第12話 邂逅と再開と-3


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何だかよくわからないままに廊下でブッ殺されかかった私だったが、とりあえず胴体と首は泣き別れにならずに済んだようだ。
数分意識を失っていたらしく、目を覚ますと私はバルカンの執務室へ運び込まれていた。
バルカンとベルナデットが話をしている。
「帰ってきてからこっちゴチャゴチャし通しで話す機会がなかったから今言っておくけど」
執務机の椅子に腰掛けたバルカンに、窓枠に手を添えて立つベルナデットは背を向けている。
「・・・ゲートの調整が済み次第、私はウィル達と下へ行くつもりよ」
「一時的な話かね」
ベルナデットがゆっくり首を横に振った。
「『住民として』この国を訪れる事はもう無いわ」
執務室に沈黙が舞い降りる。
バルカンは感慨深げに瞳を閉じていた。
「神の門の活性化まで、あとどのくらいの期間があるのか正確にはわからないけど、おそらく1年以内だと思う。・・・正直、私は外の世界へ戻ることにそこまで固執しているわけではないけど、他の魔人たちにはそんな事は関係がない。自分が開放される為に私の命を狙ってくる。だから私はウィルと一緒に戦うわ。下へ降りてね」
そうか・・・、とバルカンは静かに肯いた。
「どこへ行こうとお主の無事を祈っている。お主に神竜パーラムとボンデージ和馬のご加護があらん事を・・・」
神様とレスラーに一緒くたに祈るのか。
「しかし、ゲートの調整が済み次第とは言え、すぐこの国を出るワケにはいくまいぞ。お主はともかくとして、ウィリアムはな」
? 私の方にこの国に留まる理由がある?
そこまで聞いて私は身動きして、目を覚ましていることを2人にアピールした。
「起きておったか。丁度よい。ウィリアムよ。ワシはお主をある場所へと案内しなくてはならぬ」
それはどこだ、とバルカンに問う。
「この神都より西方へ20k程行った場所にある遺跡へだ。入り口は封印されておる。ワシしか開ける事はできぬ・・・・。そこは神獣の聖域・・・風の神獣、霊鳥ガルーダがお主を待っておる」
!!!
炎の神獣フェニックスと大地の神獣スフィンクスの事を思い出す・・・ガルーダも変態なのかな。まあ、この際それはどうでもいいが。
わかった。案内をお願いしたい、とバルカンに頭を下げる。

ベルと2人、バルカンの執務室を出た。
風の聖殿へは明日出立する事に決まった。DD達の滞在もバルカンは快く了承してくれた。
「私はゲートの調整があるから一緒に行けないけど、頑張りなさいよ」
バンと背中を叩かれる。痛い。
・・・・ふと、思う。そのまま口に出す。
寂しくないか?と。
「えー? そりゃ寂しいわ。何百年もお世話になってた国だし。・・・でも別にこれきり二度と来ないって言ってるんじゃないんだから、生きてればまた皆の顔見にも来れるわよ」
明るくそう言って、ふとベルナデットは表情を引き締めた。
「それに・・・このままここにいて魔人に襲ってこられても困るし、そもそも忘れてる? この国の内部も私にとって味方だけじゃない」
・・・・・そうだった。
失念していた。この国の重鎮の誰かが、ナバールに命じてベルナデットを幽閉していたのだ。
黒幕は教団と結んでいるのかな。
ゴルゴダの事を考えてそう疑問を口にする。そもそもゴルゴダが教団の関係者だという確証も無いのだが。
「どうかしらねー。この国に暮らす者にとって黒の教団と関わるっていうのは絶対のタブーだからね。ただ権力を欲しただけの輩じゃそこまでやらないわ。まあナバールは少なくとも直接教団とは何の関わりも無いでしょうね。教団と結んで悪事働けるほど神経太い悪党じゃなかったし」
まあ、確かに権力者にとって狂信者集団と関係してたなんて事実は命取りになりかねないだろうな。
「実質ナバールに私の幽閉を命じられる程の権力を持ってる人間なんて限られてる。あいつは気位だけは高かったし、自分より『格下』と見た相手の指示で危ない橋は渡らないはず。神護天将か枢機卿か宰相・・・この6人の内の誰かよ、黒幕」
・・・・・・・・・・・・・。
絶句してしまう。今までおぼろげだった黒幕の存在がいきなり身近なものとなった。
神護天将・・・・アレイオン、フェルテナージュ、カーラ、クバード。
枢機卿・・・・バルカン。
宰相とはまだ話をした事は無いが、宴の夜に挨拶はされた気がした。
この内の誰かがベルナデットの幽閉を・・・・?
「・・・噂をすれば何とやら。宰相キャムデンが来たわ」
廊下の向こうから痩せた青白い顔の男が歩いてくる。
一人だ・・・しかし何やらぶつぶつと言っている。
近付いてくるにつれその台詞がはっきりと聞き取れるようになる。
「・・・・・悪・・・悪なのだよ人間の本質とは・・・。邪悪は人が生まれ持った魂の根幹を成す要素。産まれてから一度も悪を為した事の無い者などいようか? ・・・否!! 断じて否である!!!!!」
そこでやおらキャムデン宰相はガバッと両手を広げて天を仰ぎ見た。
「・・・・嗚呼、素晴らしきかな悪よ!!!!! 陰謀!! 策謀!! はかりごとこそが我が生涯!!!! 我、邪悪に染まりこの世の全てを呪わん!!!!!」
・・・・○○○○だ・・・・。
「ううん、確かにほとんど○○○○だけど、まだ紙一重でこっち側の住人なのよ、彼。元々ああなの」
元々ああなのかよ!!!!
すると突然廊下の大扉がバン!と乱暴に開いて、数名の文官と思しき者達が大慌てで走っていった。全員脂汗を浮かべてお腹を押えながらだ。
・・・・そのまま全員トイレに駆け込んでいる。
「・・・・・クククク・・・・ティーポットに強力な下剤を仕込んでおいたのだ!!! まさに悪!!!! これぞ悪!!!!」
やがてトイレから、あああああああ・・・・と絶望の呻き声が響いてきた。
「・・・・・カハーッ!!! 全ての個室の紙を抜いておいたのだッッ!!! これぞまさしく悪鬼の所業なり!!!!!」
キヒハハハハハハハ!!!!!!と甲高い声で哄笑する宰相。
・・・・どう見たってもう完全に○○○○じゃないか。
てゆかコレも容疑者の一人なのか。
こんなのの命令で4年間も地下牢に放り込まれたら別の意味で死にたくなるな。

