あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

魔法少女リリカルルイズ45


ユーノはデルフリンガーを構えたまま、祭壇に向かう。
その目はルイズも見たこともないくらいに感情が濃く滲み出ていた。
その視線を受けてもなお平静を保つワルドもまた、抜いた杖を手に出口に向かう。
「なんで……」
ワルドはユーノとの距離を一歩ずつ詰めていく。
そのたびにルイズもまた、ユーノの側に行こうと後ずさった。
「なんでルイズを裏切ったんですか!ルイズを守るんじゃなかったんですか!」
「そんなことも言ったな。だが、嘘というわけでもない。僕の目的のためにルイズは必要だ。必ず守るよ」
「ルイズがそんなので納得すると思ってるんですか?」
たどり着くと、茶色いマントの小さな背中がルイズをかばった。
それを見たワルドは杖を構え、切っ先をユーノに向ける。
「納得できないかね?それでも私に任せた方がいい。君ではルイズを守ることはできない」
「ここまで来た彼には十分守れると思うが」
ワルドの肩口にブレイドかけた杖が置かれた。
「正直どういうことかよく分からなくてね。花嫁をめぐる諍い、とでも思ったのだがそういうわけでもなさそうだ。子爵、その少年に向ける杖を納めてもらおう」
その魔法の刃をワルドの首に向けるのは、アルビオン王国の皇太子ウェールズ。
「そして目的というのを教えてもらおう」
「いいだろう」
ちらりと後ろを伺うワルドは杖を下ろし、秘めていた目的を語り始めた。
「目的は三つ。一つはルイズ、君を手に入れることだ」
「私はあなたになんか着いていかないわ!」
ユーノの肩に手を当てるルイズは迷いなく答える。
「彼と共になら行くかね」
「えあっ!?」
その時顔に一瞬だけさした朱は、次のワルドの言葉ですぐに流された。
「二つめはアンリエッタの手紙だ」
ルイズはもう一方の手でポケットを中の手紙ごと握る。
「貴様、レコン・キスタか」
全てを察したウェールズが杖を強く握りしめた。
その杖はワルドの首筋に当てられ、わずかでも動けば彼の命を奪うだろう。
既に彼には何もできない。
にもかかわらず顔色一つ変えないその姿は、ルイズの胸の中の不安を大きく育てていた。
「三つめは……」
何がこらえきれなくなったのか、ワルドは突然苦笑を浮かべた。
「ユーノ君、やはり君はルイズを守りきれないよ」
「まだ話しは終わってはいないぞ!言え、三つめの目的は何だ」
それを無視して、ワルドの視線が前後に走る。
ウェールズの杖は首筋に、ユーノのデルフリンガーは胸元に。
一本の剣と杖は確かに自らに向けられている。それがワルドの見たいことだった。
「例えば、こういうことだ」
閃光が2本、礼拝堂の中で輝いた。
一つの閃光はユーノの背中に。
自分の背中に走ったそれを感じたユーノは片手でルイズを突き飛ばす。
「きゃっ」
シールドは間に合わない。今、それを使う手はルイズをのけるために使ったからだ。
ならばガンダールヴのルーンの輝く手で持ったデルフリンガーを閃光に向けて振る。
だが、ルーンの力で獣のような早さを持っているにもかかわらず、それを上回る技でデルフリンガーは跳ね上げられ、再び走った閃光がユーノの胸を切り裂いた。
「ユーノ!」
ルイズの声がルーンの輝きをさらに増す。
胸の傷をものともせず振るわれたデルフリンガーが閃光──背後に新たに現れたワルド──を切り裂く。
直後、ユーノは両膝を床に着いた。
そしてもう一つの閃光はウェールズの肩を深々と切り裂く。
少年と王子は同時に倒れ、それを2人のワルドが見下ろしていた。


風の系統に遍在、という魔法がある。
一つ一つが別個に意志と力を持つ分身を作り出すこの魔法は、風の系統が最強と言われるゆえんでもある。
ラ・ロシェールでワルドがユーノと戦うと同時にルイズの手を引いていたのも、今また3人のワルドがここに存在するのもこの魔法のためだ。

