第18話 竜の国から来た刺客-1


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その日、私は表の騒がしい声で目を覚ました。
う、もう朝か・・・・。
私は自室ではなくオフィスのソファで寝てしまっていた。
そうか、昨日は遅くまで文献を読み耽って、そのまま寝てしまったのだな・・・。
「ここだここだよ!間違いない看板出てる!!」
「わーん!! ウィリアム様ー!!」
寝ぼけ眼をこすっていると、騒がしい声はどたばたと階段を駆け上がる足音を伴って2階へ上がってきた。
そしてまたノックも無しにオフィスの扉がバーンと開け放たれた。
そして見知らぬ鎧姿の二人組の男が突っ込んで来る。
「申し訳ありませんウィリアム様!! 我々・・・・・・うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
と思ったら私を見るなり叫んで表へ飛び出していった。
何だ何だ一体・・・・。
とか思ったら気がつけば私にDDが寄り添ってすーすーと寝息を立てている。
う、いつの間にもぐりこんだんだ・・・・。エリスに見つかったら私がぶっ飛ばされるんだからやめなさい。
「ダメだ今ダメだお楽しみ中だった!!」
「あ、後にしようか1時間くらいでいいのかな!!」
人聞きわりーな楽しんでねーよ!!!!!!!
私は思わずドアの外に向けて絶叫したのだった。

男たちをオフィスの中へ入れて話を聞く。
2人はノルンの指示で本国から私に神剣を届けに来た部隊の隊員であった。
ちなみに若返った事は予めノルンには電信で連絡してある。
「しかし」
「軍用船で来た為に」
「入港許可が」
「降りなかったのです」
男たちがしょげかえる。どうでもいいが鬱陶しいので一区切りごとに交互に喋るのやめれ。
当たり前だ軍用船なぞ入港したら町の住民が何事かと思って騒ぎになるだろうに。
だから郵送でいいと言ったんだ・・・。
「やむを得ず小船で我々が入港し神剣をお持ちする事になりました」
「ところが・・・・」
・・・ぬ・・・・まさか・・・・
「海上で突然、族に強襲を受けまして、神剣が持ち去られてしまいました!」
そこでまた男たちがすみません!と頭を下げた。
何という事だ本当に狙ってる奴がいるとは・・・・。しかし、沖合いから小船でってそんな遠くから出たわけでもないだろうに、途中に襲撃してきそうな怪しい船なりいれば警戒はしなかったのか。
「いえ、族は1人で空から乗り込んできたんです」
「物凄く強い女でまったく歯が立ちませんでした。あっという間に神剣を奪い取ると来た時と同じように空を飛んで逃げてしまって・・・・」
えらく強い女が一人で空を飛んで襲って来たのか・・・・そりゃ突拍子も無いな、不意を突かれてもしょうがない。
しかし困った事になった。取り返そうにも海上の話では逃げ去った方向等参考にならんだろうし、空を飛べる強い女ってだけではなぁ・・・。
ふぅーむ・・・・。
しかし起きてしまった事をあれこれ言ってもしょうがない。私は一先ず男たちを船へと帰した。
「困ったわね・・・おじさま。大切な剣なのでしょう?」
起きて来て話に加わっていたエリスがコーヒーを出してくれながら言う。
まあ20年も自宅に放置しておいて今更大事ですというのも虫のいい話ではあるが。
しかしあの剣は私と契約している。他の人間が使ってもただの剣なのだがな。
上位のマジックアイテムの大多数は使用者との契約がなされて初めて本来の力を発揮する。私の神剣エターナルブルーもそうである。
とはいえ、取り返さねばなるまい。
私個人の問題としては諦めてしまえばそれまでだが、この話がきっかけで祖国が本腰入れて乗り込んできたら厄介だ。
シードラゴン島は国際協定でいかなる国も不干渉とされている。ただ口実があれば乗り込んでこようとしている国は多いはずだ。
今でも充分に各国身分を秘した調査員を送り込んで来ている事だろう。
失せ物に強い知り合いか・・・・カルタスに匂いで探してもらうとか・・・・ダメだ何を考えているんだ私は・・・・。
私は頭を抱えた。するとまたバーン!と扉が勢い良く開け放たれる。最近ここ訪れる人は皆ノックの風習を忘れてしまっているようだな・・・・。
「困っておるのじゃろうウィリアムよ。そういう時に何故この全知全能のわらわを頼らぬ?そなたも遠慮深い男よの」
うあ上階のテトラプテラ女王が来た。しかし何故私が困っていると・・・・神託か・・・・凄いなぁ。
「今日はそなたが失せ物で苦しむとの神託があったのじゃ」
やっぱり神託か。物凄い精度だ神託。
「後そっちの包帯娘とよろしくやってロール娘に殴られるとも神託があった」
「このどすけべー!!!!!」
ドガッ!!!! ぐあ冤罪だ!!! 
事実確認の前に既に手が出ている。ああもう鼻血が・・・ティッシュティッシュ・・・・。
「どれ他ならぬそなたの頼みよ。その失せ物わらわが見つけてやろうかの」
や、まだ頼んではいないのだが・・・・てゆか今から頼みますお願いします。
明るいと集中できぬ、と言って女王が侍女たちに窓に暗幕を張らせた。オフィスが真っ暗になる。
応接テーブルの上の2本のロウソクだけが光源だ。女王の雰囲気とも相俟ってなんとも場が神秘的な空気になった。
でもそれが感じられなかったらしいDDは真っ暗になるなり寝息を立て始めた。わかりやすい娘だった。
女王が取り出した水晶玉に両手をかざして目を閉じる。すると水晶玉が淡い輝きを放つ。
「・・・・失せ物は剣か・・・・これはまた良い剣じゃの・・・・」
女王がつぶやく。ビンゴだ、これは頼りにしてよさそうだ。
「場所は・・・・・海上じゃの・・・・ん? これは・・・・・」
海上・・・・となると族は船の上か?
女王が集中を解いた。もうよい、と合図し侍女たちが暗幕を取り外す。急に戻った明るさに目をしばたたせる。
女王はなんとも微妙な表情をしていた。
「ちと面倒な事になっておるぞウィリアムよ」
そういうと女王は侍女に目配せした。間もなくその侍女が鳥篭を持って戻ってきた。
鳥篭には白いフクロウが一羽入っている。
「これはわらわの4つの使い魔の内の一つじゃ、今より現地の様子を直接そなたに見せようぞ」
そう言うと女王は鳥篭を開けてフクロウを出し、窓から空へと放った。
「しばし待つが良いぞ。使い間が見聞きしたものはこの水晶を通じてこちらへ伝える事ができるのじゃ」
ほほう、それは凄い。話半分に聞いてたけど本当にこの人全知全能なんじゃないのか・・・・等と思ってしまう。
それから20分ほど時間が過ぎて、再び女王はオフィスを暗幕で真っ暗にした。
「そろそろよかろう。見るがよい」
女王が水晶に手をかざす。淡い光を放った水晶はやがてある情景を映し出した。

