第10話 多層都市パシュティリカ-3


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ゴルゴダは1本ではないのか!!!
周囲を見回し、状況を確認する。
・・・・7・・・・8・・9人か・・・・!!
まずい・・・・もしこの9人が前の身体の時同様の戦闘力を持っているのなら今の身体の私では相手にならない。完全に足手まといになってしまう。
その状況でまだ向こうの頭数が上だ・・・・。
「・・・えーとぉ、どういうことなんでしょう?」
マチルダが首をかしげる。
私はマチルダに手にした剣が本体で身体を操っているのだと説明する。
「なるほど~」
ぽん、とマチルダが手を叩いた。
「わかりました~。じゃあ、ちょっと私が戦いますね」
まるで近所に買い物に行ってきます、とそう言うかの様に簡単にそう言うとマチルダが1歩前に出た。
!? いや、ヤツはかなりの実力者なんだ! 全員で上手く力を合わせて・・・。
「いえ、私たちまだお互い良く戦い方とかわかってないじゃないですか。そういう時に無理に一緒に戦うと下手したら足引っ張っちゃったりとかしますから。だからまず私が戦いますね。ダメそうなら援護お願いしますから、皆さんはひとまず護りに徹していてください」
「何を無茶な!! 殺されてしまいます!!!」
ルクが叫んだ。
マチルダが振り返って微笑む。
「大丈夫ですよ~」
普段と違う大人っぽい表情でドキリとさせられる。
そして彼女は前を向き、ゴルゴダと対峙した。
「おー何だ新顔がいるじゃねえの。姉さんも中々楽しませて・・・・」
ゴルゴダはその台詞を最後まで言い終えることはできなかった。
10m程あったマチルダとゴルゴダの間の距離。その距離が一瞬で詰まる。
「!!!!!!!!」
ゴルゴダも我々も、その場にいた全員が驚愕した。
マチルダの手には銀色の長槍があった。契約武器か・・・いつ召んだのかもわからなかった。
その槍が一閃する。
「・・・・うおおおおっっ!!!!」
ゴルゴダが剣を構えた。しかし遅すぎた。
ガギィン!!!! と耳障りな金属音を響かせてゴルゴダの持っていた鞭剣が砕けて折れた。
「・・・・・1」
ぎぁ!と悲鳴を上げたゴルゴダが倒れる。
その時にはもうマチルダはその場を蹴って姿を消していた。
次の金属音と悲鳴は横から聞こえた。
見ると男が一人剣を砕かれて倒れる所だった。
「2」
もう、敵も味方も言葉は無かった。男たちが全員無言で剣を構え、一斉にマチルダに襲い掛かった。
我々の誰にも目もくれることなく、全員で一気にマチルダへ向かう。
ジャッ!!と最初の最初の男が鋭い突きを放った。伸びる刃がマチルダに迫る。
マチルダはその一撃をわずかに身体を横へずらしてかわすと旋回した槍で伸びきった鞭剣の刃を断ち切る。
「3」
そして走りこみながら絶叫を上げたその男の足元を槍の柄で払った。
倒れこむ男が次の男の進路を塞ぎ、続く男が足を止めた。
ブン!!とマチルダが槍を横薙ぎにする。ガン!!とその一撃が足を止めた男の剣の柄に炸裂し、剣は手を離れ宙を舞った。
空中をゆっくり回転しながら上へ飛んだ鞭剣は、続いたマチルダの鋭い突きに粉々に砕かれた。
「4」
数を呟き、マチルダが大きくバックステップで後方へ跳んだ。
逃げたと見たか残る5人が傘にかかって追撃する。
しかし、マチルダは逃げたのではなかった。
彼女は距離を調整し、残る男たちを自分から見て縦一列に並べたのだ。
「・・・風精離解・・・『精霊加速』解除」
マチルダが呟く。彼女を覆っていた淡い緑色の光が消えた。
「雷精展開」
バチッ!!!!と彼女の手にしていた長槍が凄まじい電撃に覆われた。
バリバリバリ!!!!!と白い光を放って放電する槍をマチルダが腰の高さに地面と水平に構えて、丸で弓を引き絞るかのようにぐぐっと後方へ引いた。
「・・・・行きます。『ライトニングディザスター』!!」
マチルダが迫り来る男たちへ槍を大きく突き出した。
その先端から雷を纏ったレーザーが放たれる。
轟!!!!と目を眩ませる閃光に我々は全員眼を伏せた。
そして再び眼を上げた時、もう全ては終わっていた。
炭化した男たちが倒れている。手にした剣もどれもほとんど原型を留めていない。
「5,6,7,8,9・・・終わりですね」
倒れた男たちを数えて、マチルダが静かに眼を閉じた。
「・・・・ぬかった・・ぜ・・・まさかこんなバケモンを・・・連れて来てる・・とは・・・よぉ」
苦しげな声が聞こえてそちらを見る。
それは3番目に剣を砕かれた男だった。
ガクガクと震えながらゆっくり立ち上がろうとしている。
「・・・・カカッ・・・けどよ・・・礼を言うぜ、いいデータが・・取れた・・・これでまた・・・『新型』の精錬・・が・・・」
ゴボッと泡を吹くと男が白目を向いて倒れた。
そしてそのまま動くことは無かった。

