早合点 ◆2UzNvTAEXA
背後で発生している火災やら、アイビーが遺した変な植物やらは、当然無視した。
松田は、森を出るべく急ぎ走り出す。
松田は、森を出るべく急ぎ走り出す。
――早く、たけるくんの元へ!
殺人を犯した興奮もあってか、急がなければ、という焦りはかなり強い。
巴が守っているとは言え、たけるくんから長く離れることが許されるわけがない。
何しろ、此処はいつ悪人と遭遇してもおかしくない場所なのだ。
巴が守っているとは言え、たけるくんから長く離れることが許されるわけがない。
何しろ、此処はいつ悪人と遭遇してもおかしくない場所なのだ。
……だが、何しろここは森である。
ポイズン・アイビーが死んだため、松田が植物に囚われるようなことは無いものの、
十分に明るいとまでは言えない時間帯で、しかも革靴を履いているから、走るにしては足元の状況は悪かった。
ポイズン・アイビーが死んだため、松田が植物に囚われるようなことは無いものの、
十分に明るいとまでは言えない時間帯で、しかも革靴を履いているから、走るにしては足元の状況は悪かった。
躓いたり滑ったりを幾度か繰り返しつつ、しかし焦る松田は減速することなく森を走る。
そんな風に走っていたから、幾度目かの躓きの際に、彼は本格的に転んでしまった。
しかも転んだ拍子に、右足のすねを木の根にしこたま打ちつけてしまう。
しかも転んだ拍子に、右足のすねを木の根にしこたま打ちつけてしまう。
「った! ……クソ!」
思わず悪態をつきつつ、彼は立ち上がる。
……出血は無いようだし、軽い打撲で済んでいる、と信じたい。
たけるくんが待っているのに、ここで立ち止まるわけにはいかないのだ。
……出血は無いようだし、軽い打撲で済んでいる、と信じたい。
たけるくんが待っているのに、ここで立ち止まるわけにはいかないのだ。
そうして、立ち上がった松田は再度走り始める。
また何度か躓きつつも、彼はどうにかこうにか森を抜けた。
また何度か躓きつつも、彼はどうにかこうにか森を抜けた。
南東方向に建物を認めてからは、脇目も振らずそこに向かった。
誰にも出会うことなく走り続け、E-10の511キンダーハイムに到着。
そこで待っているはずの巴とたけるくんに合流するため、建物の中に入り、
誰にも出会うことなく走り続け、E-10の511キンダーハイムに到着。
そこで待っているはずの巴とたけるくんに合流するため、建物の中に入り、
そこで松田は絶句した。
――――――――――――――――――――――――
「……巴! これは……! いったい何があったんだ!?」
巴のもとにやってきた松田は、かなり興奮した様子で問いを発した。
驚きを帯びた問いかけを受けた巴は、しかし無言のまま答えない。
主人の命令は絶対だが、問いかけに答えて出来事を説明するだけの口は、犬にはない。
主人の命令は絶対だが、問いかけに答えて出来事を説明するだけの口は、犬にはない。
ただ、巴は松田の足元に移動してお座りの姿勢をとった。主人の次の指示を待つためである。
だが巴の視線の先、彼は、アタフタとした様子だ。
軽くパニック状態の主人は、しばらくして再度言葉をひねり出し……
だが巴の視線の先、彼は、アタフタとした様子だ。
軽くパニック状態の主人は、しばらくして再度言葉をひねり出し……
「巴、たけるくんはどこに……、
あ、イヤ!!」
あ、イヤ!!」
何かを思いついたらしい主人は、小さく声を上げた。
少し思考が落ち着いたのか、彼は、その場に軽くしゃがみ込み、そのまま巴の目を見つめる。
少し思考が落ち着いたのか、彼は、その場に軽くしゃがみ込み、そのまま巴の目を見つめる。
「巴。今からお前にいくつか質問する。
質問の、お前の答えが『はい』なら、短く1回吠えてくれ。
……逆に、『いいえ』なら、吠えずに黙っていてくれ」
質問の、お前の答えが『はい』なら、短く1回吠えてくれ。
……逆に、『いいえ』なら、吠えずに黙っていてくれ」
そんな命令を巴に下した彼は、念を押すように質問した。
「……今の命令の内容、理解できてるな?」
もちろん、巴は理解できている。
「ガウッ!」
――――――――――――――――――――――――
我ながら良い方法を思いついたな、と松田は思う。
この方法ならば、犬の巴にも答えられるだろうから。
この方法ならば、犬の巴にも答えられるだろうから。
ここ、511キンダーハイムにいるはずのたけるくんは、しかし何故か消えていた。
土まみれの若い女の子の死体と共に、巴がいるだけの状態。
土まみれの若い女の子の死体と共に、巴がいるだけの状態。
松田がいない間、ここで何かがあったのだ。
松田は、目の前の女の子の死体を見やる。
まさか巴がこの子を殺したのかとも思ったが、それは多分ないだろうとも思う。
パッと見た感じ自殺のようで、しかも、すぐ傍の地面の穴から引きずり出されたようだから。
まさか巴がこの子を殺したのかとも思ったが、それは多分ないだろうとも思う。
パッと見た感じ自殺のようで、しかも、すぐ傍の地面の穴から引きずり出されたようだから。
この子は自殺し、その死体は一旦埋められた。その後、この子は掘り出された。
誰がそうしたのかは、もちろん分からないけども。
誰がそうしたのかは、もちろん分からないけども。
――まさか、たけるくんはこの死体を見て、……怖くなって逃げた?
