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未来日記モザイク:Diary■■:隠し砦の三覆面(+α+β) ◆GOn9rNo1ts





『実は私、「正義のヒーロー」というのに憧れてましてね』


平坂黄泉は『正義のヒーロー』である。
子供の頃、ブラウン管越しに『聞く』ヒーローに憧れ、焦がれ、彼はそれを目指した。
自前のスーツやら覆面やらを作り、まずは目先のことからと他の人間を助け続けてきた。

お年寄りの荷物を持ってあげようとすると、強盗に間違われた。
不審者を通報すると、己が不審者に間違われ捕まってしまうこともあった。
街をパトロールすると、幼気な子供から石を投げられるなどいつものことだ。

『正義ナンテネ、絵空事デスヨ』

彼は、次第に昔抱いた情熱を失っていった。胸を燃やす正義の意志は、冷めていった。
自分は正義の味方には向いていない。相応しくない。
善行は身体と心の痛みになって返って来る。いくら努力をしても、報われることなどない。
馬鹿らしい。こんなことをしていられるか。正義なんて糞くらえだ。
そう感じて失意にくれていた、ある日。
彼は、たったの50円で『未来日記』を手に入れた。

世界は、変わった。
彼も、変わった。

彼が常日頃己の正しき行いを吹き込んでいたボイスレコーダー。
それは、謎の少女ムルムルによって改造され、平坂黄泉の『未来日記』へと変貌を遂げた。
名付けて12thの『正義日記』
未来の善行を事細かに伝える夢のようなアイテムは、正義執行の大きな力になってくれた。


7時46分。落ちている空き缶を発見。処理。
8時27分。ゴミ置き場がカラスに荒らされている。処理。
9時54分。財布が道端に落ちている。処理。
10時1分。サラリーマンが信号を無視している。処理。
11時59分。警察官の振りをした悪の手下が襲いかかってきた。処理。
12時3分。正義の呼びかけにより悪の手下は改心した模様。
13時6分。帰宅。ドアに何やら紙が貼られていた。処理。
14時46分。悪の組織を探索。未だ見つからず。
15時14分。御目方教なる教壇の情報を掴む。
16時33分。小学生の虐めを発見。処理。
17時7分。ゲームセンター裏でかつあげが行われていた。処理。
18時51分。帰宅。今日も一日正義執行に精が出た。


流される正義の声に導かれ、流され、黄泉は正義を求め街を彷徨うようになる。
そして、見つけた『悪の組織』
6thこと雨流みねねを追い、捕らえ(黄泉が実行犯だが)拷問に尋問を重ね他の所有者の情報を聞き出し、地下牢に監禁する。
御目方教トップ、『千里眼日記』を持つ春日井椿に、黄泉の『正義日記』は悪を感じ取ったのだ。
彼はありとあらゆる手段を使い、邪悪の教団、御目方教を殲滅しようと試みた。


そして、あの晩。1st、2nd、4thが罠ともしれずにのこのこ御目方教にやって来たその日に、黄泉は仕掛けた。
事細かに仕込んだ催眠術により、6thの殺害を謀ったのだ。
春日井椿のDEAD ENDは覆らないはずだった。
彼の『正義の殲滅作戦』は常人には見破れぬ、完璧な作戦だった。
しかし、ここで誤算が生まれる。どうしようもない誤算が、発生する。
2nd。我妻由乃は、彼の手に余るとびきりの『異常者』だったのだ。
1st、天野雪輝を救うため、由乃は黄泉の作戦悉くを破壊し、黄泉本人にも破滅の運命を与えた。
DEAD END。日記所有者の敗北。死を預言された黄泉は、最後の策を講じ、6th殺害を試みた。
雨流みねねから借り受けた爆弾による特攻。ゴ12thによる撹乱作戦。
正しく、決死。勝とうが負けようが死は免れぬ自爆攻撃。


しかし、それすらも春日井椿には、正確に言えば雪輝を救うため彼の前に立ちはだかった我妻由乃には届かなかった。


平坂黄泉は、敗北し、死んだ。


その筈、だったのだ。




もう一度言おう。
平坂黄泉は正義の味方である。
そして、彼にとって正義とは勝つことである。
正義の味方は必ず、最後には勝利する。彼はそれを信じて、盲信して生きてきた。
ヒーローは、どんなことがあろうとも挫けず、屈せず、勝利をもぎ取るのだ。
だから、一人の悪人を殺すのに何十人を犠牲にしても、彼は気にしない。
何人死のうが不幸になろうが、それは平坂黄泉にとっての悪ではない。
単に、正義執行のための犠牲である。それ以上でも以下でもない。
もしかしたら、平坂黄泉は他日記所有者との殺し合いというシチュエーションによって暴走した、狂ったと言っても良いかもしれない。
確認する術など今となっては存在しないし、確認したところで彼が変わるというわけでもないのだが。



