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仮面ライダー対プリキュア ジャスティスバトルロワイアルで大冒険! ◆KKid85tGwY




――――女はただ1人を追いかけていた。





1台のバイクが町の中を走っていた。
人の気配の無い町並みに、バイクの走行音だけが木霊する。
そのバイクを運転しているのは、まだ十代前半ほどの年齢の少女。
発育し切っていない肢体には明らかに大きすぎるバイクを、少女はまるで手足のごとく容易く操る。
少女にはバイクの免許はおろか、運転した経験すらない。
しかしその並外れた膂力でバイクを制動し
その並外れた五感で周囲の状況を察知して障害物を避わしていった。
少女は何か超常的な能力を有しているわけではない。
ただ知力や身体能力や五感など、人間が持ちうるあらゆる能力が並外れて優れているだけだ。
それは乗ったことが無いバイクをも、容易に運転できるほどに。

少女の名は我妻由乃。
無人の町を、我が物と言った風情で駆け抜けていく由乃だが
その表情には僅かに焦燥の色が浮かんでいる。
由乃は少しだけ顔を傾けて視線を背後に向ける。
自分を追って来る者の気配は無い。
ひとまず振り切ることはできたと言うことか、あの本郷猛を。

ならばそろそろ逃走に執心するのを止めて、次の行動に移るべきだろう。
現在、由乃の進行方向は西。方位磁針を見なくとも、由乃の方向感覚はそれを完璧に把握していた。
これは目的である天野雪輝が居ると推測された東南の都市とは、逆方向である。
早くそちらに進路を取りたいが、そうすると本郷に見付かる危険が有る。
遠回りになるが大きく迂回する進路を取った方が安全だろう。

(……でも、もうすぐ途中経過のアナウンスがあるんだよね)

由乃の人間離れした精度を誇る体内時計が、6時が近いことを告げている。
放送される内容によっては、書き留めておいた方が良いことも有るだろう。
本郷に追われてからほとんど休憩も取っていないし、他にもやらなければならないことが有る。
一刻も早く雪輝に会いたいという気持ちは何より強い。
しかし焦って不手際を起こせば元も子もない。
ここは放送を聞くついでに、どこかで休憩を取った方が良いと言うのが由乃の下した判断だった。

由乃の駆るバイクはその速さをほとんど変えず、民家と民家の間にある狭い路地に入った。
コンクリート製の民家の壁に挟まれた空間はちょうど陰になっていて、周囲からは一見して様子は伺えない。
しかし路地からは周囲の様子を伺い易い立地であった。
路地のちょうど真ん中辺りでバイクを止めて、由乃はそこから降りる。


そして由乃は待ち切れないと言った様子で、雪輝日記を開いた。
天野雪輝の状況が逐次チェックできる雪輝日記の確認は、最優先事項だ。

『ユッキーが蝙蝠男と下水道にいる。そこで変な女と会ったよ』

ギリ、と大きく音をたてて歯を食い縛る。
自分を差し置いて蝙蝠男がユッキーと一緒に居ることすら許し難いのに、今度は女だって!?
由乃は慌てて続きを読むべく、日記をスクロールする。

『ユッキーと蝙蝠男が別れようとしてる。そんなことしたら変な女と二人きりになっちゃうじゃない!』

ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ
憤怒としか形容できない形相で目を剥く由乃。
女がユッキーと二人きりになるだと?
この女、私が居ない隙にユッキーを懐柔している。
ユッキーを守る役目は私の物なのに。
ユッキーの隣に居て良いのは私だけなのに。
訳の分からない女がユッキーの隣に居て
私はユッキーの傍に居ることも、ユッキーと語らうことも、ユッキーにメールを打つことすらできない!!!

我妻由乃と言う人格の最も主要な構成要素は、間違いなく天野雪輝への思慕だろう。
それは由乃の精神に雪輝が大きな影響を与えていると言う次元ではなく
由乃のあらゆる精神活動の根幹が、天野雪輝で構成されていると言った方が近い。
従って殺し合いという状況で雪輝と引き離され、連絡を絶たれた現在の状況は
由乃に多大なストレスを与え続けていた。
必然的に由乃の精神を常よりさらに不安定な物としていた。
だから些細なことにも激しく心を動かされる。
あるいは由乃にとっては、雪輝の近くに自分以外の女が居ることほど、重大事は無いのかもしれない。

(この女、私からユッキーを奪おうとしているな!? 殺すわよ!!?
 ……殺しちゃえば良いんだわ! ユッキーはIsiなんだから、誰を何人殺しても大丈夫だよね!!
 ここではどれだけ殺しても、警察が動く訳でも無いんだし!)

