あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-24


 夜が明ける。劇場前でルイズはじっと待っていた。
睡眠不足と疲労で今すぐにでも眠りたかったが、姫さまの無事な姿を確認するまでは、という意思がそれを支えていた。

 暫くして、アンリエッタとアーカードの姿が見える。ルイズは立ち上がり、足がもつれて転びそうになりながらも走り出す。
「姫さま!」
「あぁ、ルイズ!」
そう言ってアンリエッタはルイズを抱きしめる。
「ごめんなさい、貴方に何も言わずアーカードさんをお借りしていました。黙っていたことは許してちょうだい。
 その・・・あなたには知られたくない任務だったのです。アニエスと一緒にいると聞いて本当に驚いたわ。
 ルイズ、やっぱりあなたと私はどこにいても駆けつけてしまう、そんな星の下に、運命にあるのかもしれませんね」

「用意万端、整いましてございます」
アニエスが膝をついて口を開く。アンリエッタは目を瞑り、何かを決心したように大きく頷いた。

「行くぞ、ルイズ」
「へっ?なんで?私もお供に――――」
「我々の仕事はここまでだ」
そう言うとアーカードはアンリエッタへと一瞥をくれる。アンリエッタもそれに答えるように頷いた。

「ルイズ、気持ちは嬉しいのだけれどこれは私自身が決着をつけなければならないことなのです」
決意を秘めたその目を見て、ルイズは渋々引き下がる。
「・・・・・・わかりました、姫さま。くれぐれもお気をつけて」



 魅惑の妖精亭に帰る為に、ルイズとアーカードは歩き出した。
「アーカード、アンタ姫さまに変なことしなかったでしょうね」
「変なこととは?」
アーカードに聞き返され、ルイズは俯いて言い淀む。
「そ・・・その・・・・・・、前わ・・私にしたようなこと・・・とか」

「フッ、さすがの私も手を出していい相手と悪い相手くらい弁えている」
ルイズは立ち止まって、半眼でアーカードを見つめた。
「主人である私はいいってわけ」
「はっはっは、主も満更でもなかったくせに」
アーカードは歩きながら愉快に笑い、ルイズは耳まで真っ赤になる。

「こっ・・・この、バカ吸血鬼!」
エクスプロージョンをぶつけてやろうかと杖を構え唱えようとするも、立ち眩みが起きた。
その後に大きな溜息を吐く。どうせアーカードに爆発ぶつけたって意味がない。
それに昨夜二発もエクスプロージョンを使ってしまった。
いずれまた姫さまの役に立つ時の為にも、魔力はできるだけ温存しておいた方がいい。


 そもそもこのやり取りはいつものこと、躍起になってもしょうがない。
少しは大人にならなくちゃ、ルイズ。涼しい顔してあしらえる、大人の女性になるんだ。
ルイズがあれこれ考えていると、いきなりアーカードが立ち止まった。

「・・・・・・どうしたの?アーカード」
「さて、主は戻るといい」
ルイズは首を傾げる。

「なんで?まだアーカードは何か用があるの?」
アーカードはフッと笑って答えた。
「んっ・・・・・・ピーピング」

 そう言うとアーカードが地面に、否、自分の影に沈んでいく。
ルイズが止める間もなく、姿は影も形も掻き消えてしまっていた。
暫しの間立ち尽くした後、ルイズは踵を返して劇場へと走り出した。




 高等法院長リッシュモンは、心の中でほくそ笑んでいた。女王と言っても所詮小娘、まだまだ甘い。
劇場から自分の屋敷まで続く地下通路を、アルビオンへの亡命とその後どうするかを考えながら進み続ける。

 魔法の灯りに照らされ、人影が見えた。
「聞きたいことがある」
その者が銃を構える、よく見るとそれは昨夜自分の屋敷にきた女騎士だった。

「どけ、まだ死にたくはなかろう。この距離では銃弾なぞ当たらん」
リッシュモンは杖を構えてそう言うも、女騎士アニエスは無視して続ける。

「ダングルテール。貴様は20年前、冤罪で反乱をでっちあげ、ロマリアの異端諮問"新教徒狩り"を名目に我が故郷を滅ぼした、そうだな」
「なるほど、あの村の生き残りか。そこまで知っているのなら、わざわざ確認せずともわかるだろう」
アニエスはただ一つのブレもなく、作業機械のように続ける。