なにはともあれ、平坂黄泉は今夜も己の正義を執行するのだ。



◇ ◇ ◇



『0時31分。女性が何かに追われるかのようにバイクでかけていく。正義の味方として、助けないわけにはいかない』



「あなたでしたか、雨流女史」

「……お前は」

人気のない夜の闇の中、男と女が出会った。
舞台が舞台なら、キャラがキャラなら、互いが一目で恋に落ちるありきたりなシチュエーション。
古くから使い古された舞台設定は、しかしこの場において何の効力も持たなかった。
一人は、豪快にバイクを吹かし眼帯をつけたテロリスト。
一人は、光から隠れるように路地の隅に佇む陰気な男。
更にこの場は、メロドラマとはかけ離れた殺戮のステージだ。
ドラマティックでロマンティックな空気など、二人の間には微塵も存在していなかった。

「まさかとは思ったが、本当にお前とはな」
「私の方こそ驚きました。些か可能性は考えたとはいえ、本当にあなたがいらっしゃるとは」
「私の他に1st、あの狂った2ndもいる。お前がご執心だった6thはいないみてえだけどな」
「それは……残念です。今なら、この場ならば、あの女を殺すのも容易かったでしょうに」
「んで、遺言はそれくらいか?」

眼帯女テロリスト、雨流みねねは油断した風もなく、デイパックからギラリと尖った光を放つ日本刀を抜き放つ。
切り捨て御免。人気のなさも合わさって、時代劇ならばそのままズバッと行くところだ。
だが、男は慌てた様子もなくそれを『聞いて』ゆっくりと話し始めた。

「私の勘が正しければ、ですが、貴方も私と同様、己の未来日記を支給されている。違いますか?」
「……それがどうしたってんだよ」
「貴方の日記、『逃亡日記』には今、どんなことが記載されています?」

みねねは視線をついとずらして、携帯電話に目を向ける。
あれ以降、特に変わった変化はない。逃走経路も単調そのもの。
次の路地を右に行けだとか左に行けだとか、車のナビゲーションのように無機質にみねねが行くべき方向を示し続けている。

「誰がお前に教えるかってんだ」
「今、貴方はこう思ったはずです。この男に関することが日記には書かれていない。
つまり、私は苦もなく逃亡することもなく、この男を殺害することが出来るのだ、と」

悔しいが、当たっている。
逃亡日記は己が生き残る、という一点において恐ろしく高性能だ。
もしも勝てない相手ならば、未来日記はそれを予知し逃走経路を表示する。
つまり、始めから勝ち負けが分かってしまうのだ。
勝てない、殺しきれない相手ならば逃亡日記に従いしっぽを巻いて逃げればよい。

しかし、今回に限っては男に関する記述はない。

それは、みねねが逃亡することもなく、男を殺害できると言うことか。
それとも。

「しかしその考えは外れです。これに、見覚えはありませんか」

みねねがはっと息をのみ、つばをゴクリと飲み込む音を、男は確かに聞いた。

「そう、貴方が所有していた心音爆弾ですよ。
ご丁寧に、主催者はボイスレコーダーで使い方を説明してくれましたから、既に私自身にセットしてあります。
元々は貴方のものだ、威力は身に染みてお分かりでしょう?」

貴方に私は殺せません、と男ははっきりと断言する。
ギリ、と歯を軋ませながらみねねは理解する。
こんな無防備に自分の前に立つということは、この男にもDEAD ENDは立っていないということ。
みねねはこの男を殺さない、と未来日記が予知しているということだ。
ここで、疑問が沸く。自分はこいつに殺されない。こいつは私に殺されない。
逃亡日記に反応は無い。つまり、自分は逃げない。

「しかし、賢い貴方ならば分かるはずだ。逃亡日記が己の役割を果たさない理由を」
「……はん、手を組もう、ってか」


逃亡日記は逃げ道も、DEAD ENDも表していない。
つまり、この男からは逃げる必要がないということ。
それは、男に害意がないということの証明に、なり得る。


「貴方が恐れている何者かは周辺にはいませんよ。いかな暗闇の中でも私の超聴力は誤魔化せません。
これで少しは信頼を得ることが出来れば幸いなのですが、どうでしょう?」
「……逃亡日記に、反応は無い」


