第2話 翼を求めて-3


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三銃士・・・カミュ・・・。
もう来た。昨日話聞いたばっかなのにね。
・・・随分早かったじゃん。
「ん? ああ、俺は前の仕事がサルハッドの群島地域だったからな。そっから直行して来た」
休暇の予定がパーだぜ、とカミュは、すぱーっとまた紫煙を吐く。
「残り3人は追っ付け来る」
その言葉が引っかかった。
何、あんたたち4人で来んの?
「それな、半年位前に銃士隊に新入りが入ってよ。そいつが大統領閣下のえらいお気に入りでな。あっという間に俺らと同格扱い。今じゃすっかり四銃士ってワケよ」
誇らしげではなく、かといって忌々しげというわけでもなく淡々とカミュはそう言った。
敵は4人か。
やっぱ戦いになるのかなー。ヤダなー・・・ウィルいないのに揉め事になるの。
それで、チャンバラじゃないって今日は何しに来たの?
「あーん? そんなもん挨拶に決まってるだろうが。『友好親善大使』だぜ?」
そう言って不敵に笑う。
態度からは友好のユの字も感じられないね。
「この島の著名人の方々をご挨拶回りしてる。ウィリアム・バーンハルト先生は上か?」
そう言って看板の出ているオフィスのある建物の2階を仰ぐカミュ。
ウィルは今いない。出かけてるよ。しばらくは戻らない。
「・・・・ほォ」
カミュの目が鋭く光った。でもそれ以上その件についてはつっこんではこなかった。
「なら今日はこれで失礼する。他にも回る場所あるんでな」
そう言ってカミュはふっと町並みに視線を移した。
「いい町だな。・・・・自由で暖かくてな。アンタらが大事に思う気持ちもわかる」
眩しいものを見るみたいに目を細める。
そして私へと視線を戻す。
「けどな、こっちも仕事で来てるんだ。手は抜かん」
・・・・・・・・・・・・。
そっか、やっぱりね。
彼は宣戦布告に来たのだ。
「それだけだ。じゃあまたいずれな」
背を向けてカミュが去っていく。
・・・・あーもう!ウィルの事だけでも頭が痛いのに面倒持って来て!!
ちょうどそこに通り掛ったホセに私は声をかけた。
ホセ、いい男がいたよ。あっち。
去り行くカミュを指さす。
「・・・・・・ンンンンン!!?? ゴチになりますよおおおおおおおおお!!!!!!!」
猛牛の様にホセは砂埃を上げてカミュに突っ込んで行く。
カミュはホセを見るなりギャアアアアアアと絶叫を上げて逃げていった。

とんだ邪魔が入った。
私はゲン爺の工房までやってきた。
彼の弟子たちが作業台に向かっている。
その内の1人がゲン爺を連れてきてくれた。
やほー。
片手を上げて彼に挨拶する。
「よゥ、来たか。待ってたぜ、お嬢」
キセルを吹かしながらゲン爺が私を見る。
・・・・え? 待ってたって?
「今度は何やらかそうってんでぃ。漂水のヤロウなんかと組んじまってよォ?」
ゲン爺が口にした漂水の名前に私はわずかに身体を固くした。
あいつ、ここに来たの?
「ああ、あんにゃろう2,3日前にフラッと来てよォ。数日中にお嬢が空飛ぶ船欲しいって言って来るから図面引いといてやれっつーのよ。あんにゃろうの事は気に食わねェがよぉ?そんなダマシくれる奴じゃねーだろうし、何よりお嬢の名前出されたんじゃやらねーわけにもいくめぇよ。だから図面は引いといてやったぜ」
やった! ありがとう!!!
私はゲン爺にガバッと抱きついた。よせやぃ、とゲン爺が照れる。
でも漂水の事が気になる。あいつ何が目的なんだろう・・・・こんな根回しまでして・・・・。
漂水と組んで何かしてるわけではないとゲン爺に説明しておく事にする。
空の上にウィルがいるんだとも。
「かーっ! あの先生今度はお空の上ってか。お嬢も大変なヤローに惚れたもんだ」
ぴしゃりと自分の額を叩くゲン爺。
でしょー、と私は笑ってVサインを出して見せた。

