「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに、応えなさい!!」
杖を振り下ろすと、爆音と共に光が炸裂した。
彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、昇級をかけた使い魔召喚の儀を行っていた。
が、さっきから巻き起こるのはお得意の爆発という名の失敗魔法ばかり。
何度この行程を繰り返して来たか、だんだん数えることさえ面倒になってきいた。
周りの生徒達も彼女の失敗にはもう飽き飽きしたのか、自分の喚んだ使い魔達を愛でている。
が、さっきから巻き起こるのはお得意の爆発という名の失敗魔法ばかり。
何度この行程を繰り返して来たか、だんだん数えることさえ面倒になってきいた。
周りの生徒達も彼女の失敗にはもう飽き飽きしたのか、自分の喚んだ使い魔達を愛でている。
(私だって、あの位……いや、あれ以上に立派なの喚んでやるんだから……!!)
もう一度気合いを入れ、再び杖を構える。
と、その時、ルイズの瞳に煙の向こうの何かが映った。
まさかと思い、すぐに爆発の中心に駆け寄るルイズ。
するとそこには―――
と、その時、ルイズの瞳に煙の向こうの何かが映った。
まさかと思い、すぐに爆発の中心に駆け寄るルイズ。
するとそこには―――
「………何、これ」
ルイズの髪の毛と同じ、ピンク色のボールみたいな生物が倒れていた。
恐らく胴だと思われる部分からは短い三角の手が生え、真っ赤な足はまるでコッペパンのようだ。
気絶しているのか、このピンクボール(仮称)は全く動く気配を見せなかった。
動かないピンクボールに生物なのかどうかさえも怪しくなったルイズは、試しに手に持った杖でつついてみる。
恐らく胴だと思われる部分からは短い三角の手が生え、真っ赤な足はまるでコッペパンのようだ。
気絶しているのか、このピンクボール(仮称)は全く動く気配を見せなかった。
動かないピンクボールに生物なのかどうかさえも怪しくなったルイズは、試しに手に持った杖でつついてみる。
ぷにっ
(あっ、柔らかい)
感触としてマシュマロに近いかもしれない。
そんな事を考えながら更にピンクボールの体をつついていると、流石に気が付いたのか、目だと思われる部分がゆっくりと開いた。
そんな事を考えながら更にピンクボールの体をつついていると、流石に気が付いたのか、目だと思われる部分がゆっくりと開いた。
「っ!? お、起きた……!」
「ぷぃああぁぁぁ……」
「ぷぃああぁぁぁ……」
ピンクボールは大きな欠伸を1つすると、目を擦りながら周りを見渡した。
「……ぽよ?」
そして気付いた。そこが自分の家ではないことに。
見慣れた白い天井も、同居人の黄色い鳥も、大好きなテレビもない。
代わりに目に入ってきたのは、青空と自分を見つめる1人の少女。
しかもその少女は、何故か小刻みに震えている。
見慣れた白い天井も、同居人の黄色い鳥も、大好きなテレビもない。
代わりに目に入ってきたのは、青空と自分を見つめる1人の少女。
しかもその少女は、何故か小刻みに震えている。
「……ぽよぉー?」
ピンクボールが訳も分からずただその様子を眺めていると、少女が飛び上がって叫んだ。
「いやぁっっったああぁぁーーーーーーーー!!!」
天にも昇る気持ちとはまさにこのことを言うのだろう。
何度も何度もその場で飛び跳ねながら、ルイズは今までに感じたことのない程大きな喜びに浸っていた。
遂に、憧れの、念願の、自分の使い魔を手に入れることが出来た。
予想していたのに比べれば大分頼りないが、まともにに魔法を使えたというのは紛れもない事実。
自分の喚びだしたピンクボールを抱きかかてクルクル回っていると、上の空だったギャラリーが漸く気付いた。
何度も何度もその場で飛び跳ねながら、ルイズは今までに感じたことのない程大きな喜びに浸っていた。
遂に、憧れの、念願の、自分の使い魔を手に入れることが出来た。
予想していたのに比べれば大分頼りないが、まともにに魔法を使えたというのは紛れもない事実。
自分の喚びだしたピンクボールを抱きかかてクルクル回っていると、上の空だったギャラリーが漸く気付いた。
「ゼ、ゼゼゼ、ゼロのルイズが成功した!?」
「そ、そんな、まさか!?」
「天変地異の前触れじゃないのか!?」
「雪だ! 雪が降るぞ!」
「そ、そんな、まさか!?」
「天変地異の前触れじゃないのか!?」
「雪だ! 雪が降るぞ!」
『魔法成功率0%』のルイズの成功に、一瞬辺りが戦々恐々となる。
