あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

とある魔術の使い魔と主-36


「で、今日は何用なんだ?」
「わからないわよ。ただ呼ばれただけなんだから」

 とある日、当麻とルイズはアンリエッタに王宮へと呼ばれた為、使者が乗り扱う馬車に運ばれていた。
 ある程度の速度は出ているのか、風がルイズを幾分気持ち良くさせる。朝早く起こされたのか、ふあっと小さな欠伸をかいた。

(さて……と)

 まだ覚醒しきれていない頭を回転し始める。一体どうすれば当麻の気を引く事ができるのだろうか?
 ルイズは最初、自分が告白する姿を思い浮かべた。しかし、なぜ主が使い魔に告白しなければならないのだ、と却下する。
 次に、デートに誘う姿を思い浮かべた。しかし、なぜこちらから誘わなければならないのだ、と却下する。
 う~~んと、真剣に沢山のアイデアをズラリと並べるのだが、その全てにできない理由をくっつけた。殆ど変わらないような理由を。
 あれもダメ……これもダメ……、と思わず呟いているルイズの姿を見て、当麻は心配そうに声をかけた。

「なあ……、大丈夫か?」
「うるさいわね! 今考え事してんのよ!」

 キッ、と睨みつけられた当麻に為す術はなかった。どうしようもないと感じたのか、仕方なく窓から景色を眺めこむ。
 一回だけちらっとルイズを見るが、かなり真剣に自分の世界に閉じこもっているようだ。
 なに考えているんだろうな~と気になるが、次声をかけたら絶対にマズいと直感で判断した。
 王宮まで、後もう少し時間がかかるようだ。

女王へと位を上げたアンリエッタの感想は、疲れるの一言であった。国のトップは玉座に腰掛けて部下の報告を受けるイメージがあったが、どうやら変える必要性がある。
 彼女の仕事は接客に始まって接客に終わると言っても過言ではない。むしろそれだけしかやっていない気がする。
 国内国外問わず、様々な客と出会う機会が格段に増えた。様々な客に出会うという事は、それこそ報告もあるが、訴え、要求、ご機嫌取り、外交、内容も充実である。しかも、それらを朝から晩まで一日中働く必要がある程の量だ。
 ただ話すだけであるならば、そこまで苦にはならない。しかし、彼女は女王なので、ある程度の威厳を見せなければならない。
 これが疲れるに尽きる。一応マザリーニが手伝ってはくれるが、受け答えには僅かな揺るぎを出してはならない。
 何もしらないお姫様という昔の自分が、何年も前に感じてしまう。それだけ、彼女の精神と肉体は疲れきっているのだ。

 しかし、次に自分の目の前に現れる客は違う。先のような対応をしなくてもいい上、その疲れも吹き飛ばしてくれそうな大事なお客さん。
 まだかまだかと同じ場所を何度も往復しては、なかなか針が進まない時計に愚痴をつけたりする。
 と、部屋の外で待機している呼び出しの声が聞こえた。客がこの場に到着したのである。
 アンリエッタは溢れる嬉しさを少しばかし我慢した。もう少しだけ女王の態度をとらなければ。
 無理矢理作った口調で、「通して」と言う。すると、固く閉ざされた扉がゆっくりと開いた。

 ルイズとその使い魔である当麻が、アンリエッタの元に現れる。畏まるかのように、ルイズは頭を下げる。
 扉がギィィィと、悲鳴をあげながら再び閉まる。瞬間アンリエッタは女王から、昔の姫に変わった。ルイズへと駆け寄るや否や、ギュッと抱きしめる。

「ルイズ! あなたに会えて嬉しいわ!」
 ルイズは頭を下げたまま、応える。
「姫さまではなく……、陛下とお呼びせねばいけませんね」
 ルイズの態度に、アンリエッタはもう! と少し呆れながらルイズの顔を無理矢理上げた。
「そのような他人行儀を申したら承知しませんよ。ルイズ・フランソワーズ。あなたはわたくしから最愛のお友達を取り上げてしまうつもりなの?」
「ならば……、いつものように姫さまとお呼びいたしますわ」
「そうしてちょうだい。ねえルイズ、ホント女王になんてなるんじゃなかったわ。退屈は二倍。窮屈は三倍。そして気苦労は十倍よ」

 はあ、と友達の前で出したくもないため息が吐き出される。
 ここにいる存在価値があるかわからない当麻は、とりあえず壁に寄りかかって二人を眺めた。
 一方のルイズは黙った。このままアンリエッタが自分達を呼んだ理由について話すのかと思って……。
 しかし、アンリエッタの口が開く様子はなく、ただじっと見つめている。こちらの様子を伺うかのように、ただ、じっと。
 このままでは話が進まない。自分らと面会する時間も限りがある。
 何か雑談はないかしらと、ルイズは自分の頭の中にある思い出を探り寄せる。やはり、ここで話す内容とすれば一つしかない。

