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ミッドナイトホラースクール  ◆3VRdoXFH4I





「この事態においてもそんな足手纏いを連れてのうのうと歩いている。相も変わらずの偽善者振りだな」

夜が明ける。
帳は上がり、人の世界に光が満ちる。
1日の始まり。爽やかな陽光が差し込む街中にはしかし、人の姿はなかった。
生の気配がない、沈殿した空間。
それも当然、ここは「実験場」であるからだ。
正しい結果を計るため、確かな成果を得るためには余計な要素は不要だ。
原料と触媒、それにより生ずる化合物こそが研究者の望みなのだから。
正義と悪の正体を。優劣を。是非を問うための試験管。



「――――――蝶野」

フラスコに投げ込まれた素材は、触媒を交えて反応を見せる。
殺し合いという実験場に集められた六〇の生命が、会場のそこかしこに置かれた幾多の施設に引き込まれていく。
そこで起きるのは調和か混沌か。融和か殺戮か。
それを知るのも、また実験の意味。



「……場所を変えよう。言いたいこと、聞きたいことは後で聞く」

「ほう、貴様らしくもない合理的な判断だ。―――まあその顔を見るに酷く頭を冷やされた後のようだが、いいだろう」

では、四人の参加者が集ったこの学校で起きる反応は如何様か。
経過はどうか、その眼で御覧になるといい。


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



休憩を終え民家を出たカズキとすずかはC-1と2の境界にある学校へと向かっている。
カズキの妹であるまひろ、なのはの友人であるなのはとアリサ。
学校という施設は自分達学生にとっては一番馴染みの深い場所だろう。
安全、安心を求めるのならここに向かっているかもしれない。
あまり聡いとは言えない頭なりに考えたカズキの提案にすずかもまた異論もなく進んでいた。
肌を刺すような冷えた―――気温よりも空気そのものが鋭く鋭利な刃物ようだ―――黎明の町は静かに二人を包んでいる。
その足取りは襲撃者を警戒していることを含めても遅いペースだった。その理由は語るまでもなく、月村すずかという少女である。
殺し合いという常に気を張り詰めながらの時間は小学生のすずかには想像だにしない疲労、心労を覚えさせた。
本来なら既に暖かい布団で夢を見ている時分。このまま家で休みつつ歩いていては日が出る頃でも目的地には辿り着けなかっただろう。

「……あの、武藤さん」

だが今はその足取りも軽快だ。その理由もまた、明確。

「どうかした、すずかちゃん?」

すずかは今、カズキに背負われていた。いわゆるオンブというやつである。

見た目よりもずっと大きく感じるカズキの背中にしがみついている姿は身長差もあって旅行用のリュックサックを思わせる。
半身不随なのをいいことに白昼堂々、満員電車、大通り、繁華街をずっとオンブしっぱなしという恥辱で死ねる程の公開処刑を
自分より1つ年上の少女に味あわせた前科のあるカズキだが
幸運というべきか、二回り程年の離れたすずかはそういった念を抱く羽目にはならなかった。
せいぜい見知らぬ人の背中に体を預ける気恥しさと申し訳なさがあるくらいだ。
カズキも、同じように背に負ったかの少女よりもなお軽いすずかの命の重さを噛み締めていた。

「その……大丈夫ですか?武藤さんも疲れて……」

「なんてことないよ。これくらい慣れてるし、すずかちゃん軽いし」

「そう、ですか」

その言葉にすずかは僅かに息を詰まらせる。
慣れている。夜ふかしに対してのではない。それくらいはいずれ誰でも経験することだろう。
傷を負う事、殺し合いという人の命が計りにかけられている状況を経験しているということ。
日常の感覚が麻痺してるわけではなく、なんとなくに出た言葉なのだろう。事実カズキはなにもない日常の世界にいることに幸福を感じている。
自分の知らない裏の世界。知ってはいけない深淵の住人。カズキもまぎれもなくその一面を担っている。
それがカズキを拒絶する理由にはならない。そんな事情を抜きにしてもすずかはカズキの人柄を好いている。
心をざわつかせる場において、初対面でここまで好印象を持たせられる少年というのは人生経験の浅いすずかでも珍しいと思う。
だからこそ、その笑顔に似つかわしくない剣呑な世界に身を置いているカズキが心配だった。
他人のために自分を殺すという意味をすずかは分からない。
分からないが、戦うカズキの姿を想像する時、頼もしさの中に一抹の不安が浮かんでいた。