なり得てしまう。

非常に面倒なことに。

手を組む?皆殺しを決めた私が、こいつと?
感情的に、納得できない。今は殺せないから手を組もう。なんだそりゃ。
馬鹿にされているようで、ムカつく。この未来を予知した未来日記にも腹が立ってくる。
そんなみねねの気も知らないで、男は楽しそうに話を続けた。


「貴方も私の能力はご存じでしょう。きっとお役に立てるものだと思いますが」
「いつからお前はテロリストの片棒担ぐ悪者になっちまったんだ?
正義の味方、ヒーローの名が泣くぜ、12th」
「巨悪の前にはテロリストなんてかわいいものですよ」
「巨悪だあ?」


「このゲームの主催者、あれは私が倒すべき悪です。共に力を合わせ、悪を倒しましょう!」


「……は?」

イライラ、面倒くささが吹っ飛んだ。
唖然として、向かっ腹が立って、最後には笑いがこみ上げてきた。
面白すぎて涙が出る。馬鹿馬鹿しすぎて腹が捻れる。もう駄目、限界。

「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」
「……何がおかしいのですか」
「何って、そりゃお前のアホさ加減にだよ!」

いかん、こんなのはキャラじゃないと深呼吸。深く吸ってー、吐いてー。
少し気持ちが落ち着いた。良し、行ける行ける。大丈夫。
どうせこいつによれば近辺には人がいないのだ。大声を出しても差し支えあるまい。

「ククク……この反逆の徒、国際テロリストの雨流みねね様がお前に今回のケースをじっくり教えてやるよ」

いいか、とみねねはまだ少し笑いながら人差し指を立てた。

「一つ、主催者はあの神、デウスのゲームに介入することが出来る力の持ち主だ」

二つ、と中指が思いっきり持ち上がる。

「私達は思いのままに拉致させられて、爆弾付きの首輪をいつの間にか嵌められて……しまいに意味の分からんワープさえ体感しちまった」

三つ、と薬指を立てて、力なくみねねは笑う。

「分かるか、主催者はあの未来日記の『レプリカ』を作れちまう程の技術力を持っている」

結論!とやけくそ気味に大声を出してみねねは宣言した。


「殺せるわけねえだろ、主催者なんてよ」


「……正義は勝つ!」
「勝てるわきゃねえだろ現実を見ろおおおおおおおおおおおお!!!」


「そもそもだな、まずこの首輪を外せる人間なんて主催者が用意するわけないだろうが。
あいつは実験といった。お前はマウスの実験にチンパンジーを参加させるか?」
「……力が大きければ大きいほど、その力に溺れ、隙は出来るものでしょう」
「あいつの持つ技術的に考えて、この首輪に盗聴機能くらいはついてそうなもんだが。
隙だらけなのはお前のほうだ。はいお前は反乱分子として首スパーン、短い付き合いだったな12th」
「……私が死んでも正義は死なず!」
「お前、今ここでぶった切ってやろうか?」

ともあれ。

「残念なことに、お前がまだ生きてるってことは主催者の糞野郎はちょっとやそっとでこれを爆発させる気はないらしいな」
「急に糞野郎がつきましたね、女史」
「黙ってろやかましい。だが、それでも首輪に関する、それこそ核心に迫るようなことしたらそこでゲームオーバーだろうな。
主催者は実験がしたいわけであって、別に反乱分子との決戦なんざ望んじゃいねえだろうしよ」

わざわざチーム戦とかいうややこしい真似さえしてんだぜ、とみねね。
つまり、明らかに何らかの結果を求めての実験だと、と男。

「少なくとも、玉入れさせようとしてるのにいきなり棒倒しようぜ!とか言い出して、終いにゃ本当にし始める奴がいたらそいつは一発レッドだろ」
「空気読めてないってレベルじゃないですね」
「お前が言うなよ、変態」