「いくらもらった」
「いちいち覚えておらんよ」
「実行した部隊はなんと言う」
「質問攻めか?・・・・・・フンッ、まぁいい。たしか『魔法研究所実験小隊』と言ったな。汚れ仕事を専門に扱う連中だ。
 当時かなり優秀な隊長がいたらしく、瞬く間に焼き滅ぼしたそうだ。是非ともその光景を、この目で見たかったものだよ」

 リッシュモンは下卑た笑みを浮かべて言った。
「・・・・・・そうか」
アニエスは呟くと銃を手から離す。銃は軽い音を立てて地面に落ちた。

「どういうつもりだ・・・?」
リッシュモンはその光景に目を疑った、まさかここにきて諦めとでもいうのか?
警戒する、そもそもこの抜け道が知られているのだから仲間がいてもなんらおかしくはない。
むしろ多数の兵士が配置されていて当然である。


 リッシュモンが周囲に注意を払ったその刹那、アニエスは振りかぶって右手に隠し持っていた袋を投げつける。
虚を突かれるもリッシュモンは目前に迫りくる袋を無視し、投げられたそれよりも早く呪文を解放する。

 杖の先から放たれた巨大な火球が袋を飲み込んだ瞬間、大きな破裂音が狭い通路に響き渡った。
袋の中身は火薬。それが火球によって急激に燃焼し爆発、リッシュモンを巻き込んだ。
アニエスは瞬時に駆け出し、爆風をものともせず距離を詰める。
残った炎をマントと中に仕込んだ水袋で威力を減退させ、一気に懐に入り込んだ。

 杖を持ったリッシュモンの右肘から先を、抜き放った剣で斬り上げはね飛ばす。
そのままアニエスは右拳を顔面に叩き込んだ。リッシュモンは為す術もなく倒れ呻き声をあげる。

「ぐぅう・・・・・・ぅぅ・・」
アニエスはリッシュモンの肩を足で押さえ付け、身動きを奪い見下ろす。
「私は貴様を、酷く責めぬいて殺してやってもいい。わが故郷のことを考えれば、釣りの上に特典がつく」
最早そこには怨恨も憐憫もなかった。
生殺与奪の権を、既に自分が握っていると確信した上での、死に掛けた虫でも見ているかのような瞳。

「だが、私は貴様と違って下衆ではない。だからお前が死ぬのをただ眺めることとしよう。
 その出血量ではそう長くは保たない。お前がこの世を去るそのほんのひとときの間を、わが故郷の人々の鎮魂へ当てる」


「こ・・・小娘が・・・・・・平民・・が・・・」
リッシュモンは絞り出すように何度も悪態をついていたが、それもすぐに終わった。

 死んだのを確認したアニエスは、大きく息を吐いてからゆっくりと目を瞑った。
気が抜けた途端、一気に疲れが吹き出て火傷の痛みが体を襲う。
「うっ・・・・・・」

「大丈夫か?」
「・・・ッ!?誰だ!!」
「私だ、わ・た・し」
声が響く。聞き覚えのある声にアニエスは思わず問うた。

「・・・・・・アーカード殿?」
「ピンポ~ン、大正解」
そう言って、アーカードはいきなり壁から出てくる。

「なっ・・・・・・!?!?」
「やっほ~、手を貸そうか?」
アニエスは目をパチクリさせながらも、すぐに冷静になる。
「これしきのこと、大丈夫だ。それよりも、なるほど・・・・・・吸血鬼、化け物だと聞いてはいたが・・・。
 たった今目の前で、壁抜けなんて破天荒なことをやられると、信じざるをえないな。異世界の吸血鬼、か」