そうして互いに思うものを秘したまま、二人は『反応』を求められる。
住宅地を抜け山林地帯に差し掛かった所で、カズキの動きが止まる。

「―――ゴメン、すずかちゃん。ちょっと降ろしてもいいかな」

「え?あ、ハイ」

すずかを降ろして正面を見据えるカズキ。
何をしてるか最初は分からなかったすずかだが、自然にその意味が理解できた。
少しずつ耳に伝わっていく足音。露わになってくる輪郭。

前から、誰か来る。

それだけで、すずかの小さな全身が震える。
始めに会ったカズキは優しい人だった。次に会ったのは恐怖が形になったような怪人だった。
前者であるのなら安心できる。だが後者だった場合は……その時の惨状が甦る。
分からないということは、それだけで人を恐怖させる。
同時に、正体が自分を襲うモノだと分かるのが恐ろしいという矛盾。その矛盾にすずかの胸中は苦しめられる。

カズキもまた、身を強張らせている。
それは怯えではなく、戦う意思の備え。
後ろにいるすずかからは見えないが、その顔はまぎれもない戦士の顔をしている。
顔も見えない初対面の人を疑う真似など普段のカズキはしたくない。
だが不幸にも―――あるいは幸運にも―――実験開始間もなく会った男の、あまりの邪悪さがカズキの心を離さない。
誰かを傷付ける相手ならカズキには戦う覚悟がある。
今目の前から来る参加者がそうであるのなら、カズキは前に出なければならない。
どれだけ自分の心身が傷付こうとも、それで誰かを助けられるのなら耐える甲斐があると信じてる。
これから会う人を殺人者と疑う良心の圧責も押し殺し、カズキは左胸に収められた核鉄を握るように拳を固める。



朧げだった輪郭は確かな象を持ちながら近づいてくる。
僅かに昇る太陽が、暗闇に包まれた貌を暴く。
その顔に、カズキとすずかは、お互いに異なる意味で釘付けにされた。

「あ、ようやく誰かがいたよパピヨン君!」

「わめくなヴァンプ、そんなことはさっきから分かってる。ああ、分かってるとも……」

現れた姿は、奇しくもカズキ達同様に二人組みだった。
その内の一人は――――――。



「おーい、ちょっといいですかそこの人~。あ、安心して下さい。僕たちは怪しい者じゃありませんよ。
 ヴァンプっていうんですけど川崎で悪の組織をやっていて……」

創作物染みた造形の頭部。
これもまた一般とはかけ離れた瞳。
ひげ。
たらこくちびる。
どれをどうみても「奇妙」な外見だが、それに反して嫌悪や恐怖の類といった感情は全く湧いてこない。
むしろ親しみすら感じられる、不思議な造形だ。
そしてもう一人は――――――。



「黙ってろといったろう。そもそも自分で悪の組織を名乗る意味が分からん。
 これは俺の見込み違いだったか?……さて、」

前に分けられた黒髪。
色白、というよりも蒼白に近い肌。
だがそんな特徴(パーツ)は全て後回しにするほどに大き過ぎる象徴(シンボル)の、紫色の蝶々仮面(パピヨンマスク)。
そこから覗く眼は、ドブ川が腐ったように、濁った色。

それにつられた、全身像も明らかになっていく。
指先に至るまで引き締まったエレガントボディ。
その彫像の如き肉体に相応しい、セクシャルバイオレットな一張羅。
そしてはちきれんばかりの胸筋と、ビン☆ビンなゴッサムタワー建設地(仮)。