とーにーかーくー、と声を引き延ばして、みねねは言った。

「あの糞外道○○○イカレポンチ□□□主催野郎には、こちとらむかっ腹が立っててグレネードランチャーでも脳天にぶち込んでやりたいところだが」

諦めるように、息を吐く。

「反逆なんざ無理だろ、常識的に考えてよ」

「……言い分は分かりました。それでは、貴方はどうするつもりですか」
「決まってんだろ、糞野郎の掌の上で精々派手に狂喜乱舞してやんのさ」

全員殺しゃ絶対勝てる、とみねねは手に持つ日本刀のようにギラリと目を剥いた。
今までとなんら変わりねえ、とみねねは歪んだ笑みを、その奥の尖った決意を見せつける。
だからお前も、とみねねは敵意と悪意と殺意とを目の前の男に向けて。

「分かりました、それでは主催者を倒すのは諦めましょう」

勢いで、派手にずっこけた。

「あくまでも今は、という話ですよ。もしかしたら奇跡が起こり首輪が外れるかもしれない。
誰かの頑張りによって、主催者に反抗するという夢物語が現実になるかもしれない。
その場合、私は喜んで主催者討伐に参加しましょう。巨悪を滅し邪悪を滅ぼしましょう。
しかし、貴方の話を聞くに『現段階では』明らかに無理そうです。私はそう判断しました。
それならば、まずはこの実験での勝利を目指すまで」

この男にとって正義とは、ヒーローとは、必ずしも『優しさ、慈悲深さ』とは繋がらない。
悪を滅ぼすためならばどんな犠牲も厭わない。守るべき人間が死んだとしても仕方ない。
前に言いましたよね、と男は不気味に微笑んだ。


「正義とは勝つことなのです。負ける正義など、正義であらず」
「狂ってるな、お前」
「さて、どうでしょう。何はともあれ、最初の最初に話を戻しましょうか」


手を組みましょう。


「……私がHor、お前がSet、もしくは逆だとしたらどうするんだ」
「その時はその時です。その時が来てから殺し合えばいい。今は何よりもまず目先の協力を考えるべきでしょう」


みねねは考える。メリットデメリット。その他諸々色々、考えに考えて考え抜く。
まず、この男は通常の千倍の聴力を持っている。
こんな夜、しかも人がいないこの状況では正に人間レーダーとなり得る人材だ。
更に、催眠術とか言う得体の知れない術をかけることも出来るらしい。
裏切りには十分以上に気をつける必要があるが、逆に味方につければ恐ろしく戦略の幅が広がる。

そして、こいつは目が見えない。これを知っているだけで幾つも対処法は頭に浮かんだ。
心音爆弾は元々こちらのものだ。当然対処の仕方など、弱点など、分かり切っている。
しかも、上手く使えばこいつは正に動く爆弾。強者を道連れに出来る駒となり得る。

メリットは大きい。今は無理だが機会を待ち装備を整え、殺そうと思えば殺せるのも良い。
元々どちらも慣れ合う気はないし、変に善人ぶらないのもこの場では高ポイントだ。


しかし、こいつは変態だ。うん、これは大きなデメリットだな。
変態ってのは嫌だなー。こいつを連れ歩いてるだけで周りから
「キャー、変態よ!変態コスプレカップルだわー!」
とか言われるんじゃないだろうか。うわ、嫌だな。こちとら好きで眼帯つけてる訳じゃねえんだぞ。
そもそもこいつの普段着って何なんだ。想像も出来ねえ。
『アレ』を格好いいとか言っちゃう感性の持ち主だから、ぜってえやばげなもんしか持ってないだろ。
まさか普段からあの変態コスチュームで街中を徘徊してるんじゃないだろうな?
……ってか私は何を考えているんだ落ち着け今は殺し合いしてんだぞ。


変態は……嫌だな、やっぱり。


「私に支給されたものをお教えしましょう。正義日記、そして『貴方の爆弾詰め合わせセット』ですよ」


「変 態 上 等 !」


爆弾に釣られた女テロリスト、雨流みねね。
色々かなぐり捨てて、パワーアップである。



◇ ◇ ◇



『1時13分。前方に参加者を確認。正義の潜入工作を行う』



「どうしてこうなった」


平坂黄泉と行動を開始し、一時間足らず。
雨流みねねは今、ゴミに埋もれながらもぞもぞと動いていた。
臭い。ムサい。気持ち悪い。最悪だ。糞。悪態を付きながら。
最早何が何だが区別もできない廃棄物を掻き分け掻き分け、対象に接近していく。
対象。風船のような覆面をかぶり全身タイツに身を包んだ変態。
誠に信じがたいし、信じたところで頭痛に悩まされるだけだが、アレは平坂黄泉の変身姿(変態姿)だ。
あり得ない美的センスである。ああいうのを芸術というのならば、芸術なんて全部吹っ飛ばしてやる。
同盟の証と爆弾をたんまりと頂いたことで出来上がったにやけ面は、とっくの昔に吹っ飛んでいた。

