あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア-35


35.死霊術師と三つの月

とりあえず燃やすか?いや、それはもったいないな。
と、ムフフな本達の処分をどうするかマーティンは考えている。

ルイズは先ほどマーティンに本を渡した男を見た。
オモロ顔だわ。見れば見るほど。等と感想をこぼしたところで、
ふと目があった。何故か青年は顔を赤くして目線を外す。

やっべ。ヴァーミルナも可愛いけど、やっぱりこの子もすんごく可愛い。
むしろ素のままでこれなんだからこっちの方が可愛いっていうの?
と、モグラ野郎はそんな事を考える。
どこの次元であろうとも、東京在住のサイトならルイズを美しく思ってしまうのだ。

ルイズは何とも言えぬ顔でサイトを見ている。何、今の反応。
さっきのキュルケの言葉がルイズの頭に浮かんだ。
オモロ顔なら現れるんじゃないの?オモロ顔なら現れるんじゃないの?
頭の中でこだまし続ける。やがてツェルプストーがおきまりのポーズで高笑いを始める。

いいえ、ダメ。もっとカッコいいのがいいわね。
頭の中の宿敵を爆発で吹っ飛ばした。変な服を着た青年に少々興味を覚えたルイズは、
結ばれたかもしれない男性に声を掛ける。

「ねぇ、あんたなに?」

サイトは崩れ落ちた。何ですか。人扱いですらないんですか。
そうだよね。だって俺モグラが似合ってるから。モグラだから仕方ないんだ。
とダウナー思考に陥りそうになるサイトだが、
なにか扱いに近づくだけじゃね?と思い直した。人として接すれば、
その内人扱いしてくれるヨ!とアッパー思考になったところで立ち上がり、
ようやく口を開く。それまでの奇態を目にしたルイズは、
うん、これ人じゃないわ。絶対違うわ。と思った。

「俺、平賀才人って言うんだ。その…」
「変な名前ね。で、あんたなに?人間とは違うと言ってくれると、すごく嬉しいけど」

何か良い感じな事を言う前にそんな事を言われて、
がふっ。と効果音付きでサイトは倒れた。
彼にはまだマリコルヌ程の耐性はないので、
いきなりそんな事言われて何言ってるのさ、人間だヨ。とか言えなかった。
そんなサイトをあきれ顔でヴァーミルナは見る。

『何をしているんだ?さっさと帰るぞ』

倒れてジタバタしているサイトを引きずって鏡の中に消える彼女は、
何故かルイズくらいの背丈の女の子になっていた。
デイドラの思考は、まったく理解できないものだ。

好きな人間の男に自分を心から愛させる為に、男の無二の親友を人質にとったり、
奥さんが亡くなって落ち込んでいる男を元気づける為に、
奥さんの墓の前で誰かに怒らせて戦わせてみたり、空から燃える犬をたくさん降らしてみたりと、
基本的に変な考えが、デイドラ達の間ではマトモな考えなのだ。

「何だったのかしら。あいつ」
「気になるのかね?ヴァリエール嬢」

はぁ?とルイズは顔を赤くもせずにジェームズの方を見た。

「ああ、脈無しか。いや、すまんすまん」

はっはっは。とジェームズは笑う。
このお茶目な王様は…。とルイズは思う。実際のところ、
自国の王様の方がよっぽどお茶目だったのだが、
ルイズはそんな事を知らなかった。


タバサが先ほどデイドラ王子から教えてもらった事を要約すると、
そこのエルフは魔法得意そうだから、そいつに頼め。
という事だった。少々の事情を省き、病状のみを説明する。
ティファニアもこんな商売を1年以上やっているだけあって、
事情を聞こうとはしなかった。おそらく姉さんが知っているだろうし、とも思っている。
タバサは船上の事と、使い魔の事を全員に口止めしているが、
盗賊に喋るなと言って喋らない方がおかしい。広げてくれと言っているようなものだ。

