス(?)がそう言うと大巨人が私に向けて手を振った。
「・・・ポヮ(カ)イリです。ポヮ(た)だいまー」
嘘だよそれ!!!!!
だって言えてないもん!!!! 自分の名前とか色々言えてないもん!!!!!
あああああどうするんだ。
スレイダーが大怪我してカイリがこんなになったとか言ったらシトリンが失踪してしまいそうだ!!!!
「まあそういうわけで先生! 彼の相手は我々にお任せを!!」
カルタス(?)とカイリ(?)がアイザックに立ちはだかる。
・・・どうでもいいが凄い威圧感だ。
「・・・フッ、僕はまあ相手が誰でも構わな・・・」
「ポゥ!」
ズドーン!!!と何か言いかけたアイザックにカイリ(?)のチョップがまともに炸裂した。
「・・・んブぇェェェェ!!!!!」
激しく鼻血を噴いて腰の辺りまで地面に突き刺さるアイザック。
死んでたと思ったら勝手に生きてる連中の都合で生き返させられて挙句にこの有様か・・・。
敵ながらちょっと私はアイザックに同情してしまった。



一方その頃。
その場所より4km程東方では・・・。
ピョートルによって空中へ浮き上がらせられたマキャベリーが目を覚まし、小さく呻いた。
その目がゆっくり開く。
「・・・う・・・ピョートル・・・? 貴方が何故・・・ここに・・・」
呻くマキャベリーにピョートルがニヤリと笑う。
「ンフフフ・・・その事はいいのですよ、マキャベリー。さあ、私の眼を見るのです・・・!!!」
そう言うとピョートルの双眸がカッ!!と赤く輝いた。
その光をまともに見たマキャベリーはビクリと身体を一度大きく痙攣させ、瞳の光を虚ろなものにする。
「ンフフフフ・・・流石にこれだけ弱っていればあっさりと術中に墜ちてくれますなぁ」
嗤うピョートル。
ピョートルの幻術にかかったマキャベリーには、彼の姿がギャラガーに見えている。
「おお・・・総帥・・・」
空中でマキャベリーが礼を取ろうとしてもがいた。
「ンフフフ・・・マキャベリー、お前は知っていますね? このギャラガーの無敵の力の秘密を・・・」
コクリとマキャベリーが肯いた。
「存じ上げております・・・! 総帥閣下の素晴らしい御力の秘密・・・。このマキャベリーは確かに!!」
パン!とピョートルが畳んだ扇子で掌を打った。
「よろしい! ではその秘密・・・ここで高らかに謳い上げて頂きましょうか!!!」