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Forest Of The Red(後編)    ◆CMd1jz6iP2



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パンドラ。
ハーデスの姉の役目にして、冥王軍を纏める者。
しかし、彼女の人生は不幸の連続であった。
その幼少時代、彼女は幸せな人生を信じていた。
世界はバラ色で、永遠に光に満ちているものだと。
しかし、それは「母親の胎内にいた弟が消える」という異常をキッカケに崩れ去った。

人生とは、一瞬の不幸が起こるかどうかで、幸せではなくなる。
バットマンが、その幼少時代に両親を失ったように。
天野雪輝が、神をめぐる闘いの末に、両親を失ったように。
衛宮士郎が、大火災で全てを失ったように。
テンマが、親友と闘う宿命を負ったように。
本郷猛が、ショッカーに改造されたように。
蝶野攻爵が、病魔を患ったために、人間の超越を考えたように。
DIOですら、母が死に、父が人間のクズでなければ、違う人生もあったであろう。

では、パンドラの今の状態を語ろう。
海藻巻いてパンツ一丁、しかもお子様サイズのかわいいパンツ。

これは不幸か、まぁ不幸であろうが、笑い話の類である。
触手陵辱の末に心臓を潰されたり、ゴッサムタワーを建設するのに比べれば全然である。
だがしかし、だがしかしである。

「な、なんなのだっ、この森は!!」
不幸とは、連鎖するものでもあるのだ。

パンドラの現状更新。
海藻=喪失。
大事な杖=喪失。
パンツ=健在。
現状詳細=森内部……ツタに絡まり逆さ吊りで手ブラ。

「まったく……何が掛かったかと思えば」
その様子を、下から眺める、植物の愛好者、アイビー。
森への侵入者を感知し、来てみればヒョコヒョコ歩くストリークイーン。
あっさりとツタを絡ませた拍子に杖を落とし、無力化に成功したのだった。

「ゴッサムにも、色々いるけど……ここまでストレートな痴女も珍しいわね」
「何ぃ!? 誰が痴女だ! 貴様、この私にこのような恥辱を……万死で済むと思うなッ!!」
ツタを千切る勢いで、体を震わせるパンドラ。
「ツタが痛むでしょ。やめなきゃ……」
新たに伸びてきたツタが、パンドラのパンツの端に絡み、ゆっくりと引っ張り出す。


「ナァ!? キ、キサマ、やめろ千切れる!! さ、最後の生命線を奪うつもりかぁ!!」
「それが嫌なら大人しくしなさい。まったく、テンマたちの方がよっぽど大人しかったわ……」
「テンマ……だと!?」
その名に、パンドラの表情が変わる。
「あら、知り合い……というには、怖い顔じゃない」
「テンマはどこだ! あいつは、私が殺さねばならない!」
その言語に、アイビーは自分とバットマンの関係を思い浮かべた。
「(それとも、ジョーカーとバットマンの方が近いかしらね)
もう居ないわ。今頃、森を抜けてるはずよ」
「ならば、こんな奇怪な森に要はない! 今離せば、この一刻はその生命を見逃してやっても良いぞ!」
パンドラの態度に、アイビーはストレスの溜まる一方だ。
別に我慢する必要はなく、殺してやればいい。
だが、それをたけるは嫌がるだろうことを考えると、少しその決断が鈍る。

そんな時——
「えっ!?」
森の中心で起きている異常に、アイビーが気づいたのは、そんな時だった。
「なっ、なんだ?」
アイビーの様子にパンドラも気が付き、訝しげに眺める。
すると、まるでパンドラのことなど眼中がないようにアイビーは森の奥へ走り去ってしまった。
「ま、待てキサマ! このツタをどうにかし……アーッ!?」
もがいた途端、あっさりとツタが解け、地面へとパンドラの体が落下する。

「ぐっは、っ〜〜〜〜お、おのれぇぇ……!」
勢いより尻から落ち、痛みと屈辱に震えるパンドラ。
「ぬう、おのれ奇怪な肌をした女め……! だが、テンマの奴が森を抜けたとなれば……」
杖を拾い、怒りに震えるが、テンマを追うことの重要度が圧倒的に上。
「次に会った時が最後だ。今はせいぜい、その生命を謳歌しておくがいい!」
捨て台詞を吐くも、ほぼ全裸なこともあり締まらない。
ヒョコヒョコと、情けない姿を晒しながらパンドラは森を後にするのだった。