「できる?」

「はい。薬の効果を打ち消すだけなら作れると思います。手伝ってもらいましたし、
お代はいりません」

ありがとう。とタバサは頭を下げた。
まだお腹は減らない。今度はマーティンの所へ行った。

「リッチか…マニマルコが本当にリッチにしたというのなら、それはひどくやっかいだな」

やはり出来るだけ事情は言わずに話す。タバサの顔がこわばった。

「ただ、どうだろうな。私が知る限りリッチになった者は、まるで化け物の様になると聞く。
 マニマルコは別格としても、従姉は昔のままの姿で君を覚えていたのだろう?
 まだリッチではないのかもしれない。デイドラが必ずしも真実を話す訳ではないからね。
問題は、どうすれば助けられるかということだ」

何らかの魔法を打ち消す薬を飲ませればもしかしたら。
ティファニアに薬の量を二人分作る様に頼んだとき、
ようやく彼女の腹の虫が、大音量で鳴り響いた。
お腹が空くと、嗅覚が鋭くなる。
音に驚いている部屋の面子を残し、
タバサは美味しそうな匂いの方向へ駆けていった。


二階の別の部屋。割り当てられた三つのベッドが置かれた部屋にて、
キュルケは眠ろうとした。が、お喋りな青髪の女が先にいて、
さっきからそのマシンガントークを聞かされている。
また、隣がアンアンうるさかったので壁にサイレントも掛けた。
魔法は案外上手くいって、壁に掛けた魔法が音を遮断する。外からの音は聞こえなくなった。
しかし、慣れない風の魔法を壁全体に使ったせいかそこで力が切れた。
自分にかければ良かったわね。けど、解除の先住魔法とかあったりして。
主に主人の待遇の悪さをグチグチ言ってる使い魔を見て、彼女はそんなことを考えた。

このギルドハウスには、二階に4つの部屋がある。
普通より少々大きいこの建物は、表向きには集会所や村のお祭りの際に使われている。

「でね。でね。お姉様ったらひどいのね。
 自給自足とかありえないの。ご主人様として、
 シルフィにおにくとかスペアリブとかを食べさせる義務があるのですわ」

どんな義務だ。と思いながら、はいはい分かった分かった。
と気のない返事をする。韻竜って結構お馬鹿ね。と思いながら。

「何なのねその反応!これだから人間はー」
「文化人気取るなら、まず服くらい着た方が良いと思うけど」
「人じゃないもんね。文化龍だからかまわないの」

さいですか。と生まれたままのシルフィを見て、
色気より食い気だから私の勝ちねとキュルケは笑った。
二人は同じベッドに寝転がり、話をしている。
本来一人用なのでくっつきそうな近さだが何も問題は無い。
キュルケは学生服のままだった。

「服なんて体を締め付けるだけなの。
 動きにくくなるのはいや。
 だからきゅるきゅるも、
 そんなの脱いじゃえばいいのね」

とことん馬鹿なのかしら?とは口に出さず、寒いから嫌だと返す。

「そうか。人間「は」裸じゃ寒いから服を着るのね」

いい加減眠らせて。嫌々ながらキュルケはシルフィードの話を聞いている。
そんな時、どこからか大きな腹の虫が鳴った。
どうしてサイレントを超えてでも聞こえるのかしら?
何らかの力が働いているのかとキュルケは思う。

「今の、何?」

「お姉様ですわ。さっきからなんにも食べていなかったけど、
 ようやくお腹が空いたのかしら?」

待て。とキュルケは頭の中でツッコんだ。それなりに親しい間柄だから、
彼女の食べる量はどれほどの物か当然知っている。
何故かシルフィードはえっへん、と胸を張った。

「まったく。シルフィがお腹一杯になったから、
 後で食べようと持ってきたごはんが無ければ、
 一体お姉様はどうなっていた事か…」

部屋の一角を占領しているとても大きな袋。
どうやって入れているのかは知らないが、
上手い具合に料理が入っているようだ。

「あの袋の中ってそれだったわけね。たしかにたくさんありそうだけど――」

中身大丈夫なの?と聞こうとする前に、
バタン、と扉が開く。そこにはタバサがいて、
何も言わずに袋の方へ行く。開けて食べ始めた。

「お姉様!マナーがなってないですわ!
 それ元々シルフィのなの!
 くださいって言わないといけないのね。
 お姉様―?聞こえていますか。…このちびすけめ。
 あ、そのスペアリブはダメなのね!」

