第15話 風の聖殿-2


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瓦礫を振り払ってガルーダが這い出してくる。
改めてその巨体を見て気付く。
ガルーダは頭部を立派な前立ての付いた東洋風の武者兜と面当で覆っている。
「・・・・すいません今のちょっとNGで、リテイクお願いします」
ペコペコ頭を下げて言うガルーダ。
リテイク言うなリテイク。
「あー後壊しちゃった建物は見積もりとって請求書下さい」
言いながらバサッと翼を鳴らして再びガルーダが大空へ飛び上がる。
「ば、馬鹿なーッ!! ガルーダ!! 自ら聖域を出てきたというのか!!!!」
バルカンがさっきと同じ様に驚愕して叫ぶ。
てか付き合いいいなバルカン。
『お前達が我が試練に挑むというのか・・・この霊鳥ガルーダの試練に』
上空を旋回しながらガルーダが呼びかけてきた。
『命知らずな事だ。我の課す試練・・・乗り越えるれ・・・・』
あ、噛んだぞ。
『・・・・・・・・・・・・・・・』
無言の空間にガルーダの立てるバッサバッサという羽音だけが響く。
『・・・すいません、リテイクで』
いいよもう、話先に進めろよ。

ガルーダはバルカンの屋敷の屋根に舞い降り、我々を見下ろした。
『我はこの都より西方にある遺跡にてお前達を待つ。見事遺跡の試練を潜り抜け我が元へ辿り着けたのなら、お前達を認めてやろう』
「ちゃんと『役』に入ると声質まで変わるのね」
エリスが感心して言う。
「や、自分らこれでご飯食べてますんで」
返事しなくていいっつの。
どうすんだこの微妙な空気。出発前だというのに。
ヒラリとガルーダから何やら一枚紙が落ちてきた。
・・・・? 何だろう。
拾い上げて見てみる。
地図? ・・・どうやらそれは遺跡のMAPらしかった。
やや丸みを帯びた綺麗な字で几帳面に解説があれこれと書いてある。
・・・って、赤字でトラップの箇所や回避方法が説明してある・・・・。
「じゃ、一応ゴールの自分の所まで来れたらクリアっていう段取りで行きたいと思いますんで」
段取り言うな段取り。

ガルーダは飛び去った。
何とも言えない微妙に弛緩した空気を残して。
「よし、では出発するとしようか」
バルカンが言う。皆頷くと思い思いに歩き出した。
我々はエレベーターを使って一層に降り、そこから神都を出て西方の遺跡へと旅立った。
走竜を3頭と輿竜を1頭借りて騎乗しての旅だった。
「しかし、シンラだけ留守番にして悪いような気がするのう」
輿竜の上でジュウベイが景色を見ながらそう言った。
「うーん、完全にオフィス空っぽにはできなかったしねー。埋め合わせは考えるわ」
DDがそう返事をする。
シンラか・・・無表情の彼女の顔を思い出す。
元気にしていてくれればよいのだが。
それにしても変わった人選で来たものだ。
カルタスはまぁ、何となくわかる気がするがカイリが来るとは思わなかった。
「まあソイツ暇そーだったから。コキ使ってやろうかと思って」
DDは何だか酷い事を言っている。
そのカイリは何だか上の空だった。我々の話が耳に入っていないのかボーっと景色を見ている。
・・・・おい? カイリ?
呼び掛けても気付かないので肩をトントンと叩く。
するとカイリは思い切りビクっと飛び上がった。
「・・や!! 違うって!!!! ・・・僕は姫様の事とかそんな・・・・!!!!」
何やら大慌てに慌てている。
・・・・姫様?
皆がカイリの方を見ていた。
「何だ、結婚式の話題か? 国を挙げての一大式典となろう。姫様の花嫁姿も楽しみだな」
ガッハッハッハ、と豪快に笑うバルカン。
「・・・け、結婚・・・・?」
カイリの表情がカキーンと固まった。
そのまま、ギギギギギと軋む音を立てて首をこちらへ向ける。
「結婚て・・・誰の・・・?」
いや、だから皇姫様のだが。
するとカイリ、突然ガバーっと私の襟首を両手で掴み上げた。
「何だよ結婚って!!! どういう事だよ!!!!!」
そのまま渾身の力を込めて私を揺さぶるカイリ。
ぐ、ぐるじい・・・・・。
「ちょっとこのスカタン!!! ウィルに何すんのよ!!!!」
そのカイリの延髄に背後から水平にDDがキックを叩き込んだ。
ぶっ飛んだカイリを前方に待ち構えていたバルカンがガッシリとキャッチした。
そしてブレーンバスターの体勢に抱え上げてそのまま大地に叩きつける。
てゆかこの老人は何で誰かが痛め付けられるとプロレス技で追い討ちをかけるんだ。
完全に昏倒してしまったカイリを輿竜に積んで我々は行軍を再開した。

