あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの使い魔・ブルー編-05

「待て」

その言葉に、食堂が静まり返る―…と言うことはなく、
騒がしいままではあったが、その声は届いたようだった。

「……何だね君は」

ギーシュは顔を歪め、不機嫌な表情――顔が腫れているので、
口調からの推測だったが――と、不機嫌な口調で返した。
それに対しても平静を保ち、ブルーは言う。

「誰でも良いだろう」
「……そうか、君はたしか『ゼロ』のルイズが呼び出した平民だったな?
 平民が僕に何のようだ」
「お前が悪い」

いや、実に簡潔な発言だった。
解りやすく、また同時に間違っていなかったため、
周囲の者達もその言葉に乗り、ギーシュを笑い始めた。

「そうだギーシュ!お前が悪い!」
「二股をかけてたのはお前だからな!」
「恋人が居るだけで許せんのに二股をかけるとはどういう事だギーシュ!?」

一人だけ暗い感情を隠してないものが居たような気もするが。
平手打ちを喰らい、華麗な裏拳を決められ、
周囲から笑われたギーシュは、瓶を拾っただけのメイドより、
自分が笑われる原因となったこの生意気な平民に怒りの矛先を向けることにした。

「君は貴族に対する礼儀を知らないようだな?」
「知った事じゃないな」

ブルーがそう返すと、
ギーシュは芝居がかった仕草で続ける。
こういうときでさえギーシュは格好を付けることを忘れない。
それは賞賛に値することだとは思える。

「フン、ならばこの僕が君に礼儀を教えてあげよう。
 ヴェストリの広場に来たまえ!そこで平民と貴族の差を示してやる」
「別に構わん」

そう言うと出口へと歩き出す。
ギーシュの友人達がその後をついて行く。
震えていたシエスタが、暫く経ってから言う。


「あ、あなた……殺されちゃうわ。平民が貴族に逆らったら……」
「大丈夫だ」

そう言ったものの、シエスタは青白い顔をしながら走り去ってしまった。
それと入れ違いになるように、ルイズが近寄ってくる。

「ブルー!何してんのよ!?」
「……どうもヴェストリの広場とやらに行かなければいけないみたいだが」

相変わらず平静を保つブルーとは対照的に、
ルイズは激昂しているようだった。

「そうじゃなくて!何で決闘の約束なんてしてるのよ~!」
「決闘の約束だったのか?……まぁ、問題はないな」

そこで初めて決闘の約束をしたことに気付いたらしい。
その様子を見て少し呆れながらもルイズは続ける。

「あのね!……ちょっとこっち来なさい!」

途中で少し逡巡しながらも、ルイズはブルーの手をとって食堂から連れ出した。
間違いなく人の目が無い自分の部屋まで来てから、
ルイズは話し始める。

「……まぁ、この際だから決闘の約束の事には何にも言わないわ。
 だけど、どうやってギーシュと戦うつもり!?あれでもメイジよ!」
「術を使えば――」
「ほいほい使うなって今朝方言ったでしょ!」
「……そうだったな」
「……どうするのよ」

二人とも黙り込む。
結構長い間沈黙を保っていたが、そのうちルイズが言う。

「今なら謝れば、許して貰えるかも」
「何で謝るんだ?」
「……それはそうだけど、謝らないと許してはくれないわよ」

その言葉を受けて、考え込むブルー。
またしばらくの時間が過ぎる。
が、ブルーは突然何かを閃く。

「要するに術を使ってないように見せれば良いんだな?」
「……え?そんなこと出来るの?」
「やり辛いことは確かだが、出来る筈だ」

ブルーは自信というよりは確信を持った口調で言い放った。


「諸君!決闘だ!」

ギーシュが両手を広げて叫ぶと、周囲から歓声が帰ってくる。
尚、顔はすでに治療済みである。
打撲ぐらいなら案外簡単に直せるのだろう。

「ギーシュが決闘するぞ!相手はルイズの使い魔だ!」

歓声に答えて、薔薇の造花を振ったり、
手を振り返しているギーシュに比べ、
ブルーは非常に落ち着いていた。
一通り歓声に答え終わったギーシュがブルーの方に向き直ると、
周りの観客にも聞こえるように語り始めた。