「―――!?!?!?!?!?!」

確認したか否かの前に、反射的にすずかはすぐさま目を覆った。
思春期すら突入しておらず父親と一緒に入浴していてもおかしくはない年齢であるが、
清純お嬢様なすずかにとっては視覚的に衝撃過ぎる光景だった。
乙女の純潔の守護に腐心しているすずかを尻目に、四人の間の空気は未だ張り付いている。
正確に述べるなら、そのうちの二名のみの間でぶつかる視線が火花を散らしている。

「この事態においてもそんな足手纏いを連れてのうのうと歩いている。相も変わらずの偽善者振りだな」



散歩中に曲がり角で顔を合わせたような自然さで、「宿敵」は相まみえる。
それは偶然と呼ぶべき唐突さであり、それでいて何者かの作意―――運命的な邂逅を感じさせる。
真実そうなのか否かは、ここにいる誰もが知り得ないことであるが。
そんな真偽はよそにして、武藤カズキと蝶野攻爵は早過ぎる邂逅を迎えた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



この実験場の西エリアを占める住宅地で僅かに孤立した施設がある。
森に囲まれたその施設は、地図上では「学校」と銘打たれている。
この実験の参加者には比較的学生が多く、カズキの考えもあながち間違いともいえるものではない。
特に、カズキ当人にとってもそこは重要な意味合いのある場所であった。
私立銀成学園高校。
カズキの帰る場所であり、守る場所。
友達が、妹が、多くの人がいる場所。
そこに迫る危険から皆を守るため仲間と突入した矢先にカズキはここに連れて来られた。
細部はともかく、大まかな造りはカズキの記憶と相違ない形状をしている。
最も大きな違いといえば、そこに溢れてる筈の生徒、教師は一人もいないことだ。
夜の学校。肝試しの代名詞。ここにそんな仕掛け(フィクション)はない。
あるのは純粋な恐怖のみ。ただ空気が違うと言うだけで、馴染みのある建物が悪魔の巣窟かというほどの異彩を放っていた。

その屋上に、錬金の戦士とホムンクルスは向かい合っている。
共に不倶戴天の天敵。個人同士にも因縁が生じている間柄。



蝶野攻爵。有数の資産家蝶野家の嫡子にして稀代の天才児。
将来を嘱望され生まれながら、生来の病魔が彼の人生を蝕んだ。
医者に、クラスメイトに、教師に、実の親すらからも見捨てられた「透明な存在」。それがかつての蝶野攻爵という男の立場だった。
地を這う芋虫の如き運命を脱却し華麗なる蝶への進化を夢見て、男は禁断の秘術を学んだ。
曾祖父が残した錬金術の知識。限りない不老不死、人喰いの化物、ホムンクルス。
ほぼ独学でそれを実戦し得たことは、よほど彼の才覚と、生への執着が強かったことが窺える。

武藤カズキ。何の変哲もない高校生として生を受けた男。
攻爵が産み出したホムンクルスと、それを追いに現れた錬金の戦士、津村斗貴子との出会いが、彼を戦いの世界へと巻き込んだ。
潰された心臓の代用に錬金術の粋を集めた超常の合金、核鉄を埋め込まれて新しい命と、新しい力を手にした。
世界の闇を知った彼は、それにも関わらず少女の助けになることを決めた。
誰かを助ける為に体を張れる。力がない頃から武藤カズキはそういう男だった。

新しい命を得る為に他人を犠牲にした男。
新しい命を得た為に他人を守ろうとする男。
二人の奇妙な因縁は、そこから繋がっていくことになる。




「何の感慨も沸かない場所だと思っていたが―――」

手すりに腕をかけ、蝶野―――今は既にその名は捨てたが―――は口を開く。
休み時間の雑談のような気軽さで、何の気もなしに。

「中々いい見晴らしじゃないか。目に障る蟲も、煩わしい雑音もない。」

爽やかな口調の底には、どす黒い感情が煮えたぎり、渦巻いている。
無人の校庭を見下ろす眼の濁りが、一段と強みを増す。

「人のいない学校というものが、これほど心地よいとは思わなかった」

蝶野攻爵だった男は「透明な存在」、誰からも、世界からも必要とされない存在だった。
同様に、蝶野もまた他人を、世界を必要としていない。
ホムンクルス「蝶人・パピヨン」として新生を遂げた彼にとっては、もはや人間にも人間社会にも一切の執着を捨てている。
そんな何の意味も世界、全てまとめて燃やし尽くしてもいいと本気で思っている。