メイジの実力をはかるには使い魔をみろという格言だか、
ことわざだかがあったと思うけど、
このコンビは本当に凸凹してておもしろいわね。
キュルケはあくびをして、ようやく夢の世界へ旅立てると思ったが、
さっきからのシルフィードの声を聞いている間に眠気が消え去ってしまったらしい。
変に目がさえてしまったのだ。経験則からして、こんな時は簡単には眠れない。
ああ、とため息を一つついて彼女はベッドから出た。

「たまには、男がいない夜更かしもいいかしらね」

タバサが持ち直した事に安堵しつつ、
キュルケは暴食している二人に、飲み物でも持って来ようと外に出る。
その足取りはどこか軽やかだった。


アルビオンから見える青の月と赤の月は、
地上から見るそれとは別格の美しさを誇っている。
今や死体と瓦礫の山になったアルビオン王家最後の砦は、
その美しい二つの月からの光に照らされている。

「素晴らしい光景だ。そうは思わないか?クロムウェル」

マニマルコの頭のルーンが妖しく輝くと共に、
身につけている死霊術師のアミュレットが青と赤の月に照らされた。
本来このマジックアイテムは自身の身体能力を低下させる代わりに、
魔法力を増幅する物だ。しかしルーンの影響かそれとも改良の結果か、
低下を引き起こさない上に以前よりも魔法力が増幅する品となっている。

おせじでも良い眺めとは言えない。クロムウェルは苦笑いでごまかした。

「いやー…それよりマニマルコ様。人員の確保も出来ていませんし、
 レキシントンに戻って後続が来るのを待ちませんか?」

作業は出来ませんし、ここ寒いですし。とクロムウェルは言うが、
マニマルコはそれを無視して呪文を唱え始めた。

大損害を被ったレコン・キスタの軍は、現在戦傷者の治療やら何やらで忙しい。
城の検分を行うには、後二日は必要だと先ほど兵から聞いたところだった。
空に浮かんでいて寒いから、死体だってそこまで早く腐ったりしないし大丈夫ですよ。
と言われ、死体は見飽きたなぁ。と元司教の頭の中で感想がこぼれた。

「…マニマルコ様?」
「黙れ犬。ゾンビにランクアップでもしたいのか?」

いえいえまさか。とニッコリ笑って何も言わない事にする。
少し経って、イザベラと共に黒いフードを被り、
変なデザインが入った黒いローブのメイジが何人か来た。
何でもマニマルコの部下らしい。ガリアで彼女の教えを受けた「蠱の僕」、
だか「蠱の隠者」だとかいう連中だとクロムウェルは聞いた。

「マニマルコー。これどこに置けば良いの?」

片手で人が入る白い棺らしき物を持って、イザベラは言う。
へんてこなロゴが入った赤い布を持っている黒装束達は、
ひざまずいてマニマルコの指示を待つ。

「ああ、ありがとうイザベラ。ここに置いてくれるかな?慎重に。ひびが入ると面倒だからね。
 お前達はその棺の下に大きい布を敷いておきなさい。小さいのを上に掛けるように。
 分かったね?」

コクリと頷き、イザベラは交錯する手の骨とドクロが描かれ、
白と黒で縁取りされている布の上に棺を置いた。
死霊術師のタマゴ達は、二つの小さな布を棺の上に掛ける。
タムリエルの魔法は使えないが、使えなくても出来る事はたくさんある。
よしよし。とマニマルコは満足げに、その棺を眺めた。

口調こそ優しく見えるが、彼女は弟子にとても厳しい。
素材の無駄遣いや、素材その物をダメにすることを極力禁止している。

もっとも彼らはタムリエルの魔法を使えないので、
今はマニマルコの指示で防腐処理や、
マニマルコお手製のマジックアイテムを使って、
人間の魂を何処かから取ってきたりするくらいだ。


