あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

THE GUN OF ZERO-12


幼い頃、ルイズにはよく行く『秘密の場所』場所があった。
 魔法に失敗して、周りの視線が耐えられなくなって、よく庭の池、ボートの上で泣いていた。
「泣いているのかい?ルイズ」
 そこへ、声をかけられる。
「子爵様、いらしてたの?」
 近くの領地を相続したばかりの、まだ少年といって差し支えない人物がいた。
 恥ずかしい。ルイズはあわてて涙をぬぐって体裁を整えようとする。
 どうにか感情を落ち着かせたところで、顔を上げ
「さぁ!己の運命を受け入れろ!」
 そこに、見たこともない堕天使がいた。
――誰!?
「断る!」
 後ろからの聞き覚えのある声に、16才のルイズが振り返る。自分の使い魔が操るゴーレムがそこにいた。
――クォヴレー!?
 周囲の風景は既に変幻し、故郷の庭ではなく、どこともいつとも知れぬマーブル状の光が渦巻く空間に塗り替えられていた。
――クォヴレー!何してるのよ!早く私を助けなさいよ!
 必死にそう呼びかけるが、クォヴレーは全く反応を見せない。
「お前は、俺という存在を拒絶することは出来ないっ」
 その手に片刃の光の剣を持つ堕天使が、ディス・アストラナガンに斬りかかる。
「ぐぅあっ!」
 ディス・アストラナガンも手にした鎌で応戦するが、剣戟に対抗しきれず、翼の一部が切り飛ばされた。

――ウソ!?
 あの恐怖すら覚えたことのあるディス・アストラナガンと、ギーシュ相手に圧倒的な強さを見せつけたメイジ殺しであるクォヴレーが、押されている。
「俺たちは一つになるのだ……」
 距離を取った上で、クォヴレーと堕天使が対峙する。
「そして数多の世界を彷徨えと言うのか?多くの物を失って!?」
 堕天使に怒鳴り声をぶつけるクォヴレー。
――こいつ、こんな声出すの?
 初めて聞く。クォヴレーはいつも、自分の前では穏やかな顔ばかりしていた。
「ぉぉぉぉぉおおおおお!」
 クォヴレーが怒号を放ちつつ、ディス・アストラナガンが駆ける。
 斬撃、再度の斬撃。切り払い、切り払い、もう一度距離が開く。
「言ったはずだ……それが俺たちの運命なのだと……!」
 宙返りをしながら、凌ぎきったディス・アストラナガンが持ち直す。
「くっ……!」
 攻めあぐね、難儀しているらしい声を漏らす。
「あくまでもそれを拒むと言うのなら……」
 堕天使の翼が大きく上に掲げられ、緑色の光の翼が展開する。
「っあ……!」
 息を呑むクォヴレーの声がルイズにも聞こえた。
 その翼は、純然たる光であるはずなのに、闇を駆逐する光であるはずなのに、何故こうも禍々しいのだろう。
「その呪われた機体を、抹消するまで!」
 堕天使が両腕を掲げあげると、胸の辺りに十字を円で囲んだ光が現れた。
「ディス・レヴよ、その力を解放しろ!」
 ディス・アストラナガンも翼を広げ、その胸の辺りを自らの腕でこじ開けた。
「テトラクテュス・グラマトン!」
 漆黒の光が、収縮していく。
――なに、これ、何なの!?これ!?
 あの光は、炎だとかそんな生やさしい物ではない。もっとおぞましい何かだ。
「さぁ、虚無に還れ。インフィニティ・シリンダー!」
 堕天使の胸部の光は限界まで発光していた。
「アイン・ソフ・オウル!」
 ディス・アストラナガンの胸部にたまっている漆黒も、解放の時を今か今かと待ちかまえていて
『デッド・エンド・シュート!』
 二人の声が重なり、二種類の光が放たれ、ぶつかり合った。
――ちょ、ちょっと!?
 ぶつかった箇所を軸として、空間が歪んでいく。

 その歪みに、ルイズも、ディス・アストラナガンも、堕天使も巻き込まれてしまう。
「うわあああああああああ!?」
「ぐぁぁああああああああああ!」
「きゃああああああああああ!?」
 自分の悲鳴で、ルイズは目を覚ました。
「っはぁ!はぁ!はぁ……」
 時間は、7時前。クォヴレーは洗濯をしている頃合いだろう。
 ともかく、無様なおき方を見せることにならず、良かったとルイズは胸をなで下ろした。
 ……はて?そういえば何の夢を見ていたのだったか?
(ワルド様と……クォヴレーも居た気がするんだけど……)
 あんな風に飛び起きたのだ。良い夢であった訳がない。忘れよう、とぶんぶんとルイズは首を振った。