が、ルイズの腕に納まっているそれが生徒たちの目に入ったとたん、すぐにそれは嘲笑に変わった。
が、ルイズの腕に納まっているそれが生徒たちの目に入ったとたん、すぐにそれは嘲笑に変わった。
「ルイズ! 使い魔が喚べなかったからって縫いぐるみを代わりにするなよ!」
「流石ゼロのルイズ! 誤魔化し方のセンスもゼロだな!」
「流石ゼロのルイズ! 誤魔化し方のセンスもゼロだな!」
生徒達から笑いが飛び、先ほど以上の野次がルイズに投げつけられる。
その発言を、ルイズは顔を真っ赤にして否定した。
その発言を、ルイズは顔を真っ赤にして否定した。
「縫いぐるみじゃないわよ! ほら、ちゃんと生きてるでしょ!?」
ピンクボールを生徒達に見せつけ、生きていることをアピールするルイズ。
ピンクボールは体を強く掴まれ、ちょっと痛そうに顔を歪ませている。
ピンクボールは体を強く掴まれ、ちょっと痛そうに顔を歪ませている。
「でもそんな出来損ないのボール、なんの役に立つのさ?」
「やっぱり失敗には変わりないな、ゼロのルイズ!」
「やっぱり失敗には変わりないな、ゼロのルイズ!」
再び起こる爆笑。結局バカにされることに変わりはなかった。
一部の女子はその愛らしさに「あれ欲しい!」などと言っている。
いい加減頭に来たルイズはもう一発怒鳴ってやろうと前へ踏み出したが、召喚の儀を監督していたコルベールがそれを制した。
一部の女子はその愛らしさに「あれ欲しい!」などと言っている。
いい加減頭に来たルイズはもう一発怒鳴ってやろうと前へ踏み出したが、召喚の儀を監督していたコルベールがそれを制した。
「ミス・ヴァリエール、儀式を続けなさい」
「でも、ミスタ・コルベール!」
「でも、ミスタ・コルベール!」
あんな事を言われているのに! と、ルイズはコルベールに訴える。
コルベールはいきり立っているルイズの肩に手を置くと、穏やかな口調で彼女を諭し始めた
コルベールはいきり立っているルイズの肩に手を置くと、穏やかな口調で彼女を諭し始めた
「言わせておけばいいのです、ミス・ヴァリエール。貴女の使い魔には貴女の使い魔だけの素晴らしい能力がきっとあるはずです。貴女の使い魔を信じてあげなさい」
教員にここまで言われては、流石のルイズでも引き下がらない訳には行かなかった。
グッと言いたいことを堪え、腕の中のピンクボールを見つめる。
グッと言いたいことを堪え、腕の中のピンクボールを見つめる。
確かに、今は言わせておけばいい。
きっとこの使い魔には、誰の使い魔にも負けない凄い力が有るはずだ。
……多分、きっと、おそらく………
きっとこの使い魔には、誰の使い魔にも負けない凄い力が有るはずだ。
……多分、きっと、おそらく………
気を取り直し、ルイズは杖を握りしめた。
まだ儀式は完全には終わっていない。
ルーンを刻むまでが儀式なのだ。
まだ儀式は完全には終わっていない。
ルーンを刻むまでが儀式なのだ。
「ぽよ?」
未だに状況を掴めていないピンクボールが首(ほぼ胴体)を傾げる。
そんな幼さの残る姿を見つめながら、ルイズはルーンを唱え始めた。
そんな幼さの残る姿を見つめながら、ルイズはルーンを唱え始めた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ」
ルーンを唱え終えると同時に、ルイズはピンクボールに口付けた。
杖でつついた感触の通り、マシュマロのような柔らかさだ。
どんなに高価なぬいぐるみでも、この感触を再現することは出来ないだろう。
杖でつついた感触の通り、マシュマロのような柔らかさだ。
どんなに高価なぬいぐるみでも、この感触を再現することは出来ないだろう。
「ぷぃう………」
唇に伝わる柔らかさを享受していると、ピンクボールからふ抜けた声がした。
瞼を開け唇を離すと、心なしピンクボールに赤味が差していた。
恥ずかしかったのだろうか。
そう思うと、怒り心頭に発していたルイズに自然と笑みが零れた。
瞼を開け唇を離すと、心なしピンクボールに赤味が差していた。
恥ずかしかったのだろうか。
そう思うと、怒り心頭に発していたルイズに自然と笑みが零れた。
「コントラクト・サーヴァント、完了しました」
「よろしい。では……」
「っ! ぽっ、ぽよぉ! ぽよぉ!!」
「よろしい。では……」
「っ! ぽっ、ぽよぉ! ぽよぉ!!」
コルベールの号令を遮り、急にピンクボールに苦しみだした。
いきなり左手に走った激痛と熱さに耐えられなかったようだ。
