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GAME START!(実験開始)



真っ暗な闇の中、無数の影が蠢いていた。

おっかなびっくりといった感じで静かに辺りを見回す影。
微動だにせず顎に手を当て、「考える人」となっている影。
何かを探すようにそこら中を動き回っているスリムな影。
数々の反応をとっているが、全ての影に共通する事は一つ。

それらは、いや彼らは人の形をとっていた。

ここはどこだ。
お前は誰だ。
何故こんなことに。
責任者出てこい。

影達は次第に感情を爆発させ、歪な合唱が創られる。
怒号、叫び、悲鳴、疑問、要求。
吐き出される全ての感情には負の要素しか込められていない。
当然だろう、彼らは「拉致された」人間なのだから。

がやがや、ざわざわ、初めは黙っていた者も他の者に呼応してか声を荒げ始める。
その合唱がピークに達そうとした次の瞬間、一つの変化が起きた。

『おめでとう、諸君』

どこからともなく、全方位から聞こえてくる声。
明らかな合成音声。男か女か子供か老人か、素性を隠す機械音。
しかし、心の機微に長けている者が聞けば一つの事実だけは分かっただろう。
その声は、愉悦に富んでいる。愉しみに、悦びに満ちているものだと。


『くどいようだがもう一度言おう。おめでとう諸君!
君達は数億数兆の中から選ばれたんだ、こんな幸運は他にはないよ?
さあ、皆で喜ぼう、万歳をしよう、君達は《世界》を獲得する権利を得た!』


芝居がかった台詞に続いて漏れ出る笑い声。
アハハハハハハハハハハハハハハハ。狂笑が響き渡る。拍手が聞こえる。
続いてパンパカパーンとファンファーレが鳴る。
赤、緑、青、水色、黄色。上から色とりどりの紙吹雪が思い思いに舞い落ちる。
そして最後に……沈黙が残った。

『……あれ、滑っちゃった?』

誰も笑わない。笑えるはずもない。
説明も無しに喜べるほど、今の状況は良いとは言えない。
それに気付いたのか、声の主は咳払いを二、三して話を再開した。

『失礼、私だけが盛り上がってしまって、いやはや恥ずかしい限りだ。
なに、単純なことだよ。君達は《自分が望む世界》を得ることが出来ると言うことさ。
もっと簡単に説明すると、こういう事だ』

瞬間、影達の前にそれは現れた。
百を超える映像が次々と虚空から沸き出し、再生される。
暗闇に慣れた影達にはいささか刺激の強い色彩が画面の中から届けられた。
色はあり、音もある。無いのはそれを映している映像機器のみ。
SFか、はたまた魔法か、いずれにせよ超常現象であることは疑い得ない。
だが、それは確かな現実として固定され目の前に現れた。


そして、それらの画面に映った映像は……。


『幸せそうだろう?楽しそうだろう?つまり、そういうことだ。
君達は自分の望む幸せを得ることが出来るんだよ。良かったねぇ』

友達と笑顔で昼食を食べている、何処にでもいそうな少女。
バックに数千を超える兵士を引き連れ、我が物顔で行軍している武将。
何処かの舞台で観客から惜しみない拍手を贈られている女性。
ベッドの上でグラスマスな雌の肢体と絡み合っている中性的な少年。

いる場所もやっていることも大きく差があるが、中心にいる者達は本当に幸せそうだった。
向日葵のように笑い、獣のように雄叫びを挙げ、エールを浴びて涙ぐみ、雌の柔らかさに興奮し、生の躍動で彩られている。
この瞬間が人生の絶頂期だと言われても信じてしまいそうな、そんな映像。
その他の映像にも、似たような正の感情が画面から漏れ出ていた。
これこそが《望む世界》《夢の国》《極楽浄土》
連れてこられた者の内、幾人かは既に喜色を顕わにしている。
しかし、別の数人かは相変わらず、いや、もしかすると以前よりも険しい表情でモニターを凝視している。
それを知ってか知らずか、声の主はここでアメと鞭を入れ替えた。

『君達には権利が与えられた。勘のいい人は気付いてるかも知れないけど権利には義務がつきものだ。
……さて、本題に入ろう。君達は選ばれたと言ったがそれはあくまでも第一次選考の話でね。
今から第二次選考に入る。第二次選考は……所謂、チーム戦だ』