「このたびの戦勝のお祝いを、言上させてくださいまし」

 特に当たり障りのない話題、これならば大丈夫だとルイズは思った。
 すると、アンリエッタは何を思ったのか、突然ルイズの手を握った。まるで感謝をするかのように。

「あの勝利はあなたのおかげだものね。ルイズ」

 へ、と思わず口から出てしまった。当麻もポカンと口を開き驚いている。二人ともなぜそれを知っているのか? と、そう表情が訴えていた。
 アンリエッタはそんな二人に笑みがこぼれる。

「わたくしに隠し事はしなくても結構よ。ルイズ」
「ええと、わたしにはなんのことだが……」

 いやいや、と思わず当麻は突っ込んでしまう。とぼけるのはいいとして、もう少し上手く出来ないのだろうか?
 アンリエッタは、そんなルイズに報告書を手渡した。以前自分が読んだあの報告書である。
 読み終えた感想として、ルイズは観念したかのようにため息を吐いた。

「ここまでお調べ済みなのですか?」
「あれだけ派手な戦果をあげたのよ? 隠し通せるわけがないじゃないの」

 そう言われればそうだ。あんな奇跡とも言えるような事、奇跡で終わらせるわけがない。それよりも、自分達を調べ上げたトリステインの人間に感心を覚えた当麻に、アンリエッタは視線を向けた。
「敵の竜騎士隊を全滅させたのはあなたですよね? 厚く御礼を申し上げますわ」
「あー、俺は個人の問題を解決しただけだ。それがたまたまいい方向になったんだけだから、御礼を貰う立場じゃないぞ?」
「いえ、あなたは救国の英雄ですわ。わたくし個人の意見を尊重するならばあなたを貴族にしてさしあげたいぐらいだけど……」

 残念ながら無理なのです、とどこか寂しげな表情を浮かべた。
 トリステインでは平民が貴族になれないと、キュルケが昔言っていたのをふと思い出した。
 と言っても、当麻にとって貴族になろうがならないだろうが気にする事ではない。

「あー別に問題ないぜ? てかそれだったら俺の分をルイズに上乗せしてさしてやってくれ」
 え? とこちらに振り向いてきたルイズに当麻は黙って頷いた。
(当麻がわたしに恩義を与えてくれるなんて……)
 言葉には絶対言えないが、ジャンプするぐらい内心では喜んだ。わがままなど一言も言わずに、その分を自分にあててくれと言ってくれた事が。
 しかし、すぐに気付く。
(でも……、使い魔だからかもしれないわ)
 どうやら、浮かれるにはまだ早いようだ。

「ええ、あなた達の戦果は、このトリステインはおろか、ハルケギニアの歴史の中でも類をみないほどのものです。本来ならルイズ、あなたには領地どころか小国を与え、大公の位をあたえてもよいくらい」
「そんな……わ、わたしはなにも……」
「あの光はあなたなのでしょう? ルイズ。城下では奇跡の光だ、などと噂されておりますが、わたくしは奇跡など信じませぬ。あの光が膨れ上がった場所に、あなたたちが乗っていたドラゴンは飛んでいた。あれはあなたなのでしょ?」

 アンリエッタがぐいっ、とこちらに迫ってくる。その真剣な眼差しに、ルイズはこれ以上隠せないと思えた。
 それに、最愛の友達であるからこそ、こうして騙しているのに心が痛んだ。
 最初の出だしをなんと言うべきか悩み、うじうじしたが、やがて少し躊躇いながらも「えっと……」と切り出した。
 それ以降は、自分が誰にも相談できなかった『始祖の祈祷書』について、一から語り始めた。
 『水のルビー』を嵌めたら始祖の祈祷書のページに古代文字が浮かび上がった事。そこに記された文字を読んだら、あの光が現れた事の二点を主に。

「それで姫さま、わたしは『虚無』の担い手なのでしょうか?」
 一番気になる質問をアンリエッタにぶつけた。恐らくだが、彼女ならば答えるに違いない。
「おそらく……」
 アンリエッタは続けた。
「『水のルビー』と始祖の祈祷書は、始祖ブリミルがトリステインに遺した秘宝と指輪……。それにラ・ヴァリエール公爵家の祖は王の庶子。
 始祖の力を受け継ぐものは王家にあらわれると言い伝えられてきたので」