流れる血は速やかに広がり、冷たい石畳をその色に染め上げていった。
「あ、あ、あ」
なにを言っているか、自分でもわからないルイズが見ているのは倒れているユーノだけ。
体が血で汚れるのも構わず、その体を抱き上げた。
「ユーノ、ユーノ、ユーノ!」
それを石畳よりなお冷たい目でワルドが見下ろす。
「ラ・ロシェールには居る前に使った飛行魔法を見ていたのでね。もしやと思い準備させてもらっていた」
あらかじめ礼拝堂内に遍在を隠しておいたのだ。
「だが、奇襲を相打ちに持ち込まれるとはな」
話術を持ってユーノとウェールズ、双方の注意を自身に向け、遍在から逸らし、奇襲をかける。
それは成功していた。
ウェールズが遍在を倒せず、一撃をただ受けるだけで終わってしまったことが証左である。
そこまでしてユーノを討ち取ったものの相打ちとなり、遍在を一つ消されてしまったことにワルドは内心舌を巻いていた。
「君は確かに優れた戦士だ。未だ荒削りながらもその剣技と魔法を持ってすれば勝てない相手はまずいないだろう」
足下に転がるウェールズの杖を蹴り飛ばし、ワルドはユーノとそれを抱くルイズに向け遍在を残して歩き出す。
「だが、戦いには向いていない。君は既に私の遍在を知っていたはずだ。だが、ルイズを助けようとするあまりそれを忘れた。それでは私には勝てない。ルイズを守りきれない」
ルイズを目前にワルドは足を止める。
突然に灯った光に目を焼かれたからではない。
その光の元がユーノだからであり、そのユーノが光の中で姿をフェレットに変えたからだ。
「ふ、ふははは。はははははははは」
考えてみれば単純だった事実、それに気づけなかった自分、気づけるはずもない現実。
そこからこみ上げた笑いをワルドは口元に当てた片手で握りつぶした。
「そうか、そういうことだったか。これは意外だ。ユーノとユーノ。そういうことだったか。その少年がルイズ、君の使い魔だったとはね」
絶対の優位を得て、ルイズを見下ろすワルドは落ち着き払い、そして優しげに聞いた。
「ルイズ、もう一度だ。僕と来るんだ。世界を手に入れるには君が必要だ」
万策尽きた……わけではない。レイジングハートがある。
だが、いまのルイズの心を占めるのは怯えと不安、そして恐れ。
それはルイズの心をかき乱し、自らの持つ最大の力を忘れさせていた。
「わかったわ。行くわ。だから、助けて。死んでしまうわ。お願い」
ユーノはフェレットの姿になると傷が早く治ると言っていた。
なのに、血を止めようと傷口に当てた手にはぬるりとしたものが耐える新しいものとして指の間だから零れていく。
それほどまでに傷が深い。
「それでいい」
まだ言葉だけだ。何が変わったわけでもない。
それでも、今まで押しつぶされていたようだった体がすこしだけ軽くなったように思えた。
「行こう、ルイズ」
返事はしない。喉につまったように出てこなかった。
ルイズはそれを真に望んでいたわけではないのだから。
「その前に、ユーノ君には死んでもらおう」
「え?」
立ち上がろうとした膝から力が脱ける。
足が砕け、思うように動かない。不安がよりいっそうの強さでルイズをその場につなぎ止めた。
「待って、助けてくれるって」
「助けるのは君だけだ。ユーノ君は別だ」
「でも、私が行けば良いんでしょ?ユーノは私の使い魔なのよ」
「ルイズ!」
既に心の挫けたルイズにはその言葉に逆らえない。
そうなった時に彼女を支えるべき1人は倒れ、もう1人は敵となっていた。
「小鳥を飼う時はどうするか知っているかい?逃げないように羽を切ってしまうんだよ。ユーノ君がここに来た時わかったよ。彼は君の翼だ。彼が傷を癒せば君は僕の元から逃げようとする。だから……」
それをするのが最善。
そう諭すように、彼は言った。
「翼は切ってしまおう」
「い、いや!」
「さあ」
そして、昔、小舟で泣いていた自分を迎えに来てくれた時のような微笑みさえ浮かべていた。
だけどそれは、とても、とても恐ろしいものにしかルイズには思えなかった。

