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ほほえみの爆弾  ◆GOn9rNo1ts氏


早朝の町は、ひっそりと静まりかえっていた。
公園に小さな影はなく、ブランコが風に揺られてギイ、ギイと呻き声を漏らしている。
八百屋も肉屋も服屋も本屋も居酒屋も雑貨店も、全ての店が灯りをという明かりを消して、無言の営業拒否を行っている。
いつもは人で溢れるスーパーマーケットが、今は沈黙のバーゲンセールを押し売り中だ。時刻は午前4時を回ったところ。季節によってはうっすらと太陽が姿を現すその時間。
しかし、人が全くと言っていいほど見えない。
日課としてジョギングを行う青年がいない。
店の開店準備に取りかかる親父がいない。
盆栽に水をやる爺も見えない。
人っ子一人おらず、という様相を呈していた町並みに、特異点が存在した。

知る人ぞ知ると言わんばかりに、隅っこにぽつりと存在するカフェである。

「黒神、出来たぞ」

厨房というにはあまりにもお粗末な店の奥から、一人の少年が姿を現す。
男にとって褒め言葉か不名誉か分からない「エプロン姿が似合う」彼は、衛宮士郎。
カウンター席に腰を据えていた美少女が「ああ」とそれに応じて立ち上がる。
何処かの制服を着崩し、目のやり場に困る出で立ちの彼女は、黒神めだか。
二人の「正義の味方」が、カフェに陣取っていた。

「すまないな、衛宮上級生。それでは、参ろうか」
「参るって……これはどうするんだよ」

少し眉間に皺を寄せながら、士郎は手に持つ皿、正確に言うとその上に乗った固形物をずい、と突き出す。
食べないのか、と不満を表しながら差し出したのは、今日の朝食。
真っ白な生地の中身はハム、トマト、レタス、卵。お決まりの組み合わせだ。
60°×3の正三角形という調和的な形が、黒神めだかに差し出される。

「衛宮上級生、貴様はサンドウィッチが作られた際の逸話を知っているか?」
「あれだろ、トランプしながらでも食べられるようにとかなんとか」
「トランプしながら食べられるのならば、歩きながらでも食べられると言うことだ」

デイパックの中に入っていた食料は、味気のない物ばかりだった。
小麦粉の固まりみたいなパンでは、とても食が進むとは思えない。
かといって腹が減っては戦は出来ぬ。ついでに、空腹はイライラの元にもなると聞く。
先程のちょっとした衝突も、こんな所に拉致されたストレスから相手に辛く当たってしまったのかもしれない。
そう考え、親睦を深める意味合いも込めて「どうせならここで何か食べていこう」と申し出た衛宮士郎に黒神めだかが頼んだものが、サンドウィッチ。
作るのに手間は要らず、また食べるのも簡単なそれを、めだかは所望したのだ。
疲労の抜けないめだかを労る士郎の心遣いを無碍にせず、尚かつ一番時間のかからない料理。

(それって、「本当は必要ないけど先輩の顔を立てた」ってことか?)

「…………衛宮上級生、どうした?
先程の状況を鑑みるに、事態はあまり楽観視していられない状況だ。
今も、何処かで誰かが誰かに襲われているかもしれない。
バットマンなる人物を捜しながら、他の参加者とも合流しなければ。
貴様も、知り合いと合流するのは早いほうが良いだろう……手遅れになる前に」
「……あ、ああ。そうだな。今行くよ」

サンドウィッチを片手に颯爽と呼び鈴を鳴らし外に出て行くめだかを見つつ、士郎はふとそんなことを考えた。
めだかは「優等生」を見慣れている士郎から見ても、あまりにも「完璧」すぎる。
そのことを全く鼻にもかけないことを含め、彼女は素晴らしい人間だ。
素晴らしすぎるが故に、その善性が空恐ろしい。
こんな状況に置いてさえ、人殺しを良しとせず、助けられる命を全て助けようとして。
めだかの命を脅かしている相手のことさえ、自分に殺させないように気を配っている。
彼女は、あの道化の男が死にそうな目に遭っていたら、迷わず身体を張って助けようとするだろう。
道化だけではなく、誰彼構わず目に付いた者を助けられる限り助けようとするに違いない。

いつか、彼女は酷い目を見る。

今の状況を差し引きしても、士郎はそう思わずにはいられなかった。
己の歪みが、黒神めだかと似通っているものだと気付くことはないまま。



◇ ◇ ◇



そして、かいぶつは動き出す。
静かに、ゆっくりと音も立てずに。
全ては、「最後の風景」を見せるために。
全ては、「完全なる自殺」のために。
かいぶつは、己の目に映るものすべてを呑み込もうとする。
かいぶつは、己を目に映したものすべてを食らいつくそうとする。

