第4話 Northern Tiger-5


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キリエッタ!!
ビュッと鞭を振り解いて手元へ戻すキリエッタ。
・・・・生きてたんだ。毒飲まされて死んだって・・・・。
「まーそうね。毒なら飲まされかけたよ。それも1度や2度じゃない。何度もね。刃物持って直接殺しに来られた事も何回かあったし、ホント監獄の中にいたっておちおち寝てられやしない」
うんざり、という風に肩をすくめて言う。
「いい加減鬱陶しくて、お偉いさん方に掛け合ったのさ。どうにかしてくれってね。そしたらさ、向こうさんも追い払っても追い払っても沸いて出てくる暗殺者に辟易してたみたいでね。あっさり刑罰が変更になったよ」
懲役じゃなくなったんだ。
「そ、『奉仕活動』って奴、迷惑かけたこの島でね。普段から住民の生活に貢献しつつ、有事の際には命を投げ打って住民を守れってさ。ま、あれさね。死ぬなら目の届かないとこで勝手にやられてくれって体のいい厄介払いってわけさ。許可無くこの島から出ればその時点で死罪が確定」
そう言いつつもキリエッタは涼しい顔をしている。
「今はうちの店、ラーメンいぶきの住み込み店員よ。まだ皿洗いだけど!」
イブキが言う。なるほどキリエッタの二の腕にはイブキと同じ紺色のバンダナが巻いてある。
「そーいうわけなんで、あんた達に恨みはないんだけどさ、悪いね」
キリエッタがエリックとルノーの方を見た。
「・・・・ルノー、キリエッタ・ナウシズを任せま・・・・」
エリックが言いかけたその時、
「そうはイカの墨入りラーメン!!!」
真上から飛び込んだイブキのかかと落しがルノー目掛けて振り下ろされる。
「『空蝉』!!」
ルノーが消えた。
一瞬前までルノーが立っていた石畳にかかと落しが炸裂する。
砕けた破片が派手に宙に舞った。
そしてエリックを狙って放たれた鞭の一撃を彼がサイドステップでかわす。
「あんたの相手はアタシさ!色男!」
その場からやや離れた場所にルノーが現れる。
彼女の手は刀の柄にあった。
「かまいた・・・・」
迷わずイブキはルノーに向かって地面を蹴った。
一気に距離を詰めて拳を振るう。
「・・・・・くっ!」
ルノーがその拳を上体を横に滑らせて回避した。

「お、やってますなぁ」
その時、場の雰囲気にそぐわないのん気なセリフが聞こえてそっちを見る。
漂水だった。
「・・・・遅刻よ、鳴江君」
キリコが半眼で言う。
「まあ色々やる事ありまして、大目に見てくださいよ霧呼さん」
漂水の口元にはいつもの薄笑い。
キリコは別段それを気にした風も無く、視線を私達に戻した。

私は右目を覆っていた包帯を外した。
視界が一気に広くなる。
「・・・・・・ぬ・・・・・・・」
カミュの表情が変わった。
「なるほどな、それが本当のお前か」
周囲に冷気が満ちる。
吐息は瞬く間に白くなる。
「この前のつもりで戦ったら大怪我しそうだな」
タバコを投げ捨て、足で揉み消す。
そしてカミュはネクタイを緩めた。
「寒いのはあんま好きじゃねぇ。とっととブッ倒して元の気温に戻すぜ」
そして私目指して一気に突っ込んできた。

アヤメとシグナルの戦いは互角だった。
互いに有効打を与えられないまま傷を増やしていく。
「・・・・私は、もう迷いません」
アヤメが正眼に構えを取った。
「大事な物を守る為に戦います!!!!」
神速の突きをシグナルが剣で受ける。
しかしその勢いを殺せず大きく後ろへ飛ばされたシグナルは工房の壁に激しく激突した。
「・・・・・・ぐっ!!!!」
叩き付けられた壁にヒビが入り、一部が砕けた。
「・・・・少しはやるようだな」
口元の血を拭って言うシグナル。
「だが僕にも譲れない物がある。・・・『奴』を見つけ出して倒す。その為にここまで来た」
剣の切っ先を上げてアヤメに向ける。
「それまでは邪魔をするのなら例え誰であれ容赦はしない!! 本気でいくぞ!!!」
叫ぶと同時に、シグナルのオーラが爆発的に膨れ上がった。
「・・・・なっ!!」
アヤメが数歩下がる。
「うは、こりゃすげぇな」
ヒュウ、と漂水が口笛を吹いた。
「顕現せよ!!我が守護神獣、ローレライ!!!」
シグナルの背後に輝く鎧で武装した背中に鳥の羽を持つ女性が浮かび上がった。
「奴を討て!! ローレライ!!!」
『はい、マスター』
バサッ!と羽ばたいたローレライが上空からランスを構えてアヤメを強襲した。
『お覚悟を・・・ランサーアブソリュート』
防御の為に構えたアヤメの刀に炸裂したランスは輝く爆発を巻き起こした。
悲鳴を上げてアヤメが吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる。