「無人の街に君臨する超人……中々オシャレな響きだな。だがやはりここは―――」

「蝶野」

沈黙していたカズキが声を出す。
その面持ちは神妙にして複雑。

「協力してくれ」

「断る」

即答であった。シークタイムゼロセカンド、脊髄反射の返答だった。

「念のために聞くが、それは単なる意思確認だよな?まさかお前俺が手を取り合って協力しようと頷くと本気で思っていたのか?」

嘲るように、問い詰めるように睨みつける蝶野。
心底見下し、けどそれでいてその言葉に満足してるような表情だ。

「確かに俺を実験体扱いしこんな辛気臭い場所に放り込み、あまつさえ首に鈴まで付けるような奴に尻尾を振る気はない。
 主催者とやらの戯言に付き合ってやる義務もなければ義理もない。そして何より俺自身が気に食わない。
 ああ実験を壊すという点においては頷いてやる。そう言う意味では他の参加者と協力関係を結ぶこともできよう」

蝶野自身この実験に協力、即ち殺し合いに乗るという発想はない。
自分を虚仮にした相手には相応の報復をするのが彼の信条だ。
今言ったように、他の参加者を従え(あくまで自分が上、という解釈だ)主催に反抗するという意思がある。

「だが、だ。ソレとコレとでは話は全くの別。貴様の慈善事業に付き合う気もまた毛頭ない。
 手を取り合う?よりにもよって俺と貴様が?ハッ、そこまでにしておけよ武藤。
 いつから俺と貴様はそんな仲良しな関係になったんだ?」

結末においてこの二人のものは同一ではない。
人を守る、という信念の元に動くカズキと違い蝶野が動く理由は主催を殺す、という点。
守る為と、殺す為。
結果として殺し合いを止めることになるかもしれないが、過程においてこれらは相容れない。

「それに……ある意味ではこの状況は俺にとって都合がいい。
 ここならあのブチマケ女の横槍が入ってくることもない。『決着』の場としてはおあつらえ向けな場所だ」

そして、蝶野にはもう一つ目的がある。ここに来るよりも前に決めていたカズキとの決着。
超人と化した自分を一度殺し、唯一自分を「蝶野攻爵」と呼ぶことを許した男、それが武藤カズキだ。
その時の敗北が、人を越えた彼の心を縛っている。カズキとの決着を付けてこそ、蝶野の心は羽撃たけるのだ。



「蝶野、お前との勝負はちゃんと受ける。けど、それは今じゃない」

それは、カズキもとうに承知している。
自分が切り捨てた命。「偽善者」という名を刻んだ戦いの相手。それが蝶野攻爵だ。
どういう形であれ蝶野との決着を付けるとは既に決めている。
けれどこんな場所で、こうしてる今でも誰かが傷付いてるかもしれないような場所でそちらを先に回すことはできない。

「最後まで他の人には手は出させない。それからこの実験を止めさせる。そして最後に全部終わった後、お前と戦う。

 ―――決着は、後回しだ」

これは、決して譲らない。カズキの根幹たる信念だ。
どれほど強大な力で打ちのめされようとも、身を裂く思いになろうとも、この心だけは砕けない。

「……ハッ。まあいい。どの道今の俺は核鉄を没収された身だ。取り戻すまではお預けにしといてやる」

厳重に保管していたというのに手癖の悪い奴らだ、と残念そうに股間をモゾモゾとまさぐりながら愚痴る蝶野。
一般人が見れば卒倒ものだが、感性という点でカズキも普通ではなかった。

カズキの言葉に、蝶野は破顔する。
全身に行き渡る感情は不快感、蝶野の一番嫌う綺麗事だ。
それなのに、目の前の男が言ったということだけで胸中に満足感のようなものが宿る。

