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砂浜の迷い人 ◆SQSRwo.D0c




 Vという存在は無政府主義だ。
 もちろん、主義主張をするだけではない。
 彼は人を殺した。物を爆破した。人を変えた。
 苛烈なまでに。冷酷なまでに。
 激しさを秘めながら、心の中は仮面に隠れた素顔のように明らかにされない。
 だが、彼は自分を理解されたくない、と考えているわけではない。
 むしろ、もっとも誰かに理解されたいと思っているのではないだろうか。
 そうでなければ、襲われている少女を二人も救うことなどなかったはずだ。

 本当にそうだろうか。

 彼は決して自らの心情を吐露したりはしない。
 ただ魅せるだけ。ただ示すだけ。
 そうして他者の変容をも受け入れる。
 もしかすると、彼は作りたがっているのかもしれない。
 仮面の怪人、Vという存在を。


 間桐慎二は目を覚ましていた。
 激しい痛みから失神し、どのくらい経ったかはわからない。
 いくらか痛みが和らいだことから判断すると、かなり寝ていたのだろう。
 慎二はうっすらとまぶたを開き、周囲を確認する。
 頬は砂浜に押し付けられ、波の音が聞こえてきた。
 風から潮の匂いがして、髪がべたつきそうだと思った。
(そんなのんきなことを考えている場合じゃないッ!)
 慎二は焦りつつも、慎重に神経を尖らせる。
 拘束はされていない。あのバケモノと男ふたりから逃げるなら、今がチャンスだ。
 そう思って全身に力を入れた時だった。
『目覚めたか、迷い人よ』
 バレている、と慎二は気づいて跳ね起きた。
 警戒心をむき出しにして、傷の痛みに顔をしかめながら相手を確認する。
 そいつはバケモノの女でも、不気味な雰囲気の男でも、いけ好かない美形でもない。
 朝日の昇る海を一心に見つめる、仮面の怪人。
「ま、またお前か! いきなり現れて……何者だ!?」
『ふふふ、名は失ったと心得よ。炎に呑まれ、灰となったのだ。
それでも呼びたいのならば、“V”と呼ぶといい』
 慎二は答えずキョロキョロと逃げ道を探した。
 Vがわずかに友好的な態度をとっていることにさえ気づかない。
 もっとも、平時でもVの態度には気づかなかっただろうが。
『落ちつきたまえ。今のところ君を害するつもりはない。胸の手当てが証拠だ』
「そんなこと言って、油断したら殺すつもりだろ! 僕は騙されないぞ!」
 手当てを確かめながらも、慎二は言い切る。
 その物言いに対しても、Vの反応は変わらない。
 仮面を被っているため、表情はわからないのだが。
 無言で睨み合うだけの時間が過ぎた。
 すると、慎二の腹が空腹を訴える。
「ぐっ、こんなときに……」
『ついてきたまえ』
 そう言って振り返るVから、逃げれるか少し考えた。
 結果、ボコボコにされた最初の出会いを思い出し震える。
 小さく舌打ちをしながらも、慎二は従った。


 一軒の木造建築は数十人入れるほどの広さを持っていた。


 のれんが奥の厨房と客席を隔てている。
 壁には木札のメニューが置かれていた。
 海の家、というのはどこも変わらないものだ。
 かつて友人や取り巻きと共に来た場所を思い出しながら、慎二は奥の厨房を見る。
 ジュージューと何かを焼く音が聞こえる。
 肉を焼いているのだろうか。いい匂いが漂ってきた。
 匂いに刺激され、腹の音が止まらなくなっている。
 そう、慎二にとって意外な行動をVはしていた。
 料理、と言う行為をだ。
(今のうちに逃げるか?)
 何度目かわからない思考を続けるも、そのたびにVが振り返ってくる。
 こちらの心を読んでいるかのような行為に、慎二は怖気が走った。
 今度もまた、視線を送られるのだろうか。
 戦々恐々としていると、焼いている音が止む。
『さあ、空腹を満たすといい』
 そう言ってエプロンをつけたままのVは、作った朝食を木のテーブルに並べた。
 目玉焼きが一つにハムが三切れ。そしてコッペパンが二つほど。
 衛宮なら、ちゃんと和風の朝食が出るのに、と不満を内心漏らす。
 とはいえ、この現状で料理に手をつけるほど、慎二はVを信頼していない。
「いったい何を企んでいる? 毒殺か!? 僕は騙されないぞ!!」
『いま殺すのなら、寝ているときにそうしている。
事実、君を捕えた三人はそのつもりだったがね』
 Vに告げられた事実に、慎二は恐慌を起こしそうになった。
 どうにか反応を隠し、表情をさらに険しくする。
「じゃあ、お前は僕に恩を売っているつもりなのか?」
『恩義を感じるのなら、私ではなくナノハと言う少女にしたまえ。
彼女は君に襲われたにもかかわらず、罪を許した。普通はできないことだ』
「ハッ! そいつはとんでもない馬鹿だ」
『ある意味、その通りだ』
 慎二は意外そうにVを見た。彼は彼で、仮面の下に切りわけたパンを詰め込んでいる。
『汚らわしい犯罪者が聖女に心を打たれて改めることなどない。
ただ待っているのは、正義の鞭のみだ』
「お前……ッ!」
 侮辱の言葉に慎二は怒りをあらわにする。
 Vの表情が、仮面とはいえまったく変わらないのも怒りに拍車をかけた。
『だが、彼女の思いを無為にするのも心苦しい。
それに、君は理念が欠片もないが、その身体能力は惜しい』
 慎二はまたも疑問符を浮かべる。
『問わせてもらおう。君はなぜ悪疫のようなルールに囚われ、主催者の意のままに権利を奪われなければならぬのか?
それだけの力を得てなお、首輪の主を誅殺しようとしないのか?』
「だって、それがルールだろ! 強い奴が生き残る!
魔術師のルールで、僕ら人間の基本的な本能だ。弱肉強食って奴さ」
『ならば、俺を殺してみるか?』
 慎二の動きが止まる。
 Vからかつてない圧力が全身を締め上げている。そんな錯覚を起こした。
『ふふふ、冗談だ。だが、考えてもみたまえ。
圧倒的力を持つ相手に、知恵と勇気、そして希望を武器に立ち向かう!
心が踊る状況だとは思わないかね?』
「ハッ! 勝手に言っていろ。だいたい、お前は言い方に芝居かかっているんだよ」
『芝居心こそ、大事なものさ』
「いちいち癇に障る奴だな。お前は僕をどうしたい!?」
 我慢できずに立ち上がり、唾を飛ばす勢いで慎二は詰め寄った。
 Vはゆっくりと顔を上げる。
『それは君が決めることだ』
「はあ?」
 ククク、と相手は喉を鳴らした。
 嘲笑されているのだと思い、慎二は機嫌が悪くなる。
 それを察したのか、Vは話を再開した。
『君を解放しようと思っている』


