あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゴーストステップ・ゼロ-08


ヒューとデルフが会話をしていた頃、学院を挟んだ反対側では一つの影が蠢いていた。
その場所は、魔法学院において宝物庫と呼ばれる場所である。ローブを目深に被ったその人物は傍目には男とも女ともしれなかった。
怪人物は宝物庫を守る堅牢な壁を何度か確かめるように叩き、また杖を振って何がしかの魔法を使っては頭を振る。
そんな事を根気良く続けていたが、芳しい結果が得られなかったのか、終いには宝物庫の壁を蹴りつけて去って行った。
茂みに隠れ、纏っていたローブを剥ぎ取り、怪人物から学園秘書ミス・ロングビルへと姿を戻した彼女は、教職員寮にある私室へと戻り溜息をついた。

「あー、もう!何だってあんなに分厚いのさ!しかも壁自体に『固定化』を何重にも掛けてるもんだから『練金』すら効きやしない!ああいうのを偏執的って言うんだろうね!
 あたしのゴーレムでもあれだけの厚さになると破壊にかなりの時間を食うだろうし、どうしたもんか…。」

学院秘書ミス・ロングビル、またの名を“土くれ”のフーケと呼ばれる彼女は、魔法学院にある<破壊の杖>と呼ばれるマジックアイテムを奪取せんと1年近く前からこの魔法学院に潜入していた。
しかし、宝物庫の壁の厚さと幾重にも重ね掛けされた『固定化』は彼女に計画の破綻をありありと感じさせるものだった。



ゴーストステップ・ゼロ シーン08 “学院秘書と宝物庫”

    シーンカード:ハイランダー(希望/予期せぬ幸運。状況の好転。失敗しかけていた計画の奇跡的な進展。)



虚無の日から数日後、学園は何事も無く動いていた。
学生達はメイジとしての授業をこなしつつ青春の一時を謳歌し。
使用人達は日々の糧の為、精力的に仕事をこなしていた。

さて、そんな時ルイズは何をしていたかというと、…爆発していた。もといキュルケやタバサの協力の元、魔法の検証に明け暮れていた。
いつもは夕食が済んだ後にしていたのだが、キュルケやタバサから「流石に夜は迷惑」という意見[苦情ともいう]を聞いて、授業と夕食の間に切り替えたのである。
今は以前、ヒューからあった指摘を参考に試行錯誤の最中だった。
呪文の順番を入れ替えたり、発音を変えてみる等、様々な方法を試してみる事にしたのだ。
しかし、その前に自分が起こしてしまう『爆発』についてより詳しく理解しようと思い立った、様々な爆発を起こして検証しようというのである。
まず、普通に爆発が起きる場合でも距離によって命中精度にかなりの違いがある事に気が付いた。大体自分の身長と同程度の距離なら命中は難しくない事。それから距離が出来るほどにばらつきが出てくる。
威力について、これは集中するだけ威力が増大する事は、経験上理解していたので割愛した。
生体と無機物に対しての威力の違い、流石にこれは人を対象にする訳にはいかなかったので諦めた。

「ふぅん、こうして改めて文章に起こしてみると、いかに貴女の爆発が不思議な現象か分かるわね。」
「そうなの?」
「ええ、例えばこの威力の上昇に関してだけど。普通にファイヤーボールを打った時も、集中して打った時もそう威力に変化は無いのよ。
 強い威力が必要なら強い呪文、集中するのは命中精度を上げたり、制御が難しかったりする時、それが普通よ。」
「ただ、感情の昂りで実力以上の威力が出る事は何かのレポートで読んだ記憶はある。」
「うーん、感情の昂りとは違うのよね。こう“成功しろ~成功しろ~”って魔法の制御とは別の所で考えると爆発が大きくなるのよ。」
「貴女、力の込めすぎなんじゃないの?」
「込めすぎ?」
「そう、もしかしたら貴女の精神力って馬鹿みたい多いんじゃないかしら。
 呪文に込める精神力が多い所為で、呪文が呪文として成り立たないんじゃないかって言ってるの。」
「制御に問題があるという事?」
「というよりもあれね、貴女が注ぎ込んでいる精神力と、呪文に必要な精神力に大きな乖離があるのよ。」
「じゃあ、想定して使う呪文のレベルを上げろって事?そんなの無理じゃないの。」
「そこが難しい問題なのよね、精神力はあってもドットの呪文じゃあ簡単にあふれるとか、普通は無いんだけど。」
「案外、ヒューが言ったのが本当の事なのかも。」
「それって、ルイズだけの魔法ってヤツ?…かもしれないわね。」