「ははっ、信じていなかったのか?」
「そういうわけではない・・・が、実際にこの目で見るのとはまた違うということだ」


 アーカードは軽い笑みを浮かべてアニエスを見つめている。
「しかし・・・こんな狭い地下通路で火薬を使うとは、危険だとは考えなかったのか?」
「強度は、事前に調べていた」
「最初に炎の魔法を使うと踏んでいたのか?」
「彼奴の得意な系統は把握済みだ。それでも火か風、半々の賭けではあったが」

 少しの間静寂が流れる。しばらくしてアニエスが口を開いた。
「・・・・・・ところで、覗きの趣味がおありなのか?アーカード殿」
「乗りかかった船、というやつだ」
「わが故郷の話も聞いていたな」
「無論」

 アニエスは嘆息をつく。 
「まぁ・・・・・・いい、別段隠し立てするほどのことでもない」
「ふむ、そうか」

 手を出さなかった、一切の邪魔をしなかったのは、アーカードなりの配慮だろう。
黙っていればバレなかったのに、わざわざ心配して出てきてくれたのもただの親切心。怒る理由は、ない。


「鎧をはずせ、剣その他もまとめて持っていってやろう」
アニエスは遠慮しようと思うも、思ったより身体にダメージがある。
だから素直にお言葉に甘えることにした。
「かたじけない」

「・・・・・・死体は?」
なにやら物欲しそうな目で、見つめるアーカードがそこにいた。
「裏切り者とはいえ、貴族。きちんと葬ってやらないといかぬだろう」
「ちぇっ」

 アーカードは不満そうに舌を鳴らした。




「アーカード!アンタなにやってたのよ!」
外へ出ると、アンリエッタとルイズと数人のメイジがやってきた。
メイジ達はアンリエッタに命じられていたのか、すぐにアニエスの治療を開始する。

「大丈夫ですか?アニエス」
「ありがとうございます、陛下。傷の方は・・・大したことはありません」

「ここに置いておくぞ」
そう言うとアーカードはドサドサと、持っていた鎧やら剣やらを置き始める。
「アーカードさん・・・・・・アニエス・・・」

 アンリエッタはアーカードを見てから、アニエスへ目を向ける。それだけで言いたいことはなんとなくわかった。
アンリエッタはルイズから、アーカードが消えたことを聞いていた。
アーカードが余計な茶々を入れたりして、アニエスの復讐のチャンスを、不意にしてしまったのではないかと。

「問題ありません、アーカード殿には世話になりました」
その言葉にアンリエッタは安堵の表情を浮かべる、そして改めてアーカードに視線を向けた。
「そうですか、ありがとうアーカードさん」

「なに、荷物を運んだだけだ」
「何か余計なことはしてないでしょうね」
ルイズがアーカードに問い質す。アーカードが「余計なこととは?」と聞き返し、他愛ない言葉の応酬が始まる。


 そんな二人の微笑ましい姿を見ながらアンリエッタは口を開いた。
「ルイズ、アーカードさん」
名前を呼ばれ、二人はアンリエッタへと振り向く。

「今この場を以て任務は終了にいたします」
「えっ・・・?ぁ・・はい、姫さま。もうよろしいのですか?」
アンリエッタはにこやかに笑う。

「えぇ、とても役に立ちました。今まで大変だったでしょう、本当にありがとうルイズ」
「いえ、決してそんな・・・。また何かあった時はいつでもお命じになって下さい。身命を賭して、粉骨砕身誠心誠意お仕えいたします」
「・・・・・・報酬はなしか」

 アーカードがポツリと言う。瞬間ルイズが物凄い剣幕で声をあげた。
「何言ってんのよ!アンタは私の使い魔なんだから、無償労働は当たり前でしょ!」
「情報収集の件は、既に準備金も含めて前金として貰っているからいいとして。尤もそれはルイズがカジノで――――」
「あーーー!あーーーー!!あーーーーー!!!」

 ルイズはアーカードが自分の失態を口にしようとしているのを、叫び声をあげて制する。
「まぁその情報収集の件はいい。だが昨夜の護衛は単なる私と女王陛下、個人間の頼み頼まれ事。そこに使い魔や主従といった事柄は関係ない」
「むっ・・・・・・で・・でも・・・」
「構いませんよ、ルイズ。アーカードさん、私にできることならなんでも仰って下さい」

