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狂蛇の使い魔-13


第十三話



「失礼します、ミス・ヴァリエール。お食事をお持ちしました」
右手で扉を叩き、シエスタは部屋の中にいるであろうルイズに向かって扉越しに話しかけた。
左手に持ったトレイの上には、今日の夕食に出されている料理がいくつか乗せられている。
シエスタは扉の前で返事を待っていたが、いっこうに返事が返ってこない。
仕方がないので、入りますね、と一言断りを入れた後、目の前の扉を開いて部屋の中へと入っていった。

部屋の中は薄暗く、窓から射し込む月明かりだけが室内を照らしている。
その部屋のベッドの上で、ルイズは両膝を抱え、夜空に光る二つの月を見つめていた。
シエスタが入ってきても反応せず、ただひたすらに双月を眺め続けている。

ベッドのすぐ脇にある机の上には、シエスタが昼に持ってきた料理がほとんど手つかずのまま残されていた。
「……ここに置いておきますね」
そう言うと、シエスタは左手に持った新しい料理を机の上に置いていき、代わりに冷えた料理をトレイの上に乗せ始めた……。



浅倉との一件以来、自室に籠りっきりで授業や食事に一切顔を出そうとしないルイズ。

見かねたキュルケが再び励ましに行こうとするのを、タバサがしばらくそっとしておくようにと説得。
納得のいかないキュルケであったが、代わりにシエスタに様子を見てもらおうという条件で、渋々引き下がったのだった。



それから、既に三日が経つ。
この日は、学院を訪れたアンリエッタ王女を歓迎する晩餐会が行われていた。

「……もう限界だわ。やっぱり、ルイズは私たちがなんとかしないと」
キュルケが、料理を口に運んでいた手を置いて言った。
隣にいたタバサも、おかわりとして給仕から受け取った皿を持ったまま、呟く。
「明日、一緒に会いにいく」
「……今からじゃないの?」
キュルケの問いに、タバサは手に持った大好物のはしばみ草のサラダを見つめながら答える。
「まだ食べ終わってない。それに……」
「おい」
タバサの話を遮るようにして、後ろから聞こえてきた声。
二人が振り返ると、そこには彼女たちの悩みを作った張本人、浅倉が立っていた。

「……彼と約束があるから」
キュルケの方を向き、普段と変わらない静かな声でタバサが言った。


「いつまで食ってるつもりだ?」
そう言いながら、浅倉はタバサの元へと近づいていくと、彼女の手にあるサラダの乗った皿を奪い取った。
そしてあっという間に平らげると、平然と彼女の目の前に皿を戻す。
「ここだと人が多いな……。そうだ、今すぐあの役立たずの部屋に来い。もう待つのには飽きた」
それだけ言うと、浅倉はつかつかと食堂の出口に向かって歩き出した。

空になった皿を見つめていたタバサだったが、しばらくすると立ち上がり、浅倉の後を追って出口へ向かう。
「き、気をつけてね、タバサ」
「……ありがとう」
その背中から静かな怒りを感じながら、キュルケはタバサを見送ったのだった。



一方、キュルケのいるテーブルの向かい側では、ギーシュが彼女たちの会話に聞き耳を立てていた。
毎日の浅倉による虐待から解放された彼は、以前のような元気な姿に戻っていた。
(ルイズの使い魔から、いきなり用なしだなんて言われたと思ったら……どうやらルイズが大変らしいな)
困っている女性がいれば、助けずにはいられないのが彼の性分である。

ギーシュは目の前の料理を急いで食べ終えると、一目散にルイズの部屋へと向かった。


ルイズがベッドの上で項垂れていると、突然部屋の扉が開かれた。
闇に包まれていた部屋の中に、廊下からオレンジ色の光が射し込まれる。
こんな開け方をするのはやっぱり……浅倉だ。

入るや否や、部屋に置かれた鏡に向かって迷わず進んでいく浅倉。
扉を閉め、彼の後ろをタバサがついていく。
いつもと変わらぬ堅い表情でルイズの方を向き、しばらく見つめた後、再び浅倉の後を追った。
ルイズは、そんな二人の姿を沈んだ表情でぼんやりと眺めていた。

あの一件以来、ルイズをさも存在しないかのように扱う浅倉。
彼の態度を見るにつれ、ルイズが浅倉に抱いていた恐怖心も次第に薄れていき、いつの間にか虚しさに変わってしまっていた。
浅倉を見る度にびくびくしていた自分が馬鹿馬鹿しくなり、今では彼を見ても何にも感じなくなった。

「変身!」
「変身」
いつものようにガラスの割れるような音がし、浅倉とタバサの体がそれぞれ紫と銀の鎧が包まれる。
タイガは無言で、王蛇は手を払い首をひねりながら、二人は鏡へと足を踏み出した。

二人が鏡の中に消えたのと、部屋の扉が叩かれたのはほぼ同時であった。


始めに長く二回、次に短く三回叩かれた扉の音に、ぼんやりしていたルイズの頭が急に現実に引き戻される。
(まさか……)
ルイズはベッドから飛び降りると、急いで扉を開ける。
開けた先にいたのは、黒頭巾に身を包んだ少女であった。