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「ああ……なんてことなの!? どうしてこんなことに!」
走り続け、目的の中心部に戻ったアイビー。
そこに広がる光景は、僅か前とは完全に異なっていた。
緑生い茂る植物たちが、悶え苦しんでいる……赤く染まって。
植物に取って、最大の敵である炎が、中心部を飲み込んでいたのだ。
鬱蒼とした森は、秒刻みで燃え広がり、その範囲を広げていく。
「なんとか火を消さないと、この子たちが……この、子……た、たける!?」
思い出した。植物を偏愛するアイビーとしては、むしろ思い出しただけ素晴らしい変化ともいえた。
この中心部には……たけるがいるはずなのだ。

「たける、返事をして! みんな、たけるを、たけるを見つけて!」
植物を操ろうとするアイビー。だが、炎に包まれようとしている植物たちは、そのコントロールを失っていた。
人間や動物で言えば、恐慌状態。アイビーとて、この場に長く居たいと感じない。


「ああ、たける……もう、今頃は……」
「アイビー!!」
悲しみに沈むアイビーの耳に、誰かの声が聞こえる。たけるではなかった。
「その声……マッティー?」
声のする方角から駆けてくるのは、数時間前に別れたばかりの松田だった。

「良かった、アイビーに怪我がないかと心配だったんだよ!」
「ええ、ありがとうマッティー……そうだわ」
アイビーは、良い方法を思いついた。
「マッティー、大変なの! たけるがこの炎の中に取り残されてしまって……お願い、助けてあげて!!」
「そりゃ大変だ! 任せてくれ、アイビー!」
何の迷いもなく、炎の中に飛び込んでいく松田。
その姿を見て、ほくそ笑み……しかし、すぐに表情を暗くする。
「ああ、でも生きているとは思えないわ……とにかく、火の勢いを止める方法を考えないと」
たけるの身を案じながら、アイビーは火の手の上がっていない方面へと身を翻す。


パンッ、パンッ


「……?」
地面が、アイビーに向かって迫ってくる。
「あ……なにこ、れ……?」
「……君が、子どもだけは大切にしていることは、良くわかったよ、愛しのアイビー」
その背後から、足音が聞こえる。ゆっくりと近づいてくる。
「……マ……ティー……」
「でも残念だ。君が、キラと同類の人間であることが」
松田が、そこに立っていた。硝煙の匂いを纏う、拳銃を片手に。

「彼に言われて、少し考えたけど、ようやくわかったよ」
アイビーは気がついた。
「粧裕ちゃんを好きか、なんてわからないけど……少なくとも、君を好きになる理由なんて、ないはずなんだ」
自分のフェロモンの効果が……切れている。
「君は、キラと同じだ! 人の行動を操って、その命を自分の目的に利用しようとした!!」
「人間……みんなそうでしょ。自分の為に、誰か、を利用して、る……植物も、動、物も……人間、さえ、も……」
そして、自分の状態にも気がついた。撃たれたのだ、拳銃で。

「それは否定しない……だけど、その力は、死神の力と同じ、人には過ぎた力だ!」
ぼやける視界が、松田の目を捉える。
そこに映るものは……恐怖。
「操られてわかった……キラが、なんて恐ろしい犯罪者なのか……それに類するお前も、同じ……殺すしか無い、悪魔だ!」
「ひとつだけ……聞かせて。たけ、る……たけるは、無事なの……まさか、殺したの……?」
拳銃を突きつけたまま、松田はその答えを教える。


「……無事だ。今、巴が森の外へと運んでいる」
「そう……それで、安心したわ!!」
突如、松田の体が宙に舞う。
アイビーは、コントロールできたツタで松田の足を絡めとったのだ。
「(生きていることがわかれば、もう用はないわ、マッティー!)」
重い体を動かし、松田へトドメを刺すべくツタを操作するアイビー。

カチャ
鈍い金属音に、アイビーは顔を上げる。
松田は、前回と異なり、未だアイビーへの照準を外してはいなかった。
逆さ吊りのまま、その銃口はアイビーへと向けられたまま。