雪輝に近付く女は殺すと決めたことで、由乃の精神は幾分の安定を取り戻す。
そして日記をしまって路地のアスファルトに座り込み、バックパックから実験の手帳を取り出した。

『あー、私の名前は賀来巌……』

と同時に聞き覚えの無い男の声がする。
これが件のアナウンスなのだろう。由乃の体内時計に1秒の誤差も無かったと証明された。
途中経過のアナウンスと言うことは、雪輝の現時点での生死もこれで判明する形になる。
もっとも由乃は雪輝の生存を露ほども疑ってはいない。
雪輝と結ばれてHAPPY ENDを迎えることが、由乃の中で既に確信し確定しているのだから
それまでの過程で雪輝が死ぬことなどありえない。
はずだが、何故か身体が強張る。
その上を冷たい汗が流れる。
絶対の確信を抱いていても、どこかで分かっているのだろう。
雪輝が死ぬ可能性を。
でなければそもそも無理を押して雪輝を守りに向かう必要が無いのだ。
由乃は矛盾と緊張を抱えて、アナウンスの続きを聞く。

『“テンマ”っ! 貴様っ!』

アナウンスが終了する。


名簿にある退場者として呼ばれた名前の上から線を引き、地図上の禁止エリアに指定された時間を書き込みながら
由乃はパァァと、花のような笑顔を浮かべていた。

(ユッキー生きてた! 凄いよユッキー!!)

有象無象が何人死んだとか、アナウンス中に誰か襲われたとかの些事は無視して
雪輝が生きていた喜びに浸る。
いや、それは本当は喜ぶべきことでは無い。
由乃がこの世に居る限り、雪輝もこの世に存在する。
それは世界の根本原則。
由乃の雪輝に対する愛は、いかなる摂理も超越して2人の未来を約束するのだから。

『私が未来のお嫁さんになってあげる』

あの日の約束は由乃の世界を全て変えた。
「将来の夢」というアンケートに何も書く事がない、夢も希望も無い日々が
雪輝との出会いで夢も、希望も、意味も、光も取り戻した。
由乃の人生はあの日の約束から始まったのだ。

恋する乙女は夢を見る。
想い人と星を見る未来。
そして迎える7月28日のHAPPY ENDを。
夢想だにするだけで至上の幸福に浸れる。
その下でどれだけの屍が築かれようが
そのためにどのような行程を歩こうが
由乃は決して省みない。
由乃が見るのは雪輝との輝かしい未来だけ。
逆に言えばそれほど希望の光が強いのだ。
だからこそ、それは反応した。

「……えっ?」

自身の手元から発せられる強い光に、由乃は珍しく気の抜けた声を上げた。


     ◇


――――男は当ても無く歩いていた。





受難、苦難、苦境、辛酸、艱難辛苦、呼び方は何でも構わない。
およそ生きていく上で、その精神に重荷を背負ったことのない者など居るだろうか。
大切な者の喪失、取り返しの付かない失敗
人はその心に様々な重荷を背負う。
全てが思う通りにいき、何も心に影を落とさない。
そんな人生を送れる者など、そうそう居るはずがないのだ。

とりわけ無人の街を1人歩く、この男にとってはそうだろう。


寂寥感に満ちた風景の中で、男の規則的な足音だけが鳴り響く。
確かな足取りで進む男の瞳には、強い意志の光が宿っている。
そして深い部分にはそれ以上に哀しみの色が。

男の名は本郷猛。
男は“組織”によって五体を切り刻まれ骨を鋼と変えられた。
筋を脈を肉を毛皮を強靭なものに造り変えられ
その体は兵器と成り果てた……。
……それでも男には“魂”だけが残された――……。
組織の名は「SHOCKER」。
そして……始まりの男
「仮面ライダー」。