松田の頭の中で、そんな物語が思い浮かぶ。
「巴。この女の子は、お前がここに来た時には、……もう亡くなっていたのか?」
「ガウッ!」
「お前はこの子を埋めたのか?」
「……」
「じゃあ、掘り出したのはお前か?」
「ガウッ!」
なるほど、と松田は考える。
誰かがこの子の死体を埋め、それを巴が掘り出した。
犬の嗅覚は人のそれよりもかなり鋭い。きっと死体の発する臭いなり何なりに気づき、この子を掘り当てたのだろう。
誰かがこの子の死体を埋め、それを巴が掘り出した。
犬の嗅覚は人のそれよりもかなり鋭い。きっと死体の発する臭いなり何なりに気づき、この子を掘り当てたのだろう。
「……たけるくんは、この死体を見てパニックになったのか?」
「ガウッ!」
松田の想像通りの、巴の返答。
やはりたけるくんはこの死体を見てパニックになり、そして怖くなってここを去ったのだ。
やはりたけるくんはこの死体を見てパニックになり、そして怖くなってここを去ったのだ。
「お前なぁ……」
巴を思わず責めたくなるが、今は何も言うまいと逆に思い直す。
たけるくんに死体を見せるな、なんて命令は出していないし、そもそも巴は犬だ。そんな気遣いは期待できないだろう。
たけるくんに死体を見せるな、なんて命令は出していないし、そもそも巴は犬だ。そんな気遣いは期待できないだろう。
……この時、松田がもし『たけるくんは死体におびえてここを去ったのか?』等と聞いていれば、その後の展開は違っていただろう。
だが、松田は早合点するというミスを犯した。
自分の想像通りのことが起こったと思い込んだから、たけるくんと巴が誰かに襲われたなどと考えもしなかった。
ここは、悪人といつ何時出くわしても不思議でない環境なのだと、自覚しているにも関わらず。
自分の想像通りのことが起こったと思い込んだから、たけるくんと巴が誰かに襲われたなどと考えもしなかった。
ここは、悪人といつ何時出くわしても不思議でない環境なのだと、自覚しているにも関わらず。
「……たけるくんが、どこに行ったか分かるか?」
「ガウッ!」
「本当に分かるんだな?」
「ガウッ!!」
「じゃあ、たけるくんの所へ案内してくれ。たけるくんを保護しに行くんだ」
そう命令し、松田は腰を上げる。
巴は、地面の匂いを嗅ぎながら進み始めていた。
巴は、地面の匂いを嗅ぎながら進み始めていた。
【E-10 511キンダーハイム 庭/一日目・早朝】
【松田桃太@DEATH NOTE】
[属性]:その他(Isi)
[状態]:健康、右足のすねに軽い打撲
[装備]:背広と革靴、コルト・ニューサービス(弾数2/6)@バットマン
[道具]:基本支給品一式*2、ジョーカーベノムガス噴霧器@バットマン、巴の笛@MW、松田桃太の遺言書、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針: 謎を解き、実験を辞めさせ、犯人を捕まえる。
1:キラのような悪は殺害する。
2:巴についていき、たけるくんを保護する。
3:弱者を守る。
[備考] おそらく、月がキラの捜査に加わってから、監禁されていた時期を除く、ヨツバキラとの対決時期までの何れかより参戦。
たけるが、相沢栄子の死体におびえて511キンダーハイムを去ったと思い込んでいます。
【松田桃太@DEATH NOTE】
[属性]:その他(Isi)
[状態]:健康、右足のすねに軽い打撲
[装備]:背広と革靴、コルト・ニューサービス(弾数2/6)@バットマン
[道具]:基本支給品一式*2、ジョーカーベノムガス噴霧器@バットマン、巴の笛@MW、松田桃太の遺言書、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針: 謎を解き、実験を辞めさせ、犯人を捕まえる。
1:キラのような悪は殺害する。
2:巴についていき、たけるくんを保護する。
3:弱者を守る。
[備考] おそらく、月がキラの捜査に加わってから、監禁されていた時期を除く、ヨツバキラとの対決時期までの何れかより参戦。
たけるが、相沢栄子の死体におびえて511キンダーハイムを去ったと思い込んでいます。
※巴が、命令者の質問に答えるようになりました。
質問の答えが『はい』なら一回吠えます。『いいえ』なら吠えません。
質問の答えが『はい』なら一回吠えます。『いいえ』なら吠えません。
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