パンッ
乾いた音が耳に届いたと同時に、その脳天の、穴が空いていた。
「(ああ……でも。アサイラムの無機質な部屋よりも……森で死ねることは幸福なのよ、ね……)」
最期に、愛する植物の胸の中で逝けることを、まだ幸せなのかもと。
しかし、僅かに残されたたけるの事を考え……その思考は、永遠に霧散した。

「ハァ、ハァ……う、オェ……!」
松田は、燃える森から逃れながら、嗚咽していた。
キラに匹敵する犯罪者とはいえ、殺人を犯してしまったことに。
「いや、違う……正しいんだ! これは、正義……僕は正義を執行したんだ!!」
今まで、キラ事件は同僚や世間の死を受けながらも、自分には及ばない世界での出来事だった。
しかし、アイビーに操られたことで、キラ事件での被害者たちへの共感を松田に与えてしまった。

被害者たちとの違いは、それが生死に関わったか否か。
「殺すしか、ないんだ! あんな恐ろしい力を持った奴は、殺すしか……人を守る方法はない!」
Lは頼れる探偵だ。月くんも、もちろん……だが、それがここで何の役に立つ?
首輪を外す、なんてことをやっている内に、人はたくさん死んでいく。
今、なにより力を持つのは……この拳銃でしかないのだ。
「いや、それでも頼りない。……結果は同じなら、これも使うか……」
笑いガス噴霧器……毒ガスによる殺人なんて、考えただけでも非道であり、実行などしたくない。
だが、それが悪なら構わない、と松田は思いを変えた。
操られた恐怖を、人々を守るという使命感……正義漢にすり替えて。

「待っていてくれ、粧裕ちゃん、たけるくん……僕が、君たちを守って見せる!!」
そう決意し、松田は走る。
既に逃がしてある、たけるが待つ場所。

511キンダーハイムへと。

【ポイズンアイビー@バットマン 死亡】

【D-9 森(火災)/一日目・深夜】
【松田桃太@DEATH NOTE】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]:健康
 [装備]:背広と革靴、コルト・ニューサービス(弾数2/6)@バットマン
 [道具]:基本支給品一式*2、ジョーカーベノムガス噴霧器@バットマン、巴の笛@MW、松田桃太の遺言書、不明支給品1〜3
 [思考・状況]
 基本行動方針: 謎を解き、実験を辞めさせ、犯人を捕まえる。
 1:キラのような悪は殺害する。
 2:たける、巴と511キンダーハイムで合流
 3:弱者を守る。
 [備考] おそらく、月がキラの捜査に加わってから、監禁されていた時期を除く、ヨツバキラとの対決時期までの何れかより参戦。

※D-9の森中心部で、火災が発生しています。

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ところで、何故森は燃えたのか。
松田が燃やした、わけではない。
森に火をつけたのは——たけるである。

話は、冒頭の荷物を探るたけるへと戻る。


「うわー、なんだろうこれ! カッコイイなぁ!」
出てきたのは、黄金色の篭手だった。
腕にはめてみるが、たけるには大きくブカブカであった。
「あ、でもこういうのって、アニメとかで観たことあるなぁ。こう、隙間から剣とかがズバーッって……」
漫画や特撮で、ヒーローがそうするように、何かを斬るように振り下ろしてみる。
すると、それは実現した。

ザシュ!
「えっ……う、うわぁ!!」
思ったとおり、篭手からは剣が飛び出していた。
しかし、それはたけるの思うような玩具ではなく本物。更に言えば、それは炎を纏う剣だった。

かつて、バットマンはヴィランの一人、ヴェノムによって半身不随に陥ったことがある。
その間、二代目のバットマンとして戦った、アズラエルという人物がいた。
結局、バットマンの職務に押しつぶされ、暴走を始めてしまうのだが……その人物の武器こそ、このガントレット。
オーバーテクノロジーで作成された、伸縮自在の炎を纏う刃である。

そんなものだとは知らないたけるの目の前で、炎は繭に燃え移り、瞬く間に広がっていく。


「う、うわぁ! 大変だ、早く、早く消さないと!!」
篭手を閉まっても、炎は消えない。
周りの植物が苦しむように暴れだすが、たけるには炎を消す手段がない。
「どうしよう、どうしよう! アイビー姉ちゃんが大好きな植物が燃えちゃうよ!!」
半狂乱になるたける。その耳に、犬の鳴き声らしき声が聞こえる。
「君……こ、これはいったい!?」
「あ……兄ちゃんは……」
そこにいたのは、松田と、その犬、巴だった。