タバサとキュルケが深刻な顔になった事で不安になったルイズは恐る恐る尋ねてみる。

「ちょ、ちょっとどういう意味よ。」
「多分、多分だけどね。ヒューが言ってたあなたの魔法って戦術級になるんじゃないのかって想像したのよ。」
「はぁ?何よそれ!」
「落ち着きなさいなルイズ、よくよく考えなさい。
 ドットからスクエアになったとしてもドットの魔法に力を込めすぎて失敗するなんて普通は無いの。」
「分かってるわよそんなこと位。」
「だとすると、貴女の魔法が使う精神力は私達とは違うレベルにあるって事じゃなくって?」
「例えば私達の精神力を測る目安がワイングラスだとすると、貴女の目安は桶の可能性がある。
 ワイングラスからナイトキャップに使うグラスには造作もなく水を移せるけど、桶だと難しい。そういう事。」
「うう、遠い道のりがますます遠くなった気分だわ。」
「安心なさいなルイズ」

キュルケはルイズに向かって慈母のような笑みと口調で話しかける。

「え?」
「その予想は間違ってはいないわ。」
「な、なんですってぇ!ちょっとキュルケそれどういう意味よ!」
「あら分からない?」
「ふ、ふふふ。ああ、良いところに生体と無機物の比較対象があったわね。
 そこでじっとしてなさいツエルプストー!アンタの屍を踏み越えて私は私の魔法に辿り着いて見せるわ!」
「あーら、貴女のノーコン魔法如きで私を屍にできるつもり?」
「い、言ったわね、言ってくれちゃったわね!そのノーコン魔法、おのが身でとくと味わうが良い!」

“宝物庫”前の広場に爆発音が響き渡った。

一方、ルイズの使い魔である所のヒューはというと、…学院近郊の草原で乗馬の練習の最中だった。
講師を買って出たのはヒューのお陰でモンモランシーとよりを戻したギーシュである。こちらもあの一件以来、仲良くなったモンモランシーとシエスタが少し離れた場所で、談笑しながらアフタヌーンティの準備をしていた。

「そう、基本的に馬を進ませたい方向は脚で指示するんだ。より急ぐ時は手綱を使って細かく指示しないといけないけど、無闇に引っ張ると棹立ちになったりして落馬の原因になるから気を付けて。」
「あ、ああ。くっ、と、は。」

「ギーシュー、ヒューそろそろお茶にしましょー」

「おっと、レディ達がお待ちだ、今日はこの辺で切り上げようか。」
「ん?ああ。済まないなこんな面倒な事を頼んで。」
「いやいや、気にしないでくれたまえ。貴方に教えてもらった事に比べれば乗馬程度どうという事もないさ。
 というよりもだね、僕としてはこの後に貴方から聞ける戦闘に関する考察が聞けるだけ得をしてるともいえる、収支でいえばこちらが得している位だよ。」
「あまり、こっちに集中されても困るんだがね。モンモランシー嬢の視線が痛くてかなわん。」
「まあそこは勘弁してくれたまえ、そんなところも彼女の魅力の一つなんだ。」
「やれやれ、ご馳走さん。」
「ん、それはどういう意味だね?」
「何のことだ?」
「いや、いまご馳走様とか言ったじゃないか。僕達は空腹を覚えこそすれ、満腹には程遠いんだが。」
「ああ、その事か。俺の故郷の言い回しさ。
 君に覚えがあるかどうか知らんがね、傍目で見ていて熱烈に愛し合っている2人がいたとする。」
「ふむふむ、僕とモンモランシーの事だね?」
「まあそうしておこう。でだ、どっちでもいいんだが片方が、その関係に全く関与していない第3者に惚気るとしよう。嫉妬ってわけじゃないが、そうすると惚気られたその第3者は…」
「ああ、なるほど。確かに覚えがあるよ。実家にいた頃、両親の仲の良さによくあてられたものさ。
 うん、確かにあれはご馳走様と言いたくなるね。うまい言い回しだよ。」
「だろ?ま、若いんだせいぜい楽しむ事だな。」
「ははっ、何を言ってるんだい。貴方だってまだまだ男盛りじゃないか。
 確かにメイジじゃないとはいえあれだけの力を持っているんだ、上手い事売り込めばそれなりの地位は確実じゃないか。 おっと、それじゃあ先に行ってるよ。君は無理をしない程度に急ぎたまえ。」

ヒューにそう告げるとギーシュは先行してモンモランシー達の下へと馬を進めた。

「男盛りねぇ…」

先刻のギーシュの言葉に苦笑しながら馬首を巡らせた時、ヒューは魔法学院の宝物庫から立ち上る煙を見た。

「何だありゃ?」


ヒューが草原から魔法学院を見ていた頃、ルイズとキュルケは呆然としていた。

「や、やっちゃったわねルイズ…。」
「…アラ、大変ダワ『コテイカ』ガ切レテイタナンテ。急イデおーるど・おすまんカ、先生方ニ連絡シナクッチャ。」
「ルイズ、ごまかし切れない。」