「まずは逃げずに来たことを褒めてやろうじゃないか、平民」
「逃げる必要もないな」
「……ふん、そんな口を利けるのも今の内だ!始めるぞ!」

ギーシュが薔薇の造花を振ると、
薔薇の花びらが宙に舞い、一体の女戦士の形をした銅像となった。
それがブルーの前に跪く。

「僕はメイジだ、だから当然魔法を使って戦う。
 まさか文句は無いね?」

その言葉に応えるように、跪くように座っていたその銅像が立ち上がる。

「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。
 僕が青銅のゴーレム、『ワルキューレ』が君の相手をしよう」

それに対し、ブルーは右手を前に突き出し、言う。

「そうか、なら俺は――」

~~~~

「良いかルイズ。
 使うのはたった二つの術だ。『剣』と『金貨』」
「……何よそれ?」
「見れば解る」


~~~~

「俺は手品師だ」

と言って、何も持っていなかった右手に『金貨』を現す。
その言葉と、その『金貨』を見て、ギーシュは思わず言ってしまう。

「……は?」
「だから手品を使って戦う。問題はないな?」

そして、今度は『金貨』を消してみせる。
周囲が黙り込む。
そして、次の瞬間には笑い出す。

「ふ……はは、あっはっは!」
「おい聞いたか!手品でメイジに挑むらしいぜあの平民は」
「こいつは笑えるな!」

ルイズと、後二人……いや、四人だけが冷静に見つめていた。
ギーシュはと言うと、馬鹿にされたと思ったらしい。

「ふざけるのもそこまでだ!」

と言い、ワルキューレをけしかける。
それに対し、ブルーは両手を服の内側にしまい込む。
次の瞬間、笑いが一気に止まる。
手品を使って戦うといった平民は、懐からアホみたいな量のナイフを取り出した。

「このナイフの束からどうやって逃れる?」

それにしてもこのブルーノリノリである。
ともかく、ブルーはその『剣』を全てギーシュに向かって投げつける振りをする。
実際は投げている振りをしているだけで、『剣』の力で飛ばしているのだが。
自分に向かってくるナイフを見て、ギーシュは叫ぶ。

「ワ、ワルキューレ!」

青銅のゴーレムが重そうな外見にそぐわぬほど俊敏な動きをみせ、
ナイフを身体で受け止める。
それはブルーが『剣』を投げるのを止めるまで続いた。
ギーシュは冷や汗をかきながらも、続けた。


「は、はは……少しは焦ったが、所詮は僕のワルキューレの敵ではないな」

そして、再び薔薇を振り、6体のワルキューレを作り出す。
これで既に作られて居たワルキューレを含め、7体となった。

「……だが、剣を使うとは、どうも本気のようだね!
 なら僕も本気で相手をしてあげようじゃないか!
 七体全てのワルキューレを出そう!」

6体のワルキューレが、ブルーを囲むように近づいてくる。
一体はギーシュの近くに居た。
ナイフによる飛び道具を警戒しているのだろう。
ブルーも流石に焦り始める。
『剣』はギーシュに当たれば間違いなく致命傷を与えるが、
金属で出来たこのワルキューレとか言うゴーレムに対しては効果が薄い。
それが七体。ギーシュへの直接攻撃も警戒されている。
絶体絶命という奴であった。

(他の術を使えば――)

が、辺りを見回してみる。
ワルキューレを全員倒せるような術では、周囲にいる生徒達にすら死者を出すだろう。
「アカデミー」とやらの事を抜きでも、それは出来そうにない。
一体一体倒していったとしても、途中で術力が切れそうである。
ワルキューレを一撃で倒せるような術では、術力の消耗が大きい。