(助けてあげる)
それは声ではなかった。
念話と呼ばれる系統魔法にはない心で交わす言葉の魔法。
それで話されるルイズの知らない誰かの声が聞こえてきた。
(誰!?)
答えずに誰かの声はただ伝えるべき事のみを伝える。
(助けてあげる。その代わり、あなたの持つジュエルシードを一つ。私にちょうだい)
(でも)
考えるべき事、考えなければならないこと。心のかき乱されルイズにはどうしたらいいかわからない。
ジュエルシードは大切。でも、ユーノの命はもっと大切。でも、ユーノはジュエルシードを集めている。それを本当に誰かに渡して良いのか。
その答えをすぐに出すことは、今のルイズにはただ普通に魔法を使う事よりも困難に思えた。
「put out.」
「え……?」
ルイズは何もしていない。
しかし、レイジングハートは独自の判断でスタンバイモードのまま限定された機能を使う。
その結果は、ルイズの目の前に青い宝石──レイジングハートに封印されていたはずのジュエルシード──という形で現れた。


突如現れた青い宝石を見ていたのはルイズだけではない。
それが突然であったが故にワルドもまた青い宝石に目を奪われた。
だからこそ、歴戦のメイジである彼もそれに対応しきることはできなかった。
「Photon lancer」
不意に天井が爆発を起こした。
稲光を纏い落下する天井の梁が狙いすまいしたようにワルドめがけて落ちてくる。
ワルドはそれに後ろに控えさせていた遍在をぶつけた。
「ちっ」
ブレイドで二分したものの、巨大な質量は止まらない。
ワルドの本体はそれを避けるためにも床に自らの体を投げ出し、ルイズから離れざるを得なかった。
梁に潰される遍在を見ながら三転、世界が回る。
立ち上がったワルドは、舞い散る埃の中に、ルイズの前に立つ新たな一つの人影を見つけた。
土煙のベールは退く。その向こうの人影は、長い金髪を二つに結び、黒い杖を持つ、黒い衣装のメイジだった。


「何者だ」
黒いメイジの少女は奇妙な装飾を施した杖を振った。
ルイズの目の前に浮かんでいた青い宝石は、瞬きの内に装飾の一部を成す金の宝玉の中に消える。
それからやっと、少女は答えた。
「フェイト」
「なら、そのフェイトは何をしにここに来たのかな」
フェイトはワルドの視線からルイズを守るように立ちはだかり、杖を真横に構える。
「彼女を、ルイズを助けに来た」
「できると思っているのかね」
「……」
フェイトを見据えるのは計3人分のワルドの視線。
無論、そのうち2人は魔法で作られた遍在だ。
落ちる梁を避けるために、未だ隠れていた2人も姿を現さざるを得なかったのだ。
「4人の私と戦って、たった1人で勝つつもりなのか?それとも、包囲を突破して逃げるつもりなのか?」
既にフェイトの退路は2人の遍在が断っている。
そして、この少女の実力がどうであれ4対1で閃光の名を持つスクウェアメイジにたった1人で、しかもルイズを守りながら戦って勝てる道理があるはずがない。
「切り札を出したのだ。どちらにせよ邪魔はさせない」
4人のワルドがそれぞれ違う形に杖を構える。
だが、共通するものがあった。それは必殺の殺気。
「あなたの切り札はあなただけの切り札じゃない」
なのに少女はいささかの怯えを見せることなく、杖をかちゃりと鳴らした。
「バルディッシュ。ユピキタス・デル・ウィンデ」
「yes, sir.ubiquity of wind.get set.」


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