第12話 人魚の浜-2


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海水浴から帰って数日。
我々は普段と変わらない日常に戻っていた。
しかし、意外な所からまた人魚の話を耳にする事になった。

賞金がかかった?人魚にかね?
私の言葉にうなずいたのはサイカワだった。私たちは町の中で行き会って立ち話をしていた。
「発見に繋がる情報に2500G、生け捕りで30000Gだそうです(※1G=100円位)」
それは本格的だな・・・・目の色変える輩も出てくるだろう。
「浜辺は大騒ぎだそうですよ。専門のハンター達も多く出てきているそうです」
サイカワは行かないのかね?
「生憎と私はお金にも人魚にも興味はありませんね。今日もこれから『キュウリがもたらす平和への害について』で講演してこなくてはいけないんですよ。先生もご一緒にどうですか?」
丁重に辞退する。てゆかそんな講演誰が企画したんだ。
「そうですか、残念です。壇上に上がるまでに警備員の妨害があるでしょうから駆逐するのに人手が欲しかったのですが・・・・」
人の講演をジャックする気だった。本人も充分平和を乱してるんじゃないですかそれ。

帰りがけにスフィーダの店に寄る。
ここならば賞金の話も詳しくわかるだろう。
案の定チラシが出ている。何々・・・・?
問い合わせ先はシャハル商会、シャハル・マドルまで、か・・・・。
気が重くなる。嫌な名前を見た。
シャハルは中央大陸南部を中心に活動する商人だ。金になれば何でもやると悪評の多い人物である。
武器、麻薬、人身売買までだ。あくまでも噂ではあるが、まあここまで悪い話が出ていれば真っ当な人物では無いだろう。
この島まで活動範囲を広げていたのか・・・。
にわかにきな臭い話になってきた。
マルティナの事を思い出す。彼女は迷惑しているだろうなぁ・・・・。
等と考えながら宿に戻ると、そのマルティナが私を訪ねて来ていた。
そして彼女の持ってきた話は、私の危惧を杞憂では無かったと思わせる内容のものだった。

「ここ2,3日なんだか見張られてる気がするんだ。怖くてさ・・・。急にごめんよ。他に頼れる人がいなくって、漁師仲間に聞いたんだ、先生は頼れる人だって」
申し訳なさそうにマルティナが言う。どこでそんな話になっているのかはわからないが、まあ私で力になれる事であればなってあげたいとは思う。
かかった賞金の額が額だし、イリーガルな手段に訴えようとする輩も出ないとは限らない。彼女はこのあたりの海に詳しいだろうし、それで標的にされているのであろうか。
他にも漁師はいるのだから一部腑に落ちない部分もあったが、今はそれを考えていてもしょうがない。
実際彼女が目を付けられているのならどうにかしなくてはならないだろう。
とはいえ私が四六時中護衛しているわけにもいかない。ここはうぐいす隊に相談してみよう。
私はマルティナに、頼りになる人達に心当たりがあるから明日その内の誰かを連れてそちらへ向かうと言った。
「ありがとう! いきなりこんな話されたら迷惑だろうって思ったんだけど・・・よかった相談しに来て」
彼女は喜んで礼を言い、住所を告げてその日は帰って行った。

翌日、まだ早いうちにうぐいす隊の屯所を訪れる。
応対に出てきたのはヒビキだった。彼女は私の話を真摯に聞いてくれた。
「わかりました。では私が先生と一緒にその人の所へ行きましょう」
いいのかね?副長自ら。
「今は空いていますから。自分がいない程度で動けない役立たずは隊にはいません。それにしても・・・・」
そこで彼女は私を見て、彼女にしては珍しく微かに笑った。
どうかしたのかね?
「いいえ、慕われるわけだな、と思っただけです。行きましょう」
こうして私はヒビキと二人でマルティナの家へと向かった。
しかし、その時には既に遅かった。
「留守のようですね」
ノックをしたヒビキが反応を待ってから言う。
おかしいな、今日訪問するとは言ってあるのだが・・・・。
隣家を訪ねると、昨日から不在なのではと言われた。昨晩は家に明かりが灯らなかったのだと。
甘かった!! 昨日私の所から帰る途中に何かあったのだ!! 拳を握り締めて歯噛みする。
昨夜の内に何か動いておくべきだったのだ。
「それは仕方の無い事だと思いますよ。先生の行動に誤りがあったとは思えません。それよりも今は彼女の行方を捜しましょう」
ヒビキは何か走り書きすると、そのメモを漁師に屯所へ届けてくれと頼んでいた。
「かどわかされたとして、人目の多い街中で動いたとは考え辛い。おそらくは海に近くなってからでしょう。この周辺で聞き込みをします」
ヒビキと別れてそれぞれ昨夜何か異常が無かったか周辺の住民に聞いて回る。
するといくつかの情報が集まった。
人の争うような声が聞こえて、それが浜辺へ向かったとの事。
夜のうちにボートが一艘、沖合いに漕ぎ出して行ったとの事。
夜に沖合いへ?彼女を拉致してボートでどこかへ向かったのだろうか。
「なるほど・・・・」
ヒビキがうなずいた。
「ここの沖合いにはシャハル商会の大型貨物船が停泊しているはずです。そのマルティナさんはそこへ連れていかれた可能性がありますね」
ぬう、しかし確たる証拠があるわけでもないのにいきなり乗り込むわけにも・・・・。
「既に私たちは後手を踏んでいます。これ以上時間をかければ手遅れになる可能性がある。乗り込んでしまいます。もしも間違いで何もなければその時は・・・・」
その時は?
「『お願いして』許してもらう事にしましょう」
う・・・・。彼女から感じた冷たい迫力に思わず冷や汗が出る。
そこへテッセイが屯所で待っていたというエリスを連れて合流してきた。
「副長、言われた小船の手配完了しています」
「ご苦労。蒲生、あなたも一緒に来てもらいます。先生たちは・・・・・聞くまでもありませんね」
うなずいた。これは私が受けた相談だ。私は行かなくてはならない。
我々は4人で小船で沖へ出た。
砂浜が大分遠くなった所で、突然船のへりに海中からガッと手がかかった。
!!? なんだ敵襲か!!!
船上の我々が緊張する。ザバッと海面が波立ち、誰かが船に這い上がってきた。
・・・・・・イカ(?)だ。
着流しの着物を着たイカっぽい何かが・・・・・・。
「自分、高クラーケンといいます・・・・不器用ですいません・・・・」
声が渋い・・・・。
「出入りと聞いて・・・・血が騒いでしまいましてね・・・・不器用ですいません・・・」
てゆかお前血ないだろ。
「自分、義侠に生きてまして・・・・助太刀させてもらいます・・・・不器用ですいません・・・・」
謎の軟体生物が勝手にPT入りしてきた・・・・。
海は不思議が一杯だった。
程なく、巨大な貨物船が見えてくる。
一向に緊張が走る。その時・・・・。
「!! いけない!!止めてくだせぇ!!」
高クラーケンが突然船を停止させた。
人ならざるものの鋭敏な感覚で何か危機を感じ取ったのだろうか。
「・・・・船に酔いました。・・・・・不器用ですいません・・・・」
へりから海にオェエエエエエエエと吐いている。
もうお前帰れよ母なる海に・・・・。