その体を改造され、しかし脳の改造は免れた男が選んだ生き方
それが人間の自由と平和を守るために、悪と戦う仮面ライダーだ。
人の心を持ちながら人ならざる体となり
なお人を守るために、自らの同胞たる改造人間との血塗られた闘いを続けた。
人間の幸福を全て奪われ、いつ果てるとも知れない孤独な闘争の日々。
しかしその地獄は、本郷が己の意志で選んだ生き方だ。
他にどれほどの選択の余地も無かったやも知れないが
それでも本郷の“魂”が選び取った結果である。
今さら本郷がそれに打ちのめされることは無い。
仮面ライダーを貫くためならば、いかなる地獄の業火にも耐える覚悟だ。
それが自分自身だけの問題ならば。
本郷にとって何より辛いのは、自身の苦痛ではない。
他者の苦痛であり、守るべき者の死である。

あまりにも容易く人が死んでいった。
守れたはずの3人が
更に本郷の知らぬところで9人の尊い命が失われた。
放送で告げられた退場者はおそらく全員が死亡したのだろう。
そして放送の内容に偽りはあるまい。少なくとも脱落者に関しては。
死んだ12人は本郷にとって、今日初めて知った者たちである。
人吉善吉、ヴォルフガング・グリマー、夢原のぞみとも出会って数時間しか経っていないし
他の9人とは面識すらない。
それでもその死は自身の体のいかなる傷より、本郷に痛みを与え
自身のいかなる労苦より重く圧し掛かる。
仮面ライダーが殺し合いの地に存在するにも関わらず、守ることが叶わなかった人たち。
そして善吉、グリマー、のぞみの3人の死は
明らかに本郷の失態が原因なのだ。
3人が殺される直前、殺害犯である由乃を追っていた時
本郷は由乃を捉える寸前で、突如現れた五代雄介に阻まれた。
仮面ライダーは、人間をはるかに超える五感を持つ。
早い段階で、五代の接近に気が付くことはできたはずなのである。
しかし実際は冷静さを欠いていたのだろう。
由乃を追うことに集中するあまり、周囲への警戒を怠った。
仮面ライダー、それも一号である自分は、誰よりも長い戦歴で己を鍛え抜いてきたのではなかったのか。
戦いは常に多勢に無勢。
目に見える敵が1人だとしても予断は禁物。
たとえ予め考えられる限りの想定をしていても、実戦の場では何が起こるか分からない。
だから如何なる状況に陥っても、動じずに応変の対処ができる覚悟をしておかなければならない。
それを誰よりも肝に銘じているはずではなかったのか。
仮面ライダーとしてあるまじき失態。
結果、命という何より重い損失。

それでも本郷の歩みは止まらない。


本郷は未だに仮面ライダー。人間の自由と平和を守ると誓った者だ。
自分の意思と生き方で以って、自分の存在を規定する者だ。
ならば今さら、それを投げ出すことは許されない。
例え戦いにその身を投げ打ち、命を賭けることになっても
死という安息すら許されないのだ。
自分の死に方を決めることすら望めない。
取り返しの付かない失敗。しかし本郷がこれまでに何度それを経験してきたことか、もう数え切れない。
そしてその度に立ち上がってきた。
仮面ライダーを貫くために。
本郷の目的は人間の自由と平和を脅かす悪を倒し、人々を守ること。
それはどこまで行っても変わらない。決して見失われることはない。
この実験に潜む悪を倒し、実験そのものを画策した悪を討ち
そして必ず生きて己の住む世界に帰り、そこでも人類の自由と平和を脅かす悪と戦う。
もはや他に生き方は選べないのだ。
苦難も罪業も全てを背負って、それでも生きるために戦う。
この命を人類の自由と平和を守る戦いに燃やし尽くすために。

歩み続ける本郷の目下の目標は我妻由乃。
本郷は今や由乃が、絶対に生かしては置けない敵である明確に認識している。
由乃が危険人物であることは明らかだし、何より本郷自身の決着を付けねばならない。
仮面ライダーとしても本郷猛としても捨て置くわけには行かない人物だ。
吉良吉影が撮影していたビデオに写っていた、3人を殺した場面。
その手際の良さ、躊躇の無さは、本郷をして戦慄を覚えさせるほどだった。
的確なタイミングで精確に急所を突いて人を殺す。
由乃が見せた非凡な戦闘と、そして殺人の才覚。
本郷の知るどんな怪人も持っていなかった恐るべき武器、それを年若い少女が持っている。
それはショッカーの改造人間やDIOのように、一目で剣呑さを察知できる者が持つより危険性が高い。
由乃はあまりに危険すぎる。放置しておけば、どれほど被害が出るか予想もできないほどだ。
だからこそ由乃を追うことを最優先の行動目的としているのだ。

