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第百二十一話「ファントンの贈り物」


ウルトラマンゼロの使い魔
第百二十一話「ファントンの贈り物」
健啖宇宙人ファントン星人
肉食地底怪獣ダイゲルン 登場



「ギャアアァァァッ!」
 トリスタニアを囲む平原を横切って、一体の巨大怪獣が王都に接近しつつあった。ずんぐりと
していながらどっしりとした肉づきの図体で、大きく裂けてかつ発達した顎には鋭い牙がびっしりと
並んでいる。その上よだれをダラダラと垂れ流していた。
 トリスタニア外での迎撃を図って出動した魔法衛士隊の一人が怪獣の恐ろしい形相をひと目見て言った。
「あのトラバサミみたいな顎を見て下さい! あいつ絶対肉食ですよ!」
 彼の発言の通り、怪獣の正体は肉食地底怪獣ダイゲルンである。腹を空かせばあらゆる生き物に
関係なく食らいつく、恐ろしく獰猛な怪獣だ。このダイゲルンは、進路上にあるトリスタニアに
暮らす大勢の人間を胃袋の中に入れようと狙っているのだった。
「あんな奴が街に入ったら、どんなことになってしまうか分からん。ここより先には一歩たりとも
通してはならんぞ!」
 ド・ゼッサールが全隊員に向けて命じた。ダイゲルンが地響きを鳴らして接近してくると、
作戦の開始を合図する。
「火石爆弾用意! 怪獣に放つのだ!」
 命令により、数騎の騎士が肩に筒を担ぎながら、ダイゲルンの左右から向かっていく。
 筒の中身は、アカデミーのメイジが生成した合成火石。改造ベムスターに食らわせた特製火石を、
あえて火力を落としたものだ。威力を犠牲にする代わりに量を大幅に増しており、怪獣対策会議で
この方が戦術的に有効と判断されて作られることとなった。
 筒は魔法学院の教師、コルベールの発案による発射装置。筒の中で圧縮した空気を一気に
解き放つことで、その勢いにより火石を発射する。これにより手で投擲するより断然飛距離が
出せるのだ。原理的には、グレネードランチャーに近いものである。
「撃てーッ!」
 ゼッサールの合図により、騎士たちは一斉に火石を発射。ダイゲルンに左右から同時に食らわせた。
「ギャアアァァァッ!」
 ダイゲルンの体表の各箇所で爆発が発生。ダイゲルンはバタバタと飛び跳ねて悲鳴を上げる。
「よし、効いてるぞ! 第二陣、攻撃せよ!」
 最初の騎士たちが離脱すると、次の筒を担いだ騎士たちが交代してダイゲルンに向かっていく。
ダイゲルンは騎士たちを敵と見なして反撃しようとするも、見た目通りに鈍重なダイゲルンの吐く
火炎はグリフォンには当たらない。騎士たちは対怪獣戦のために散々訓練しているのだ。
「ギャアアァァァッ!」
 ダイゲルンは連続で爆撃を食らい、ジタバタともがく。
「いいぞ! ではそろそろキング砲を……」
 ゼッサールがとどめの攻撃を指示しようとしたが、それより早くダイゲルンに動きが見られた。
「ギャアアァァァッ!」
 その場で踵を返すと、地面に飛び込むように倒れ、長い爪で土を掘り返していく。そうして
あっという間に地中に逃げていった。
 ダイゲルンは地底怪獣らしく、地上での動きは遅くとも地中の潜行速度はかなりのものなのであった。
「逃げられたのは残念ですが、防衛には成功しましたね! この戦果には女王陛下にもお喜び
いただけるでしょう」
 騎士の一人が気を良くしてゼッサールに言ったが、ゼッサールは油断していなかった。
「いや、腹を空かせた肉食獣がそうそう簡単にあきらめるとは思えん。またトリスタニアを
狙って現れることだろう。皆の衆、しばらくは警戒を怠るな!」
 ゼッサールの命により、魔法衛士隊はトリスタニア周辺を周回飛行し、ダイゲルン接近の
兆候を見逃さないように警戒を続けた。

 ところ変わって、リュリュとグルメンの実験農場のテント。リュリュが昼食の準備をしている間、
ベアトリスたちはあるものを発見していた。