「あのー…マニマルコ様。何をされているのでしょうか?」
「まぁ見ていろ。もっと良い眺めにするだけだ」

また長い詠唱に入る。何でも東方には色々と魔法の種類があるそうで、
短い詠唱か、または唱えなくても問題無く使える魔法が今は流行っているが、
昔ながらの「古き法」とかいう魔法は、長々と呪文を唱えないといけないのだとか。
それはとても難しいから、イザベラはまだ使えないらしい。
魔法というのも色々あるんだなぁ。と全く使えない男は思う。

「ねぇクロムウェル。何が起こるのー?」
「いや、僕にも分からないんだ。とりあえず、静かに待っていよう」

長い詠唱が続く。クロムウェルは比較的綺麗な所に座ってそれを眺める。
隣にイザベラが座り、少し離れて黒い集団が座って、蠱の王へ祈りを捧げている。

本当に長々と続く。言葉が違うので雑音の様に聞こえるそれは、
眠気を増長させる役に立つ。イザベラがクロムウェルの肩に頭を乗せ、
スヤスヤ眠り始めた頃、ようやく詠唱が終わったようだ。

「さて…我が敵達の目はごまかせたか?」

死体に魂を入れて使役したり、魂そのものを使役したりする死霊術師は敵が多い。
毛嫌いする神は、エイドラにもデイドラにもいる。

白い棺――儀式用の祭壇――に天から光が降り注ぐ。
薄い桃色の光が辺りを照らす様はこの惨状の中でも美しく輝く。
それはクロムウェルがイザベラを起こすのには十分な理由だった。

「うわぁー凄い。これ、マニマルコがやったの?」

その光の意味するところを知らないイザベラは、
美しい死霊術師の月にうっとりしながらマニマルコに聞いた。

「そうだとも。これこそ私が編み出した魔法だ。
 さて、眠っている連中やここらを漂っている連中がいい加減不憫だ。
 起こしてやるとしよう」

近くの死体に近づき、マニマルコは呪文を唱えた。
何かが入り込んだかのように死体がうごめき、
意識を取り戻したかのように立ち上がる。
死霊術師の長たるマニマルコにとって常人では視認出来ない魂など、
ありふれた死霊術用の素材である。
普通のメイジなら魂を使うために「魂石」と呼ばれる神秘のアイテムが必要となるが、
彼だった彼女はそのまま使う事が出来る。

「マニマルコ様のお手を煩わせなくても、指輪がありますが」
「クロムウェルよ、あまり指輪は使うな。それの研究はまだ済んでいないのだ」

死体達を蘇らせ瓦礫を撤去させる。死体なのだから、
当然体のどこかが欠けている兵士もいる。
しかし何の問題も無く彼らは働いている。痛みも意識も無く、
忠実な奴隷としてのみ彼らは存在しているのだ。

「明日の昼には終わるな。死体が増えれば増えるほど、
 作業がはかどるから楽になる。お前達は防腐剤の用意を。
 腐り始めるとやっかいだからね。いくらかはスケルトンにするから、
 それの準備もしておくように」

ペコリと頭を下げ、蠱の僕達はレキシントンへと戻って行った。
彼女の死体収集や死体を蘇らせる魔法は一般兵から奇異の目で見られているが、
クロムウェルの直属だからと、問題視はされていない。
魔法の腕も良く、水の秘薬が無くても大けがの治療が出来る事も大きい。

しかし最初からマニマルコにとって、
レコン・キスタの兵隊は実験道具程度の認識しかない。
その内皆自身の配下に加える予定だ。
犬は素体にすらならなさそうだし、外交とか面倒だからそのままにするつもりなのだ。

ジョゼフにこちらの統治を任されたので、楽しい所にするつもりである。
誰にも邪魔をされずに死霊術の研究が出来る所に。
古巣の、アルテウム島の様な防衛設備を持っているだろうこの大陸は、
それらをするにうってつけと言えるだろう。