最後の男が倒れて動かなくなるのと同時に、結界は壊れ我々は元の街並みへ帰還した。
男たちも一緒だ。
我々に気付いた周辺の兵隊達が何事ですか、と走り寄ってきた。
「襲撃を受けたが撃退した。君たちはこいつらを収容してくれ。武器の残骸は後で調査する。扱いには気をつけろ」
倒れた男たちを指してアレイオンが兵達に指示を出す。
「・・・いや、それにしても流石はマチルダさんです。素晴らしい胸でした」
おい褒めるとこそこじゃねーだろ!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ふと、ルクを見る。彼女はまだ呆然とマチルダを見ていた。
無理も無い。ルクは前ゴルゴダと戦っている以上、よりマチルダの強さがリアルに感じられた事だろう。
あれがエストニア森林王国最強の4人、フォーリーヴズクローバーのリーダー・・・マチルダ・レン・アリューゼか・・・・。
というか・・・ぶっちゃけて言ってしまうと、元の姿に戻った私よりも完全にマチルダの方が強いな・・・。
大人の姿に戻っても、もう私の出番無いんじゃなかろうか・・・。
等と考えてしまう。
それにしても、先程ゴルゴダが使用した結界陣は黒の教団が得意とするものであるという。
ゴルゴダは教団の者なのだろうか?
しかしヤツはベルナデットの政敵が送り込んできた刺客だったはずだ。現にラーの都でヤツはナバールとヨアキムを殺めて口封じしている。
ゴルゴダと教団は別に関係が無いのか・・・それともベルナデットを封印した黒幕が教団と通じているのか・・・。
疑問は尽きない。

ともあれ、我々はアレイオンの案内で皇宮へと到着した。
内部を一周するだけでも数日かかりそうだな・・・。
見回して思わず感嘆する。
白亜の大宮殿だ。
「来たか異邦の客人よ。歓迎しよう」
低い威厳のある声が聞こえたかと思うと、司祭のようなローブを纏い帽子をかぶった老人がこちらへ近付いて来た。
神職の様に見受けるが、これまたえらくガッシリして大柄な老人だな・・・・。
ゆったりしたローブを着ていても鍛えた胸筋が伺える。
失礼ながらローブよりもプレートの鎧とグレートアックスの方がずっと似合ってる気がする。
「紹介しましょう。バルカン枢機卿です。神竜パーラムの神官にしてこの国の大臣でもある方です」
アレイオンがそう老人を紹介してくれる。
我々は畏まって頭を下げた。
「はっはっは、そう鯱張ることはない。聞けばお主らはベルナデットの恩人というではないか。ならばワシの恩人も同然だ。楽にしてくれい」
砕けた人物であるらしい。豪快に笑い声を上げるバルカン枢機卿。
アレイオンがふと訝しげな顔になる。
「・・・・猊下? 顔どうされたんです? ああ・・・奥歯まで飛んでしまっているではないですか」
確かにバルカンの右頬は赤く腫れ上がってしまっており、何とも痛々しい。
「ちょっと砂海でいいパンチを・・・・いやいや何でもないぞ。少々寝ぼけて熊と格闘してしまっただけだ、ハッハッハ」
どういう寝ぼけ方だ。
「さあこっちだ諸君。ここからはワシが案内しよう。皇姫様に張り付かれておるベルナデットが早く助けて欲しいと首を長くしてお主らを待っておるぞ。あんなに首を長くしてしまっていたらついブルドッキングヘッドロックかチョークスリーパーをかけたくなるわい」
・・・・・・レスラー?