ゲン爺の話では、エンジンをルーナ帝國に発注してあるらしい。
届くまでにしばらくかかるだろうとの事。
そこはダダを捏ねても仕方が無いので、大人しく待つ事にする。
彼の工房を出ると時刻はとっくにお昼を回っている。
お腹も空いたし、私は昼食を久しぶりにラーメンいぶきで取る事にした。
ガラガラと引き戸を開けて店内に入る。
・・・いぶきー、いつものやつねー。
「いらっしゃいDD、もやしラーメン大玉ね。待ってて」
そう言うとイブキは手際よく調理を始めた。
・・・・・・・・・・・・・・。
カウンターに座ってイブキの様子を眺めながら、私は何となく尋ねてみた。
・・・ねぇ、いぶき。キリエッタってどんな人だった?
ぴたっとスープを混ぜていたお玉が止まる。
「どうしたの急に? ・・・んー、キリエッタねぇ。生意気な奴だったわ。ラーメン馬鹿にしてさ!だからぶっ飛ばしてやったんだけど」
へへん、とイブキが胸を張る。
「今度会ったらラーメン食べさせてやってその偉大さをはっきりわからせてやるわ!」
そう言ってイブキは白い歯を見せて笑った。

んー・・・・・・。
一夜明けて、オフィス。
私はとっくに朝食の終った食卓に突っ伏したまま唸り声を上げていた。
結局キリエッタが命を落としたという話はイブキには出来なかった。
よかったのかな、それで。よくわかんないね。
出勤してきたシンラが私を見て、どうしたの?とえりりんに聞いている。
「わからないけど、変なものでも拾い食いしたんじゃないの?」
何かひどいこと言ってるよー。後でぐりぐりしてやろう。
「おはよーシンラ。今お茶を入れるねー」
勝手知ったる他人のオフィス。
まるで自宅と言わんばかりの手馴れた手つきでコトハが紅茶を淹れている。
今朝は早くから1階の七星3人組がオフィスに顔を出していた。
彼らが遊びに来るのはいつもの事だけど、こんな早い時間から3人とも来るのは珍しい。
「・・・・賑やかね。何かあるの?」
シンラも同じ事を思ったようだ。
するとウィルのデスクに座って彼の本を読んでいたオルヴィエが視線をこちらへ向けた。
そして、もうすぐわかるわ、と笑った。
それから少しして、開けてあった窓から1匹の蝶がひらひらとオフィスに舞い込んできた。
「む、来た!」
そう言うとオルヴィエはデスクの上のメモ帳を1枚千切って目の前にかざした。
蝶はそこへ飛んでいくと空中で無数の文字に分解する。
文字はそのままメモに吸い込まれて1文になった。
『第四埠頭に待ち人来る』
「第四ね・・・・」
オルヴィエが応接テーブルの上に本を広げて何事か唱えた。
すると本の上に浮かんだ球体に港の風景が映し出される。
ほえー・・・・初めて見るけどこれは便利だね・・・・。

港には丁度大型の客船が到着した所だった。
大きな荷物を担いだ大勢の旅行客や冒険者達がタラップを降りて港へとやってくる。
係の人が拡声器を手に入島審査を行う建物まで皆を誘導している。
そんな喧騒の中、私はタラップの脇に見知った顔を見つけた。
黒スーツにサングラスのその男はどことなく不機嫌そうに(いつもだが)タバコを吹かしている。
「あー、来てるね迎えに。三銃士筆頭『鐵のカミュ』『不死身の男』『ドラゴンが踏んでも生きてる男』」
オルヴィエが言う。そしてその視線はタラップへ。
黒スーツの小柄な姿がタラップ上にある。その腰にはカタナが下がっている。
「三銃士の紅一点ルーシー・N・レンブラント、通称ルノー。銃士隊の切り込み隊長。『絶対にかわせない剣撃を持つ女』」
オルヴィエがそう説明する。
ルノーがカミュの姿を見つけて片手を上げた。
「やあリーダー、出迎えとは感心だな。褒めてやろう」
「偉そうだなてめーは相変わらず!!」
続いて眼鏡の男が降りてくる。
「三銃士エリック・シュタイナー。『銃士隊の参謀』『もっとも手強い銃士』」
エリックがカミュに会釈する。
「ご苦労様ですリーダー。お迎え恐縮です」
「よう参謀。またお前の脳みそに役立ってもらうぜ」
そしてカミュはタラップ上に視線を向けた。
「・・・・で、船旅の間に『新入り』とは少しは仲良くなれたのか、お前ら」
ルノーが肩をすくめる。
「この航海の間で私が唯一得られた情報は『彼は自分の事を話したがらない』と、それだけさ、リーダー」
あ、そうか4人で来るんだったっけ。
すっかり忘れてた。
「・・・・・4人目。噂の新人君ね・・・・。さてどんな奴なのか・・・ぅえ!!!!??」
オルヴィエが驚愕に絶句した。
タラップを降りた4人目の黒スーツは半獣人の青年だった。
「・・・・バカな・・・・」
ゲンウがソファから腰を浮かせた。
カチャン!と音がした。そちらを見る。
コトハの手からティーカップが転がり、中身はさーっとテーブルの上に広がっていた。
「・・・・・・・しぐぷー・・・・・・・・・」
そしてその口からかすれた呟きが漏れたのだった。

~DD回想より~