しかも懸念事項はそれだけではない。
ビデオの中で、由乃はのぞみからピンキーキャッチュを奪い自分の腕に嵌めていた。
のぞみが由乃にプリキュアのことを説明していたのを、本郷は改造された聴覚で耳にしていたが
それによると、あれこそがプリキュアに変身するための鍵となる道具らしい。
のぞみ自身はその挙動から、一般的な女子中学生かそれ以下の身体能力しか持っていないのが伺えた。
しかしのぞみが変身したプリキュアは、仮面ライダーに比肩し得る能力を示した。
もし仮に、由乃がプリキュアに変身したら
あの闘争と殺戮の天才がプリキュアの力を得たら
そこに生まれるのは――――いったいどんな“怪物”だ?


     ◇


パルミエ王国に伝説として伝わる戦士、プリキュア。
その伝説の戦士となるためには、プリキュアに選ばれなくてはならない。
選ばれなくては、どれほど望んでもプリキュアになることはできない。


そして選ばれれば、絶大な力を持つプリキュアに変身することが出来る。

プリキュアに選ばれるためには、ある特定の心の力が必要だ。
あるいは『安らぎ』。あるいは『情熱』。あるいは――『希望』。
そしてこの殺し合いの地においても、プリキュアに選ばれし者が現れた。
誰よりも、強い『希望』を胸に秘めるがゆえに――――。



「あはははははっ! やったよユッキー!! プリキュアに変身できたよ!!」

由乃は両手を水平に上げてクルクルと回っている。
その様はさながら、童女が自分の衣装を両親に見せびらかしているようだった。
桃色と白を基調に全身にフリルをあしらわれた由乃の現在の衣装は
かつて夢原のぞみが変身したのと同一の物。
希望のプリキュア、キュアドリームの姿。

由乃はのぞみからプリキュアの話を聞いていた。
のぞみがどういうつもりだったのか、今となっては分からないが
変身方法やらどんな必殺技を持っているとか、色々説明されていたのである。
だからアナウンスを聞いた直後に、突然ピンキーキャッチュが光出した時もすぐに理解することができた。
自分は選ばれたのだと。

その場でピョンピョン飛び跳ねる。
軽く刎ねたつもりが、羽のように軽い身体が垂直方向へ1メートルは飛び上がった。
しかも片足で着地したのに、ほとんど負荷を感じない。
軽く目前のコンクリート壁を殴ってみる。
まるで発泡スチロールのような手ごたえ。呆気なく壁に穴が開く。
予想をはるかに上回るプリキュアの力に、由乃の笑いは止まらない。

「あはははははっ! 凄いよユッキー! これならユッキーの敵がどんなに強くても、皆やっつけちゃえるね!!!」

プリキュアの力に浮かれながら由乃は思う。
のぞみは馬鹿だ。
プリキュアがこれだけの力を持つのに、何で変身を解いたのかと。
本郷の変身のように怪物の姿になっている訳ではない。
プリキュアのままで居れば死ぬことも無かったかも知れないのだ。

(私はあんな馬鹿とは違う。何を利用しても、どんな手段を使ってでもユッキーを守って上げるから!!)

日記は見た。アナウンスは聞いた。プリキュアに変身できることも確認できた。
そろそろ休憩を切り上げて出発しよう。
問題はいかなる進路を通るかだ。
真っ直ぐ東南に向かう進路は、本郷に見付かる公算が高いから使えない。
幾らプリキュアに変身できたと言っても、本郷の力は脅威だ。
それにもう1体の怪物と組んでいる可能性もある。
可能な限り、本郷は避けるべきだろう。
やはりある程度、迂回する必要がある。
安全を考慮すればここから北に向かい、コロッセオを大きく迂回して南下するルートが考えられる。
しかしそれだと時間が掛かりすぎてしまう。
それと問題になるのがバイクの燃料だ。
バイクの給油タンクの蓋を開け、中を覗き込む。まだそれなりにガソリンは残っているようだ。
しかしさすがの由乃も、バイクに関しては素人なので
残った燃料でどれだけ走れるかの見当は付かない。
バイクの走行距離が分からない以上、あまり長距離となる進路を取る訳にはいかないだろう。