そして私とベルはバルカンの屋敷へ戻った。
そこは、混沌としていた。
「・・・・ホラ・・・・見なさいよ・・・・」
ベルとマチルダを見たエリスが、やおらカバンからがばっと般若の面を取り出すと自らかぶった。
「・・・・2人も増えてんじゃないのよッッッッ!!!!!!!」
ドガッ!!!!!と豪快にカルタスを蹴り上げるエリス。
カルタスはそのまま天井に凄まじい音を立てて激突すると、下へと落ちる。
それを床へと落とすことなく、真横に蹴り抜いて飛ばすエリス。
窓ガラスを破ってカルタスは大空に消えていった。
・・・ありがとうカルタス。お前が来てくれて本当によかった。
「・・・・えー・・・ちょっとちょっとちょっと、皆さんはえーと『ただの』仕事の同僚とかそういう間柄なんですよね? 決してそれ以上の関係じゃありませんよね・・・?」
そして何故かマチルダはオロオロしていた。
「いいえ・・・」
エリスが般若の面を外す。
てか面外したほうが怖いのはどうしてなのでしょうね。
「・・・私はおじさまにもう『何もかも』捧げた身ですけど、それが何か・・・?」
吐く息が白くなるんじゃないかって位の絶対零度の視線を放ってエリスが言う。
「えー・・・そんなの困るんですけどぉ・・・・」
私が一番困ってると思うな。
「いずれにせよ、もうこの状況を甘受するわけにはいかないわ!! ・・・勝負よ!!マチルダさん!!! 私が勝ったらもうおじさまに近付くのは禁止します!!! あなたが勝ったらその時は好きにしなさい!!」
なぬ!?
「・・・えー、でも勝って皆と同じになるだけなら敗北のペナルティと釣り合ってないと思います~」
「・・・それもそうね・・・。じゃあこうしましょう! あなたが勝ったらジュウベイさんが出て行く!!!」
「酷いわ!!??」
ジュウベイはショックでオカマ言葉になっていた。
「わかりました~。じゃあそれで勝負しましょう」
通ってしまった。さらばジュウベイ。
「それで、何で勝負するんですか?」
小首をかしげてマチルダが問う。
・・・・というか、エリスはマチルダの実力を知らないだろうが普通に試合とかしたら100回やって100回マチルダが勝ってしまうぞ。
しかしエリスはふっふっふと不敵に笑っている。
「・・・料理よ。お料理で勝負!! どっちが美味しい食事を準備できるかで勝負しましょう!!!」
むう、さりげなく自分が絶対の自信を持つステージで勝負するつもりか。策士だなエリス。
エリスの料理の腕はちょっと只事ではないレベルだ。
マチルダの料理の腕は知らないが、エリスより上というのはかなり厳しいのではないか・・・。
しかしマチルダはにっこり微笑むと。
「いいですよ。じゃあお料理で勝負ですね」
と明るく言ったのだった。