かいぶつの意志とは関係なく、世界とはそう言う風に作られているのだから。



◇ ◇ ◇



「なるほど、それで貴方は天馬賢三を探していると」
「……ええ。天馬先生も、きっと殺し合いなんて望んではいないはずです」

衛宮士郎と黒神めだかが出発してから、更に時間は進み。
微弱な陽光が窓の外から漏れ出て、椅子やテーブルが静かに客を待っている状態の、その場所。
所変わらず、またしてもカフェテリアに彼らは居残っていた。いや、戻ってきたというのが正しいか。
前回と違い、今回は一人、外国人女性をパーティーに加えて。

「ニナさん、でしたっけ。もう大丈夫なんですか?」
「ええ、すいません。私なんかのためにお時間をとらせてしまって」

カフェを出て、すぐに二人はニナ・フォルトナーという女性に出会った。
金髪に儚げな瞳。男なら思わず心拍数を上げる、整った顔立ち(マスク)。
しかし二人が出会った時、彼女の顔は青白く、今にも泣き出しそうなほど歪んでいた。

『どうした、大丈夫か!』
『怖い……怖い……来ないで来ないで来ないで』

出会った当初、彼女は酷く怯えているようだった。
そんな人を見過ごせるわけがない、という意見は二人の正義の味方にとっても共通のもの。
まずは彼女を落ち着ける為に、カフェで話をしようということとなった。
女性であるめだかがニナから話を聞き、その間に士郎はニナの分の朝ご飯を作る。
三つ目のサンドウィッチを皿にのせた士郎がやって来る頃には、ニナも落ち着き大体話は付いていたようだった。

「昆虫と人が融合したような化け物と金髪長身の男が殺し合い、昆虫男が少年を盾にして逃げた、か……」

信じて頂かなくても構いません、という始まりからニナは己がこの地に来てからの経験を包み隠さずめだかに打ち明けた。
ここより北の森から、一人きりで寂しさを押さえながら南下してきたこと。
その途中、二人(一人と一匹?)の殺し合いを物陰から目撃したこと。
結果として昆虫男はその場に居合わせてしまった少年を盾にとり、逃げていったこと。
凄惨な殺し合いを見てしまったため恐くて、残った金髪の男に助けを請おうとすることも出来なかったこと。
殺し合いという現実を実感したことにより、恐くて恐くてたまらなくなったこと。
ここまで来たは良いが、歩き通しの身体にも恐怖に捕らわれた精神にも限界が来てしまったこと。
めだかや士郎と言った良い人達に会えて、漸く一息つくことが出来たこと。

「その少年の容姿などに、目立ったものはありませんでしたか?」
「なにぶん暗かったもので……学校の制服のようなものを着ていることは分かりましたが……」
「ふむ、そうですか」

しかし、その情報だけでも士郎とめだかの心を揺さぶるには十分だった。
黒神めだかの知り合い、人吉善吉。
彼女の二歳からの幼なじみであり、黒神めだかを心配してくれる数少ないクラスメート。
めだかがデレを見せる数少ない人物であり、彼女曰く「私にとって必要な人間」
衛宮士郎の知り合い、間桐慎二。
士郎も所属していた弓道部の副主将であり、聖杯戦争のマスターでもある。
性格に少々難があるものの、士郎にとっては「そんな悪い奴じゃない」幼なじみ。
攫われた少年がどちらかだという可能性は、決して低いものではない。
彼女の話を聞く限りでは、昆虫男が少年に害を加える可能性は、高いと言うことも。
めだかも士郎も、互いの知り合いを脳裏に思い浮かべ、焦りを募らせながら思案に暮れる。

「どうする、黒神」
「ふむ……」

無論、士郎もめだかもその昆虫男を追い、少年を助けることを第一目的としたいのは同じだ。
昆虫男は多くの人間をも苦しめるだろうし、少年の安否は最優先で確認すべきだろう。
しかし、そいつを追うにはあまりにも情報は少なく、何処から手をつけて良いのか分からない。
ニナは混乱していたせいで昆虫男がどの方向に行ったかなど思い出せないし、男はバイクのような乗り物を使ったという。
少なくとも、一筋縄で捕捉できる相手ではないだろう。今から探し、放送までに見つけられるとは限らない。
加えて、ニナは落ち着いたとはいえ疲れが色濃く残っており、無理な強行軍は彼女を苦しめると考えられる。
めだかにも士郎にも、「ニナを置いて昆虫男を探しに行く」という選択肢は端から持ち合わせていない。
また、めだかは目を離すとジョーカーを殺しに行きかねない士郎を見張るため。
士郎は、単純に女の子一人を危険な目に遭わせないため。
どちらかが残ってどちらかが探索に行くという選択も無しだ。
見知らぬ誰かのために生まれてきた、と公言して憚らない黒神めだか。
弱き者を一人でも救うために正義の味方を目指している衛宮士郎。