 その日、学院は粛々とした雰囲気に包まれていた。
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下の、おなぁーりぃーっ!」
 護衛付きでユニコーン四頭引きの豪奢な馬車が学院の正門に現れ、赤絨毯の敷かれた通り道に沿って立った生徒・教師を含めた全トリステインのメイジがざっと杖を掲げる。ルイズもその中に混じっていた。
(よくこういった光景では剣が掲げられるモノだが……魔法が重要視されるこの土地ならではといったところか)
 そしてそのルイズの後ろ、使い魔として片膝を立ててじっとしているクォヴレーは、ちらと視線を横に向けてそう思った。
 今日は、品評会にも出席していたアンリエッタ王女が行幸の途中で立ち寄ると言うことで、授業は全て中止。学院総出で王女を迎え入れていた。
 大臣クラスか、やけに骨と皮ばかりの老人と共に王女が杖の間、絨毯の上を歩いていく。通り過ぎる時に、王女がルイズの方を気にしたのが判った。
 そのまま絨毯の終着点で、学院長であるオスマンが歓迎の挨拶を述べ始める。
 そこで、その視線に気づく。
「おい、相棒」
 小声で背中のデルフリンガーが呼びかけてきた。
「判っている。左か?」
 こちらも小声で返しながら、なるべく自身の視線だけを任意の方向に向ける。
「ああ、あの青い帽子を被った髭の生えてるメイジだ」
 デルフリンガーの助言もあってすぐにその姿は見つかった。
 確かに髭を生やしているが、若い。むしろ足りない威厳を髭で補おうとしているようにも見えた。
 オスマンの口上が終わり、それに対するアンリエッタの礼も終えて本塔にアンリエッタが入って、簡易ながらも歓迎の式典が終わったところで、ようやくルイズの背後で跪いていたクォヴレーは立ち上がると、主に尋ねる。
「ルイズ、あの男は何者だ?」

「え?誰?」
 クォヴレーが指し示すより先に、その当の本人の方が近づいてきた。
「やあ、久しぶりだね、ルイズ。僕の小さなルイズ!」
「ワルド様!」
 ルイズが驚いた声を上げて男を見上げた。
「娘ッ子の知り合いだったみてぇだな。んじゃさっきのは……」
「いや、あれは間違いなく俺たちを見ていた。視線が低すぎる。お前か、俺かは判らないがな」
 口元を手で覆い、話していると悟られぬようデルフリンガーと言葉を交わす。
 しばしワルドと呼ばれた男はルイズと話をしていた。どうやらアンリエッタの護衛として来たらしい。
 周りの生徒達が興味深げに眺める中、近況報告などを終えると、クォヴレーの方に視線を移した。
「そして、君が噂のルイズの呼んだ使い魔だね?」
「噂?」
「ああ。品評会で強力な銃を見せつけた人間の使い魔が居ると、その筋には知れた話さ」
 成る程、と頷く。あのあと、オスマンに呼び出されて自粛を頼まれた事もある。本当に結構な騒ぎだったようだ。
(だとすると、先程の視線は俺がルイズの使い魔だと見越しての興味か……?)
「僕の名はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。子爵を賜っている。よろしく頼むよ、使い魔くん」
「クォヴレー・ゴードンです。こちらこそよろしく」
「ルイズ、君はとても強い使い魔を従えたようだね?」
「あ、ありがとうございます、ワルド様。でも……その……私まだ、他の魔法は失敗ばかりで……」
「以前にも言っただろう?ルイズ、君にはちゃんと凄いメイジとしての力があるんだ。彼を呼んだことなど、その一端に過ぎない。そんなメイジが僕の婚約者だというのは、鼻が高いよ」
(婚約者?)
「こ、婚約者って……親が決めたことだわ!」
 顔を真っ赤にしながら、ルイズが叫ぶ。周囲からはおお!と歓声が上がった。
(貴族の婦女子ならば居て当然か)
 ふむ、と頷く。
 周りの歓声にハッと現状を思い出し、必死にルイズはワルドに言う。
「あ、あのワルド様。お話はまた後ほど……」
「ああ、済まない。ついつい懐かしくて話し込んでしまったね。僕も仕事があるのでね……この続きは、周りに雑音のないところで話そう」
 そっとルイズにささやきかけると、手を振ってワルドは自身のグリフォンのところへ向かった。
 クォヴレーは軽くそれを目で追い、主の方に視線を戻す。