現実逃避しようとするルイズの肩をタバサが叩く。
3人の目の前には宝物庫があったのだが、その壁にはうっすらとヒビが入っていた。

「わ、分かってるわよ!このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!逃げも隠れもしないわっ!」

そのヒビを前に、当事者というか犯人のルイズは薄い胸を張りつつ高らかに宣言する。

「…さすがに貴女をあれだけ煽った以上、貴女だけに背負わせるわけにもいかないわね、私も付いていってあげる。」
「いいわよ、自分の不始末くらい自分で拭うわ。」
「無理しないで良いわよ、ていうかヴァリエールに貸しを作るなんてまっぴらだし、貴女がいなくなったら色々とつまらなくなるじゃない?」
「アンタね!」

再び口論が勃発しようかというその時、コルベールをはじめとする学園の教師と秘書のロングビルが宝物庫前の広場へ駆けつけてきた。

「い、一体今の音は何事ですか!」
「うん?あそこにいる生徒はミス・ヴァリエールにミス・ツエルプストー、それとミス・タバサではありませんか?」

広場に到着した面々は改めて宝物庫を見上げ、次いで唖然とした。
そこには常識では考えられない現実があったのだ、何とスクエアクラスの土メイジが幾重にも『固定化』を掛けていたはずの宝物庫の壁にヒビが入っているではないか!
特に土の属性に詳しいシュヴルーズなどは、何度も目をこすりながら見直している。

「一体何があったんだね?」
「私が魔法の練習をしていた際の話ですが、魔法を掛けようとしたら間違ってあちらに当ててしまいました。
 こちらの2人は見ていただけです。」
「ちょ、ちょっとルイズ。違うでしょう!
 違いますミスタ・コルベール!」
「貴女は黙ってて!魔法を使ったのは私なんだから、責任を取るのは私で良いのよ!」
「そうじゃないでしょう?貴女ただでさえ評判悪いんだから…」

いきなり始まった女生徒同士の口論に教師達は唖然としていたが、そんな中コルベールがいち早く気を取り直すと、手を叩きながら2人の仲裁に入った。

「ミス・ヴァリエールにミス・ツエルプストー、少し落ち着きなさい。
 今は責任を問う場ではありませんぞ、状況を確認する為に聞いたのです。」
「ですから!」
「もう、ルイズあんたいい加減に」
「キュルケが煽ってルイズが魔法を使用したら宝物庫に直撃。これが実際に起こった事。」
「「タバサ!」」
「使用した事実と煽った事実、2人が言いたい事を要約すればこれで全部。」
「なるほど、そうでしたか。助かりましたぞミス・タバサ」
「しかし、処分…と申しても。」

とコルベールは口ごもりロングビルをちらりと見る。
宝物庫を見ていたロングビルはその視線に気が付いたのか、3人の所に歩み寄って困ったような表情で口を開いた。

「実は処分を下そうにも、責任者の学院長はこの間の虚無の日から王都へと出かけているのです。」
「では、帰りはいつ位になるのでしょうか?」
「そうですね、あちらでの仕事が片付き次第と申しておりましたから…恐らく明日の朝方から昼前になると思われますわ。」
「今から早馬を飛ばせば今夜中には戻ってこれるのでは?」

他の教師が名案だとでも言うような声音で意見を言うが、ロングビルの済まなさそうな言葉がそれを打ち消した。

「申し訳ありませんが、その仕事というのが明日の会議までに仕上げなければならない物なので…。
 本当でしたら先日には終わっている仕事だったのですが、学院長が伸ばし伸ばしにしていた為に、とうとう枢機卿閣下から呼び出しを受けてしまい…。」


広場に微妙な沈黙が広がる。

「で、ですが連絡をするというのは良いかもしれませんね!
 仕事を終えた後に風竜に送ってもらえば、時間の節約にもなりますわ。」

気を取り直したように提案するロングビルの意見に教師達も頷きを交わした。
が、続いてコルベールが発した議案に全員が沈黙を返す。

「では、連絡はどなたが行かれますかな?」


結局、翌日授業が無いという理由でコルベールが選出され、一人トリスタニアへと馬を走らせる事になる。
走り去るコルベールを見送る学院秘書の唇はうっすらと笑みをたたえていたが、気付く者はいなかった。