「あら? 何かしら、これ」
 見たことのないような異様な物体が、ガラスケースの中に収められて飾られている。赤紫の歪な
球体から突起が生えている、何かの球根に見えなくもない物体だった。
「これも食材の一種なのかしら」
「まさか。とても美味しそうには見えません、殿下」
「削って粉にする調味料ではないでしょうか」
「いえ、新種の肥料ではないかしら」
 ベアトリスたちが推理し合っていると、通りかかったリュリュが正解を言った。
「あッ、それはシーピン929と言います。博士の故郷で作られた非常糧食だそうです」
「ええ? これ、ほんとに食べ物だったの?」
 シーピン929なる物体をもう一度観察するベアトリス。
「わたしたちの感覚からだと見た目にちょっと難ありですが、博士の故郷の食料不足が深刻化
した時、これでしのいだそうです」
「こんな小さいので?」
 シーピン929は小柄なベアトリスでも持ち上げられる程度の大きさだ。
「とてもたくさんの人のお腹を満たせるとは思えないわ。それともいっぱいあるのかしら」
「ああ、それは……」
 リュリュが答える前に、ツインテール娘が何の気なしにガラスケースをカパッと開けた。
「わたしたちの舌にも合うのかしら、これ」
「あぁぁぁッ!? 開けちゃダメですッ!」
「へ?」
 突然大声を出すリュリュ。何事かとベアトリスたちが思う間もなく……。
 シーピン929はずもももも……と膨張を始めてみるみる内に大きくなっていく!
「きゃあああああああああッ!? どうなってるのこれぇぇぇぇ―――――――!?」
 思わず絶叫するベアトリスたち。シーピン929は瞬く間に彼女たちの背丈も超えて、どんどん
膨れ上がっていく。
 ベアトリスたちはたまらず回れ右した。
「いやあああぁぁぁぁぁッ! 押し潰されるぅぅぅぅぅぅぅぅッ!」
「ひ、姫殿下ぁぁぁぁッ! お助けをぉぉぉぉぉ――――――――――ッ!」
「あぁッ! エーコが逃げ遅れた!」
「博士ぇーッ! 助けて下さい、博士ぇぇぇーッ!」
 テント内はたちまち大パニック。リュリュは必死になってグルメンを呼んだ。

 肥大化したシーピン929はグルメンの手によって元の大きさにまで圧縮された。
「なるほど……。大きくなるって訳ね……」
「はい……。説明が遅れて申し訳ありません」
「いえ、勝手に触ったこっちが悪かったわ……」
 食事を取りながら、ベアトリスとリュリュは互いに謝り合う。
「放っておいたら際限なく大きくなってしまいますので、取り扱いにはくれぐれもお気を
つけて下さいね」
「もう触らないわよ……。それより」
 ベアトリスが気を取り直して、皿に盛られた肉料理に目を落とした。リュリュの代用肉で
作られた料理だ。
「これ、ほんとに美味しいわね! 確かに味も本物そっくりで、言われなければ全然気づけないわ!」
「噂は本当でしたね、殿下!」
「お気に召していただけて、ありがとうございます! 料理と食品加工だけは誰にも負けないと
自信があるんですよ!」
 さすが料理を生業としているだけあり、美味しいと評価されたリュリュは心の底から嬉しそうであった。
 ここでポニーテール娘が言う。
「味ももちろんですが、匂いもまた美味しそうな匂いがしますね。それが味をより一段と引き上げてます」
「あッ、気づかれましたか?」
 料理のことになるとちょっと得意げになるリュリュ。
「美食とは舌だけで味わうものではありません。見た目、匂い、噛みごたえなど五感全部が
そろって本当に美味しいものが出来上がるのです。そのため、わたしも味の再現だけで満足
せずに研究を重ねて、匂いも本物と限りなく同じになるように仕上がるようにしたんです」
「さすが、こだわってるのね」
 リュリュの口振りの熱さから、彼女がこの道に命懸けであることをベアトリスたちはしみじみと感じた。
 と、ここで緑髪娘が話題を変えた。
「ところで……そこの博士、貴族が食事をしている場所でぐうすかお眠りなんて、少々失礼では
