第18話 竜の国から来た刺客-5


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我々は小船を戦艦へと横付けした。ご丁寧にへりから縄梯子が掛けてある。
これで上がって来い、という事なのだろう
・・・行こう、負傷した私に薬を投げてくるような奴だ。ここまで来てまさかこの梯子が罠でもあるまい。
皆を振り返る。
・・・・誰も死ぬな、とだけ言った。
先頭で梯子を登る。続いてトーガとDDとひぢりが上がってくる。
梯子を登るのはそのメンバーだけだ。
後のメンバーの事に気が行かないようになるべく派手に立ち回らなくては・・・・。
そして私たちは広い甲板へ上がった。

「よく来たな!バーンハルト!!」
我々を出迎えたのは威勢良いカイリの大声だった。
ルクシオンとカイリを中心に6人の竜騎士達がいる。
「・・・・これはこれは」
「大した大軍団ですな?剣帝殿」
そのうち数人が我々を見て嘲笑した。
さて、始めるか・・・・少々派手にいこう。
すうっと息を吸い、いきなり私は殺気を全開で放った。
見えない殺意の波は私を中心に波紋を描くように戦場に広がって放たれた。
「!!!!」
「ぬぅ!!!」
竜撃隊員達がわずかに後ずさる。
「・・・・へぇ」
カイリが不敵な笑みを見せた。
ルクシオンは無表情のまま変化は見られなかった。
「・・・・ウィル」
ん? 小声で後ろからDDが声をかけてくる。
「高クラーケンが今ので気絶した」
てゆか上がってきてたのかよ高クラーケン!!!!!!111
「お喋りはもうよかろう。俺は戦いに来た。下らんやり取りを聞きに来たのではない」
トーガがシュバルツシルトを抜き放った。
「来い。面倒だ、数人一度に来ても構わんぞ」
その言葉に竜撃隊員の一人が前に出た。
「バカめ。誇り高き我ら帝国の竜騎士団員が多対一などと言う恥知らずな真似をするか。貴様の相手などこの俺で十分だ。俺の名はリーヴス!貴様も名乗れ」
そう言って長剣を抜く。
「これから死ぬ貴様に名を告げる意味は無い」
「! 上等だ!」
そしてトーガとリーヴスは戦闘を開始した。

「ホラ、ぼーっとしてると風邪引くよ?」
DDは問答無用で数名の竜撃隊員に襲い掛かっていた。鋭いツララをミサイルの様に撃ち出す。かわした相手は蹴り飛ばす。
本気の深追いはしない。かく乱が目的だと言った私の意図をよく汲んでくれていた。
カイリがゆっくり歩いて前に出てきた。ひぢりを見ている。
「やあ、この前はゴメンね。つまんなかったでしょ? お詫びに今日は最初から本気でいくからね・・・・」
カイリの瞳が金色に染まる。
『ドラゴンリンク』・・・竜騎士の奥義。竜騎士は全員、感応連結により自身と主従状態にある飛竜の戦闘力をそっくり取り込んで上乗せできるのだ。
「・・・・じゃあ行くよ!!!」
走りこんだカイリが下からひぢりを蹴り上げた。
ひぢりがそれをハンマーで受ける。しかし勢いを殺せずにひぢりは上空高く吹き飛ばされた。
その間にももうカイリはそれより高く跳んでいる。
「まずはこの間のお返しから・・・・同じ事するよ。ドラゴンスタンプ!!」
真上から踏みつけるようにひぢりを両足で蹴り飛ばすカイリ。
ひぢりは甲板に叩き付けられて鋼鉄製の床板を激しくひしゃげさせた。
「・・・・・・・く・・・・」
「『ちょっとハンパなく痛ぇ!!!』つーかあのボーヤこのよさいさんのラブリーなボディに足跡付けましたよ!?」
よさいさんが絶叫した。

そんな周囲の喧騒にはまったく目もくれずに、最初からルクシオンは私だけをただ見つめていた。
頃合と見たのか、鞘に収められたままの長剣を手に取り私に向けて放る。
それをキャッチした。
・・・・・私の神剣、エターナルブルーだった。
ここまでするのか。
「私も今日は契約武器を使いますので」
そう言ってバッと右手を真横に突き出す。
「来い! グングニール!!」
上空から黒い雷が落ちる。それを突き出した右手でルクシオンが掴み取った。
その手には黒い長槍があった。
・・・・かつてあのアホが使っていた槍だ。
「行きます」
帝国最強のドラグーンが来る。
その嵐のような突きの連打を私は神剣で受け流した。
戦いながらエリス達の事を考える。
上手くやってくれ・・・・もしもの時は彼らだけでも逃げてくれれば・・・・。
「余裕ですね・・・・他の事を考える余裕があるなんて!」
初めてルクシオンの言葉にわずかな怒りの色が見えた。
攻撃が私の肩口をかすめる。血が飛沫を上げた。