「綺麗だねぇクロムウェル」

死んだ兵士が瓦礫を運び、マニマルコが辺りを漂っているらしい魂を死体に入れ、
蘇らせて働かせている事を除けば、そこは二つの月とたくさんの星の光と、
天から降り注ぐ淡い桃色の光が美しい景色を作っている。

「ああ、そうだね」

下界に捕らわれず、上を向いておけばいいや。
とクロムウェルは死体とその主を見ないで空を見る事にした。
ああ、これだけなら何も問題はないのに。そんな事を思いながら。


「美しい光景だ。これをシロディールに現した頃は良かったのだがなぁ」

死霊術師の月と、赤と青の月を見て蠱の王は呟く。
シロディールの政府高官の腐敗ぶりは、
未熟な見習い死霊術師が防腐剤処理すら施さずに作り、
真夏の炎天下の湿地帯に放置したゾンビの様な物だ。
実際その通りとしか言いようがない。ほぼ腐りきっているのが現状である。

基本的に帝国の中央シロディールで官僚になれるのは、
皇帝の側近である文武両道の優秀なバトルメイジを除き、帝都人のみである。
それらは、シロディールの田舎である西のコロヴィア地方や、
東のニベネイ地方で他種族と共に暮らす者達よりも帝都、
またはその近くに生まれ幼少から帝都の「洗練された」ニベネイ文化に触れてしまった、
帝国中央ハートランド近郊出身の者が多い。
つまり、帝国中心主義者しかいないということだ。

タムリエルにおいて、人間は寿命の低い側に位置する。
エルフが千年生きていられるのだから、当たり前と言えるかもしれない。
そしてどこの世界でも、腐敗した権力者は長生きしたいものだ。
そんな訳で帝都の官僚は死霊術師と手を組み、延命の為の報酬として死体を渡していた。
しかしメイジギルドの頭が変わり、ハンニバル・トレイブンと名乗る男が、
シロディールのメイジ達を統べるようになった時、異常が起こった。

「真の無知とはああいう奴を言うのだろうな…サイジックでも見たことのないタイプだった」

彼は死霊術絶対禁止令を掲げ、死霊術を行う者を容赦無く罰した。
結果として、有力者の庇護下にあった術者達は捨てられ、
力のある者達はシロディール以外の地方に逃げた。
そこにやって来たウジ虫のたかったゾンビの様な連中が、
我こそは蠱の僕!とか言い始めたので、それなら僕になってくれるか?
とマニマルコが行ったのである。蠱の名を汚すなと言いたかったようだ。
もし隠れ潜む隠者がいれば、そいつも回収しておこうかとも考えていた。

しかし、隠者の様な事をやっている奴の中には、断食でリッチになろうとした馬鹿もいた。
ウジ虫でも頭に沸いているのかね?とオブラートに包んでやんわり言うと、
それすら有難いお言葉として流した。彼はその時シロディールには本当の馬鹿しか残っていないと痛感した。

あまりにも可哀想なので、最も単純かつ面倒なリッチ化の方法を教えてあげたのだが、
以前『死者の書』に書いた内容であるにも関わらず、文書化不可能とか言い出した。
はぁ。とマニマルコはため息をついてから、こいつの始末を闇の一党に依頼した。
こんなのに最も簡単な物といえども、蠱の秘術を教えた私が馬鹿だったと思いながら。

「ダガーフォールでも何があったかまるで分からん。後一歩だったはずなのだがな…」

気が付けばサラスに戻っていて、ずっとここにいましたよ?
と部下に言われた。神の名を語る連中が介入したのは間違い無かった。
過去への介入は、連中の誰かが創った巻物の影響で不可能なはず。
ならば記憶を改ざんしたか。とマニマルコはその時思った。

その後時折タムリエルに戻っては、各地のメンバーの研究発表等を彼だった彼女は聞いていた。
新しい風により、様々な事が違う視点で明らかになる様は、見ていて面白い物だ。