「……もうすぐ放送だ、やはりもう少し時間をおいてから動いた方が良いであろうな」
「俺も同意見だ。闇雲に動いても失敗するのは身に染みてるからな」


二人の「セイギノミカタ」がニナ・フォルトナーという弱者を見捨てることは、決してない。
それは彼らの矜持でもあり、生き方でもあり、人生そのものの縮図でもあった。
衛宮士郎が、衛宮士郎であるために。
黒神めだかが、黒神めだかであるために。
彼らは、大切な人間を助けに向かうことよりもここに残ることを選択した。
苦渋の選択だったが、それが現段階ではベストであると言うことを信じて。


それが、ベストどころかワースト。下手をすれば、マイナス。
少なくとも、一方にとっては笑えるほどの悲劇の前章となることに、二人は気付くことはなかったが。
気付けるはずも、ないのだけど。


「あの……」


仕方ない、と椅子に座り溜息をつく士郎と。
あくまでも毅然とした態度を崩さず、士郎が出した紅茶を飲んでいるめだかに向かい。
ニナ・フォルトナーはデイパックから何の気無しに。


「良かったらどうぞ。私だけが貰ってばかりだと悪いので……」


ウイスキーボンボンを、取り出したのだった。


差し出した腕は、雪のように白く、繊細で。
彼女の微笑みは、善意に満ちあふれた天使のようだった。


【E-6/市街・カフェテリア:早朝】


【黒神めだか@めだかボックス】
 [属性]:正義(Hor)
 [状態]:健康
 [装備]:
 [道具]:基本支給品、不明支給品1~3
 [思考・状況]
 基本行動方針:殺し合いを止める
 1:衛宮上級生、ニナ・フォルトナーと行動を共にする
 2:ジョーカーを殺させない
 3:バットマンを探す
 4:衛宮上級生に不快感
 5:昆虫男と少年のその後が気になる。
 [備考]
 ※第37箱にて、宗像形と別れた直後からの参戦です。
 ※ジョーカーの持つ装置により、「ロックオン」されているため、現在地他多くの情報が筒抜けになっていますが、本人は気付いていません。
 ※ジョーカーの持つ装置により、「ロックオン」されているため、1kmの範囲内では、ジョーカーによって電撃、または首輪の爆発をさせられる、と聞かされています。



【衛宮士郎@Fate/stay night】
 [属性]:正義(Hor)
 [状態]:健康
 [装備]:
 [道具]:基本支給品、不明支給品1~3
 [思考・状況]
 基本行動方針:殺し合いを止める
 1:めだか、ニナと行動を共にする
 2:めだかの回復を待つ
 3:バットマンを探す
 4:ジョーカーを生かしてはおけない
  5:昆虫男と少年のその後が気になる。

[備考]
 ※参戦時期は後続の書き手さんにお任せします。

E-6の、何処か。
そこは人気がない路地裏だったかもしれないし、とある店の入り口だったかもしれない。
民家のダイニングルームだったかもしれないし、公衆便所の中だったかもしれない。

もしくは、もしかしたら。
隅っこにぽつんと建っている、一軒のカフェテリアの中だったかもしれない。

とにかく、その何処かに。


『落書き』は、存在した。


落書きの周りには、うち捨てられた二つのデイパックと、地図やら乾パンなどが放置されている。
最も。
地図はシュレッダーにかけられたかのように破滅的に散り散りとなっており、読めるものではなく。
乾パンはその中身にぬちゃりとした赤い液体を詰め込まれ、とても食べられるものではなかったが。

他にも色々転がっていたり放置されていたりしたが、その中でも一際目をひくのは、やはり落書きそのものであった。


『みてみて!』


赤黒い液体によって描かれた、それらの文字列は。


『ぼくのなかのかいぶつは』


意味不明で、意図不明で、理解不能で。


『まだまだおおきくなってるよ!』


無邪気なストリートチルドレンが暇潰しに描いたようで。

趣味の悪い悪魔が遺した、意思表示のようでもあった。


【E-6/市街・カフェテリア:早朝】


【ヨハン・リーベルト@MONSTER】
 [属性]:悪(Set)
 [状態]:疲労(中)
 [装備]:ニナへの女装グッズ@MONSTER、S&W/M37チーフス スペシャル@未来日記
 [持物]:基本支給品、不明支給品1〜3(内訳:粧裕1〜3、自分0〜1)、ウィスキーボンボン(?)
 [方針/目的]
  基本方針:『完全なる自殺』
  1:Dr.テンマかニナに自分を殺してもらい、『終わりの風景』を見せる。
  2:自分を知ったもの全ての抹殺(DIOのみ例外)。
  3:DIOと再会したらまた指をツンツンする
  4:士郎とめだかに関しては……?
[備考]
 ※参戦時期はフランツ・ボナパルタを殺した直後(原作最終巻)。


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理性と感情の差異 黒神めだか 正義の味方 ‐Crime avenger‐(前編)
衛宮士郎
〜悪意は極力隠すこと、それが……〜大宇宙の真理 ヨハン・リーベルト






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