 だが、ルイズの方はぽーっとワルドを目で追いかけていて、動く様子がなかった。
 主が婚約者の働く様を見ているのを邪魔する気もなかったので、しばらく放っておこうと視線を動かすと、タバサがじっとこちらを見ていた。建物の影に体半分隠しながら。
(つくづく何なんだあの少女は……)
 名前を交換した後の夜から、間違いなく自分は彼女から避けられていたはずだ。
 それがどういう訳か、一週間ほど前から逆に自分を監視するようになっていた。
 ルイズの学友である彼女に手荒なまねをする訳にもいかないし、何度撒いてもいつの間にか自分を見ているので、厄介この上なかった。
「クォヴレー、いくわよ!」
 いつの間にか正気に戻っていたらしいルイズに呼ばれて、クォヴレーはそれに従った。やっぱり、小柄な少女もついてきたが。

「はぁ~、ルイズの婚約者も結構いい男ねぇ……ってタバサ、何してるの?」
「監視」
 キュルケが建物の影に隠れながら移動している露骨に怪しい友人に尋ねると、そんな答えが返ってきた。
 誰を監視しているのかと視線を辿ると、ルイズとその使い魔の後ろ姿があった。
「ははーん……タバサ、言っておくけど、ダーリンは私の物よ?」
 今し方悪友の婚約者に色目を使っていた事を言った舌の根乾かぬうちに、キュルケがそう言う。
「そういう類じゃない」
 きっぱりと、タバサは言った。
「出来れば、彼は視界に入れたくもない」
「あのねぇタバサ、そういう素直じゃない子はルイズ一人で十分よ」
 勘違いしているキュルケは呆れたようにそう言ったが、口にした言葉は間違いなくタバサの本心であった。
 なんでも幽霊を使うとか言うディス・アストラナガンを従えているクォヴレー。その周囲ではいつ幽霊が現れるのか、タバサにしてみれば判ったものではない。
 そんな人物の監視など、出来ればやりたくなかったのだが、上からの命令である。大人しく従うしかなかった。

 その日の夜。
 ルイズが自主学習をしていて、クォヴレーはパイロットスーツに着替え、いつものように出ようかとしている時間。扉がノックされた。
「俺が出よう」
 立ち上がっていたクォヴレーが先に部屋の扉へ向かい、ある程度気を張りつつ開く。
「誰だ?……その顔は……」
 目の前に立っていた人物の、ローブの下に見える顔に一瞬驚いた隙に、そのローブの影は室内に入っていくと、左右の壁にディテクト・マジックをかけてから、ルイズの目の前でローブを頭から下ろした。

「……どこに監視の目があるか、判りませんからね」
「アンリエッタ様!」
「ああ!ルイズ、ようやく誰に憚ることなく会えました!」
 つい昼間、盛大な迎えの式典をした王女がそこにいた。
「なぜ、一国の王女がこんな時間に一人で……」
 驚いたままのクォヴレーが思わず尋ねる。
「こうでもしなければ、内密に会うことはかないませんからね」
 自嘲気味に笑ってアンリエッタは言った。
「品評会の時も、ほとんど話は出来なかったから、こうして話せるのは久しぶりです」
 にっこり微笑むアンリエッタの前で、ルイズは臣下の礼を執る。
「そんな……私如きにわざわざ会いに来て下さるだなんて、身に余る光栄です……ほら!あんたも昼間みたいにして!」
 ルイズに言われるままに、昼間と同じく片膝を着くクォヴレー。
「ルイズ、そんな挨拶は止めて頂戴!私たちの仲でしょう?今はもう、誰の目も気にする必要はないわ!」
 アンリエッタがそっとルイズの手を掴んで引き上げる。
「もったいないお言葉です、アンリエッタ様」
 立ち上がったルイズとアンリエッタが抱擁を交わした。
 片膝を着いたままのクォヴレーは立ち上がる切っ掛けを失い、結局しばらくその場で二人の話を聞く羽目となった。
 そうして判ったのは、二人がどうやら幼なじみであったらしいということだ。公爵家ということは結構位が高い。成る程、そこに歳の近しい者が居るのならば王女の遊び相手として宛がわれるだろう。
 楽しそうに思い出話に花を咲かせている二人だが、やがてふっとアンリエッタの表情が蔭る。
「あの頃は、毎日が楽しかったわ……なにも悩みなんかなくって」
「姫様?どうなさったんですか?」
 心配そうにルイズがアンリエッタの顔を覗き込む。
「いえ、なんでもないわ。ごめんなさいね……いやだわ、自分が恥ずかしいわ。あなたに話せるようなことじゃないのに……わたくし……」
 わざとらしい話運びだな、と変わらぬ体勢のままクォヴレーは思った。まぁ、ここまで露骨なら、誰でも気づく訳で。
「姫様、言って下さいませ。姫様がそのようなお顔をされては、私も悲しくなってしまいます」
 と、ルイズに促されてようやくアンリエッタが話し始めた。
 それはまず最初は昨今のハルケギニアの政情だった。
 現在アルビオンで起きている反乱、聖地回復を謳う貴族同盟レコン・キスタ。
 それが直にアルビオンの王党派を打倒し、そしてやがて他の国にも侵出を行うであろう事。
 それに対抗するため、トリステインは隣国ゲルマニアとの同盟を結ぼうとしている事。