青銅の拳に殴られ、吹き飛ばされる。

「ぐっ……」

倒れていると、近い位置にいたワルキューレが追撃をかけてきた。
ゴーレムの足が、ブルーの左腕の骨を踏み砕いた。

「……ッ!」

激痛に耐えかねて転がるが、結果的にそれで距離が取れたようだ。
だが、状況が好転したわけではない。
ギーシュは勝利者の余裕をたっぷりと含ませて言ってくる。

「ふん、不遜な口をきいていた割には大したことはなかったね。
 もう終わらせるとしよう!」

ワルキューレ達が、一斉にブルーへと殺到した。



「オールド・オスマン」
扉の向こうから、ミス・ロングビルの声が聞こえてくる。

「なんじゃ?」
「ヴェストリの広場で、決闘が行われているようです。
 大騒ぎになっていますが、生徒達に邪魔されて止めることが出来ません」

それを聞いて、オスマンは呆れと嘆きを表へ出した。

「全く、あの馬鹿共が。
 暇があるならもっと有意義なことをしろってもんじゃ。
 で、誰が暴れてるんだね?」
「一人はギーシュ・ド・グラモンです」

オスマンは記憶の糸をたどり、顔と名前を一致させる。

「あのグラモンの所の馬鹿息子か。
 どうせ女がらみのトラブルじゃろ。で、相手は誰じゃ?」
「それが……メイジではなく、ミス・ヴァリエールの使い魔のようなのです」

オスマンは、隣にいたコルベールの方を向いた。
コルベールもまた、こっちを見返していた。
思うところは同じだったらしい。
外からの声が続けてくる。

「決闘を止めるために、『眠りの鐘』の使用許可を求めていますが……」

その声に対し、オスマンは即座に返した。

「アホウ。子供のケンカ如きで秘宝を使ってどうするんじゃ。
 放っておきなさい」
「わかりました」

ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。
オスマンは再びコルベールと顔を見合わせると、杖を振った。
壁に掛けられた鏡に、広場の様子が映し出される。



ルイズは不安だった。
不安は、自らの使い魔が死にかけていると言うことだった。
どう考えてもそれが正しい。
しかも、何故か術を使おうとしない。
死にかけてまで、術を使わない理由にはならない。
自らの初めての成功の証が、消えてしまうことがこの上なく恐ろしかったのだ。
なので、目を閉じていた。
が、突如走った閃光が、閉じていた彼女の目を開かせる。

そこには、光り輝く剣を片手で構える使い魔の姿があった。

ブルーはある一つのことを閃いた。
ここに来てからというもの、やたらと閃いているような気がするが、
それは今はどうでも良い。丁度良い術があったのだ。
大規模ではなく他人を巻き込まず、
ワルキューレ達を一撃で倒せる訳ではないが、
防御も兼ね備えた術。
更に良いことに、術を使っているとは思われづらい。

左手は折れているようだったが、右手は動かせる。
問題はない。
フラッシュボムを上に投げる。
ここに来たときに大したものは持っていなかったが、
これはあった。

「《光の――」

詠唱を始めると同時に、閃光が走る。
その閃光を目を閉じたブルーは見る事はなかったが、
周囲の観客や、ギーシュの目を眩ますことは出来たようだ。

「―剣》!」

振り上げた右手に、《光の剣》を作り出す。

閃光によって、彼らは目を閉じた。
が、暫くして閃光は収まったことを知ると、彼らは目を開けた。
ボロボロにやられていた平民が、また剣を持っていた。
どうやらまだやるつもりらしい。
同じように閃光から立ち直ったギーシュが、芝居がかった口調で言う。

「……ふふ、褒めてあげよう。ここまでメイジに刃向かうとは、むしろ賞賛に値するね。
 だが、もうろくに動けないだろう」

そして、再びワルキューレ達を操り始める。
ワルキューレ達が再び、ブルーめがけて突撃する。


(……なんだ?)

ブルーは、自らの身体の異変を感じ取っていた。
身体が軽い。腕の痛みを感じない。
今、自分に襲いかかろうとしているワルキューレ達が遅く見える。
《光の剣》にはこのような効果はない。
だが、取り敢えず今は考えることは止め、目の前のゴーレムに向き直った。
身体を感じたままに動かす。
ワルキューレの拳を回転してかわし、そのまま斬る。
次に来たワルキューレを袈裟切りにする。
そして、返す刃の逆袈裟切りを身体ごと回転して繰り返し、残りの4体を切り捨てる。
ギーシュの眼が、驚愕に見開かれた。

「わ、ワルキューレッ!」
一瞬のうちに6体のワルキューレを斬られたギーシュが、
薔薇を振って巨大な剣を作り出し、残り一体となったゴーレムに持たせる。
ブルーはそれを見て、高く飛び上がった。
自分でも信じられないぐらい、高く飛んだので驚いたが、
落ち始めると、落下の力も加えて剣を振り下ろす。
迎撃する形で剣を振り上げたワルキューレを、大剣ごと縦に真っ二つにし、
その後剣を横に一閃し、ギーシュ……の持っていた薔薇だけを散らした。

腰を抜かして尻を付いたギーシュに、
ブルーは剣を突きつけて言った。

「まだ続けるか?」

その場に居た、本人を含めた誰もがギーシュの敗北を認めた。


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