しかし私の予想よりも事態は悪化する方が早かった。
キシャアアアア!!!と空から甲高い叫び声が聞こえた。
その場にいた全員が空を見る。
赤い飛竜がいた。
「姉さんのクリムゾンウィングだ!」
カイリが明るい声を上げる。
その上空の飛竜から一組の男女が飛び降りてくる。
赤い髪の女性と、こめかみにキズのある口ヒゲの男だった。
「ちょっとちょっとちょっとちょっと・・・・何よ何だよこの騒ぎは。誰かオジさんにわかるように説明してちょうだいよ」
「おっちゃんも来たんだ」
カイリが言う。赤い髪の女性は微笑んでカイリに手を振っていた。
「皆の前でおっちゃんはやめなさいよ海里。ちゃんとスレイダー将軍て呼びなさい。それでなくたって最近オジさん皆に気さくに接しようってポリシーが行き過ぎちゃってたまに『あれ? こいつらホントにオジさんの事将軍だと思ってる?』とか不安になるんだからな。・・・・で、これなんの騒ぎよ」
スレイダーと自分を呼んだ男がぼりぼりと頭をかきながら言う。
「バーンハルトの神剣を奪って来たんだ。そしたら今取り返しに来てるとこ!」
「・・・・そんな明るく言われたってね、それもうオジさんが考えてた最悪の事態から数えて下から3番目くらいの状態ですからね。・・・オイ、お前らオジさんをストレスでハゲさそうって魂胆ならやめとけよ、効果抜群すぎるぞ。今オジさんの毛根はストレスでお前らの想像してる10倍くらいのスピードで死んでいってるから、マジで」
そうしてスレイダーはルクシオンの方を見た。
「んでルク、お前が付いててなんでこんな状況になっちゃってんのよ」
「お言葉ですが将軍。諜報部の情報でも現在目標に1番近いのはウィリアム・バーンハルトである事は明白です。こうするのが1番の近道だと思います。それに彼は我々帝国とも因縁浅からぬ人物」
ルクシオンが静かに、しかしはっきりとそう言う。
スレイダーがやれやれとため息をついた。
そして私の方を見る。
「どうもねミスター・バーンハルト。あたしゃ帝国で将軍やってるスレイダーってつまんないオッサンでしてね、そんであっちの赤い髪のべっぴんさんがうちの竜騎士団長のシトリン・メディナ・クフィールね」
紹介されたシトリンが会釈する。
「うちの若い連中が突っ走っちゃって迷惑かけちゃって申し訳ありませんやね。・・・・・けどま、うちも看板揚げて来ちゃってるんでね、始めたケンカから引っ込むわけにはいかないんですわ」
その言葉を合図に、戦闘をやめていた竜撃隊員達が再び構えをとった。
「まー図らずもアタシら来た事で更にエグい布陣になっちゃったけどこっち。悪く思わんでくださいよ」
と、そのスレイダーの前にDDが進み出た。
「って、いやオジさんとこ来なくてもいいからね? 若い子は若い子同士で楽しんでいいんだからね?」
「お前は・・・・皆にはぶつけられない。私のカンがそう言ってる」
珍しく真剣な表情と声でDDが言った。
はーぁ、と大げさにため息をついたスレイダーがうつむいて頭をかいた。
「まあ落ち着きなさいって・・・・そうだ、じゃあさ、まずはこうしないか?」
ドン!!!! と爆発音のような音がして艦からかなり離れた海上で水柱が上がった。
DDがいない。スレイダーはハイキックの姿勢で高く足を上げていた。
蹴り飛ばしたのだ。この男ドラグーンだ。
「そうそう、まずはキックから・・・・って、あ、今のちょっとズルかった? やー歳の分のハンデって大目に見てよ。まー大体がね、戦場で卑怯だ汚いだってのは通用しなくてね、うちの連中にはいつもその辺キツく言い聞かせてあるんだけどね」
「おっちゃんきたねー!!」
「最悪ですね」
でも批難してるのはカイリとシトリンだった。
「・・・・あれ、もしかしてオジさんまた部下の信用なくしちゃってる? お前らね、お前らはそうやって好き放題言ってるだけでいいかもしれないけどね、オジさんのハートはもうズタズタですからね」
大げさに肩をすくめたスレイダーがやれやれと首を横に振って見せた。
そして改めて私達の方を見る。
「・・・・ともあれ、これで残り3人だよね。スマートにいこ。全員で一気にね。こんなとこでケガしてもつまんないしね、こっち半分バカンスのつもりで来てるんだからね」
その言葉を合図に、カイリが、シトリンが、ルクシオンが、そして竜撃隊員が私とひぢりとトーガの3人を取り囲んだのだった。