 そのため、一月後にゲルマニアの皇帝とアンリエッタの婚姻が迫っている事。
(政略結婚か。王族も大変だな)
 言ってみれば、アルマナ・ティクヴァーもそうだった。
 彼女は王族ではない。しかしバルマーの高位の家柄で、ズフィルードの巫女として霊帝に捧げられようとしていた少女だ。似たようなものかも知れない。
 故郷の世界にいる少女を懐かしむクォヴレーは余所に、話は本題に進んでいく。
 何でも、以前アルビオンの皇太子であるウェールズ・テューダーにアンリエッタがあてた恋文があるのだそうで。
 それが表沙汰になり批難されれば、婚姻もゲルマニアとの同盟も成り立たなくなるかも知れないと、アンリエッタは危惧していた。
「姫様、それではつまり、私にその手紙を回収してきて欲しい、と?」
「無理よ!無理よルイズ!私ったら、なんてことでしょう!混乱しているんだわ!考えてみれば、レコン・キスタと王党派が激しい争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて危険な事!頼める訳がありません!」
 わざとらしい、というよりこれはこの状況に酔っていると見るべきだな。とこの場にあって冷静な一振りと一人の内、一人の方がそう思った。
(普通こんな言葉で動くには、一種の催眠的な手法が必要だが、つまり思い出話に興じたのも、ルイズの心境を自分の心情とリンクさせるためか。見た目よりしたたかな王女らしい)
 フッと二人に気づかれぬよう、面白そうに笑みを浮かべる。だが元より、既に二人の目にクォヴレーは映っておらず
「何をおっしゃられます!?例え地獄の釜の裡だろうと、竜のアギトの中だろうと!姫様の御為とあらば、何処なりと向かいますわ!姫様とトリステインの危機を、このヴァリエール公爵家のルイズ・フランソワーズが!見過ごす訳にはまいりません!」
 力強くルイズが受諾の意を示した。
 ようやくアンリエッタとの話が一段落付いたらしいと見て取り、立ち上がりながらクォヴレーが尋ねる。
「……行くのか?ルイズ」
「ええ、もちろんよ。アンリエッタ様からの命令よ?」
「口ぶりからすると明日からもう出るようだが、良いのか?明日も授業はあるだろう」
「優先順位を考えなさい。これはトリステインそのものの問題でもあるわ」
 ルイズの言葉に、フムと腕を組みながら少し考えるような仕草の後、こくりと頷いた。
「……わかった。それほど急を要する事態だとしたら仕方がない。俺も全力でバックアップするとしよう。準備をする」
 その答えに満足し、ルイズはアンリエッタに向き直る。
「済みません、ルイズ。あなたの日常にまで干渉してしまって……」
「いえ、良いのです。アンリエッタ様の為ですもの」
 アンリエッタはスッと自身の指に填めた指輪を外し、ルイズの手に掴ませる。
「トリステイン王家に伝わる秘宝、水のルビーです。路銀の足しにでも、使ってください」
「アンリエッタ様、そこまでして頂け……」