ないでしょうか?」
『うーん、もう食べられへんわぁ……』
 彼女たちの後ろでは、先に食事を終えたグルメンが横になって寝言を唱えていた。
 やや眉をひそめるベアトリスたちに、リュリュが弁明。
「どうぞご容赦お願いします。あれは博士の民族の風習だそうで」
「風習?」
「はい。博士の民族では食事とは何物にも代えがたいほど神聖なもので、自らが食べた命に感謝し、
摂取した栄養を可能な限り吸収するため、食事後に眠って消化を促すということなんです」
「へぇ。食事が神聖なものねぇ」
 関心を寄せるベアトリスたち。言われてみれば、食べるという行為は他の生き物の命を
自分のものとすること。確かに神聖な領域と言える。
 普段当たり前のようにものを食べられるので意識していないが、始祖ブリミルの教えにも
食事に感謝をすることとある。それを久々に思い出したベアトリスたちだった。
「それにしても、一人ですごい量を食べたものね」
 ベアトリスはグルメンの食事の跡に目を向ける。皿がまさしく山積みになっており、一人で
学院の生徒総数分と同じ量を食べたのではないかと感じてしまうほどだ。
「一度にあんなに食べるんだったら、慢性的な食料不足というのもうなずける話ね」
「あッ、それ、わたしもいつも思ってます」
 ほのぼのと談笑するベアトリスとリュリュたち。だがその時!
 ゴゴゴゴゴゴ……!
「な、何!?」
 いきなりテントが激しい揺れに襲われ、ベアトリスたちはギョッと驚いた。
 揺れとともに、外から何か異様な騒音が発生する。
「外で何か起きてるみたいです!」
「一体どうしたのかしら……!?」
 ベアトリスたちは急いでテントの外に出ると、そこの光景に仰天した。
「な、何あれぇ!?」
 何と地表に巨大なヒレのようなものが突き出ていて、しかも地面を割りながら移動しているのだ。
当然、ベアトリスたちはこんな異常なものは見たことがなかった。
「地上に、サメ!?」
「い、いえ! あれは……!」
 地面の裂け目が広がり、ヒレの下から更に巨大なものがせり上がってきた。
「ギャアアァァァッ!」
 正体は怪獣ダイゲルンであった!
「怪獣だわぁぁぁぁぁッ!?」
 悲鳴を上げるベアトリスたち。しかしトリスタニアを襲おうとしていたダイゲルンが、
何故ガリアとの国境付近にいるのか?
 ダイゲルンは本物のサメよろしく嗅覚が鋭敏で、地上の生物の匂いを嗅ぎ分けて地中から接近する。
そしてリュリュの代用肉が匂いにまでこだわられていることが災いして、ダイゲルンはこっちに
引き寄せられてしまったのだ!
「ギャアアァァァッ!」
 地上に巨体を現したダイゲルンはテントの方角、つまりベアトリスたちへと向けてまっすぐに
進み始めた。ベアトリスたちは生命の危機を感じて震え上がった。
「は、早く逃げましょう!」
「はいッ!」
 ベアトリスは取り巻き娘たちを引き連れてこの場から離れようとするが……リュリュだけが
戸惑っていて立ちすくんでいる。
「どうしたのよ! 早くしないと食べられちゃうわよ!」
 ベアトリスは慌てて彼女を引っ張っていこうとするが、リュリュは困惑しながら言った。
「でも、このテントの農場にはわたしの夢と目標が詰まってるんです! それを捨てて逃げるなんて……」
 するとベアトリスがリュリュを説得する。
「あなたが生きてれば農場はまた作れるけど、他の人間には作れないでしょ!? だから
あなたは生き延びないと駄目よ! 分かる!?」
 ベアトリスの必死の言葉はリュリュの心に響き、彼女はうなずいた。
「は、はい!」
「結構! それじゃあ避難よ!」
 リュリュも連れてテントから離れ出す五人。
 だがしかし、逃走の途中でリュリュが急に立ち止まった。
「あぁぁッ! いけない!」
「今度はどうしたの!?」
「博士を置いてきました!」
「……あッ!」
 グルメンがいないことを思い出すベアトリスたち。当のグルメンは、未だに寝こけていたままだった!