そうなると他に考えられるのは、ある程度南下してから東に向かう進路か。
これなら本郷を避けて、東南の都市へ行ける。
ただ1つ懸念材料は先刻のアナウンスだ。
アナウンスはH-4のテレビ局から放送されたと言っていた。そして危険人物の存在。
内容の真偽は問題ではない
問題はそれを聞いた本郷がテレビ局に進路を取りかねないこと。
そうなればテレビ局の位置的に、由乃の進行方向とも一致する。
しかしこちらはバイクで、向こうは徒歩か護送車しか移動手段がない。
移動速度は違っているのだから、それこそテレビ局に立ち寄らなければ鉢合わせになる公算は小さい。

(……あんまり本郷を意識しすぎてもしょうがないよね)

いずれにしても完全にリスクを回避するのは不可能。
ならば必要以上に煩っても仕方の無いこと。
そもそも真っ直ぐ東南に向かわなければ、本郷に掴まる公算は小さいのだ。
本郷は由乃が何処を目的地としているか知らないのだから
由乃の動向を予測することは不可能――――

(――――違う! 何かを見落としている!)

そこまで思考が進んだところで、由乃の中に強烈な違和感が生まれた。
自分が重大な考え違いをしている予感が。
由乃は違和感の元を自分の思考から探す。

(……あの時、アイツは何時から見ていたんだ?)

思い出されたのは、3人を殺した褒賞を得た後見つけた“ヨンヒキメ”。
あいつはあの時、逃げるように身を翻していた。
逃げようとしていたと言うことは、3人を殺す場面か
少なくとも3人殺しの褒賞を貰った場面は見ていたのだろう。
ならば、その情報が本郷に伝わっている公算が大きい。

(あの時はユッキーの位置を聞かなかったわ……。でも――――)


     ◇


歩み続けていた本郷だったが静かに瞑目する。
失われた命。全ての重みを受け止めるために。
そして力強く目を見開いた。
これ以上無為に省みないために。

命の重みを見失わないのは大事なことだ。
しかしそのために、まだこれから救える命を見失うほど愚かなことは無い。
まだ殺し合いは終わっていない。仮面ライダーの戦いはこれからである。
感傷に浸り、IQ600の頭脳という武器を錆付かせておくわけにはいかない。
現状を的確に分析し、これから何を為すべきかを考えなければならない。
戦いはそこから始まるのだ。

先刻のアナウンスを思い出す。
アナウンスは周囲に反響して音源が特定し難いようになっていたが
改造された本郷の聴覚はその音源が首輪だと捉えていた。
音質やノイズから、室内でマイクを使ってのアナウンスだと分かる。


そして賀来巌と名乗った男。
人は嘘を衝く時には、声のどこかに不自然な淀みや力みが混じる。
しかし本郷がどれほど耳を澄ましても、賀来の声からは虚偽の気配は感じ取れなかった。
主催者から任された定時アナウンスと言う性質を考慮しても
賀来の話した内容に偽りは無いと見ていい。少なくともその主観においては。

問題はテンマの方。
テンマがアナウンスをする直前、何かが壁に叩きつけられた音と賀来の呻き声が聞こえた。
おそらく賀来がテンマに壁まで投げつけられたのだ。
音から察するに賀来は、マイクから5メートルは離れた壁に叩き付けられている。
成人男性をそれだけ投げ飛ばした者が、直後に息も絶え絶えと言った様子で警告を発した。
賀来がテンマの接近に気付けなかったのは些か不自然。
そもそもテンマと言う“敵”が近くに居たのに、賀来からは警戒の様子すら読み取れなかった。
賀来を投げた方法に関しては、この実験内においては
未知の手段の可能性が多すぎるため、判断を保留する。
そして賀来がテンマと名を呼んだタイミングで、マイクの“スイッチを切った”。
バックパックから手帳を取り出し、名簿を見る。
記憶通り『テンマ』と『天馬賢三』と言う、2人のテンマが居る。
何より問題となるのは、テンマの声の奥に宿った底知れぬ悪意。
無辜の人々を落とし入れようと謀る悪と戦い続けてきた仮面ライダーなら、決して見逃さぬ悪意だ。
アナウンスの内容から推測するに、テンマが賀来を
そしてアナウンスを餌に集まる人たちを陥れようと仕組んだのだ。
テンマと言う名前も偽名だろう。