「テトラクテュス・グラマトン」
 ルイズは、最後まで言葉を続けられなかった。開いていた窓から突如強風が吹き渡ったのだ。その窓には、風をさも当然とばかりに受けている自身の使い魔。
「くく、クォヴレーっ!ああアンタななな何やってんのよっ!?」
「ルイズは」
 くるりと振り向くクォヴレー。
「ルイズは王女からの任務で、遠くて危険な場所へ行かなくてはならないのだろう?それは判った。だが、学生である以上学業こそが本分だ。あまり、多くの時間を裂く訳にはいかない」
 淡々と語りながら、デルフリンガーを手に取り背負う。
「だったら、こいつに乗っていく方が早く安全だ」
 窓の外、夜闇の中なお暗い巨大なヒトガタが見えた。
「ま、そりゃそうだわな」
 すっかり慣れたらしいデルフリンガーが同意を示す。
「行くぞ、ディス・アストラナガン」
「jq6ゆz;byw”ーッ!」
 この世の物とも思えぬ凶悪な咆吼が響き渡る。
「の、乗る……?」
 私が、あれに……?
「い、いいい、いいわよ!いらない!普通に馬で行けば良いじゃない!ていうか、勝手に呼ばないでって言ったでしょう!?」
「しかし、普通の行程で行くとしたら、ルイズ、そのアルビオンという国へはどれぐらいかかる?」
「え?えっと……」
 以前家族で旅行した時は……
「……行って帰ってくるので、二週間、かしら」
「やはり時間がかかりすぎる。先程王女もお前に迷惑をかけるのが心苦しいというようなことを言っていただろう。アストラナガンなら、どこへ行くのもすぐだ。彼女の心労を少しでも軽くする意味合いも兼ねて重要なことだ」
「いや、それは……」
 半分儀礼的というか、労をねぎらう気持ちから出た言葉であって……
 そこでハタと気づく。そういえば先程から王女が何も言ってこないがどうしたのかと振り向くと
「あ、アンリエッタ様ーっ!?」
 気絶して倒れていた。
「どうしたんだ?」
「だ、だからアンタのアストラナガンは怖すぎるのよ!大体、何でいっつも叫ぶの!?」
「俺にも判らないが、こいつはたまに叫ぶようだ」
 主に主人の近くに女がいる時とか。
「さぁルイズ、行くぞ」

 平然と誘うクォヴレー。
「ええええええ!?ででででもっ!アンリエッタ様をこのままには……」
 必死で何とか理由を紡ぎ出す。
「お前のベッドに寝かせておけば問題はないだろう」
 しれっと退路を潰す使い魔に、ルイズは軽く殺意を覚えた。
 すたすたと近づいてきて、アンリエッタを抱え上げてベッドの上に寝かせると、また窓際に向かう。
「急ごう。出発が遅れれば、それだけ帰るのも遅くなってしまう」
 そこで、何か言いよどむような顔になる。
「その……普段、お前は『ゼロのルイズ』とバカにされているだろう……ここで授業まで休んでしまうのは、あまり良いことではないと思う」
 そこでようやく、ルイズは真っ正面から使い魔を見た。
 この、少し申し訳なさそうにしている使い魔は、心底から自分の心配をしてくれているのだ。
「……わ、わかったわよ……」

 ここで時間軸を少し戻す。
 女子寮となっている水の塔へ消えたアンリエッタを見ていた一つの影があった。
 ワルドである。
 国境を越えた聖地奪回運動であるレコン・キスタに荷担している彼は、現在三つの目的を同時に果たすべく作戦行動をとっていた。
 今はその第一段階。
 アルビオン王家のウェールズ皇太子と親交の深かったアンリエッタに、二人の仲を疑われるような物が公表されれば、現在進められているゲルマニアとの同盟はご破算になってしまうと説き、彼女の親しい友人であるルイズをその奪還の任に当たらせるように進言していた。
 ルイズの身を案じ、渋るアンリエッタに自身も護衛に付くことを述べつつ。
 本来は、この任務を命じられるのを自分一人にする予定だった。
 だが今日、訪れた学院で彼は珍しいものを目にする事となった。
 ルイズの使い魔が人間の、それも平民であるらしいことは噂に聞いていたし、だからまさかとも思ってこれまで計画を延期もしてきた。
 そして、その使い魔の手の甲に記されていたあのルーンは、間違いなくガンダールヴ。
 であるならば、その主であるメイジのルイズは……
 ゲルマニアとトリステインの同盟を阻害しうる文書、アルビオン皇太子ウェールズ・テューダーの暗殺。
 これら二点に加えて、更にもう一点ワルドに目的が加えられた。
 虚無の使い手であるルイズを、レコン・キスタ側に引き込むこと。
 随分前とはいえ彼女と婚約を交わした自分ならば、十分に彼女を説得出来ると思っていたし、彼女がレコン・キスタの意義を理解してくれればそれだけで事は成ると思っていた。
 ふむ、と満足げな笑みを浮かべ、そこで隠れていた塔の壁に尚深く身をすくめる。