イブキはルノーに対して徹底的に距離を詰めた接近戦を挑んでいた。
「・・・私の攻撃の正体に気がついてるようだな」
イブキの猛攻をさばきながらルノーが言う。
「あんたの攻撃の秘密はアヤメさんが教えてくれたわ! かまいたちとか空蝉とか真空波や変わり身を連想させる名前が付いてるのは全部フェイク!!」
ブン!と回し蹴りを放つイブキ。
ルノーがバックステップでその蹴りを回避する。
「かまいたちの正体は相手と自分の距離を一瞬だけ『無かった事』にして斬撃を直接届かせる次元断!! 空蝉は同じ理屈で自分が空間を跳躍する転移術!! その弱点は・・・・」
真正面からハイキックを放つイブキ。
ルノーが空蝉でその場から消える。
イブキは間髪入れずに降ろした足を軸足にして真横の空間にミドルキックを放った。
その蹴りはその場に現れたルノーを直撃した。
「・・・・・・がっ!!!!」
「跳ぶ直前に着点を目視で確認しなくてはならない事!!!」
ザザッ!!と地面を擦って後方へルノーが大きくさがった。
「・・・・おー、痛。なんて蹴りだ。口から内臓出るかと思った」
ルノーがこきこきと首を捻って鳴らした。
「なんて事だ。私が『楽する為の』特技の正体が全部暴かれてしまった。これじゃあもう本気でやるしかないじゃないか」
ルノーが刀を構える。
「・・・・実に、大変、まったく、面倒くさい」
その鋭く冷たい殺気は先程までとはまったく別物だ。
対峙するイブキの頬を一筋、汗が伝った。

倒れたアヤメが必死に震える手を刀へと伸ばす。
ざっ、とその目前にシグナルが立ち塞がった。
「お前はよくやった。・・・・だが、ここまでだ。観念しろ」
しかしその時、横合いから誰かが高速で二者の間に飛び込んだ。
「ようやった小娘!! ・・・・後は任せい!退いておれ!!!!」
ドガッ!!!とその何者かがアヤメを蹴り飛ばした。
ガン!!とアヤメは壁にぶつかって「はぅ」と昏倒してしまう。
「ふぅ・・・間一髪じゃったな」
いや、アンタ止めさしたけどね。
って・・・・誰?
それは見た事のない若いオーガの女性だった。
長い髪に道着姿。スラリと背が高くスタイルがいい。
腰には物騒なナタを下げている。
「過日の恨みを晴らしにきたわい」
シグナルを見て女性がニヤリと笑った。
まさか・・・・まさか・・・・・。
「誰だ?」
シグナルが眉をひそめる。
「このババの顔を見忘れたか!!」
あああああああやっぱりだ!! 見忘れてなくたってわかんないよ!!
どう見たって20台じゃん!!!!
「あの老婆だと?」
「フン、呪いが効かんのでは肉弾戦するしかなかろうが。それ用に肉体改造してきたわい。お陰で若返ったような気分じゃ。ヒッヒッヒッヒ」
いや実際若返ってるよ。
シグナルもわずかに怯んだようだが、すぐにいつものポーカーフェイスに戻る。
「誰であろうと挑みかかって来るなら容赦はしないぞ・・・・ローレライ!!!!」
シグナルの叫びに応じて静かに背後に控えていたローレライが再び戦闘態勢をとった。
「馬鹿めが!! 属霊を使うのが己だけと思うたか!!!」
オババが印を結んで呪文を唱えると、その背後に何者かの姿が浮かび上がった。
「ゆけい!! 亡霊戦士トーガよ!!!」
『死なせてくれよー・・・眠らせてくれよー・・・・』
なんか頭に三角の白い布つけた青白い顔のトーガが出てきた。
「たわけ!! 己の都合など聞いておらぬわ!! 魂魄擦り切れて消滅するまで働けい!この負け犬の落ち武者が!!!」
わあひどい。
そしてトーガとローレライが空中で激しくぶつかり合う。
その下ではオババの振りかざしたナタがシグナルの魔剣とぶつかり合って火花を散らした。