少女はするりと部屋の中に入り込むと、杖を取りだし何らかの呪文を唱え始めた。
扉を閉めたルイズは、その姿を呆然と見つめている。

「ふぅ」
やがて一段落ついたのか、少女が杖を下ろすとルイズの方を振り返り、被っていた頭巾を後ろに下ろした。
現れたのは、紫髪の少女の顔。
「お久しぶりですね。ルイズ……ルイズ・フランソワーズ」
ルイズの親友であり、トリステインの王女、アンリエッタその人であった。



「姫……様……?」
「話の前に、まずは明かりが必要ですね。暗くてあなたの顔がよく見えませんわ」
そう言うと、アンリエッタは再び杖を振り、部屋に明かりを灯した。
「姫様、なぜこのような所へ……?」
ルイズの問いかけに、アンリエッタはルイズの方を向き直し、答えた。
「ルイズ。あなたと話したいことは山ほどありますが……そうですね。まずはここに来た理由からお話しましょう……」


ミラーワールド内のトリステイン学院。
現実世界同様夜の闇に包まれた学院のとある広場で、王蛇とタイガが刃を交えていた。

ルイズのデッキを譲り受けてから、今日までに数回浅倉と手合わせをしてきたタバサ。
ミラーワールドには杖を持ち込めないため魔法は使えないが、この不思議な鎧によって身体能力が向上しているため、この世界での戦いには支障はない。
さらに、現実世界でも効果が適用されることが分かり、杖が使えない状況でも十二分に戦えるという絶大なアドバンテージを得た。
あとは、浅倉に付き合うことで戦い方に慣れるだけなのだが……

「ウオオオオ!!」
「っ……!!」
振り下ろされた蛇の剣を、タイガは斧の刃を使って受け流す。
その勢いを利用し、斧の刃の反対側にある持ち手の先を王蛇の胸に突き出す。
「うおっ!?」
相手に隙を作ると、今度は斧を右に素早く払う。
火花を散らしながら吹き飛ぶ王蛇。
……どうやら大分慣れることができたようだ。

地面を転がり、仰向けに倒れる王蛇。
すかさず追撃しようと、タイガは走り出そうとする。

『ADVENT』

王蛇の方から聞こえてきた音声と共に、タイガの後ろから鋼鉄のサイが現れる。
タイガは咄嗟に横に転がり、すんでのところでその突撃を回避する。
その間に王蛇は立ち上がり、仮面の下で笑みを浮かべる。
「ハッ……! やっぱり戦いはこうでないとなぁっ!!」
そう言いながら、王蛇はタイガ目掛けて駆け出した。


「そう、なのですか……」
アンリエッタがゲルマニア皇帝と結婚することを知り、ルイズは哀れむような表情を見せた。
「……理由は聞かないのですね」
往々にして理不尽さを痛感しているルイズには、この結婚が望まれないものであることぐらいすぐに分かる。
しかし、彼女もルイズと同様にどうにもできずにいるのだ。
彼女の口からそれを聞き出すようなことは、ルイズには到底できるはずがなかった。

「……ありがとう、ルイズ。それで、ここに来た理由だけど……」
哀愁を漂わせていたアンリエッタの表情が、真剣なものに変わる。
「結婚に際して、あなたに頼みたいことがあります」
「頼み……ですか?」
アンリエッタは頷くと、その詳細を語り始めた。

革命軍レコン・キスタによるアルビオン侵攻。
それにより不穏な空気が広がる世界情勢に対して、トリステインとゲルマニアが軍事同盟の締結を決意。
しかし、それがご破算になりかねないような重要な手紙が、戦争の真っ只中にあるアルビオンに存在するのだという。

「ルイズ、あなたにはこの手紙の確保をお願いしたいのです。国の存亡を賭けた大切な任務で、あなたにしか……」

そう言ったところで、部屋の扉が勢いよく開かれた。


「やはりそういうことか」
驚いた二人が扉の方を向くと、そこには薔薇に似せた杖を持ったギーシュが立っていた。
「! ギーシュ? なんでここに……?」
「ルイズの様子がおかしいと聞きつけて、盗み聞……じゃなかった、様子をうかがってみれば……」
ちらり、とギーシュがルイズを見る。
「思った通り、乙女のピンチだったようだ! ……そうですね? アンリエッタ王女様」
困惑するアンリエッタを前に、ギーシュは平然と言ってのけた。

「あの、どちら様で……」
そうアンリエッタが言いかけた時、今度は部屋の奥の方からどさりという物音が聞こえてきた。
何事かと三人が振り向くと、そこにはいつの間にか、息を切らしたタバサと浅倉が倒れていた。

「お前と戦うのは面白いな……。全身ゾクゾクさせられる……!!」
浅倉がタバサに向けて、笑いながら言った。
「タバサに……ルイズの使い魔のアサクラじゃないか!? 一体どこから……」
ギーシュが驚いたような声をあげる。
アンリエッタは何が起きたのか理解できずにただただ唖然としていた。



そんな中、ルイズはアンリエッタが言った依頼の内容に対して、自分なんかが、と再び暗い表情を見せるのであった。



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