見張っていたルイズの部屋の窓に人影が現れたからだ。
 それは使い魔の少年だった。
 昼間はシャツの上にチョッキを着ていた筈だが、今は何やら銀色の服を着ているようだ。
(……おかしな寝間着を着るのだな、彼は)
 あんなデザインの服は見たことがなかった。
 それに、一体何をしているのだろうか?窓から外を見ている訳ではない。目を瞑り、何か呟いているように見えた。何を言っているのかまでは聞こえないが。
 少しでも声を聞き取ろうと少しずつ身を前に出した所で、異変が起きる。
「何っ!?」
 庭全体に、最外郭を十角形とし、内側に小さい五角形をいくつも内包し続けていく陣が光る線で構成された。それも、色は血のような赤だ。
 反射的に杖を抜き、構えるワルドの前で、陣から巨大な腕が現れた。次いで翼、もう片方の腕、頭と胴、やがて全身が。
 それは……
「悪魔……!?」
 闇夜の中、陣の赤い光に照らされて浮かび上がる姿は悪魔そのものだった。
 その異形が、吠える。
 一歩二歩三歩と踏鞴を踏むように後退して尻餅をついた。悪魔に向けている杖が、腕の震えを如実に表している。
「な――なななな――!」
 何だというのか?あれは?
 全長20メイルはあろうかという大悪魔。それが何故にこのようなところに現れるのか?
 そこでふと気づいた。その悪魔は、ルイズの部屋の窓際にたった使い魔の少年を見ている。その少年も、それを平然と見上げている。まるでそれが当たり前のように。
「????」
 事態が把握しきれない。あの悪魔は?あの使い魔の?いや、あの使い魔が、あの悪魔の?
 ワルドの見ている先で、一度部屋の中に戻った少年は今度はルイズを連れて再び窓際に現れると、彼女を抱き上げてその悪魔に開いた穴に入っていった。すぐにその穴も閉まる。
「な……」
 訳が分からない。あの悪魔、あそこが口だったのか?それでルイズはあの使い魔と共に食べられたのか?
 目の前で起きた光景を、全く理解出来ぬまま固まっているワルドを尻目に、悪魔は翼を広げると飛び去っていってしまった。




おまけ ガンゼロにおける機体 対メイジ戦の考察

ディス・アストラナガン

イングラム・プリスケンの開発した機動兵器、アストラナガンが半壊状態だった際に、手近にいたヴァルクを取り込んでベルグバウへ変化。更にゼ・バルマリィ帝国宰相シヴァー・ゴッツォの策略によりディス・レヴを組み込まれた結果の機体。
装甲の自己修復機能、ディス・レヴとティプラー・シリンダーによるほぼ無尽蔵のエネルギーを持つ、スパロボ世界でも最強クラスの機体。
三次元的な力に還元されてしまっている通常の系統魔法は、広域バリアシステムであるディフレクト・シールドによって阻まれ、まともにダメージを与えられない。
加えてディス・レヴによって常に負の無限力を纏っている本機は呪的な防御性能も比較的高いため、虚無の『爆発』でも効果が薄い。ただ、それでもこの世界では魂の絶対量が不足しているため、ある程度力が落ちている方。
火力については言わずもがな、ディス・レヴの補助を受けたインフィニティ・シリンダーの時間逆行攻撃は、まともに防ぐ手立ては存在しない。アカシック・レコードに介入出来る力を持つかによって決まる。

ヤンデレ機動兵器の異名も取り、ベルグバウの頃から当時クォヴレーに最も親しかった女キャラ、ゼオラ・シュヴァイツァーがピンチに陥った際、いきなり動かなくなってみたり(直後ゼオラの恋人が出てくるため空気を読んだ説あり)、
クォヴレーが囚われた敵艦から脱出する際、人質とした巫女姫アルマナ・ティクヴァーとタンデムしていると執拗に狙ってきたりする(初登場のイベント)。
本作でもそれに乗っ取り、クォヴレーの側に女性キャラが居る状態で呼び出すと叫ぶようにしている。何を叫んでいるかについては、JIS規格キーボードを参照のこと。




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