 瞬間、慎二の胸が踊った。ようやくこの不気味な怪人と離れられる、と。
 だが、その期待はあっさりと覆される。
『だが、私を同行させるという条件をつけさせてもらおう。
最初に出会ったときのように、思慮なき行為に出た場合は制裁を加える』
「いやだ、と言ったら?」
『彼女の願いを叶えることはない。悲しいことだが、しかたあるまい』
 殺す、とVは言外に宣言していた。
 慎二はゾッとしながら、現状を考える。
(くそ、選択の余地はないということか!)
 現在、勝算はまったくない。
 Vは万全の状態である“超人”の自分をくだしたのだ。
 怪我をしている自分が勝てるとは思わない。
 もう少し万全なら、あれは何かの間違いだと判断して襲いかかっていたのだが。
「ああ、わかったよ! しかたない」
『理解が早くて助かる』
「けど、僕が決めることってどういう意味だよ?」
『人は血によって運命を決めるものではない。
その生き様! その魂で決めるものだ! これから君は自ら道を決めたまえ。
道によっては手を貸そう。だが、あくまで今までのような行動をとるのなら、覚悟はしたまえ。
理念を殺すのは骨が折れるぞ』
 静かな語り口を前に、慎二はゴクリとつばを飲んだ。
 同時に重い口調に圧倒はされたものの、チャンスだと理解する。
 要するにこの男は自分しだいで手助けをしてくれるというわけだ。
 衛宮士郎のようなお人好しな行動を強要されるのは気にくわない。
 だが、この男と超人である自分の力を合わせれば、たとえサーヴァントが相手でも勝ち目が出る。
(そうさ、利用すればいい)
 上手く動かせば都合のいい手駒が入った。
 慎二はそう考え、笑みが漏れそうなのをこらえる。
 それにVを強い奴をぶつけ、弱ったところを突けば自由になれる。
 最初の借りは絶対忘れない。いずれ後悔させれる。
 いいことづくめだ。
「わかった。しかたないから、僕に同行させてやるよ。名前は間桐慎二。間桐でも慎二でも好きな呼び方をすればいい」
『理解した。それではマトウ、よろしく頼む。
食事をしながらで構わないから、放送の内容を聞きたまえ』
 ようやく警戒を解き、パンを口に放り込みながら、Vの話す内容を聞く。
 自分に運が向いてきた。慎二は密かにほくそ笑んだ。


 間桐慎二は知らない。
 Vは一人の少女を変えるために、拉致監禁を実行し、暴力を振るったということを。
 仮面の男にとっては真実を悟らせるためなら、手段は問わない。
 心を追い詰めることも、世界を破壊することも、愛を与えることも。
 彼にとっては必要な過程に過ぎない。
 ゆえに、慎二に対してVの対応は『優しすぎた』のである。
 Vは本当に、間桐慎二を変えるつもりがあるのだろうか。
 本当に罪を贖えることができると、考えているのだろうか。

 なによりVは、本当に新たなVを必要としているのだろうか。

 すべては仮面の下に、理念という答えを持って隠れていた。







【I-3 海の家/一日目 朝】


【V@Vフォー・ヴェンデッタ】
 [属性]:悪(set)
 [状態]: 健康
 [装備]:バッタラン@バットマン(残弾多数)、レイピア@現実 マインゴーシュ@現実
 [道具]:基本支給品
 [思考・状況]
 基本行動方針:?????
?:慎二を調教し……。
?:なのはの友人(アリサ、すずか)を捜す。


【間桐慎二@Fate/stay night】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]: 刺傷多数(軽)、ダメージ(大)、残虐超人状態、普通心臓破壊、いずれも手当て済み。
 [装備]:ナチス武装親衛隊の将校服@現実、ドクロの徽章付き軍帽@キン肉マン、
 [道具]:基本支給品
 [思考・状況]
 基本行動方針:Vを利用してやる。
1:とりあえずVと行動を共にする。
2:Vにいずれ復讐する。
 [備考]
※普通心臓が破壊された為、徽章を取ると死にます。




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淫妖烏 賊(前編) [[]]
間桐慎二 [[]]


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