「だが、まぁ良い。時間だけは無限にある。チャンスはまた巡って来るだろう」

そんな事を呟きながら、34体目の死体に魂を入れていると、
後でクロムウェルと言う名の駄犬が、叫び声を発した。
いい加減死体の耐性は付いたはずだが。と思って振り向くと、
2メイルを超える亜人らしき男がいた。
人なら両手で持つだろうハンマーを片手で持っていて、
体の色は緑で目は赤く、髪の毛は無い。
上半身はその筋骨隆々とした肉体を見せつけたいのか裸だった。

「あの槌は…ヴォレンドラングか?ならば――」

やはりここにも現れるのか。いや、だが何故こいつが現れる?
オークの王に、オークの死体をくれと使いを出したからか?
妖艶な、黒髪の女の体を寄り代としているマニマルコはそんな事を思った。
これに魂を入れた理由は、元の素体が大気からの魔法力吸収効率が高かったからで、
それを手直しして尚更良い具合にしたからだ。それ以外の付加価値なんて、微塵も考えていない。

『マニマルコとは貴様の事か?ああ?』

いかにも不機嫌そうなデイドラの主、マラキャスが言った。
彼は元々「トリマニック」と呼ばれるとても腕力のあるエイドラだったが、
色々あってデイドラになった存在である。

「これはこれは妖魔の王マラキャスよ。あなた様の姿が見られるとは、真光栄に思います」

そんな事は全く思っていないが、社交辞令というやつである。
マラキャスの機嫌は悪いままで、吐き捨てるように話を始める。
エルフの面汚しめ。とマニマルコはそんな感想を頭の中でこぼした。

『この俺様からの儲け話だ。お前の主をある女に殺させたい』
「それは願ってもないこと。ですが…」
『分かっている!今回は少々勝手が違うからな。報酬を言え。用意するぞ』

マニマルコはそれを聞いてニヤリと笑った。
一つ、欲しい物があった。そう簡単には手に入らず、とても力のある物だ。

「では、ハイランドに生息している人間以外の連中の死体を」

マラキャスの顔が不快に歪む。体が怒りによって震え、
ヴォレンドラングの柄から軋む音がした。手に力が入りすぎて、
自身が創ったアイテムすらその馬鹿力で壊れそうになったのだ。

『俺様が、誰か、分かっていて--それを言っているのかぁ!!』

マラキャスの叫び声が辺りに響き渡る。その声は辺りにいる死体に縛り付けられていた魂達を引っぺがし、
近くにあった瓦礫を塵になるまで粉砕した。
そのまま雄叫びを上げ、マニマルコを睨む。
神の怒りが向けられているというのに、彼女は涼しい顔だ。
片手の槌を振り上げ、緑色の亜人はマニマルコ目掛けて振り下ろす。
風を切る音と共に槌は彼女へ向かうが、顔に当たる直前で何故か止まる。
心底嫌そうな顔を浮かべるマラキャスはうなり声をあげて威嚇するが、
マニマルコには何の効果も無かった。

彼女の目論見は当たった。デイドラが自分から頼みに来るということは、
つまり私以外には出来ないということだからな。
マニマルコはほくそ笑む。

『…いいだろう。殺してから報酬は渡す』
「ありがたく頂戴いたしますマラキャス様。では、その内容の方をお話下さい」

メファーラの計画が書かれたメモを渡して、マラキャスは塵となり消えた。
やれやれとでも言いたげにマニマルコが肩を回していると、
クロムウェルとイザベラが彼女の方へ走ってきた。

「マ、マニマルコ様!今のは一体?」

「追放されし者の守護者だの、復讐の神だのと言われる低脳だ。
 気にするな。所詮連中は神ではない…ああ、訳が分からんか。
 面倒だから分からないままでかまわん」

分かりたくもない。死霊使いと出会ってから心休まる日が一切無いクロムウェルは、
聞こえないようにぼそりと呟いた。

「あれ、神様なの?」
「違うよイザベラ。力が強くて死なないだけの、可哀想な豚だ。全ての連中に言えることだけれどね」

どーいう意味?とイザベラは聞き返すが、マニマルコは彼女の頭を撫でるだけだった。
だが私は違う。そう誰にも言わず己に言い聞かせて。


新着情報

取得中です。