 実際に放ったことだしそう考えるのが正しいようね、と付け加えた。
 ルイズは思わずため息をつく。次にアンリエッタが何を言うか理解出来たからだ。

「これであなたに、勲章や恩賞を授けることができなくなった理由はわかるわね? ルイズ」
 小さく頷くルイズ。一方の当麻はなぜだかわからなかった。
「ん? どうしてなんだ?」
 アンリエッタは僅かに顔を伏せながら答えた。
「わたくしが恩賞を与えたら、ルイズの功績を世間のもとにさらしてしまうことになるでしょう。それは危険です。一国でさえももてあますほどの力なのです。
 ルイズの秘密を敵が知ったら、彼らはなんとしてでも彼女を手に入れようと躍起になるでしょう。敵の的になるのはわたくしだけで十分」

 淡々と話すアンリエッタに、当麻は少しだけ不快感を覚えた。自分だけがそうなるように、他人を助けるその思考が。

「敵は外部だけとは限りません。城の中にも……、あなたのその力を知ったら私欲のために利用しようとするものが必ずあらわれるでしょう」
 ルイズはいつも以上に緊張した顔で頷いた。
「だからルイズ、誰にもその力のことは話してはなりません。これはわたしと、あなたとの秘密よ」

 インデックスと共に暮らしてきた当麻だから、アンリエッタの言い分はわかる。わかるのだが、
 助けを求めるという事は、助けを求めた他人を巻き込む事を意味している。
 つまりはアンリエッタはルイズを巻き込ませたくない一心なのだ。
 だけど、それは間違っている。
 もし自分がルイズの立場だったら?
 当麻の知らない所で、アンリエッタが一人だけ何か事件に巻き込まれたら。相談もされず、一人のうのうと平和の中にいた自分をどれだけ責めるだろうか、と。
 絶対にそんな事はあってはならないのだ。それだけはやっぱり、最愛の友達だからこそやってはいけない。
 すると、考え込んでいたルイズが何か決心したかのように、アンリエッタを見つめた。
「おそれながら姫さまに、わたしの『虚無』を捧げたいと思います」
「いえ……、いいのです。あなたはその力のことを一刻も早く忘れなさい。二度と使ってはなりませぬ」
「神は……、姫さまをお助けするためにこの力を授けたはずなのです!」
 しかし、アンリエッタは首を振る。
「母が申しておしました。過ぎたる力は人を狂わせると。『虚無』の協力を手にしたわたくしがそうならぬと、誰が言いきれるのでしょうか?」

 ルイズは諦めない。二度も彼女は説得に失敗しているのだ。二回目はたまたま良い方向になったが、今回は違う。
 絶対に良くない方向へいくと何故だか確信を得た。
 だからこそ、ルイズは告げる。

「わたしは、姫さまと祖国のためにこの力と体を捧げなさいとしつけられ、信じて育って参りました。
 しかし、わたしの魔法は常に失敗して、ついた二つ名は『ゼロ』。嘲りと侮蔑の中、いつも口惜しさに体を震わせておりました」
 ルイズは自分の思いを届いてくれ! と言葉にする。
「しかし、そんなわたしに神は力を与えてくださいました。わたしはようやく自分の信じるものに、この力を使えるのであります。それでも陛下がいらぬとおっしゃるなら杖を陛下にお返しせねばなりません」
 アンリエッタに断る理由が浮かばなかった。


 二人は用事を終え、王宮から出た。
 とりあえず始祖の祈祷書がなければ『虚無』を発動できないため、そのまま授かる事になった。
 もっとも、口外はおろか、使用もできる限り避けるという約束が条件であるが。
 また、ルイズは仕事をする際の許可証を、当麻は宝石や金貨を恩賞として貰う事になった。
 街は戦勝祝いでワイワイガヤガヤと賑わっている。酔っ払いの兵士が顔を真っ赤にして乾杯! と叫び、再び酒の補充にかかった。

「つか賑わってるなー」
 当麻は目の前の騒ぎに、率直な感想を述べる。先程の話は少し重たかったので、気分が変わるにはうってつけの光景だ。
「ほんとね」
 ルイズの親は地方領主であったので、このような街は初めてだ。なので、周りに影響されてか、自分も楽しそうになってしまう。
「んじゃまあ、ちょっくら見に行きますか?」
 当麻の案に、否定する言葉はなかった。

 二人はあまりの人の多さに手を繋ぐ事になった。異性と手を握るという行為に対して、二人は顔を赤くして黙々と歩き続ける。
 端から見れば初々しいカップルのようだ。
 当麻は一人悩んだ。いや、この気まずい状況を打破する為の秘策の言葉を考えているのだが、
 浮かばない。
 面白いぐらいに浮かばない。
 うがーッと、内なる当麻が両手で頭を抱えて悩み出す。結局の所、日常会話しか浮かばないのであったりするのも、まだまだ子供のようだ。