その夜、処罰は翌日オールド・オスマンが帰還した後となった為。ルイズとキュルケは一旦部屋に戻された。
夕食も終わり、双月が頂点にかかろうかという頃、キュルケとタバサはここ数日以来の日課になったのか、ルイズの部屋に来ていた、昨日までは魔法やN◎VAに関する意見を交換していたのだが、今日は少々様子が違った。

「ちよっとヒュー聞いて頂戴、何だってこの娘ってばあそこまで頑固なの?」
「ああ、話はマルトーから聞いたよ、何でも宝物庫の壁にヒビを入れたそうだな。」
「悪かったわね、どうせまた失敗魔法よ。」

ルイズはすねているのか、ふくれっ面でそっぽを向いている。
対するヒューは手元にあるハルケギニア語の教本[絵本]をめくりながら対応している、こちらの教師はデルフリンガーだ。

「いやいや、中々ニューロじゃないか。」
「何ですって?失敗魔法なのよ、どこが凄いって言うのよ!」
「効果だけ見れば確かに凄い。」
「あら?タバサとヒューは同意見なの?」

ヒューの意見を肯定するタバサにキュルケは質問をする。

「爆発という現象、そして宝物庫を傷つけたという結果を取り除くと、ルイズが使った魔法で≪スクエアクラスのメイジが重ねがけをした『固定化』を無効化して、分厚い壁にある程度のダメージを与えた≫という結果が残る。」
「あ。」
「でも、失敗は失敗よ。」
「けれどもこれはスクエアでもかなり難しい仕事だと思う、特に『固定化』が厄介。」
「しかもルイズお嬢さんはピンピンしてるしな?」

タバサの解説にヒューが補足を加える事で、ルイズの爆発に関する謎がまた一つ追加された。

「一体何なのよ私の『爆発』って…」

猛獣の様な唸りを上げながら、恨み言を口にするルイズだったが。視界の端に妙な物を捕らえそちらを確認する。
が、確認した途端、開いた口が塞がらなくなった。
巨大な土人形[大体30メイル位]が宝物庫を殴ろうとしていたのだ!

「ねぇ、私疲れてるのかしら?」
「かもしれないわねー、実際私も…って何あれ。」
「じゃあ今日はこれでお開きにしようか、……ふぅ、色々慣れたつもりなんだけどな…」
「今日も有意義だった…ゴーレム?」

ルイズの部屋にいる全員がそのゴーレムを確認した瞬間、巨大ゴーレムは学院の宝物庫の壁を粉砕する。

「なぁ、ルイズお嬢さん。こっちじゃあ夜中に解体工事とかやるのか?」
「そんな訳ないでしょう!賊よ!」

ヒューのとぼけた質問に激昂しながら答えるが早いか、ルイズは部屋を飛び出していった。
キュルケやタバサは窓から飛び出していく。

しかし、4人が宝物庫前まで来た時には全てが終わった後だった、シルフィードでゴーレムを追ったタバサも賊を見失って
帰還する事になる。
周囲では、念のため見張りをしていた数人の教師や衛視が怪我をした為、水のメイジによる治療を受けていた。

宝物庫の前でルイズは呆然としていた。自分の責任だ、自分が魔法を失敗して『固定化』を破ったりしなければ。そんな考
えが頭の中を駆け巡る。相談しようと自分の使い魔を探すと、彼は衛視や教師達から話を聞いていた。
御主人様をほったらかしにして何をしてる!と怒鳴ろうとしたが聞こえてきた声に思い留まる。

「じゃあ犯人の顔とかは見えなかった?」
「ええ、フードを目深に被っていたし。何しろこんな夜更けに暴れている『ゴーレム』の上の話ですから。」
「なるほどね、『ゴーレム』とやらが近付いて来た事に気付いたのは?」
「いえ、何もかもがいきなりでした。気が付いたらそこにはもう。」
「ほほう、ありがとう参考になったよ。」

「ちょっとヒュー、アンタ何してるのよ。」
「何って、初動捜査さ、現場にいる連中から記憶がはっきりしている内に状況をより詳しく聞き出すのはセオリーだからな。
 ルイズお嬢さん、記憶っていうヤツは自分で思っているほどしっかりした物じゃあないんだ、余程特殊なケースじゃない
 限り、時間が経つに従って主観や他者の意見で曖昧になって来る。…それこそ閃光(フラッシュ)みたいにな。
 本当は宝物庫の中も調べたいんだけどな、学院長の帰りを待つさ。」
「あら、ヒューってば何してるの?ルイズ。」
「よく分からないけど“初動捜査”だって。」

その後ヒューはミセス・シュヴルーズからゴーレムについて聞き、ポケットロンで周囲の地面や茂みを撮影した後、ルイズ
達と共に部屋に戻り、翌朝までぐっすりと熟睡してルイズを呆れさせた。



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