人々に害を為す悪がそこにあるのなら、仮面ライダーは討たねばなるまい。
できるかどうかなど問題ではない。
可能性など度外視し、ただ為すべきことを必ず為し遂げると己に誓う。
それは実験の主催者が相手であろうと、DIOが相手であろうと
由乃が相手であろうと変わらない、仮面ライダーのあり方なのだ。

(……由乃はこれからどう動くか、だ)

考察の対象を由乃に切り替える。
由乃が目的としているのは天野雪輝との合流だろう。
それは3人殺しの褒賞を受ける際、雪輝の位置情報を求めたことから明らかだ。
しかし由乃はその要求を撤回した。
そこから雪輝の位置の見当が、大づかみな形で付いていると推測できる。
ならば地図に記載されている建造物では無いだろう。
それだけ精確に把握しているのなら、位置を聞こうとはしなかったはずだ。
おそらく、もっと粗雑な把握の仕方なのだ。
例えば地形であるとかの。
何によって、そんな把握をしていたのか?
それは由乃が言っていた『雪輝日記のレプリカ』だろう。
雪輝日記と言う名称と由乃の話から、それは雪輝の状況が日記の形で記されるものだと推測できる。
そしてレプリカでは、より粗雑な情報しか得られなかったのだ。

(……その雪輝日記を根拠に、由乃は当初、何処に行こうとしていた?)

本郷は最初に由乃の存在を察知した時のことを思い出す。
善吉、グリマー、のぞみの3人と共に居た時。
まず南下する由乃の足音を捉え
そこから由乃はこちらの隙を窺う動きを見せ始めた。
つまり由乃は当初F-6で、南下しながら目的地に向かっていたことになる。


地図を広げる。
F-6以南で大まかな目当てとなる物があるはずだ。
海、は大きすぎる。
森、は拡散しすぎている。
――――市街地。それも大規模な。
それなら雪輝の周囲の状況描写から、大雑把な推測を立てたのが納得できる。
F-6以南で大規模な市街地となると――――

(由乃が雪輝の居場所と当たりを付けたのは……東南の都市か!)


     ◇


無人の町に騒音を響かせ、由乃はバイクを全力疾走させている。
表情には明確に焦燥が浮かんでいる。
そして自責の色も。

由乃は褒賞を得る際に
雪輝日記の存在
現在自分が所有しているのはそのレプリカであること
雪輝の捜索をしていること
しかし位置情報の優先順位は高くないこと
これだけの情報を流出してしまっていた事実に思い当たった。
無論、これだけの情報では由乃が想定している雪輝の居場所など
未来日記所有者でもなければ、分かるはずが無い。
普通の相手ならば。
しかし相手は、あの本郷猛なのだ。

(アイツはそんな甘いヤツじゃない!! きっとユッキーの居場所に勘付く!!!)

由乃は自分の仕出かした不手際に歯噛みする。
よりによって本郷に、雪輝の居場所を教えてしまっていたのだ。
あまりに手痛い失態。
これを致命傷とせぬために、由乃はバイクのアクセルを吹かす。
選んだ進路は一旦南下して、テレビ局を迂回した後東に向かう物。
それより近道を行けば本郷の異常な五感に捕まる危険が大きいし
それより遠回りをすれば時間が掛かりすぎるとの判断からだ。
もっとも、それすらどこまで安全かは分からないが、もはや熟慮しているような余裕は無い。
何としても本郷より先に雪輝の所へ行かなければ、どんな事態になるか分からないのだ。

(やっぱりアイツは、絶対に殺さないと駄目よ)

由乃が感じた直感はおそらく正しかったのだろう。
やはり本郷は由乃にとって、最大の脅威となる存在だ。
無論、最優先にすべきは雪輝の安全確保。
しかしそれさえ済めば本郷は必ず、確実にどこかで殺さなければならない。
由乃は静かに本郷への殺意を燃やす。

「……!!?」

突然バイクが急停止した。
そして慣性の法則に従って、乗っていた由乃の身体が前に投げ出された。


時速100キロを超える世界での、あまりに突然の出来事に
さすがの由乃も頭から叩きつけられる。

(何だ!? 何が起きた!!?)