 このままではグルメンの命がない!
「博士ぇぇぇぇぇぇぇッ!」
 リュリュが慌てて引き返そうとするも、ダイゲルンは既にテントの目前。どう考えても
間に合わない!
「あぁッ! 誰か博士を助けて下さぁぁいッ!」
 絶叫するリュリュ。
 その願いに応えるように、空の彼方からグレンファイヤーが飛んできた!
『ファイヤァァァァァァ―――――――――ッ!』
「ギャアアァァァッ!」
 グレンファイヤーはテントの前に着地すると同時にダイゲルンに組みつき、侵攻を食い止めた。
「あれは、ウルティメイトフォースゼロ!」
『うおおおおおおおッ!』
 グレンファイヤーは上腕の筋肉をもりもり盛り上がらせて、ダイゲルンを押し返していった。
それによりリュリュたちはテントまで引き返すことが出来た。
「今の内に博士をッ!」
 グルメンはこの状況に至っても目を覚まさないので、リュリュたちは仕方なくレビテーションで
運んでいった。
 少女たちが避難していく中、グレンファイヤーは抑えつけているダイゲルンと本格的な戦闘を始める。
『うらぁッ!』
 四つを組んだままダイゲルンの脇腹を狙って蹴りを仕掛け、一瞬ひるませた隙を突いて
高々と持ち上げ、投げ飛ばした。
『どっせいッ!』
「ギャアアァァァッ!」
 固い地面に叩きつけられたダイゲルンだが、まるでへっちゃらとばかりに即座に起き上がると、
姿勢を低くしてグレンファイヤー目掛け突進していく。
『うおぉぉッ!』
 ダイゲルンの頭突き攻撃に、グレンファイヤーははね飛ばされてしまう。
『ぐッ、なかなかいいパワーじゃねぇか……!』
 ダイゲルンは見た目通りのパワー型怪獣。八方からすさまじい圧力が掛かる地中深くの
環境に耐えられるよう進化した強固なボディから生じる筋力は、グレンファイヤーにも
劣らないレベルであった。
『けどパワー勝負じゃ俺は負けねぇぜ! うおおおおおッ!』
「ギャアアァァァッ!」
 グレンファイヤーはダイゲルンに再度飛びかかってボディブローをぶち込んだ。が、ダイゲルンに
効果は薄いようだ。
「ギャアアァァァッ!」
 ダイゲルンは反撃としてグレンファイヤーの身体を蹴り上げる。
『ぐおぅッ!』
 うめくグレンファイヤーだが、もう一度拳打を繰り出す。今度は顔面を狙って。
「ギャアアァァァッ!」
 だがその拳はダイゲルンに噛みつかれて止められた!
『何ッ!?』
 顎の力はダイゲルンの筋力の中で最も強く、グレンファイヤーの手首がギリギリ締め上げられる。
『うぐあぁぁぁぁぁッ!?』
 たまらず苦悶の声を発するグレンファイヤー。しかも顎の力だけで身体全体を持ち上げられ、
何度も地面に叩きつけられる。
『うおあああぁぁッ! ぐッ! ぐっはぁッ!』
 このままではグレンファイヤーが危ない!
 しかし、グレンファイヤーは参らなかった。
『こんの食いしん坊野郎が! 俺の炎でも食らいやがれぇぇぇッ!』
 胸のファイヤーコアを滾らせると、腕に炎を宿らせて拳を急激に熱していく。
「ギャアアァァァッ!?」
 口内を熱せられたダイゲルンはたまらず顎を開いた。
『よぉっしゃあ今だぁぁぁッ!』
 この隙を突いて、グレンファイヤーは大技を仕掛ける。
 素早くダイゲルンの背後に回り込むと、後ろから相手の身体を抱え上げ、上下逆さにして
まっすぐ叩き落とした!
『グレンドライバーだぁぁぁぁぁぁッ!!』
 この攻撃が決まり、ダイゲルンは一気に爆散!