「あーほら、つか俺の世界でもこんなんあるんだぜ?」
「そうなの?」
「まあなー、学園祭ってな? ここよりめちゃくちゃ広い場所で屋台や露店が埋めつくされるんだよ」

 へぇ~、とルイズは相槌をうった。
 無意識の内にルイズは当麻の手を強く握る。当麻が自分の世界について話すとなんだか寂しい気持ちに変わる。
 当麻は、いつか必ず帰っていく日がくるに違いない。だからこそ、そういう話になるとその事が思い出されるのだ。
 おめでたい時に、そんな思いはしたくなかった。
 今ぐらいは、せめてこの時ぐらいは楽しみたい。もっと自分を見て欲しい。そんな感情が自分の中で渦巻く。
 でも、それをよしとしない自分もまたいる。
 わたしは当麻の事が好きなの? そんな事ない。ただあのメイドに取られたくないだけだもん。
 言い聞かせ、周りを見渡す。何か、何かないだろうかと期待しながら探したそれは、いとも簡単に見つかった。

「ねえ」
「ん?」

 ルイズに呼ばれ、当麻は立ち止まる。見ると、どうやら宝石商がお目当てのようだ。指輪やネックレスなどが並べてある。
「んじゃあちょい覗いてみますか」
 そう言って、ルイズと一緒にそちらへと向かった。


 二人が近づくと、商人が客だと判断し、声をかける。

「おや! いらっしゃい! 見てください貴族のお嬢さん。珍しい石を取り揃えました。『錬金』で作られたまがい物じゃございませんよ」

 ルイズはちょこんとしゃがむと、並べてある品物を物色する。
 しかし、あまり出来はよくないようだ。貴族が身につけるには少し派手で、あまりお勧めはできない。
 それでも、ルイズは気にせず一つのペンダントを手にとった。貝殻を彫って作られた真っ白なペンダント。周りには見映えをよくしたいのか、大きい宝石が沢山嵌め込まれている。
 しかし、それもまた適当に作られてるイメージが残る。宝石も、なんだか安物だと思ってしまう。
 それでも、ルイズは気に入ってしまった。こういったお祭りは初体験であったので、少しガードが緩くなったのである。

「欲しいのか?」

 当麻に視線を向けず頷く。おそらく目をキラキラと輝かしているのであろう。
 となると、やる事は一つしかないと当麻は思うと、商人に話かけた。

「ええと、いくらだ?」
「四エキューでございます」
 ルイズが驚きの表情でこちらを見るが、気にせずポケットから先程貰った金貨を取り出す。
「わりい四エキューってどれぐらいだ?」
 この国の通貨がわからないので、十枚ぐらい同じ金貨を商人に見せた。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……これで四エキューです」
 一エキューである金貨を四枚当麻の手から取り上げると、商人は笑みを浮かべてありがとうございましたと、お決まりの言葉を言った。
 呆然と状況を理解するのに精一杯だったルイズの気持ちが、嬉しさで込み上がってくる。
 当麻が自分の為に買い物をしてくれたのだ。これを喜ばないで何を喜ぶ?
 一気に気持ちが最高潮にまで上がり、手に持っていたネックレスを早速首に巻いた。お似合いですよ、という商人の言葉などもう耳には入らない。

「似合うかな?」
「ん? ああ、似合ってるぞ」

 もっとも、当麻はこういった場面に出くわしたら、買ってやるべきであるというのを知っており、尚且つ今まで自分を養ってくれたお礼という意味である。
 決して、当麻がルイズを好きになったというわけではない。
 と、そんな当麻の目に何かが入り込む。
 隣の店、そこにはアルビオン軍からの分捕り品が並べられていた。
 剣や鎧、服や時計などがある中、当麻は一つの服に着目し、手に持った。ルイズが思わず尋ねる。

「どしたの? 服が欲しいならもっといいの買いなさいよ」
 しかし当麻は答えない。考え事に夢中であるから、だ。
(水兵服かー)

 そういえば、あれは水兵服からできたのだと聞いたのを思い出す。ならば、これから作れるのではないか?
 ちゃんと、当麻はシエスタの言葉を覚えていた。
 シエスタは可愛い服が欲しいと言っていた。当麻の中では、これはきっとかなり可愛い服であるとは思う。
 なんせ日本が誇るジャパニーズ文化の三種の神器である。多分こちらでも通じるに違いない。
 仕立てはルイズに後で頼んでみるかー、と思いながら、当麻は商人に尋ねる。

「これ、いくらっすか?」
「三着で一エキューさ」
当麻は一エキューがどれであるか早速理解できた。


新着情報

取得中です。