第6話 緑の魔術師と人喰いキュウリ-2


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

道すがら我々は色々な話をした。
主に自己紹介である。お陰でサイカワの事を私は幾分か理解する事ができた。
キュウリの事となると人が変わってしまうが、その他の部分では彼は好青年だった。
何故彼はそこまでキュウリを憎むのか・・・・。それは彼は語らなかったし私も尋ねなかった。
人には事情があるのだ。
先ほど出会ったばかりの人間がおいそれと踏み込んでいい領域だとは思えない。
第6話2-1.jpg
ある所まで来た時、サイカワが表情を引き締めて私を振り返った。
「着いたようです。斥候がいます。先ほど私が一度強襲しているので警戒しているのでしょう」
どれ? 畑に見張りでも立っているの・・・・か・・・・・・・・!?
私はそこで目にしたものを即座には理解できなかった。
そこには物騒な武器を構えた人間大のキュウリが2体(本?)赤い目を輝かせてうろついていた。
時折、ギチギチギチと耳障りな鳴き声をあげている。
「あれはノーマル種です。更に大型で戦闘に長けた戦士種キュウリもいるのでご注意下さい」
何だかわからないがキュウリの世界も大変だった。
そしてここへ来て私は自分の認識が甘すぎた事を思い知った。
どうやら本物の戦場へ連れてこられてしまったらしい。
彼の口ぶりではここより先にさらにキュウリ達が群れているのだろう。我々は2人。何か策はあるのだろうか。
それを尋ねようとした時、既にサイカワは2体のキュウリの前に無造作にその身を晒して歩いていく所だった。
!? 危険ではないのか!!
当然キュウリは即座に武器を構えてサイカワに襲い掛かる。
しかしサイカワは歩みを止めることはなかった。
「失礼。急いでいるもので」
そのまま2体のキュウリとすれ違う。
次の瞬間、キュウリは青白い炎に包まれた。
瞬く間に黒い消し炭と化し崩れ去るキュウリ。
「私は特殊な魔術契約により、使う全ての攻撃魔術はキュウリに倍のダメージを与えます。ただしキュウリ以外に使えば威力は半減します。防護魔術結界も同様。キュウリからのダメージを半減させ、その他からのダメージを倍にします」
とんでもない対キュウリ特化型魔術師だった。
全然関係無い魔物にあっさりブッ殺されたりしないか心配である。
「私がまずキュウリ達を引きつけます」
自分が囮になると言うのか!
「先生は私の真似をしてキュウリ達を引きつけて下さい」
私も囮だった!!
一応荷物にロングソードが入っているが・・・・あれ最後に抜いたの何年前だったかな・・・・・。
だが、そんな心配は杞憂であった。

「流石に2人だと戦況も有利ですね!」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
私は別に何もしていない。
キュウリ達の群れに特攻した私は、ただサイカワが魔術の腕を揮いキュウリ達を殲滅していく様を突っ立って眺めていた。
こっちには1匹も流れて来ない。
全部サイカワが始末してしまうからだ。
まあ流れてこられても困るしそれでいいんだが・・・・。
爆風が、真空の刃が、電撃が・・・・次々にキュウリを消し飛ばしていく。
対キュウリ特化という点を除いてもサイカワは恐ろしく強い魔術師だった。キュウリも決して弱いモンスターではないのだろうがサイカワにかかればまるで獅子と鼠も同然である。
小一時間程でその場の全てのキュウリは殲滅された。
「先生がいてくれて助かりましたよ」
だから私は何もしてない。
それとも話し相手がいてボルテージ上がってよかったって意味なんだろうか。
ともあれ、これでやっと町へ帰れる。
そう思って一息ついたその時、唐突にその場を閃光が走った。
光は衝撃を伴ってサイカワを直撃する。
彼は悲鳴一つ上げる間も無く吹き飛ばされ、その勢いのまま2本の木を薙ぎ倒し激しい音を立てて岩壁に激突した。

「我がテリトリーで好き放題してくれたようだな人間ども。ここから生きて帰れるとは思わぬ事だ」

咄嗟に声がした方向を見る。
そこには・・・・。