海だ・・・・まだ海上を飛んでいる。
間もなく前方に巨大な黒い船が見えてくる。
!!!!・・・・・・軍用艦じゃないか・・・・しかもでかい・・・・。
旗を揚げている。そこにはドラゴンと槍の紋章があった。
「・・・・・竜帝国ガルディアス・・・・」
エリスが緊張で掠れた声で呟いた。
ガルディアスは北方、「竜の峰」と呼ばれる山脈を背負った軍事国家である。国土は狭いが国民大半が軍属であり、軍が傭兵として他国の戦争に雇われて出張ってくる。
その精強さは世界中に知れ渡っており、戦において相手方に竜の旗が見えただけで兵は戦意を喪失するとまで言われている。
ガルディアスを無敵たらしめているものは2つ。
飛竜を駆る騎士たち、ドラゴンナイト。
そして自身竜の血が混じった身体で生身で強大な戦闘力を誇る竜闘士、ドラグーン。
やがて視点は甲板上へと到達した。
広い甲板には7匹のワイバーンが並んで大人しくしていた。
・・・・・竜騎士が7人も来ているのか・・・・・戦争ができるぞ・・・・・。
鼓動が早くなる。気付かない内に握り締めた拳にじっとりと汗をかいていた。
やがて視点は甲板上の2人の男女を捉えた。青い髪の女性とまだ表情にあどけなさの残る青年。
2人ともガルディアス軍の黒い戦装束を纏っている。
「あーあ・・・・僕も行きたかったなぁ。剣取りに行くの」
そう言った青年が手にしているのは・・・・神剣エターナルブルーだった。
「いいえ、海里。ほとんど戦闘らしい戦闘はしていません。あなたが来てもする事はありませんでした」
無表情で女性が答える。
「それにあなたのシルバーウィンドは大きくて目立つ。奇襲には向きません」
「シルバーだって長い船旅で身体が鈍ってるよ」
カイリと呼ばれた青年がワイバーンの内の1匹を撫でる。その1匹だけ特に身体が大きく他の6匹と違い銀色をしている。
ワイバーンが嬉しそうに低い唸り声を出す。
「早く戦いたいなぁ。凄い強いんでしょ?そのバーンハルトって」
「シトリン達が到着するまでは本格的な交戦は避けるべきです、海里」
女性が静かに言った。青年が明るく笑う。
「姉さんが来るまでには終ってるよ僕とルクがいれば! ルクはガルディアス最強のドラグーンなんだから!」
「いいえ海里。私は皇帝陛下にはかないません」
女性が静かに首を横に振って言う。
「あー、陛下は怪獣だもん一緒に考えたらダメだよ。・・・・それにしてもこの剣何の力も感じないよ?本当に強い剣なの?」
「その剣は契約により力を発揮します。所有者であるウィリアム・バーンハルトとの契約が有効な限りは他者が使っても普通の武器と同じです」
ふーん、と青年が神剣をひゅんひゅんと振った。
「そっか、姉さんのレーヴァテインも確かそうだったよね。同じかぁ・・・。ルクのグングニールもそうなんでしょ?今回は持って来てるの?」
「はい。今回は使用許可が降りていますので携帯してきています」
と、そこでピクンと反応した彼女がこちらに視線を合わせてきた。
「あれ? なんで海にフクロウ・・・・」
青年もこちらを見てくる。
「ウィリアム・バーンハルトですね」
名を呼ばれた。
「私はガルディアス帝国のドラグーン・ルクシオン。そして彼は『竜撃隊』隊長の雨月海里。あなたの神剣はここにあります。取り戻したければ・・・・」
そこでルクシオンと名乗った女性が殺気を全身から発した。水晶越しでもビリビリとそれが伝わってくる。恐ろしいプレッシャーだ。
「力ずくで取り戻しに来て下さい」