「に、兄ちゃん、ごめんなさい! ひ、火が、バーって燃え広がって、それで……」
「君がやったのか……大丈夫、気にしなくてもいい。今すぐ、たける君を助けてあげるからね」
松田は、たけるの頭を撫で……そのまま流れるような動作で、その襟首を絞めた。
「うっ」
たけるは、一瞬呻き声を上げ……そのまま、気を失った。
「……子どもに、殺人の現場なんて見せるわけにはいかないからな」
気絶したたけるを、巴の背に乗せる。

松田は、承太郎との会話の後、疑問に襲われた。

——なぜ、自分はこんなにアイビーを愛しているのか、と。

そして、徐々に不安が増すにつれ、フェロモンの効果は急速に薄れ———
自分の意思が操られていることに気づき、この地に戻ってきたのだった。

「いいか、511キンダーハイムへ行くんだ。そこで、たける君を守っているんだ。
僕以外の人間がたけるくんに近くにいたら、必ず遠ざけるんだぞ」
巴に命令し、笛を吹き行動を実行させた。

そうして、松田はアイビーを仕留めるチャンスを得るため、一時その場を離れた。
そして、その望みは成功するのだった。

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「うう……ん?」
僅かな頭痛と共に、たけるは意識を取り戻した。
「ここ、どこ?」
目の前には、森とは縁遠そうな施設。
一体自分はどうしてしまったのか、たけるが考えていると……
ザクッ、ザクッと、視角になって見えない場所から音が聞こえた。
「誰かいるのー?」
テクテクと、その音の方角へと進んでいくたける。
徐々に、音の現場に近づいていく……そこには、犬がいた。
「あっ、この犬って……松田の兄ちゃんの?」
巴は、たけるを気にする様子もなく、地面を掘っている。
「どうしたの? 骨でも埋ま、て……」
無邪気なたけるの声が、凍る。

地面をある程度掘った巴は、土の中から何かを力強く引っ張り出す。
引き出されるにつれ、付着した砂や泥が落ち……現れたのは。
「ねー……ちゃん?」
目を閉じたまま、動かない姉。
力尽くで引っ張られても、何一つ文句の声もない。
ドンドンたけるから、姉を引き離そうと巴が引っ張っていく。

「たけるの近くの人間を遠ざけるんだ」
その、命令を忠実に守るために、生死問わず人間をたけるから離すために。
「う、うわあああああ!!」
大声を上げ、姉の体を、巴と反対側に引っ張る。
「離せ、離してよー! わぁっ!」
巴とたけるの力では、巴の方が上。
そのため、たけるは引き摺られ、倒れてしまった。
その姿に、たけるを守るという命令を違反すると思ったのか、巴は口を離す。
少しでも犬から離れるため、その——体温のない——手を引っ張り、その体を引き釣りながら建物の中へと避難するたける。

「姉ちゃん、大丈夫!? 姉ちゃん、姉ちゃんってば!」
いくら揺さぶっても、その体は反応を示さない。
頬をたたこうと、悪口を言おうと、その反応は返ってこない。
「ねえ……っちゃんってばぁ……」
ポロリと、涙がこぼれ、もう止まらない。
怪我などでも、病気などでもないと、認めてしまった。
「う……うわぁぁぁぁん!!」
もう、姉は死んでしまったのだ、と。
後ろから、巴がやってきても気にもせず。
たけるは、姉の遺骸にすがり、泣き続けた——

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「ひ、酷い森だった……この姿ではまるで歩けぬ……」

森で撤退をしていたパンドラ。
テンマを探しながら歩いて行くと、なにやら施設が見えてきた。
「ふむ……寒いし、とりあえず中に入るか」
服が見つかるかもしれない、と期待も込めて中に入る。