『君達には、今から殺し合いをしてもらう』




映像が、切り替わる。



《望む世界》で進軍していた武将が、《バトルロワイヤル》で剛健な大男を切り捨てている。
《夢の国》で男優とキスシーンを繰り広げていた女性が、《バトルロワイヤル》で他の女性を絞殺している。
《極楽浄土》で腰を振っていた少年が、《バトルロワイヤル》で年端もいかぬ子供を狂気の笑みで嬲っている。




閉じられた世界で起こった一瞬の沈黙。
その沈黙に抗するように、映された幾多もの《世界》は声を大きくした。
《参加者》達が得た感情は驚きだったか、納得だったか、それ以外の何かだったか。
そんな彼らに些かの注意も払わずに声の主は説明を続ける。
楽しそうに。嬉しそうに。《バトルロワイヤル》の説明を続ける。

『さて、チーム戦とは言ったがルールは多少面倒くさくてね。
少し複雑だから、多少耳を大きくして聞いてくれたまえ』

ぱっと。一点の光が暗い世界を貫いた。
真っ暗闇の中、劇場で主役を照らすように、光はとある地点に辿り着く。
その場に佇むのは一人の男。
屈強そうに歪む眉。きつく結ばれた唇。意志の強さを表す顔立ちは不快感を露わにしている。

『まずはAグループ。君たちの勝利条件は「Bグループの全殺害、もしくはCグループを2日間守り抜くこと」だ。
君たちAは例えるならば、獅子を思わせる雄々しさに、真実を見通す明晰かつ澄んだ瞳。
優しき心に強靱無比な爪と牙を持つ強き者、といったところか。
君たちならば弱き者を守ることも、襲い来る脅威を打ち払うことも出来るだろうと私は踏んでいる』

「勝手に連れてきてその言いぐさ……俺がそれに従うとでも?」

彼の名は本郷猛。仮面ライダー一号。
集団拉致、悪趣味なゲームの強要を許す男では、断じてない。

『従いたくないというのならそれでもいいさ。ただし、他の人間がそうとは限らないけどねえ。
ま、精々君たちAグループの正義とやらを信じて頑張りたまえよ』

嘲りを滲ませた声を睨みながら、本郷は沈黙する。
敵の姿が見えていたならばと歯噛みしながら、彼は今を雌伏の時と己を押さえる。
今の状況は、怪人との闘いに明け暮れた本郷にとっても、あまりにも常識外れだ。
何が起こるか分からない状況で、無闇に動くべきでは、ない。

『さて、それじゃあ次のグループの説明に移ろうか』

スポットライトが動いた先に居たのは、一人の優男。
白服を身にまとった姿はこの闇の中で良く映える。

『Bグループの勝利条件は「Aグループの皆殺し」だ。それ一点に限る。
鷹のごとき狡猾さ、残虐性、容赦などしない絶対的強さには、私も惚れ惚れするよ。
Aとの血生臭い殺し合い、君たちBグループの人間にこそ相応しいと私は考えているのでね』

「質問なんだけど」

ライトを当てられた男は動揺一つ見せず、僅かに微笑む。

「ここにいる全員を殺しても、別にルール違反にはならないよね?」

その笑みは、見る者全てに恐怖を抱かせるような闇を孕んでいた。
彼の名前は、ン・ダグバ・ゼバ。
白き闇を冠する化け物は殺意を露わにしながら、眼差しをあちこちに向ける。
面白い遊び道具を探す子供のように、無邪気な笑みをばらまいている。

『ああ、手当たり次第殺してくれても一向に構わないよ。
ただ、ゲームはここでするわけじゃないから、もう少しだけ待っててくれないかな?』

「どのくらい?」

『あと少しだよ』

「ふーん……」

それっきり、優男に擬態した怪物は黙る。
ここで『遊び』を我慢したのは、ただの気まぐれだった。
彼はいつでも、殺戮開始のよーいドンを待っている。

『さて、最後にCグループだ』

最後は帽子を被った、何処にでもいるような普通の少年だった。
ただ、彼の前には……一人の少女が彼を守るように立っていた。

「由乃……」
「大丈夫、ユッキーは私が守るから」

『安心したまえ、我妻由乃。君たちCグループは三つの中、簡単だ。
「何が起きても、最後まで生き残れ。手段は問わない」
君たちCはA、Bと比べて数が多いが、その力はA、Bと比べると微々たるものだ。
強力なA、もしくはBの者達の傘下に入ることをお勧めするよ。
「卑怯なコウモリ」のように上手くずるく立ち回りたまえ。さすればきっと「生き残れる」さ』

これで基本的なルーツ説明は終了だ、と声が言う。
ざわざわと、闇の中で幾人もがざわめいていた。
己はAか、それともBか、もしくはCか。
隣の人間は手を取り合う味方か、それとも……殺すべき敵なのか。