余りの苦しみように、ルイズは腕の中のピンクボールを強く抱き締める。
いきなり左手に走った激痛と熱さに耐えられなかったようだ。
余りの苦しみように、ルイズは腕の中のピンクボールを強く抱き締める。
「大丈夫、使い魔のルーンが刻まれるまでの辛抱だから……大丈夫」
しばらくそのままでいると、ピンクボールの左手から発せられていた光が収まった。
光と一緒に熱も引き、後にはルーンだけが残される。
刻まれたルーンは、ルイズの目から見ても珍しいものだった。
一方痛みから解放されたピンクボールは、自分の左手に現れたルーンをただ単に不思議そうに見つめている。
それはルーンに既視感を覚えたコルベールも同じだった。
見慣れぬルーンだと、手にしていたスケッチブックに熱心に書き写す。
光と一緒に熱も引き、後にはルーンだけが残される。
刻まれたルーンは、ルイズの目から見ても珍しいものだった。
一方痛みから解放されたピンクボールは、自分の左手に現れたルーンをただ単に不思議そうに見つめている。
それはルーンに既視感を覚えたコルベールも同じだった。
見慣れぬルーンだと、手にしていたスケッチブックに熱心に書き写す。
「それでは皆、教室に戻りますよ」
スケッチを素早く終えると、コルベールは生徒たちに改めて号令を出した。
号令と共に、生徒達が一斉に空へと舞い上がる。
号令と共に、生徒達が一斉に空へと舞い上がる。
「ルイズ! お前は歩いてこいよ!」
「あいつ『フライ』はおろか『レビテーション』も使えないんだぜ? 精々あの風船お化けに掴まって飛んでくるしかないって」
「違いないな!」
「あいつ『フライ』はおろか『レビテーション』も使えないんだぜ? 精々あの風船お化けに掴まって飛んでくるしかないって」
「違いないな!」
そんな彼らのやり取りに下唇を噛みしめながらも、ルイズは使い魔に視線を戻した。
「ぽよ! ぽよ!」
使い魔の方はすっかり懐いたらしく、ルイズの無い胸に抱きついている。
先程ルーンが刻まれている時、強く抱き締めていたのが相当嬉しかったようだ。
手足をバタつかせながら、ルイズに擦寄って甘えている。
ルイズは使い魔を思いきり抱きしめたい衝動を抑え、一旦地面にそれを降ろした。
先程ルーンが刻まれている時、強く抱き締めていたのが相当嬉しかったようだ。
手足をバタつかせながら、ルイズに擦寄って甘えている。
ルイズは使い魔を思いきり抱きしめたい衝動を抑え、一旦地面にそれを降ろした。
「あなた、名前は?」
「カービィ、カービィ!」
「カービィ、カービィ!」
その場にしゃがみ込み、ルイズはカービィと名乗った生物と視線を合わせる。
カービィは嬉しそう笑い、ルイズも釣られて笑った。
使い魔のルーンのおかげで、言語の面は心配ないようだ。
何よりカービィがルイズにとても懐いているので、意思の疎通も問題ない。
カービィは嬉しそう笑い、ルイズも釣られて笑った。
使い魔のルーンのおかげで、言語の面は心配ないようだ。
何よりカービィがルイズにとても懐いているので、意思の疎通も問題ない。
「カービィね。私はルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」
「ル、ルイィ……フラダンスゥ……?」
「……………ルイズでいいわよ。ル・イ・ズ」
「ル・イ・ズ?」
「ル、ルイィ……フラダンスゥ……?」
「……………ルイズでいいわよ。ル・イ・ズ」
「ル・イ・ズ?」
幼いのは性格だけではないらしい。
長い言葉を覚えたり、スムーズに会話をするのは無理なようだ。
ルイズは赤ん坊に言葉を教えるように、ゆっくりと名前を復唱した。
主の名前を言い切ってくれなかったことに一抹の悲しさを感じつつ。
長い言葉を覚えたり、スムーズに会話をするのは無理なようだ。
ルイズは赤ん坊に言葉を教えるように、ゆっくりと名前を復唱した。
主の名前を言い切ってくれなかったことに一抹の悲しさを感じつつ。
「ル・イ・ズ……ルイズ!」
「そう、ルイズ!」
「ルイズ! ルイズ!」
「そう、ルイズ!」
「ルイズ! ルイズ!」
初めて名前を呼んでもらった感慨から、ルイズは我慢できずにカービィを強く抱き締めた。
カービィは覚えたての主の名前を笑顔で連呼している。
ルイズはカービィの声を聞きながら、抱きしめる腕にさらに力を込めた。
カービィは覚えたての主の名前を笑顔で連呼している。
ルイズはカービィの声を聞きながら、抱きしめる腕にさらに力を込めた。
『はるかぜとともにやって来たこの子となら、きっと最高のパートナーになれる』
そう信じて。