「うわぁぁぁぁん!!」
「くっ!?」
突然の声に、パンドラは警戒を強める。
だが、よく考えれば今のは子どもの、しかも泣き声。
その方角へと向かい、ゆっくりと歩みを進める。
「姉ちゃん、目を開けてよ、姉ちゃんーー!!
そっと部屋を覗くと、そこには倒れている人物……否、死体に泣き叫ぶ少年の姿があった。
「(墓場では感じなかった、本当の死……あれは、死者の弟、か……)」
姉の死に、泣き叫ぶ子ども……ああ、とパンドラの脳裏に過去のトラウマがよぎる。
「(生まれるはずだった弟か妹……それが母の体より消えた時……あの時の私も、あのように泣いたな……)」
一瞬、生まれた感情をかき消し、杖を構え部屋に踏み入る。

「ガウッ!!」
「ハァッ!!」
侵入者に気が付き、跳びかかる巴。
それに対し、杖より放つ雷を放つパンドラ。
「ギャイン!!」
「ひっ……!?」
僅かな閃光の直後、壁に叩きつけられた巴は、ビクンビクンと跳ね、動かなくなった。

「うっく……姉ちゃん、誰……?」
「……そこに転がっているのは、貴様の姉か?」
質問には答えず、逆に質問してきたパンドラに、たけるは弱々しく首を縦に振る。
「ふっ……恐怖に絶え切れず、弟を残し自殺か……流石は人間、罪深い生き物……」
「姉ちゃんは……しない」
パンドラの言葉に、たけるは小さく言葉を発する。
「……なんだ?」
「姉ちゃんは、自殺なんてするもんか!!」
ボロボロと涙をこぼし、叫ぶたける。
その姿に、パンドラも僅かに狼狽える。

「ふ、まぁたしかに凶器も見当たらんところを見ると、殺されたのかもしれんが……いや、確かに妙、だな」
死体に首輪がついていないこと、凶器がないこと。
これは、殺害後に誰かがここに来たことを示している。
さらに、その死体の表情が、パンドラは気に入らなかった。

「随分に楽しげに死んでいるではないか……」
「……死んじゃったのに、楽しくもなんともないよ……」
死体は、笑顔だった。
まるで、死ぬことに安らぎを得たかのように。
そして、パンドラにはそれに相応しい言葉が浮かんでいた。

「……救済、か」
アローン。ハーデス様を押し込め、冥王軍を救済と称して全滅させた真なる邪悪。
あいつは言った。死は断罪ではなく、救済。すべての人を救わなくてはならない、と。
この死に様は、まるでそれを体現しているかのようで、パンドラにとって気に食わないどころではない。
「(まさか……アローンが、参加者に? いや、それはない……だとすれば、つまり……)」

———アローンのような人間が、参加者にいる?

その推測はパンドラにとって許せるものではなかった。


「……ん? なんだ、これは」
パンドラは、床に何か煌く物を見つけた。
何か、細長い……毛。
パンドラの物ではなく、たけるの物でもなく、倒れた犬の物でもない。

———金色の、見覚えのある、髪の毛。

「フ……クハハハハハハ!!」
突然、狂ったように笑うパンドラに、たけるは身をすくませる。
「ク、ハハ……おい、小僧……名をなんという?」
「え、と……相沢たける、だよ」
「———たけるよ、私はお前を殺す」
突然の殺害予告に、たけるはそれも仕方ないか……という思いが過ぎっていた。
姉が死に、それに着いて行っても良いのではないか、と。

「……だがな、それは後にしておこう。金髪の女を殺すまでは、な」
その言葉に、目をパチクリさせるたける。
「どうやら、キサマの姉の仇と、私の敵は共通しているようだ」
この髪の毛は、間違いなくあの船を沈め、パンドラを罠に嵌めた者と同一だった。
テンマを、そして杳馬への憎しみと同等までに、あの女への怒りは高まっていた。

「どうせ、人間すべてが最後には断罪すべき存在。か細い首をへし折ることなど容易い。
ならば、キサマの姉殺しの女への断罪を見続け、それを冥界での語り部となるべく見届けさせるのも一興」
そう言い、たけるに向かって手を伸ばす。
「二度は言わぬ。私に着いてくるがいい、たける」
「う、うん……」
有無を言わせぬ口調に、手を伸ばすたける。
「ええと、ひとつだけ、いい? ええと……」
「パンドラだ。くだらない質問はするな」
「パンドラ姉ちゃん、あのね……」
意を決して、たけるは口を開く。