プリキュアに変身していたため、負傷も衝撃も受けなかった由乃だが
全く事態が掴めず当惑する。
原因は由乃が乗っていたバイク、バギブソンに課せられた
時速100キロを超えると30秒で急停止し、30分間起動不能となる制限なのだが
由乃はそれを知らない。

(何なんだ一体いぃぃ!!!)

訳の分からない由乃は、右拳で道路のアスファルトに苛立ちをぶつける。
アスファルトは砂糖菓子のごとく、粉々に砕け散った。





歩いている内に本郷の体力は完全に回復していた。
腹の傷も完全にふさがっている。
改造された本郷の肉体は生物の常識を超えた回復力を得ていた。
これならば足を早めても問題は無いだろう。
ちょうど目標も定まったところだ。
しかも、偶然だがこれまでの進行方向と同じくそれは南にあった。

本郷の取る進路はまずテレビ局へ行き、そこでテンマの偽者を倒す。
賀来を助けるのに間に合う蓋然性は薄いが、何もしないまま諦めるつもりなど毛頭ない。
その後東の都市へ向かう。
そして天野雪輝を捜して、どんな人物か確かめる必要が有る。
この進路なら、おそらく由乃の取る進路とも大筋で合致するだろうから
どこかで由乃を掴まえられるかもしれない。
いや、絶対に逃がさないと己に誓う。
由乃は確かに狡猾な相手だ。
あるいはプリキュアと言う、強大な力を得たかも知れない。
それでも本郷は仮面ライダー
しかも最も古い、伝説の一号なのだ。
仮面ライダーは必ず悪に打ち勝つということを、由乃に思い知らせて見せるまでだ。

(俺がこれまで……どれだけ悪の陰謀を打ち砕いてきたと思う。……お前にも思い知らせてやる、我妻由乃)


【G-6/市街地:朝】

【本郷猛@仮面ライダーSPRITS】
[属性]:正義(Hor)
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM92@MONSTER
[道具]:基本支給品一式、支給品1~3(本人確認済)、善吉の首輪
[思考・状況]
基本行動方針:仮面ライダーとして力なき人々を守る
1:H-4のテレビ局に行きテンマ(の偽者)を倒し、賀来を救出する
2:東南の都市へ行き天野雪輝を捜す
3:全ての善を守り、全ての悪を倒す
4:首輪を解析する
[備考]
※参戦時期は次の書き手さんにお任せします

【F-4/市街地:朝】

【我妻由乃@未来日記】
[属性]:その他(Isi)
[状態]:健康、キュアドリームに変身中、強い苛立ち
[装備]:雪輝日記(レプリカ) 剃刀 バギブソン@仮面ライダークウガ コルトパイソン(残弾3/6) ピンキーキャッチュ@Yes!プリキュア5シリーズ
[道具]:基本支給品×4、支給品(確認済み)×2~8 アストロライト液体爆薬入りの小瓶@現実×6 マッチ箱@現地調達
[思考・状況]
基本行動方針:ユッキー(天野雪輝)と共に生き残る。
1:ユッキーを探す。南下してテレビ局を迂回した後、東南の都市へ向かう。残りは愛でカバー!
2:Isiであるユッキーを保護し、ゲーム終了まで安全な場所で守る(雪輝の意思は問わない)
3:邪魔をする人間、ユッキーの敵になりそうな奴は排除する。殺人に忌避はない。特に本郷猛は必ず排除する。
4:最終的にユッキーが生き残るなら自己の命は度外視してもいい。
[備考]
※雪輝日記(レプリカ)
ユッキーこと天野雪輝の未来の行動、状況が逐一書き込まれる携帯電話。
劣化コピーなのでごく近い未来しか記されず、精度はやや粗い。更新頻度が落ちている。
※プリキュアに変身できるかどうかは、後の書き手にお任せします。

【支給品紹介:アストロライト液体爆薬@現実】
常温で液体である爆薬の一種。
爆薬としての威力はそれほど高くないが、安定性が高く不揮発性であるため、爆発力を維持しやすい。
何かにしみこませた状態での爆破も可能であり、上手く使えば建物を倒壊させることも可能だろう。



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幼気 我妻由乃 幸せは歩いてこない だから歩いてゆくんだね
本郷猛 [[]]







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