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プリズナーNO.1,2,3,V,4  ◆JR/R2C5uDs


 想定より、早い。
 それが、ルンゲが「放送」を聞いた最初の感想だった。
 Hor2名、Set1名、Isi9名、合計12名。
 12名もの人間が、たった6時間で死んだ、という。
 それが事実かどうかの確証はないが、この主催者の性質上、嘘は無いと思える。
 実験を進めるという目的からすれば、ここで嘘をつくことには利点がない。
 そして何より、属性ごとの人数を伝えてきたこと。
 それは正に、「自分が属する属性の法則に気付け」というメッセージに他ならない。
 ルンゲは既に、グループ分けの法則に一つの仮説、推論を立てている。
 それは、「法の執行者と、犯罪者、それ以外の無辜の市民」という分け方だ。
 その推論を推し進めば、恐らくIsiが、「無辜の市民」である。
 犯罪者と法の執行者の対立を主軸としているとするならば、真っ先に犠牲となるのは、特別な訓練を受けていない市民になる確率が高い。
 また、人数配分においても、法の執行者や犯罪者より、無辜の市民を多く配置している可能性は高い。
 であらば、例えば放送で聞いたヴォルフガング・グリマーは、Isiである、と考えられる。
 また、結城によって殺されたと推測される、七瀬美雪という日本人の少女も、このグループであろう。
 後は、HorとSetの何れかが法の執行者で、何れかが犯罪者であるという事になる。
 勝利条件を素直に受け取れば、Horが法の執行者で、Setが犯罪者という可能性が高いが、それはまだ確証を得た推論とも言えない。
 ジェームズ・ゴードン。数刻前にその死体を確認した、ニューヨーク(本人は、ゴッサムなどと洒落めかして言っていたが)の市警察本部長。
 ポイズン・アイビー。ゴードンより聞いた、毒と植物を使う異常犯罪者。
 後数人、呼ばれた名前の中で、犯罪者か法の執行者であるという事が確認できる人物がいれば、この推論からさらに進める事が出来るだろう。
 つまり、死んだ犯罪者がポイズン・アイビー1人だけなら、Setが犯罪者という可能性が高く、死んだ法の執行者がジェームズ・ゴードン1人ならば、Setが法の執行者である可能性が高くなる。
 しかし ―――。
 結城美知夫。ジョーカー。そして、Dr.テンマ。
 まだ名が呼ばれず、今知っている中で、犯罪者と考えられるのはこの3名のみ。
 結城美知夫に関しては、この会場においてジェームズ・ゴードン、及び七瀬美雪を殺害した容疑が濃厚である。
 放送で呼ばれた名前から推論を進めると言うことは、彼らや、彼らの同類が更に人を殺し続ける事を前提とする事になる。
 たった6時間で12名が死ぬこの実験場に、果たしてどれほどの能動的殺人者が居て、さらに何人の人間が犠牲となるというのか ―――。

 今、ルンゲは、石と鋼鉄の要塞の中にいる。
 しかしこの要塞は、外部から来る敵を退けるためのものではない。
 内部に居る者達を、外へ出さぬ為の要塞だ。
 アーカムアサイラム。
 地図上でそう記載されたこの施設は、ゴードンによるとゴッサムにはびこる異常犯罪者達を収容、治療する為の施設なのだという。
 よもやこの時代に、鉄格子と拘束台に電気ショックでもあるまいと、そうは思うが、事実この施設に来てみると、おおかたその予想が外れているわけでも無いようであった。
 違いと言えば、鉄格子が分厚い特殊強化ガラスになっている、程度。療養所、病院、というよりは収容所、という方が適切に思えるほどだ。

 そこに収容されていたという異常犯罪者、ジョーカーの作ったとされる趣味の悪い車は、確かになかなかの高性能であった。
 遠隔操作用のリモコンを使えば、遠くから自動操縦で障害物を避けつつ呼び出すことも出来るし、ハンドル周りのボタンにあるギミックは、さながら007かスパイ大作戦などの映画の如く、である。
 設定を変えれば車高が変わってオフロード仕様にもなるし、馬鹿げた仕掛けでカマドウマの様な4脚を出せば、小さな河川や岩、倒木まで乗り越えられる。
 成る程、たしかにこのような玩具を、贅を尽くして造りあげる妄執ぶりは、狂気に満ちた道化のやりそうな事である。
 とはいえ今この場においては、これはかなり役に立った。
 ゴードンの言う協力者、バットマンと名乗る男が立ち寄るかも知れないとされた施設の内二つ、このアーカムアサイラムと、ゴッサムタワーは、最初にルンゲが居たウェイン邸からは距離がある。
 その上、移動経路が限定的で、ここまでの道のりもほぼ山道であった。
 徒歩でこれを踏破はするのはかなりの時間と体力を浪費するが、この車の性能なら比較的容易い。
 逆に言えば、徒歩でここに行くのは結構な手間である、という事で、だからルンゲは次なる移動先をアーカムアサイラムとしたのだ。
 結城美知夫が居ると考えたためか? そうではない。
 恐らく、ここに目当てのものがある、と踏んだからだ。