「やっぱりあいつに任せなきゃ良かった……」

事の起こりは更に十数分前。
みねねと黄泉は徒歩で周辺を散策していた。

『バイクなんて使えば私でなくても周りから気付かれてしまうでしょう。
私の耳を信じて、ゆっくり進軍しようじゃありませんか』

理には適っている。そもそもこいつの利用価値の大半は夜間のレーダーなのだから、そのメリットを潰すのは不味い。
しかし、そこから先がいけなかった。最悪だった。

『それじゃ、私はそろそろ本気を出していきますよ』

嫌な予感しかしなかったが、みねねに止める術など無い。
止めたところでこいつは絶対に効かないだろうし、力尽くでいけば最悪二人でドカンだ。
そして……当たってほしくない予感は正しく大当たりした。

『変身〜♪タイツ!』


ああ。


『変身〜♪グローブ!』


もう。


『変身〜♪マ……グギッ、ゲッ、グギギギギ……』


止 め て く れ。


『ドウダイ女史、カッコ良イダロウ……』


変態一丁あがりである。誰も頼んじゃいない。返品させろ。

断じて心がときめいたりはしない、寧ろ生理的嫌悪しか生まれないそのフォームを見るのは二回目だったが、相変わらずの変態ぶりだった。
正義のヒーローというよりは、悪の組織の雑魚戦闘員Bあたりにいそうな格好としか思えない。
罰ゲームだと言わんばかりに顔をしかめるみねねだったが、残念ながらというべきか幸運というべきか、黄泉は全盲である。
先ほどまでとは打って変わってのキ○ガイ染みたノリで歩を進める黄泉を、みねねは一瞬本気で殺っちまおうかとすら考えた。

事態は悪化の一途をたどる。


『ムッ、コレハ……』

黄泉の未来日記に加えられた新たな記述。
更に黄泉本人もいくつかの音を感じ取り、いよいよ他参加者との遭遇が近づいてきた。
道中、みねねと黄泉が考えていた幾つかのプランの内、人数、歩幅の大きさ云々から『正義の潜入作戦』が実行される。

『マズハ、私ガコノ魅力テキナ戦闘スーツニヨリ他ノサンカシャノハートヲキャッチ!
殺シ合イに消極テキトミラレルグループニ潜入シ、情報ヲエル』

『その間、私は気付かれないよう近くに潜み、殺せる奴は殺していく』

『私ノ催眠術ニヨッテ上手ク事ヲハコブコトモ出来レバ、戦力ゾウキョウ情報カクトク勝利ヘト近ヅクトイウワケダ!』

最も、みねねはこの作戦にあまり乗り気ではなかったのだが。

『なあ、もっと派手にドカンと行かないのかよ。今ならみねね様お得意の品も手に入ったんだぜ』
『考エタマエ、女史。ドウ考エテモ我々ガコノ場ニイル全員ヲ殺スノハ、効率ガ悪イ。
モチロン、チーム戦トイウ事ヲ考慮シテ、様々ナ人間ガドンナチーム分ケヲサレテイルノカ考エテイルダロウ。
我々ガ狙ウノハ情報ダ。単ナル力押シデハナク、誰ヲ殺セバ良イノカ、誰ト協力デキルノカヲ知ルコトガ勝利ヘノ近道トナルダロウ。
マッタク、コンナコトモ考エラレナイトハ、女史ハヤハリイエローノポジションダナ』

説教された。変態に。変態に。変態に!
思わず手榴弾でも投げつけたくなったみねねだが、押さえる。
イエローってなんだ私は別にカレー好きじゃないぞとか突っ込みたくなったが、押さえる。
この男のいうことにも一理以上のものがあると、みねねは理解していた。

その格好やら正義馬鹿やらで、誤解されやすいことであるが。
平坂黄泉は、決して単純脳足りんな馬鹿ではない。
むしろ、彼は慎重で狡猾で冷酷な男なのである。
VS御目方教壇における用意周到さなど、正義の味方などではなく知能犯に近い思考回路を持つ。
平坂黄泉がもしも、正義馬鹿でなく真面目に日記所有者のゲームに取り組んでいたならば。
もしかするとだいぶ良い線に行っていたのではないか、と思えるほどには有能な男だ。