『さて、君たちにはこれから別の場所に向かい、ゲームを始めて貰う。
その際に、地図、ランタン、食料と言った基本支給品に加え、一人三つまで道具を与えよう。
武器、防具、不思議な道具、日用品……まあ色々ある。
あと、弱虫が隠れて逃げ続けることの出来ないよう、禁止エリアを用意させて貰った。
六時間ごとに三つのエリアが封鎖され、今後立ち入った者は何らかの手段、例えば……「心臓麻痺」で死んで貰う。
また、毎六時間ごとに禁止エリアの発表と共に死者の発表が行われる。
発表係には豪華ゲストを用意させて貰った。楽しみにしていたまえ。
その際、死んだ者達がどのグループだったのかを発表しよう。
どのグループが何人死んだのか、どちらのグループに付いた方が得か。
Cの諸君にとって、放送は正に生命線となろう』

質問は?と言った声に、幾つかの手が挙がった。
スポットが照らすは一人の青年。人の良さそうな笑みを貼り付けて、彼は言う。

「貴方の目的はなんですか?勝利者には望む世界を、と言いましたが、そんなことをして貴方に何のメリットがあるのでしょう?
差し障りがなければ、教えていただけると嬉しいのですが?」

『その質問を待っていたよ、夜神月君』

(何が待っていただ、犯罪者め。貴様のような下衆が僕の名を口にするな……!
しかし「心臓麻痺」……やはりこいつはデスノートを所持している……迂闊に反抗するのは難しい……
くそっ!新世界の神たる僕がなんて失態だ!)

その言葉に心の底で悪態をつきながら、表情にはおくびにも出さず。
夜神月は一字一句を聞き逃さぬよう精神を集中させる。

『私はね、知りたいんだ。この世の全てを、真実を。何が正しいのか、何が間違っているのか!
そのためならば何の出し惜しみもするまい!私は己が命さえも賭けよう!』

(そんなことのために、他の奴らはともかくこの僕までも呼び出したのか……
殺す!こいつは僕のデスノートで全史に残る醜悪な死に様を晒してやる……!)

今、この場に月の切り札たるデスノートは存在しない。
更に、相手は顔も見せず名前も名乗らない。これではどうしようもない。
月は笑顔で「ありがとうございました」と言いながら、歯の奥を軋ませる。

『おっとっと、すまないね。どうも気が入りすぎていてね。
再確認しようか。AはBを殺す。もしくはCの人間を一人でも二日間生かせば勝ちだ。
BはAの皆殺し。Cは何が何でも生き残る。
一見複雑だけど、実は簡単なんだよ。『自分以外の全てを殺せば、それで終わり』だからね。
まあ、どう動くかは君たちにお任せするとしよう』

「もしAグループが二日間Cグループを守り通した場合、Bはどうなる?」

闇の中で誰かが言った。
それを聞き逃すことなく、声は返す。

『Bグループはその時点で負けに決まってるじゃないか。敗者には死、あるのみだよ?』

了解した、と言った誰かは、その心に何を抱いていただろうか。
誰も、『声』さえも、それは推し量ることが出来ない。


『さて、そろそろ始めようか……待ちきれなくなっている人もいそうだしね?』


そして、始まりの時が近づく。
そして、終わりの時がやって来る。


『ふむ、「少し多いね」』


この場に集められた『百二十人』の参加者。
声の主は彼らを見て、穏やかに微笑んだ。
何の感慨もなく。ただ、残飯を処理するように。


『二分の一だ』


如何なる超常の力か。如何なるトリックか。
ポップコーンの代わりに、60の首が飛んだ。
挙がったのは悲鳴か、怒号か、それとも……喜びか。

『それじゃ、ゲーム……スタート』

その言葉を引き金として、転移の術が発動する。
闇に沈み込むかのように消えていく者達は首と身体が離れていない。
その光景をいろいろな表情で見送っている60の首。何も言えずに倒れ込む60の身体。
プツン、と《勝利者》達を映す百以上の画面が消え、声も消え、そして、その空間には誰もいなくなった。


◇ ◇ ◇




「さて、今回の実験はどうなるかな?」


「正義が勝つか、悪が勝つか。それとも……」


「ああ、楽しみだ、本当に楽しみだ」






「君も、そう思うだろ?」






実験、開始。


【残り60人】

主催:?????
放送:豪華ゲスト(詳細不明)

※死んだ六十人は誰かの知り合いかもしれませんし、そうでないかもしれません。




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