 アーカードは満足げに頷く。
「んむ、じゃあ血を少々飲ませて欲しい。即物的な報酬には興味ないからの」
「馬鹿!よりにもよってアンタ、姫さまにッッ!!」


 アーカードはギャーギャー喚くルイズの後ろに回り込んで、手で口元を塞ぐ。
モガモガ言って精一杯暴れ、拘束を解こうとしているようだがいるが気にしない。
「血を・・・・・・ですか、少々怖いですね」
「なに、痛くはない。むしろ気持ちいいくらいだ」

 アンリエッタは苦笑いを浮かべる。
「あの・・それよりもアーカードさん、ルイズが・・・・・・」
「んっ・・・?」
ルイズに目を向けると、いつの間にか暴れるのをやめていた。
鼻も一緒に塞いでいた所為で呼吸困難、酸欠に陥っているようだった。

「おっと」
慌てて手を離すと、ルイズは何度も深呼吸して酸素を肺に取り入れた。
「殺す気!?」
「大丈夫、あのまま意識を失ってもすぐには死なない。その時は人工呼吸でもしてやったさ」
「ぬぐぐぐ・・・・・・」

 ルイズは恨めしげにアーカードを睨む。あー言えばこう言う、本当に屁理屈と揚げ足取りばかり。
ちっとも主人の言うことなんて聞きはしない。と言っても、上下関係をはっきりさせるような方法もない。
「ふぅ・・・・・・しょうがないな。じゃあルイズ、お前のでも構わん」
「はぁっ!?」
ルイズが素っ頓狂な声をあげる。

「そんなに反対するなら、代わりにお前の血を吸わせてくれればいい。私はどちらでも構わん」
「なんでよ!そもそもちょっとやそっとの血で、どうにかなるもんでもないでしょ!!」
「安物のワインを樽で飲むのと、上質のワインを一杯飲むのとじゃ訳が違う」
「とにかく駄目!・・・・・・そう、これは命令!!命令よ!!!」


 アーカードは大きく溜息を吐く。
「はぁ・・・、じゃあ主からのキスで我慢しよう。狂おしいほど情熱的な接吻をしてくれればそれでいい」
「んなッ・・・!?・・がっ・・・・・・」
ルイズは勢い余って絶句する。姫さまの前で何を言い出すのをかと。
アーカードへの罵倒か、姫さまへのフォローかぐるぐると頭の中を回転する。
すると治療を終えて近づいてきたアニエスが、そんな心中など露知らず口を開いた。

「キスくらい良いではありませぬか、ラ・ヴァリエール殿」
「アニエス!?」
「昨夜仰っていたではないですか、アーカード殿とよくキスをすると」

 アニエスは何食わぬ顔をしてそう言い、ルイズはいきなりの追撃の言葉にポカーンとしていた。
アーカードは少し驚いた顔をした後ニヤリと笑い、アンリエッタは手を口に当てて目を丸くしていた。

「むっ・・・・・・ちょっと語弊があったかな」
アニエスがそう呟く。眉間に皺を寄せ、昨夜の言葉を思い出そうとしていた。
が、しかしルイズには最早聞こえていなかった。
「ッ・・・!!?ちっちち、違います姫さま!!誤解です!」
身振り手振りのオーバーリアクションで、アンリエッタに詰め寄りなんとか弁解しようと試みる。

「ルイズ・・・・・・、その・・・人それぞれですから。気にしないで」
ニコリと乾いた笑みを浮かべ、アンリエッタはルイズにトドメの言葉を放つ。
ルイズはガクリと肩を落とし、その場にへたり込む。

「大丈夫、安心してルイズ。あなたがどんな性癖を持っていても、私たちはいつまでも大切なお友達です・・・・・・」
「かふっ・・・」
「ん~む・・・・・・」
「はっはっはっはっはっは」

 ルイズは心の奥底で慟哭を上げ、アンリエッタは必死にルイズに対してフォローするも悉く裏目に出る。
アニエスは首を傾げ、アーカードはただただ愉快そうに笑っていた。




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