やがて我々の前に切り立つ崖の壁面に作られた巨大な石造りの門が姿を現した。
「着いたぞ、ここが霊鳥ガルーダの遺跡、風の聖殿だ」
バルカンが門を見上げて言う。
そしてバルカンは門に向かって祈りを奉げ聖句を唱え上げた。
門が淡く輝き、重たい音を立ててゆっくりと開いていく。
「霊鳥ガルーダは、皇国の守護竜パーラムと親交の深かった神獣。その縁で代々パーラムの神官の長にはこの封印を解く方法が伝わっているのだ」
なるほど、皇国と風の神獣にはそのような関係があったのか。
我々は風の聖殿へと足を踏み入れた。
風の聖殿と言うだけあって中には緩やかに風が通っている。
む・・・背後からも生暖かい風を感じるな。
「おじさま、それカルタスさんの鼻息」
紛らわしい上に気持ち悪いよ。
私はガルーダの落としていったMAPを見た。
入り口からちょっと進んでみた感じ、MAPは正確だ。
・・・という事はトラップの位置と回避方法も・・・。
その後、2箇所程トラップの場所を通過した。いずれも赤字の注意で書かれている通りの方法でトラップは回避できた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
後はもうこれ、このまま最深部までいくだけだな・・・。
その気の緩みがまずかった。
トラップはMAPに記された場所以外にはないと思い込んでしまった。
そう、ガルーダが準備したトラップはMAPの箇所にしか無かったのだが・・・。
突如、先頭を歩いていた私の足元からズルリと灰色の風景が広がった。
違和感は瞬く間に周囲の風景を一変させる。
その不快な違和感には覚えがあった。
・・・・・黒の教団の使う闇夢結界陣!!!!!
初めて神都へ着いた日の事を思い出す。

灰色に変じた周囲の空間から、ゆらりと数人のフードを目深に被った黒ローブの者達が現れる。
全員が黒い刀身を持つシミターを手にしていた。
こいつらが黒の教団員か・・・・。
「俺の結界に飛び込んできたのがお前とはな・・・。運命って奴を感じるなぁバーンハルト」
ローブの者達の中から1人の男が進み出てきた。
銀色の髪の背の高い男だ。黒い槍を手にしている。
男の顔にも声にも覚えは無い。
しかしその口調にだけは、どこか記憶に引っかかるものがあった。
・・・ゴルゴダ、か。
その名を口にする。
男がニヤリと笑った。
「ようやく会えたな。そうだ、俺がゴルゴダだ」
ゴルゴダと名乗った男を見る。
・・・強い。これまでの鞭剣使いたちとはまったくの別物だ。
強さの底が深すぎる。正確に力量を窺い知れない。
纏った雰囲気だけでここまでとは・・・・。
「積もる話もあるんだがな。俺の連れどもがまずお前に用があるらしい」
肩をすくめてゴルゴダが後ろに下がった。
入れ替わりに教団員達が前に出てくる。
「お前の命が欲しいらしいぜ。世知辛い話だなぁ」
ショートソードを抜く。
・・・まずい・・・この身体でこの人数は・・・!!
構える私にシミターを構えた教団員達が一斉に襲い掛かってきた。