『サア、ソロソロダ。女史ハドコカニ潜ンデ、私ノ雄志ヲ目ニ焼キ付ケルガ良イ』



上手くいかなかった。主に黄泉のせいで。



そもそもの第一段階目(信頼を得る)から失敗し(当たり前だ馬鹿)みねねは半ば黄泉を見捨てようかとさえ考えた。
爆弾はたんまりといただいたし、執着しすぎて自分まで危険な目にあっては元も子もない。
しかし、黄泉を襲撃した男達(お前らも覆面かよ!)は残念ながら彼を始末する気などないようだった。

(こりゃ見捨てるのは不味いな……もしあいつが私のことをゲロったらこれから動きにくくなる)

みねねのスタイルは主に爆弾による待ち伏せ奇襲戦法だ。
気付かれる前に設置して、気付かれる前に爆殺する。それがテロリスト雨流みねね本来のやり方である。
当然ながら、それがばれると相手に警戒され、殺すことが困難になる。
黄泉の言うとおり、確かに不特定が相手のチーム戦において情報は生命線となり得る。
1stを仕留めきれなかった以上、更なる情報の漏洩は避けたかった。
平坂黄泉は見捨てられたと分かると容易に掌を返し、向こうの奴らと組む可能性がある。
本当に最悪の場合、黄泉だけは殺しておかなければ。


(ま、今んとこその心配はなさげだな)


今自分が取るべき最良の手は、あの廃車置き場に屯している男達の殺害だ。
逃亡日記は反応しない、つまり向こうの男達に気付かれている訳ではなさそうだ。
平坂黄泉の潜入作戦とやらは失敗に終わったようだし、憂いなく……ぶっ放せる。
これまでに設置した仕込みは上々。近くにあったのが工場ということもあって、ここはみねねに好都合な殺戮場だ。
タイミングは、やはり平坂黄泉の覚醒後であろうか。
賢い黄泉のことだ、こちらの動きを察知し陽動やら何やらに動いてくれるかもしれないし。
もし、万が一、黄泉が信頼を得ることが出来れば、あの男達からたんまり情報やら利益やらを得てから殺すことが出来る。
全ては黄泉次第。あの変態頼みとなるのは頭が痛いが、悔やんだところでもう遅い。


(そうさ、もう遅いんだよ。誰だろうと私の邪魔をするやつは、殺す。
例えガキだろうと女だろうと、殺す。殺す。殺す。みねね様に後悔の二文字は必要ねえ。
この世界は弱肉強食。喰わなきゃ喰われる。私はずっとそうやって生きてきたんだ)


それでも。
幼い金髪の少女、アリサ・バニングスを見るみねねの眼は。
どこか沈んで、濁って、澱んでいるようだった。



【H-10/ゴミ処理場 廃車置き場/一日目 深夜】


【雨流みねね@未来日記】
 [属性]:悪(set)
 [状態]:健康、参戦前に左目を失明
 [装備]:日本刀
 [道具]:基本支給品一式、みねねの逃亡日記のレプリカ、不明支給品0〜1(火器、爆薬を除く)
     雨流みねねの爆弾セット(大量)@未来日記
 [思考・状況]
 基本行動方針:基本は皆殺しで勝ち狙い。殺せる相手は殺し、厄介ならば逃げる。逃亡日記の記述には基本従う。宗教関係者は優先して殺す。
        黄泉の言うとおり、少しは情報収集にも努める(?)
 1:黄泉とタイミングを測り、工場内の参加者の殺害。
 2:黒衣の男は敵と認識。
3:黄泉も機を見て殺す。出来れば強者と道連れにしたい。

【平坂黄泉@未来日記】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]: 気絶、頭にたんこぶ、腰に軽傷
 [装備]:変態的ヒーローコスチューム、心音爆弾@未来日記
 [道具]:基本支給品一式、黄泉の正義日記のレプリカ@未来日記、雨流みねねの爆弾セット(微量)
 [思考・状況]
 基本行動方針:ヒーローらしく行動することで、正義の潜入工作を成功させる。
1:気絶中……
2:ひとまずみねねと組み、このゲームにおける『勝利』を目指す。

※雨流みねねによって近辺に爆弾(?)の仕込みが行われました、どんなものかは次の書き手にお任せ。



時系列順で読む


投下順で読む


CHILDHOOD'S END 雨流みねね それぞれの信じるモノ
隠し砦の三覆面(+α) 平坂黄泉







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