「さあて、と。協力しないと言ったが今は情報が何より惜しい。ここは情報交換といこうじゃないか」

眼の輝きを収め、先の変態モーションが一変し理知的な一面を見せる。
ここでは情報が単純な能力よりも重要となることをいち早く理解している。カズキもそれには同意だった。

「ではまず貴様からだ。ここまでに見たもの、聞いたもの、その肌で直接体感したことを包み隠さず話せ。
 特に、貴様に余計な影を落とさせた奴の事をな」

わざわざ強調させて言ったのはどういう意図だったのか。
本人ですら分からない疑問は、カズキの証言への計算で忘却の彼方へと消えていった。

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「武藤さん……!」

教室に入って来たカズキに気付いたすずかが駆けよってくる。
その顔には心からの喜びと安心が浮かんでいる。それだけでも、カズキは幾分救われた気になった。

「遅かったねパピヨン君。ところでカズキ君とは決着が着いたのかい?」

「今はNGだ。なあに、そう遠い日ではない。じきにカタがつく」

それに続いて顔を出したのは蝶野攻爵ことパピヨン。
一般人の趣向とはかけ離れたエレガント(本人談)なスーツをすずかはまだ直視できず、カズキの背に隠れるように歩いている。
逆に全く物怖じせず実にフレンドリーに話しかけてくるのはフロシャイム幹部ヴァンプ将軍。
悪の組織の幹部という肩書きにカズキ達は面喰ったが、それと全く釣り合わない人のよさにすぐに毒気を抜かれた。
こちらを油断させる演技かと邪推もしたが、そんな考えが馬鹿らしくなるほどにいい人過ぎたのだ。
元々お人好しと言われるカズキは彼を信じ、すずかも僅かな会話でヴァンプに心を開いていた。

「ありがとうヴァンプさん。すずかちゃんと一緒にいてくれて」

蝶野との「話し合い」のためにすずかはヴァンプに一時預け下の教室に待機してもらっていた。
これは自分と蝶野の問題であり、他の人に聞かせることもないだろうという配慮からだっだ。

「いやあそんな大したことはしてないよ。近所の子供ともよく遊んでるし」

「ヴァンプさん、すごくいい人でした……色んな話を聞かせてくれて、すっごく面白かったです」

「ただの世間話だったのに、いやあ照れるなあ」

はっはっはと朗らかな笑顔(?)を見せるヴァンプ。
すずかを落ちつかせ、安心させようと話しかけるその姿勢はまさに主夫の鏡であった。
ヴァンプとしてはサンレッドとフロシャイムとの激闘の記録を語ったつもりでもすずかは漫才のような感覚で聞いていたのだが、
楽しそうに笑ってるしまいっか!ということで納得していた。
本当に、どうしてこの人は悪の組織に入ってるのだろうか。
カズキとすずかの疑問は尽きなかった。



「放送ではここで待つとして、それ以降の行動を俺と武藤で決めておいた。当然貴様らにも従ってもらおう」

からあげのオーロラあえをパクつきながら蝶野はこれからの事を説明する。
カズキと蝶野で決めた今後の行動、結論でいえばやはり別行動だ。
お互いのこれまでの履歴を照らし合わせると、この周囲には他に参加者がいない、ないし少ない可能性が高い。
このまま数を無暗に増やしてフットワークを鈍くするのは下策といえた。
ならば従来通りのペアで別方向に進み情報と仲間を集めた方が効率がいい。
カズキとすずかは南の施設群へ、蝶野とヴァンプは東のコロッセオへ向かう。
合流する時間は三回目の放送前、場所はコロッセオを指定した。
集まる場としても、決着を着ける場としても相応しいと、蝶野は口元を歪める。

「蝶野。約束、ちゃんと守れよ」

「その台詞。一言一句違わず返そう。ただし向こうの方から仕掛けてきたら俺は容赦せんぞ」

先に決めた補足として、二人の間に結んだ決まりがある。
カズキは核鉄を入手し、それを蝶野へ返して決着を着ける。
蝶野はなるべく人を害する真似をせず、戦えない者は保護する。
お互いに納得がいかない部分があるからこその平等な協定だ。