「———前くらい、隠したほうがいいよ?」


数分後、そこには全裸の、否、かわいいパンツのパンドラ様は居なかった。
そこにいたのは、漆黒の蝙蝠。
「フフフ、気に入ったぞたける。先程の無礼はこれで許してやっても良い」
たけるの支給品を全て奪い、その中から念願の服を見つけていた。
それは、バットガールのコスチューム。ただしマスクは装着していない。
漆黒のボンテージに身を包んだパンドラは、甚くご満悦だった。

——それが、正義の味方の服だと知れば、酷く怒っていただろうが。


「なら、殴んなくてもいいのにさ……」
頭にたんこぶを作ったたけるがボヤく。
「ふむ、この炎の魔剣も素晴らしいではないか」
炎の剣を出し入れしている様子に、アイビーの事を思い出すたける。
今頃、怒っているのではないだろうか、怪我をしているのではないだろうか。
どちらにせよ、パンドラに着いていくと約束したのだから、戻ることは出来ない。

そして……
「姉ちゃん……ごめん、ちょっと待っててね」
悲痛な顔で、たけるは姉に別れを言う。
それが、自分が死ぬことを待てということか、埋めたりすることを意味しているのか、たける自身にもわからない。
「……行くぞ。あの女は墓地の方角にいるはずだ」
その別れを待っていたかのように、パンドラは外へと歩き出す。

『———たけるを、弟を、よろしく』

「なんだ、なにか言ったか?」
パンドラは振り向くが、たけるはキョトンと首を傾げている。
「……なんでもない、早く着いて来い」
早足で歩くパンドラを、小走りでたけるは後を追う。

もう数刻で、日の出。
その時、死を告げる放送に、幼き少年は何を思うのだろうか。

【E-9 平地(511キンダーハイム付近)/一日目・早朝】

【パンドラ@聖闘士星矢 冥王神話】
[属性]:悪(set)
[状態]:健康、上機嫌、バットガールスタイル
[装備]:パンドラの杖、アズラエルの篭手@バットマン、バットガールのコスチューム(マスク以外)@バットマン
[持物]:基本支給品、フェイトちゃんのぱんつ@魔法少女リリカルなのは、バットガールのマスク@バットマン
[方針/目的]
  基本方針:実験を勝ち抜き、主催者をハーデスの名の下に断罪する  
  1:金髪の女を探すため、墓地の方へ戻る。
  2:テンマと杳馬を探しだして殺す
  3:他の参加者も発見次第殺す
  4:たけるは金髪の女を殺す姿を見せた後に殺す予定
【相沢たける@侵略! イカ娘】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]:健康、深い悲しみ
 [装備]:特になし
 [道具]:基本支給品一式、ハーレイ&アイビーのDVDとバッテリー付き再生機セット
 [思考・状況]
 基本行動方針:パンドラ姉ちゃんについていく
 1:姉ちゃん……
 2:アイビー姉ちゃんはどうしたかな……

※バットガールのコスチューム
バットマンの仲間の一人、バットガールのコスチューム。
何代目かによって、多少異なるが、漆黒のボディラインの判るスーツ。

※アズラエルの篭手
復讐の天使アズラエルの武器である、黄金色の篭手。中から伸縮自在の炎をまとった刃が飛び出す。
本来両手に装着されているが、片手分の篭手しかない。


パンドラたちが、511キンダーハイムを去って少し後。
巴は、ムクリと起き上がった。
パンドラの雷が本来の威力でなかったために、その心臓がしばらく止まっていただけだったのだ。
たけるが居ないことに気が付き、その行方も臭いでわかっていた。
しかし、松田の命令で511キンダーハイムから離れることはできなかった。
巴は待つ、現在の主人である松田を。
そこに感情もなにもなく、まるで機械のように、忠実に入り口に立つのだった。


※巴は、命令があるまで511キンダーハイムで待機します。
その際、命令者以外の敵対行為には攻撃します。



時系列順で読む


投下順で読む


Angel Heart テンマ 聖闘士として
藤村大河 聖闘士として
ポイズン・アイビー 死亡
相沢たける [[]]
〜悪意は極力隠すこと、それが……〜大宇宙の真理 パンドラ [[]]
この世界に反逆を開始せよ 松田桃太 早合点
空条承太郎 [[]]






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