第4話 Northern Tiger-7


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

大統領!!!
全員の視線がアレス大統領へと集中する。
「ハッハーッ! おいおいそう見つめないでくれたまえよ諸君。ホットな視線で溶けてしまいそうだよ!」
悠然と葉巻を燻らす大統領。
「・・・茶番だな。僕は引き上げる」
シグナルがその場に背を向けた。
おい、とその背にカミュが声をかける。
「担当した分の向こうの戦力は無力化してある。役目は果たしただろう。後は君たちでどうにかしろ。・・・行くぞ、ローレライ」
『はい、マスター』
羽ばたいてシグナルの近くへ降りたローレライが魔剣に溶け込むように姿を消した。

「ハッハ、ボーイも難しい年頃だな」
シグナルを見送り大統領が笑う。
「笑い事じゃねーよオヤジ。どういうつもりだドンパチの現場にまで顔出してくるとはよ!」
カミュが怒鳴った。
「そう言うなカミュ。邪魔はせんさ。続けてくれたまえ諸君」
そう言った大統領の視線の先にはキリコがいる。
「・・・私が動くとしたら、それは彼女が動いた時だけさ。ハッハッ」
キリコはただ黙って微笑んでいた。
「・・・・やり辛いっつーの」
ルノーがぼやく。
「まだ寝るわけにはいかなそうですね」
全身が血の滲んだ痣だらけでボロボロのエリックが再び拳を上げて構えを取る。
それに応じてキリエッタも鞭を持つ手を上げた。

「DD!!」
えりりんが駆け寄ってくる。
「もう!暴れゴリラじゃないじゃない!! こんな傷だらけになって・・・」
取り出したハンカチで私の頬の血を拭ってくれる。
・・・寒いでしょ? えりりん離れてなよ。
「バカ・・・そんなの何でもないわよ。私に内緒でこんなになるまで戦って・・・もう!」
えりりんはちょっと涙ぐんでた。
私はちょっと胸が一杯になって、えりりんをぎゅっと抱きしめた。
「ちょっと! 手当てが・・・・」
えりりんは暖かいなー・・・。
ごめんね、今終わらせるからちょっとだけ離れててね。
一緒にウィルの所に行こうね。
私はえりりんから離れると、静かにその肩を押して遠ざけた。
私の意図を察したシンラがえりりんの手を引いて離れてくれる。
「DD・・・・」
そして私はカミュの方に向き直る。
彼は静かにタバコをふかして私を待っていた。
ごめん。待たせたね。
「バカヤロ、構やしねーよ。もういいのか。よければいくぜ」
うん。
カミュがタバコを投げ捨てた。
その吸殻は地面に落ちるより早く凍り付いて石畳にカチンと音を立てて跳ねた。

両手に魔力を集中する。
私の手に鋭い氷の爪が生まれる。
「!! ・・・・あれやる気か。霧呼さん、そこダメだ。もっと下がった方がいいぜ」
漂水に言われてキリコがその場から下がった。
いつの間にか大統領も私から距離を置いている。
私は走りだす前のアスリートの様に、腰を低く落として構えた。
「その爪で引っかいてくる気かよ。大した必殺技じゃねーか」
カミュが笑った。
・・・大事な人を、待たせてるんだ。
「ん?」
だからお前を倒して私は行く。
・・・さよなら、カミュ。
地面を蹴り、奴へ迫る。一瞬にして彼我の距離は零になる。
猛吹雪を纏った私の爪が奴のガードを切り裂く。
上がった血飛沫が凍りつく。
「・・・・何だと!!!!」
カミュが叫んだ。

「・・・『Northern Tiger』・・・両手の氷の爪でただ相手を引き裂くってだけの単純な攻撃。でもその単純な攻撃こそがレディ・ダイヤモンドダストの無敗の伝説を支えた最強のキラーアーツだ」
漂水が言う。
私は爪を振るう。途切れる事無く攻撃を続ける。
一振りごとに死を呼ぶ白い軌跡が夜空に刻まれ続ける。
「あの爪は一撃で鋼鉄の鎧を引き裂く威力がある。それが絶対零度の猛吹雪と一緒にひたすら叩き込まれ続けるんだ・・・・たまったもんじゃねーぞ。船団時代は団長があれ出したら周りの俺らは自分の戦ほっぽらかして必死に逃げたもんだぜ」
吹雪は更に勢いを増して、周囲の建物が凍結しつつあった。
「・・・やめろ!!!」
叫び声が聞こえた。
ルノーの声だ。
だけど私の耳にその声は届いても、意味までは頭に入ってこなかった。
「エリック!! リーダーが殺される!!!」
ルノーの叫びにエリックが前に出ようとする。
しかし猛吹雪に阻まれて私に近付く事はできない。
それは叫び声を上げたルノーも同様だった。
「やめろ・・・やめて!!! そいつを殺さないで!!!!」
絶対零度の猛吹雪は近付くもの全てを拒絶する。
私のこの爪に狙われた相手にできるのは寒さと孤独の中で切り刻まれて死ぬ事だけだ。
・・・そのはずだった。

ガシッ!と左右から私の両手は掴まれて攻撃が止められる。
!!!!!
トランス状態だった意識が現実へと引き戻される。
「殺さないほうがいいわ。・・・彼殺しちゃうと後々面倒よ?」
私の右の手首を片手で掴んだキリコが言う。
「レディ、君の勝ちだよ。だがボーイは私の大切なファミリーでね。命だけは許してやってくれんかね」
左の手首は大統領に掴まれていた。
カミュを見る。
彼は全身を切り刻まれて凍り付いて意識を失っていた。
だから・・・この技は好きじゃない。
もう使わないようにしようと思ってたんだけど・・・。
ちょっと落ち込む。
「お前達、すぐにボーイをホスピタルへ連れて行け」
バニーガールの人たちが担架を持ってきて、カミュは連れて行かれた。
「・・・・さて、プレジデント」
キリコがアレス大統領を見る。
「難癖つけて襲ってきたのはそっちよ。負けた上に見逃してもらって、この後始末はどうするつもりかしらね?」
どちらかと言えば楽しんでいるように、微笑んでキリコが言った。
「・・・わかっているとも。負けた方には賠償責任がある」
「それなら・・・」
第三者の声がして、皆そっちを見る。
そこにはトーガ(亡霊)が立っていた。
「俺を成仏させてもらおうか」
「それはできん」
あっさり言われてトーガはカ゛ーン!!!という顔をするとがっくり項垂れたのだった。