最後に全員の支給品を確認し、あるいは交換し合って、放送までの間は各自自由に動く流れになった。

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カズキは考える。蝶野から伝えられたこの実験における仮説を。
正義と悪の戦い。この実験はその縮図。
まだ少ない情報をやりくりしてでの拙い説だが、カズキの周りの人達から考えてみる。
カズキは正義の味方を自称したことなどないが、人々をホムンクルスから守る錬金の戦士という立ち位置は見る人から見れば正義の味方という呼称はあながち見当違いでもない。
蝶野は結果的として自分の目的のために大勢の人を犠牲にしてきた。その点でなら社会的には悪とみられてもおかしくはない。
すずかはその中で守られる側の人だ。一応の辻褄は合っている。
けど、それだけだ。
HorやSetやIsiなんて関係ない。救える命は救い、戦わざるをえない時は自分が戦う。それでよかった。
蝶野にある点を指摘されるまでは。

『崇高な偽善者振り結構。その精神に免じて俺からひとつ有難い講座をしてやろうじゃないか』

これは実験だ。正義と悪の真偽はどうあれ主催者本人がそう称した以上何かの結果を求めてのこの行動だ。
それぞれの陣営に定められたルールを見れば己ずとその性質も見えてくる。

  • Horは、Setを全て殺すか、Isiを助け、実験終了時まで一人でも生かしておくこと
  • Setは、Horに属する者を皆殺しにすること
  • Isiは、ただ時間内生き残ること

中でもSet、不特定多数の陣営の者を殺せなど実質皆殺しに近い。
見境なく襲いかかるような危険人物もいるかもしれない。そしてカズキは既に「それ」と会っている。
「究極の闇」は、誰に命じられるでもなく目に付く人を滅ぼすだろう。
だが、Setに類するとされる参加者が全員そのような化物だとはいえない。
かつての蝶野攻爵のような、生身の人でありながら容赦なく他人を犠牲にする人が潜んでいる恐れもあるのだ。
その時、武藤カズキはどうするのか。

当然、カズキは助けるつもりだ。カズキは人を殺めることを自分にも他人にも許さない。
命の取捨選択、切り捨てるという行為を忌避している。
「化物」であるが故に、カズキはホムンクルスと戦う覚悟が持てている。
人を逸し、人に戻れず、人を喰う魔物であるからこそその槍を貫くことに躊躇しない。
それも、力のなさで一度蝶野を殺したことにも起因しているのかもしれない。
L.X.Eの信奉者早坂姉弟もその輪から抜けださせることができた。
誰かを助けることを最後まで決してあきらめはしない。

それでも、誰かの命が天秤にかけられた時。そうしようもなくその秤の重りを除かなければいけない時。
その相手が人間でも自分は……………………



「はいどーぞ、カズキ君」

思考に割り込んでくる声で視界を前に戻される。
目の前には、濃厚なソースのかかったからあげ。

「腹が減っては戦はできぬっていうしね。今のうちにお腹を膨らませておかないとね」

目を上にあげればそこにはヴァンプ将軍の顔。
確かにここに来てから六時間、食事らしきものをしていない。
好意に甘えてタッパーから肉をつまみあげる。

「じゃあ、いただきます」

口を開け咀嚼する。
肉のうまみ、衣の食感、ソースがそれを引き立てる。

「……うん、おいしい!」

その味に素直に感想を述べる。
口を動かしている内に嫌な考えも吹き飛んでいた。
そんな最悪の状況にならないように自分が頑張ればいい。
結果自分がどれだけ傷付こうとも、それが誰かを助けることになるなら耐えられる。
隣で微笑む小さな命を見て、そう決めた。

*******************************************



無人の校舎。その屋上。さらにそこで一番高い給水塔の上。そこに妖精は立っていた。
花「蝶」風月。世の美しいものの例え。この光景はそれを全て満たしているといっていいだろう。
―――対象は酷く限定されるかもしれないが。
そんな美の象徴たるパピヨン―――蝶野は静かにもの思いにふける。