『よぉしッ……! やったぜ!』
 怪獣を倒し、ベアトリスたちの無事を確認したグレンファイヤーはうなずき、空に飛び上がって
帰還していった。

『いやぁ、お嬢ちゃんたちには助けられてもうたみたいで。迷惑掛けてすまんかったなぁ』
 戦いが終わってからやっと目を覚ましたグルメンは、ベアトリスたちに感謝の意を示した。
「ホントにね。一時はもう駄目かと思ったわよ」
『いやぁすまへんすまへん。これはお詫びと感謝の品や。受け取っておくんなまし』
 グルメンはリボンで包装された箱をベアトリスに差し出す。
「これは?」
『特別の、とっておきの品やで。みんなで食べてや』
 中身は見えないが、グルメンがこう言うからにはとてもいいものなのだろう。ベアトリスは
ありがたく受け取った。
「さて、そろそろお暇するわね。今日は色々と勉強できて、来てよかったわ。ありがとう」
 帰り際にリュリュと握手するベアトリス。
「こちらこそ、わたしの活動の内容を知っていただけて嬉しいです。またいつでも遊びに
来て下さい。他の学院のお友達をお連れになっても構いません」
「友達……そうね。次に来る時は、素敵な子を連れてくるわ」
 ベアトリスの脳裏にティファニアの顔がよぎり、口元に微笑が浮かんだ。

「……ということがあったの」
 翌日の学院の教室で、ベアトリスは一連の出来事をティファニアに話していた。ティファニアは
奇想天外な話の連続にいたく感心したようであった。
「そんなことがあったのね……。危ない目にも遭ったみたいだけど、皆が無事で安心した」
「ありがとう。どう? 今の話面白かった?」
「うん、とっても! 世界にはほんとに、わたしの想像を超えるような人がいたと知って
ビックリしたわ。一緒にいるウチュウ人の方とも、是非お会いしてみたい!」
 ティファニアが関心を持ってくれて、ベアトリスはほっとするとともに嬉しく感じた。
「ええ、ティファニアが良ければ連れていってあげるわ。だから……その……」
 ベアトリスは少しもじもじとしながらも、意を決してティファニアに告げた。
「この前のこと、ちゃんと謝ってなかったわね……。ご、ごめんなさい……。それで、こんな
わたしでいいのなら……あなたの、お友達になるわ……いえ、させてちょうだい……」
 恐る恐る申し出ると……ティファニアはにっこりと笑った。
「うん、ありがとう! そのお返事、ずっと待ってたの」
 ティファニアからの返答に、ベアトリスは表情を輝かせた。そんな彼女の様子に、取り巻き
娘たちも安堵してにこにこする。
 正式にティファニアと友達になれたベアトリスは、グルメンからの贈り物を彼女に差し出した。
「それで、これはお土産。お友達のあなたに一番に味わってもらいたくて」
「まぁ、食べ物なのね」
「そうみたい。わたしもまだ中身を知らないんだけど、とっておきのものって言ってたから
きっとすごく美味しいものよ」
 ベアトリスはここで初めて包みを解いて、中身をティファニアに披露する。
 が……包装の下から現れたモノに、一瞬言葉を失った。
「……」
 包みから出てきたのは……ガラスケースに収められた、シーピン929だった。
「――食べられるかぁッ!」
 ベアトリスは思わず床に叩きつけた。パリンとケースが割れる。
「で、殿下ッ! そんなことしたらッ!!」
「あぁッしまったッ!」
 ずもももも……とシーピン929は膨張を開始。
「きゃああぁぁぁぁぁ―――――――――――! やってしまったわぁぁぁぁッ!」
「た、助けてぇぇぇぇぇぇッ!」
「せ、先生呼んできてぇぇぇッ!」
 情けない悲鳴を上げるベアトリスたち。ティファニアは目を白黒させた。

 教室いっぱいにまで膨れ上がったシーピン929は教師陣総出で処分され、ベアトリスたちは
こっぴどく怒られる羽目になったのであった。
 しかしこの珍騒動が逆にプラスに働いて、他の生徒たちもベアトリスに気さくに接する
ようになり、ベアトリスは学院の輪の中に自然と溶け込めるようになったのであった。


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