 朝の澄んだ空気の中、カツカツと硬質の靴音が通路に響く。
 足音を殺そうにも、ここまで静寂に包まれているとそれも難しい。そして逆に言えば、今ここで動いているのは、やはりルンゲただ1人なのだろう。
 警備室、処置室、医療品の倉庫、ボイラー室に発電室、職員の詰め所と仮眠室に、食堂、院長室、書庫…。
 おおよそ、この手の施設に必要と思える部屋は一通り揃っている。
 それぞれ、実際に使用されていたかのような乱雑さと生活感があるが、にも関わらず生命の気配はない。
 また、同時にやはり、妙な違和感がある。
 何が? というと、それはやはりウェイン邸でも感じていた事。
 映画か何かのセットであるかのような違和感だ。
 全ては、「用意されている」という感覚。
 この実験とやらを仕組んだ犯人は、ゴードンの証言とも合わせて考えれば、個々の被験者達と関連するであろう施設について熟知しており、それらを"再現"して用意してみせるという周到さを持っている。
 そしておそらく、その中にいくつかの、「ヒント」を用意しているはずなのだ。
 そう、先程の放送での、グループごとの死者の割合のように。


 その中で、あからさまに置かれていたいくつかの資料に、ルンゲは目を通していた。
 一つは、アーカム収容者に関する資料、である。
 ここに集められているジョーカー、ポイズン・アイビーのものから、ほか数名の写真付き資料。
 もう一つは、マルコム・ロング医師による、ウォルター・コバックスに関するレポート、である。
 そして最後に、最も奇怪な資料が、イギリスの強制収容所で行われていた人体実験に関する手記、である。
 さて、これをどうとるべきか? 
 書式、内容、ファイルケースなどから、後者二つは、この施設外で作られた記録と思われる。
 ウォルター・コバックスという男は、レポートによると自警活動をしていた犯罪者で、自らをロールシャッハと名乗っていたという。参加者名簿にもあった名前だ。
 ゴードンの語っていたアメリカらしい犯罪者だとは思う。
 しかしもう一つ、イギリスの強制収容所での実験に関しては、あまりに荒唐無稽なSF小説のようだ。
 まるでかつてのナチズムの様な、優生学的な差別と抑圧。それによりなされるマイノリティの"処刑"に、"人体実験"に、その五番目の獄舎に居た収容者の話。
 近未来ディストピアSFそのものとも言える内容だが、妙なリアリティがある。
 ゴードンの話した内容、アーカム収容者のリストにしても、ルンゲからすればコミックブックの様な馬鹿馬鹿しさがあったが、ここに置かれていた上記資料は、さらにその馬鹿らしさを助長している。
 他愛のない作り事である。そう断じてしまっても何ら問題ない。いや、常ならばそう断じて当然である。
 で、あるにも関わらず、この奇妙な違和感は何であろうか。
 この地に拉致され、実験などと言うものに参加せられて以来の違和感が、ルンゲの冷徹な精神を越えて、大きくなり始めている。
 それは、保管室という場所でケースに入れられていたいくつかの道具を見たときにも感じた事である。
 『Mr.フリーズの冷凍ガスボンベ』『スケアクロウの恐怖ガス』『リドラーの杖』『スカーフェイス人形』『トゥーフェイスのコイン』……。
 これらはこのアーカムアサイラムの収容者達が犯罪を犯す際に使用していた道具類なのだという。
 しかし、あまりにも子供じみている。
 ルンゲとて、多くの異常な犯罪者、猟奇殺人鬼などの犯罪を捜査したり、或いは資料などを調べたりしてきている。
 一見異常に思える彼らの行動や執着も、その背景をきちんと読み解けば、彼らなりの筋道があることは分かる。
 しかし、だ。
 ここにある資料やそれら保管されていた道具類は、ルンゲの知りうるものからして、あまりに突飛で、正にコミックじみている。
 まさに、テレビアニメの『超人スタイナー』の世界のような。