彼は天才だ。自負もあるし他者も昔はそう評していた。
誰からも見捨てられ、人を越えた今でもその頭脳は健在だ。
そもそもそれだけの頭脳がなければ独学でホムンクルスの研究を修めることもできはしなかっただろう。
今もこうしてこの実験に関する情報、仮説、対策を幾つも構築している。
他の三人はどれも頭が足りない。ならば一人でいたほうが煩わしさを感じずに思考に没頭できる。

その中で、今彼の興味を持つものがひとつある。

「究極の闇、ね」

カズキから聞いたある怪人が名乗った言葉。
その男は章印もなく、人と動物を融合させた姿に変身したという。
その上で、武装錬金をこともなげに受け止めカズキは完敗に追い込んだ力。
明らかに、一般のホムンクルスとは格が違う。

「……第三の存在、か」

それは、己の曾祖父が遺した「友」の称号。
人ともホムンクルスとも異なる上位の種族。
それに蝶野は興味があった。
カズキと別行動を取るのもひいてはその存在に会う機会があると踏んでのため。
己の宿敵を完膚無く打ちのめした力をこの眼で確かめるのも一興だ。

蝶野攻爵の信念は「不可能を可能とすること」。一人でもより高く、より遠くへと飛び立つことこそを掲げる。
この不完全な超人(ホムンクルス)の体を脱ぎ捨て、更なる高みを目指して翔ぶ。
時を知らせる鐘を待ちつつ、蝶はその時を待ちわびていた。





【C-1、2/私立銀成学園高校:早朝】
【武藤カズキ@武装錬金】
 [属性]:正義(Hor)
 [状態]:右頬に腫れ
 [装備]:すずかのハンカチ
 [道具]:基本支給品一式、不明支給品1~3(確認)
 [思考・状況]
 基本行動方針:救える命は一つでも拾う
 0:放送を待つ
 1:南に向かい、仲間を集める
 2:すずかを守る
 3:ダグバを倒す
 4:まひろのことが心配
 5:setが人間でも誰かを傷つけるなら……?
 [備考]
 ※参戦時期は原作五巻、私立銀成学園高校突入直後。
 ※蝶野と『第三放送前にコロッセオで合流』、『核鉄を入手して蝶野の譲渡する』約束をしました。



【月村すずか@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]:健康
 [装備]:
 [持物]:基本支給品一式、不明支給品1~3(確認)
 [方針/目的]
  基本方針:アリサとなのはと会う
  0:放送を待つ
  1:カズキについていく
  2:置いていかれるのが怖い
  [備考]
 ※参戦時期は未定。



【蝶野攻爵(パピヨン)@武装錬金】
 [属性]:Set(悪)
 [状態]:
 [装備]:蝶々のマスク、蝶ステキな一張羅
 [道具]:基本支給品、不明支給品1~3
 [思考・状況]
 基本行動方針:主催者打倒。その為の仲間集め
 0:放送を待つ
 1:仲間を集めて主催者の打倒
 2:コロッセオへ向かう
 3:武藤カズキとは殺し合いで決着をつける
 4:主催者や自衛の為強力な支給品を探す。核鉄優先
 5:「究極の闇」(ダグバ)に興味
 [備考]
※参戦時期はヴィクター戦前くらいで
 ※カズキと『第三放送前にコロッセオで合流する』、『仕掛けられない限りは無害な参加者は襲わない』約束をしました。



【ヴァンプ将軍@天体戦士サンレッド】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]:
 [装備]:なし
 [道具]:基本支給品、から揚げの入ったタッパー×1、不明支給品2~3
 [思考・状況]
 基本行動方針:主催者打倒の仲間集め
0:放送を待つ
 1:仲間を集めて主催者打倒。サンレッド、かよ子優先
 2:サンレッドと遭遇しだい対決。殺し合いはNG
[備考]から揚げはすべてオーロラ和えにしました

[全体の備考]
全員の支給品を何個か交換しました。具体的な内訳は後の書き手のご自由に。





時系列順で読む


投下順で読む


Hurting Heart 武藤カズキ [[]]
月村すずか [[]]
宿敵 蝶野攻爵 [[]]
ヴァンプ将軍 [[]]












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