 プロファイリングには、何よりその対象が基盤とする文化についての知識が必要である。
 Dr.テンマを知るために、ルンゲは「日本人的な発想、思考法」について知ろうとした。
 ゴードンが語り、このアサイラムに収監されていたというアメリカの異常犯罪者達もまた、ルンゲにとって一筋縄ではいかぬ文化基盤を背景としている様に思える。
 であらば、この犯人は…?
 アーカムアサイラムの、或いはそれら以外の場所に居たとされる異常犯罪者の資料をここに置き、さあ謎を解いてみろと言わんばかりに挑発するこの犯人は一体…?
 この犯人が背景としている文化基盤、その世界は一体どんなものなのだろうか?
 ルンゲは考える。あまりにも…足りない。


 院長室と表札の出ていたその部屋は、重厚なマホガニーの机に、赤い絨毯。革張りの椅子は座り心地が良く、ウェイン邸に較べれば簡素だが、それでも快適な部屋だ。
 一通りアサイラムの中を調べた結果、犯人が用意しておいたであろうそれが、この部屋にあった。
 電話機、である。
 ごく普通の、変哲もない有線電話。ただそれだけだが、先程のウェイン邸では全て撤去されていた。恐らく、他の多くの場所でも同様だろう。
 受話器を取り、音を聞く。ツー、ツー、との信号音。
 なるほど、やはり、「これを使え」とのメッセージであったのだ、と、確信をする。
 ルンゲはバックパックから、最初に支給されていた『黒の船』のコミックを取り出していた。
 支給された以上、そこには何かしらのヒントがあるはずだ。ルンゲはそう考えていた。
 実際、どうやらその通りであったらしい。
 犯人が隠したヒントは、コミックの内容にあるのでは無かった。
 その中の広告ページ。
 『ピラミッド宅配社』『病院』『学校』『さくらテレビ』『ゴッサムタワー』、そして『アーカムアサイラム』の広告。
 それぞれの広告に、電話番号が書かれているのだ。
 ルンゲは考える。
 これらの何れかにかければ、誰か他の参加者と接触できるかもしれぬ、と。
 ルンゲに今足りないのは、何よりも情報だ。
 開始以来、ルンゲが会った人間はゴードンと結城。1人は殺され、もう1人は逃げ出した。あと1人、強いて言うならば既に物言わぬ骸となっていた少女のみ。
 Dr.テンマを追うにしろ、結城美知夫を追うにしろ、何よりこの実験を企画した犯人を追いつめるにしろ、やはり、情報が圧倒的に足りない。
 先程の放送の中で呼ばれた、「テンマ」という男が、彼の追っているDr.テンマで無いことは明白であった。
 しかしその名が呼ばれたことで、何等かの変化は起きるだろう。
 テレビ局がある以上、まずはそこで放送が成されたと見るのが妥当。
 さて、しかし ―――。
 ルンゲは考える。
 この何れかの場所に居るかもしれぬ者は、果たして遵法者か殺戮者か、あるいは無辜なる市民か。
 そして何より、ルンゲにとって一体何をもたらす者であろうか………?


【A-9/アーカムアサイラム:朝】 
【ハインリッヒ・ルンゲ@MONSTER】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]:健康
 [装備]:ルールブレイカー、テイザーガン、ジョーカーモービルとそのリモコン
 [道具]:基本支給品一式×2、『黒の船』のコミック@ウォッチメン、小型無線機A~B、不明支給品0~2
     ロールシャッハの資料、Vの人体実験に関する資料
 [思考・状況]
 基本行動方針: ケンゾー・テンマを捕まえ、また今回の事件を仕組んだ犯人も捕まえる。
 1:何れかの施設に電話を掛けてみる。
 1:結城美知夫を捜す。
 2:ブルース・ウェイン(=バットマン?)に不信感。
[備考]
※ヨハンの実在と、テンマの無実を知る以前より参戦。
※ゴードンより、バットマン、ジョーカー、ポイズンアイビーに関して情報を得る。
※結城より、金田一一、剣持勇、高遠遥一、賀来巌に関して情報を得る。
※犯人のグループ分けを、[法の執行者]、[一般市民]、[犯罪者] ではないかと推論。


※アーカムアサイラムの保管庫にある道具類
 アーカム収容者達の使っていた道具がいくつか保管されている。
 使える状態か、また万全なものかどうかは不明。



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ウェイン邸殺人事件 ~ゴッサムタワーは見ていた~ ハインリッヒ・ルンゲ [[]]




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